第35話 「石曜眼」
メデューを精神的に打ち負かした鈴空。
いよいよ、レラージュ3姉妹・長女リュアレとの戦闘が始まるが………
「しかし、そこの変態騎士。お前を少し侮っていたのは、我々の不覚よ。この凄まじい剣技。ステーノとメデューでは少し、荷が重すぎたのも事実。レラージュ3姉妹、長女の私が直接相手をして差し上げますわ」
色々あったが、なんとか、大将を引っ張り出すことが出来たな。
「鈴空さん!一気にイキましょう」
「せやな。うちらはまだ、ピンピンしてます。対する相手はリュアレのみや。勝てるで」
ちょっ、お前ら、そうゆうフラグになるようなことは言わないで………。
魔法『アース・ラール』、『ミスト・ラール』
「来なさい。ヴァナライア・クイーン」
「なッ!同時に2つの魔法を発動だと!?」
「うそやん!さっきの蛇より、えげつない大きさのが出てきよった」
「マズいッ!皆さん急いで回避を………」
魔法の発動により、既に身動きが取れない状況に陥っていた僕達は、ヴァナライア・クイーンの尻尾攻撃をまともにくらい、方々へ跳ね飛ばされた。
「ふふっ。所詮その程度ですか。どんなに大技を繰り出すことができても、動きを止められては何も出来ないようですね」
「流石、姉様!」 「リュアレ姉すごぉぉぉ」
見事なフラグ回収。ってそんなこと考えている場合じゃない。
身体の節々が多少痛むが、このジャージの防御力のおかげか、大したダメージは受けてない。マジでレア防具だな。それにしても、土魔法だけじゃなくて、風魔法まで使ってくるとはな。おかげで、剣を抜くことも出来なかった。
ところでリア達はどこだ?僕は、周囲を見渡す。すると、2人は、僕の後方3mくらいのところで倒れていた。動く気配がない。本当なら次の攻撃に備え、すぐに態勢を立て直していなくてはならないところなのに。僕とは違い、リアと西華のダメージはかなり深刻な様子だ。僕は、急いで2人の元へ駆けつける。
「おい!お前達大丈夫か!?」
「ごほ、ごほッ。は、はい。リアさんが庇ってくれたみたいで………、う、うちは軽症です」
「リアが!?おいッ!リア、リア!」
リアのダメージは深刻だった。呼びかけに答えず、意識を失っている。口の中が切れたのか、内臓からの出血なのかは不明だが、口角から血が流れ出ている。左腕にいたっては、曲がってはいけない方向に向いており、肌が露出している部分は傷だらけだ。
「くッ。り、鈴空様。一旦、退却せな、こ、このままじゃ、じりひんや」
確かに西華の言う通りだ。リアを早く、治療できるどころへ運ばなくては。しかし、やつらが、僕達を見逃してくれるのか?
「ふふっ。健気なコですね。仲間を守って自分が傷だらけになるなんて。私達を侮辱したこと、ゴルゴーン様に立てつこうとしたこと、その身をもって償いなさい」
ダメだ。逃げられる状況じゃない。でも、このままじゃリアを助けられないばかりか、全滅だってありうる。
どうする?どうする?どうする?どうする?どうする------!
考えろッ!今、まともにい動けるのは僕だけだ!この場をやり過ごす作戦、全員が助かる方法。
………。
ダメだー!全然、思い浮かばねー!完全に蛇に睨まれた蛙状態だー!
「さぁ、これで終わりよ!」
魔法『アース・ラール』、『ミスト・ラール』
「噛みちぎりなさい。ヴァナライア・クイーン」
さっきと同じ戦法で、リュアレの攻撃が僕達目掛けて押し寄せる。ただ、今回は尻尾攻撃じゃない。巨大な大蛇が口を開けて襲ってきた。僕達は、またしても身動きが取れない。
「くそ。このままじゃ………。せ、西華。リアと一緒に僕の後ろに隠れろ」
僕は決心した。今、このパーティーで唯一ヤツの攻撃を耐えられる可能性があるのは、僕だけだ。前衛壁職。僕の柄じゃない。だが、今はそんなことも言ってられない。
「西華。相手の魔法が止んだら、紗月に火魔法を付与してくれ!」
突進してきたヴァナライア・クイーンの鋭い牙が僕の左腕に突き刺さり、噛みちぎろうと物凄い力で引っ張ってくる。と同時にリュアレの魔法の効果が切れ、西華は火魔法を唱える。
魔法『火憐』
紗月の刀身が燃え上る。
花龍式『唐花・火纏い』
グゴァァァ!
僕は、左腕に噛みついていた、ヴァナライア・クイーンの胴体目掛けて、斬撃を飛ばした。火を纏った斬撃は、ヴァナライア・クイーンの胴体を真っ二つに両断し、切り口から発火した。
「俺の腕の味はどうだったよ?蛇の女王様。お前らのほうこそ、リアを傷付けたことを、その身をもって償え」
どうにか、蛇退治はできた。あとは、リュアレだけだ。だが、既に、僕らは満身創痍だった。ヴァナライア・クイーンに噛まれた僕の左腕は、ジャージのおかげで傷はないが、打撲のような痛みが残り、腕が上がらない。そして、まだ慣れない花龍式の剣技発動で、僕の体力は限界に近い。西華は、2回の魔法の発動と、初撃のときのダメージ蓄積で、もう動けそうにない。
「ま、まさか、ヴァナライア・クイーンまで殺られるとは。それと、お前の異常なまでの防御力………。ふむ。やはりお前達は、ここで私が始末する。出る杭は打つ。それも早めが良いだろう」
ここまでか………。僕にしては、最後まであがいたよな。リアと西華を守れないのが、心残りだが、十分やったんじゃないか?今までの僕に比べたら、成長しただろう。
「最後にお前の名前を聞いておこう」
あぁ、出たよ。お決まりのセリフ。そのセリフはむしろ、僕が使いたかったんだが。
「紗月、紗月鈴空だ………」
「紗月鈴空。お前の防御力を鑑みるに、残念だが、私達の攻撃では、お前を仕留めることはできない。だがら、お前を石にして、始末したとする。そこに転がっているデミヒューマンの娘達もついでに石にしてやる」
え?石に?それってつまり、石の中で一生生きろってこと?それだけは嫌だ。虚しすぎる。生きながらにして死んでるじゃん。
あっ、そうだ!ジャージを脱いで殺してもらえばいいんじゃない?防御力0ならどんな攻撃でもダメージ入るだろ。って左腕動かねー!脱げないじゃん………。
「メデュー、ステーノ。少し離れていなさい。光の範囲に入ってはダメよ」
「はーい、姉様!」 「はぁい。わかったぁ。ふぁぁぁ」
「私は、普段目を閉じている。その理由を今教えてあげる。これが、私のスキル『石曜眼』。開眼すると、光を放ち、その光に触れたものを石にする。だから、普段は妹達を巻き込まないように閉眼させている。目を開けるのは、久しぶり。3人とも、私を恨まないでね」
リュアレの瞼が徐々に上がっていく。瞼の隙間から、光が零れ、僕達の身体に降り注がれる。そして、身体の末梢から、徐々に石化が始まった。
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