ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第十四話:崩壊
「さて、前代未聞、毎年恒例、門外不出、ストラグルの活動をはじめましょう」

「突っ込みどころが多すぎるよ……」

その翌日、駅前で待ち合わせた東子と廉はいつもの公園で待ち合わせていた。

昨日の夜中も廉一人で町中を回ったが、アームズによる戦闘の気配は無く、死傷者や行方不明者の報道も入らない。

今までが異常だったのか、それとも昨日が特別なのか、判別はつかないが、ともかく二人は肩を並べて街中を歩く。

「……でね、なんかあの絵を描き上げるまで眠れなくて徹夜で描き上げたんだけどさ、全然眠くないのよ。これは私の中で何かが目覚めたに違いないわ」

「できればあの絵は永遠に闇に葬ってほしいんですがね……」

「それは無理ね。あの絵を破っても寸分違わない同じ絵を描ける自信があるわ」

道中こんな会話をしていると、突然東子が足を止める。

「……?」

数歩先に進んだ廉は後ろ歩きで戻り、東子のほうを伺う。

東子は少しボーっとしていたが、廉の視線に気づくとすぐに前に向き直って歩き始める。

東子が先程まで見ていたのはジュエリー店のショーウィンドウで、廉には何を見ていたのかはわからないが、どういう意図で見ていたのかは予想がつく。

そこに並ぶ装飾品は一様に高く、最低でも五万を越えるという高校生の廉には遠く及ばないほどの金額であった。

しかし、それでも廉は東子を呼び止める。

東子も廉の意図に気づくが、いくらなんでもこれほどの値段のものをねだる関係でもない。戸惑ったように不分明な表情になる。

そんな東子に廉は笑いかけ、右手を顔の前に握り拳で出す。

「さて、ここにあるのは種も仕掛けも満載な右手でございます。なのでこれからどんな不思議があったとしても苦笑いとまばらな拍手をお願いいたします」

廉はマジシャンのような口調で早口のまままくし立て、左手に持ったハンカチを右手にかぶせる。

「さて、ここに現れ出でるのは中国もびっくりなパチモンです。なのでぬか喜びは承知の上で、ワン、ツー、スリーっと」

そして、ハンカチで隠した手の中にアービティアリィ・ハッカーを出す。

東子は途中で廉が何をしたいのか気づく。

いくら装飾品が高くとも、(ものにもよるが)原材料自体は金や銀などが主である。

そして、廉の腕輪や首輪、足輪もさまざまな金属が混ぜられてできている。金や銀も例外ではない。

「東子さんがどれを見ていたのかはわからないのであくまで俺のセンスで作りましたが……どうです?」

ハンカチを取り去った廉の右腕には、百円ほどの大きさの盾の上に交差した剣という形状のペンダントがあった。

手作業や機械とは比べほどのならないほど精密な動きができるアームズで作られただけあって、全く歪みが無く、きれいな黄金比を表現している。

廉がペンダントを東子に手渡すと、東子は目を輝かせながらそれを首に提げる。

「すごーい……。ここまで精巧に作れるなんて、職人さんも号泣だね」

子供のように喜ぶ東子に、廉は自慢げに力こぶを作る。

「アービティアリィ・ハッカーを舐めてもらっちゃあ困りますね。やろうと思えば東子さんが見てたものと同じものだって作れますよ?」

そう言って廉は東子が見ていたショーウィンドウに視線を移すが、東子は首を横に振る。

「ううん。これで良いよ。……やっぱり手作りって良いね」

手でペンダントを弄びながら嬉しそうに呟く東子に、廉は意味不明の気恥ずかしさを感じる。

「(……にやっ)」

そしてそれに気づいた東子が出会ったときのお返しだとばかりに追撃を放とうとする。

「や」

「東子さん!!」

しかし、その言葉は中途で止められる。

廉とて、恥ずかしいからという理由で無理に言葉を遮ったりはしない。

問題は、この道から僅かに離れた位置に広がったアームズの空間である。

東子も浮ついた気分を戻し、走り出した廉を真剣な顔で追う。

……しかしそれでも、不満は消えない。

「(……人の恋路を邪魔する奴なんて、馬に蹴られちゃえばいいんだっ!!)」



































今廉達が向かっている空間内では、二人の男女が向かい合って戦っていた。

片方は二十過ぎの会社員風の男性で、もう片方は廉よりも年下の、中学生ほどの少女だった。

本来なら少女は成す術も無く負けてしまうのだろうが、今の戦況は予想の真逆をいっている。

「くそっ……畜生!!」

「ほらほらどうしたの!?少しぐらいあたしに傷でもつけてみなさいよっ!」

男のほうのアームズは右手だけに発現し、代わりに本来の腕の二倍ほどの長さと大きさを誇っている。

対して少女のアームズはマネキンのような手に紐状の触手が巻きついた形となっている。少女はそれを使って男を一歩も近づかせずに圧倒している。

右手だけのアームズということで二方向から不規則な動きで飛んでくる触手を御しきれず、ついにはアームズの無い左手に触手を巻きつけられる。

「ぐ、ああっ!!」

メキィッ!

男の左手はメキメキと音を立てて拉げて行く。

それにつれて男の顔も苦痛に染まり、目を見開いて涙を流す。

バキィッ!

「が―――!」

少女は特に表情を変えることなく、男の手首を千切り取った。

手首はそのままポロリと地面に落ち、傷口から冗談のような血液が噴射される。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ――――――――っ!?」

信じられないほどの激痛と目の前の光景に、男は止血も出来ずにただ叫ぶ。

男は、平々凡々な人生を送っていた。

学歴も誇れる所は無く、公立の小中高、そして中堅の大学、安定性を求めて就職した市役所。不満は無かったが、若干寂しい気もしていた。

しかし、自分の力では現状を打破で気はしないとわかっていたし、そのために危険な橋をわたる気もしなかった。

なんだかんだ言って自分は平和で同じ事の繰り返しの日常を愛していたのだ。

しかし、そんな日常は一週間前に消え去った。

突然右手に現れたアームズ、狂気の笑みを浮かべて襲いかかってくる同じアームズの持ち主。

そこで彼は一線を超えてしまった。

正当防衛だなんて言い訳は聞かない。殺さずにすむ方法はいくらでもあったのだから。

実力的には拮抗してはいたが、結局は彼のほうが上で、後半は彼が一方的に押していたのだ。

だが、その時の彼に止めるという選択肢は無かった。極限の状況に置かれ、愉しくなって来てしまったのである。

背中を向けて逃げる相手を無情にも突き刺し、壁に叩きつけ、必要以上の止めまで刺してしまった。

正気に戻った男はその場に崩れ落ちたが、これは悪い夢だと現実逃避をして、その場から逃げ出した。

幸い、といっていいものか、警察は男が犯人だとは気づかず、一夜の悪夢として男は日常に戻ることが出来た。

……という幻想を抱いていたのだ。ほんのすこしまで前は。

男は人を殺し、あまつさえそのことを忘れようとした罰だと、今は半ば達観した精神で受け入れ、諦めていた。

目の前の少女はかつての自分のように、愉しそうな笑顔を浮かべながら触手を自分の首に巻きつける。

そんな事をしなくても、放っておいただけで出血死するというのに……、どこまでも自分と重なって見えた。

だからといってどうすることも出来ない、血を失ったことによって朦朧とする意識の中では何も考えることも出来ない。

ぐっ、と自分の首に圧力がかかるのがわかる。恐らく数秒後には首と胴体は切り離されてしまうだろう。

しかし、いくら待っても自分の生に終わりを告げる痛みは訪れない。

その上、自分の思考能力さえ復活してくる。

ぼやける視線で目の前を見ると、人影が二つ、自分の前に立っていた。

「はは……」

男は、若い頃見た漫画を思い出した。

――消し様の無い罪を犯し、その罪を悔やむことすらしなかった自分には到底似合わない正義の味方の姿に、男は見えた。

そこで男の意識は絶たれた。



































「だ、大丈夫なのかな……」

廉がアービティアリィ・ハッカーで治してすぐに意識を失った男の姿を心配そうに見る東子に、廉は心配無いと告げる。

実のところを言うと、廉は傷を完璧に治した後に無理矢理意識を刈り取った。いくら死にかけていたとはいえ、彼までも好戦的でない証拠は無い。

それより問題は相対する少女のほうである。

「なによあんたら……、邪魔しないでくれる?」

見るからに好戦的な表情を浮かべながらアームズをこちらに向けてくる。

本来なら廉がアームズで戦うのだろうが、今の主役は違う。

「あ、あのっ!話を聞いて下さい!」

廉の前に東子はアームズすら出さずに出る。

胸の前で手を握り、真摯な視線を少女に向ける。

「お願いです。貴方が何をやっているのか、もう一度考え直してください!」

既に少女のアームズの射程範囲内に入っているにもかかわらず、臆せずに続ける。

「たとえどんな願いをかなえてもらっても、貴方が犯した罪は一生消えないの。一生背負いつづけなければ行けないのっ!!」

悲痛にすら聞こえる東子の叫び。

廉はそれを後ろで聞きながら少女の反応を見る。

「は?だから何よ。難しいことばっかくっちゃべってんじゃないわよっ!!」

……東子の嘆願も、何一つ響いていなかった。少女は東子に狙いを定め、触手を絡めようとする。

途中までは聞く気はあったのだろうが、聞いて尚東子の言葉を破り捨てた。

それでも東子は次の言葉を紡ごうとするが、喉に巻きつく触手がそれを許さない。

「うっ、くっ!?あ……!!」

ギリギリと気道を塞がない程度に力をこめ、少女は嗜虐の愉悦を浮かべる。

今東子はそれなりに危機的な状況に陥っているのだが、まだ廉は動かない。動くときではない。

「ははっ!!あんたなんてその程度よ。このあたしに逆らおうなんて百年早いのよっ!」

東子が苦悶の表情を浮かべ、悶える度に少女は笑みを深める。

「この力があればあたしはもうわずらわしい人生に悩まなくてすむ。誰も、あたしに逆らうなっ!!」

「う、あ……」

首を絞められながらも、東子は少しずつ、搾り出すように声を出す。

「たたかわ、ないで……」

生殺与奪件を向こうに握られているにもかかわらず変わらない東子の意思のこもった視線に、むしろ少女のほうが押し返される。

その目が、そして何よりその目に気圧されてしまった自分が気に入らず、少女は恐れを敵意で覆い隠す。

「きゃっ!?」

首を縛っていた触手を振りまわし、東子の体を近くの塀に投げつける。

背中から叩きつけられた東子は肺の中の空気をすべて奪われ、軽い呼吸困難に陥る。

そこへ少女は再び触手で縛り上げ、自分の目の前までぞんざいに引っ張り出す。

「……これでもまだ戦わないっての?」

東子の前髪を掴みあげ、少女は顔をつき合わせる。

暫く息が出来ずに喋れなかった東子だったが、それでも意思のこもった目に揺らぎは無い。

「あなたに何があったかは解からないけど……。いつも、いつだって、破壊や逃げ出す以外の選択肢はあるはずなのっ!!」

東子の叫びが少女の触れてはいけない部分に触れてしまったのか、少女の表情が威圧ではない、本当の憤怒の表情に変わる。

「こ、の……。偽善者が、知ったような口をきくなあぁぁぁぁぁぁ―――――――っ!!」

全身余すことなく触手を巻きつけ、少女は手加減無く力をこめる。

アームズの力の前では人間の体はすぐに蛋白質等の化合物と化してしまうだろう。

少女は死神の手に触れたときの東子の表情が楽しみになり、狂気で鮮烈に彩られた笑みを浮かべる。

「……生憎だが、貴様程度の虫けらに東子さんを殺させるわけには行かない」

しかし忘れては行けない東子には後ろに控えたナイト……もとい廉がいるのだから。

触手は中途でアービティアリィ・ハッカーから伸びた刃に断ち切られる。

そしてそのまま廉は東子の前に出てアービティアリィ・ハッカーを構える。

「……えほっ!廉……、戦っちゃ駄目っ!」

後ろで東子がそう言うが、元々こちらから仕掛ける気は無い。

あくまで防衛以外の武力を振るうつもりは無い。武力以外はふんだんに使わせていただくが。

「東子さん。交渉や説得といったものはまずテーブルにつかせることから始まります。交渉の席を蹴り飛ばすような相手に説得なんて意味ありません」

それを聞いた東子はでも……と渋るが、廉は無視する。

確かに、東子の説得で意思を翻してくれるのなら廉だってその方がいい。しかし、だからといってそのために東子の命を消費させるわけには行かないのだ。

「あははぁっ!なによ、戦うななんて言っておいて結局は守ってもらうわけぇ?とんだ臆病者の偽善者だわ」

侮蔑の視線を向ける少女から守るように廉は立ちふさがる。

廉は少女に負けない程の敵意や殺意を込めた視線を少女に向け、叫ぶ。

廉としても、色々耐え兼ねていた所だ。

「はっ!重圧から逃げ出した人生の落伍者がそれを言うか。笑わせるなっ!」

廉らしからぬ乱暴な言いぐさに、背後の東子が息を飲む音が聞こえるが、廉は意図的に口汚く罵る。

自分でもこのような台詞が似合わないのはわかっている。だが、今やめるわけには行かない。

「大方アームズを手に入れて自分は選ばれた人間だとかと自惚れているのだろう。ふざけるな、そんなもので日常は壊せはしない!」

廉の一言一言に少女の眉は釣りあがり、最後の叫びで臨界点を越える。

「……この、下等生物がぁっ!!」

両手のアームズを前に突き出し、感情の爆発のまま多くの触手を廉に差し向ける。

その速さは感情の発露と同時だけあって廉にとってはかなり速く感じる速度だが、いかんせん直線的な攻撃ではあたるはずも無い。

「アービティアリィ・ハッカーッ!」

刃に変えた腕輪で放たれた触手を次々に切り落とす。

どうやら触手は特に腕の部位に対応しているわけではなく、触手をいくら傷つけても少女のほうにダメージは無い。特殊能力の一種なのだろう。

しかし、いくら切り落としたところで触手の量が減る様子は無い。だんだん廉も対抗しきれなくなってくる。

「はははぁっ!この鈍亀がぁ!!」

「ぐっ……!?」

そして遂には両手のアームズに触手を巻きつけられ、吊り上げられる。

「廉っ!?」

廉は解こうとアームズに力をこめるが、びくともしない。

東子は立ちあがろうとするが、体に走る痛みが阻害する。

次に少女は別の触手を腕から生やし、廉の鳩尾に思いっきり叩きつける。

「がっ……!」

触手に拘束されているために衝撃を逃がすことが出来ず、もろにくらってしまう。

それを見た東子が痛みをこらえて無理矢理立ちあがるが、廉が視線で来るなと制す。

「偉そうなこと言っておいて……。ざまあないわねっ!!」

少女は触手で廉の体を振りまわし、近くの喫茶店の中へにたたきつける。

ガシャァン!!

窓ガラスを叩き割り、店内の椅子を砕きながら廉は吹き飛んでいき、見えなくなる。

すぐに東子は廉の下へ駆け寄ろうとする、が、少女の触手はそれを許さない。

「きゃっ……!?」

走り出そうとした足を触手に取られ、前のめりに顔面から地面に倒れてしまう。

その間に少女は東子に近づき、起きあがろうとする東子の腹部を蹴り上げる。

「げふっ!?」

そのまま仰向けに転がされ、その上に少女は跨ってアームズの手で首を押さえつける。

「ふふ……?貴方の彼氏は全然役に立たなかったわねぇ。どう、守ってくれるナイト様がいなくなった気分は……?」

咳き込む東子に、少女は暗い笑顔を浮かべながらギリギリと手に力をこめる。

少女としては東子の強気はいざというときに廉が守ってくれていたからこそのだと思ったのだろう。廉という盾を失ってどんな反応を見せるか、彼女は楽しみで仕方が無かった。

……しかし、東子は彼女が思ったほど弱い人間ではなかった。

「……それでも、私のやることは変わりません……!!」

東子の眼光に全く揺らぎは無く、むしろ強くなった視線で少女を射抜く。

少女が少しアームズに力をこめれば首が千切れるという状況で東子は少しも震えずに言葉を紡ぐ。

「戦いを止めてください。私の言いたい事は最初から最後までそれですっ!!」

決して怒鳴っているわけではない、しかし東子の感情がこもった言葉に少女のほうがたじろいでしまう。

「な、なによ……。恐れなさいよ、怯えなさいよ!命乞いをしなさいよぉっ!!」

これは脅しじゃない、と言いながら呼吸が苦しくなるほどに首を絞めるが、それでも東子の眼光は揺らがない。

「ぅ……えほっ!……戦わ、ないで……!」

「……黙れ、黙れ黙れ黙れぇっ!!」

少女はアームズを使わず、両の拳で東子の顔を殴りつける。

所詮少女の力では殆どダメージは無いが、それでも何度も殴られれば青痣も出来るし唇も切れる。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――っ!!」

そして最後に思いっきり振り上げた右手で殴りつけ、東子から離れる。

調子の外れた笑顔を浮かべながら後ろに数歩歩く。

東子は殴られたせいですぐに起きあがることは出来ずに、少しだけうめいている。

「ふふ、そうよ……。私は間違っていない、私が正しい、私がすべてなのよ……!!」

両の手で自分を抱きしめ、自分に言い聞かせるように呟く。

しかし、そんな自己暗示はすぐに砕かれる。

「――いや、君は負けたんだよ。東子さんに、精神的にね」

ザリッとアスファルトの擦れる音を聞いた少女が振りかえると、そこには無傷の廉が佇んでいた。

「なん、で……?」

戸惑う少女を無視し、廉は東子に近寄り、傷を治す。

「あり、がと……」

礼を言う東子に軽く笑いかけ、その後に冷たい表情に戻して少女を睨む。

「予想通りだ、君のような人種は焚き付ければ物理的の勝利だけでは満足できなくなる。そうすれば言葉で叩き伏せるために東子さんと話してくれると思っていたよ。……でも、君じゃあ東子さんには敵わない」

蔑んだ視線で少女を見る廉に、多少声を裏返しながら反論する。

「ふ、ふざけないで、私のどこが間違っているのよ。どこが間違っているっていうのよっ!!」

しかし、彼女の精神はもう既にまともな論理を組み立てられる様にはなっていなかった。

そんな彼女に出来ることといえば、幼子のように腕を振りまわして暴れることだけだ。

今までのとは比べ物にならないほどの触手を生み出し、その全てを廉に差し向ける。

「……ふぅ」

「――――――ッ!!」

しかし、それでも慌てない廉に、彼女は声にならない叫びを上げる。

「……全く、何もわかっちゃいないな」

触手は廉に襲いかかり、四方八方から鞭の様に叩き付けられる。

「廉っ!」

東子は叫ぶが、やはり廉は全く慌てない。

少女のアームズなら、廉の体は原型をとどめていられるはずは無い。

「え――?」

……はず、だったのだが。

触手は廉の皮膚の上で止まり、全くへこみもしていない。

少女は触手に力をこめるが、廉の体を傷つけることは出来ない。

「そんな……そんなはずは無い!!」

少女は何度も何度も触手を作り直して叩きつけるが、やはり廉の体には傷一つつかない

そんな愚かな少女に、廉は嘲笑を浮かべ

「忘れたのか?アームズの原動力は感情だ。……自分の精神の芯すらあやふやな君に、人を傷つけるほどの感情なんて生み出せないのさ」

「う、あ……?」

精神的にも物理的にも叩き伏せられた少女は膝から崩れおちる。

しかしそれでも廉は全く哀れみを与えない。

「君はもう、アームズを使えない」



氷雨:やっほーいっ!!ようやくまともな出番だーっ!!

楓:可哀想な子……

鳴神:気持ちは解からなくも無い自分が嫌だわ……

廉:……ふむ、別に出番なんて喜ぶ事じゃないだろ?俺なんて出るたびに酷い目にあってるんだから

氷雨&鳴神&楓:それは嫌味かっ!!

廉:ハモるなお前ら

鳴神:ふふ、そうよねぇ……東子ちゃんがいなければ今ごろ私はまともに出番があったはず……

楓:うん、確かになる先輩のいう通りですよね。あの新参の小娘め、メインヒロインの座に居座りやがって……!!

廉:落ち着け

ユーディット:そうよ、大体メインヒロインは私のはずよ?

鳴神&楓:……なんですって?

廉:だからハモるなと

ユーディット:だってそうでしょう?私は廉が唯一情愛を向けた女性だし、劇的な再会を終えて廉の行動の指針を与えたし……。ほら、出番だけの女と出番すらない女に比べれば私がメインヒロインに決まっているじゃない

廉:普通、俺の前でそういう事はいわないもんなんだがな……

楓:廉っ!!煤けてないで誰がメインヒロインなのかすっぱりと言っちゃいなさい!!

ユーディット:訊かなくても解かる事でしょう?全く胸の大きさと脳の大きさは比例するのかしら?

楓:なんですってこの無駄乳がーっ!!

ユーディット:あら、このウェストのくびれも見えないのかしら。あらあらごめんなさいね、この大きな胸が邪魔過ぎて見えなかったようね

楓:キィーッ!!

廉:あー…、繰り返し言うが、このユーディットはフィクションであり、実際の人物とは何ら関係なんで注意してくれ。むしろフィクションじゃなかったら俺がへこむ

氷雨:で、廉。結局メインヒロインは誰なんだ?

廉:うわっ!?まだいたのか……

氷雨:それは酷すぎるぞ廉……

廉:……す、すまん……

氷雨:で、話を戻すけど、結局誰がメインヒロインなんだ?

廉:ん、今は色恋に現を抜かしてる余裕なんて無いからな……、下手をすれば一生独身って可能性も、ある

ユーディット&楓:んなラブコメの主人公にありがちな硬派な台詞はいらねぇんだよっ!!

廉:……絶対お前ら仲良いだろ

鳴神:……そうよね、やっぱり主人公との絡みが無い私は日陰者なのね……

(東子登場)

東子:な、なんですか……?この雰囲気は

ユーディット&楓&鳴神:諸悪の根源が来やがったなっ!!

東子:ひっ!?

廉:だから落ち着け言うにっ!!

氷雨:(・∀・)

廉:これ以上混沌とさせるんじゃないっ!!

(廉、力ずくで色々と排除)

東子:え、えーと……誰もいないから次回予告して良いのかな……?

しーん

東子:あ、これが台本か……うっ!?

東子:…………………………………………………………
……………次回『解錠、開かれた扉』……


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。