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カルマがランドに赴いた影響25

「頼りにして下さるのは有り難く。しかし…………。我が君、何故ご叱責なさらないのですか?」


「何をでしょうか」


「今日、カルマが貴方様を捕らえようとした時、(わたくし)が動かなかった事をです」


 くぅうううっ。

 何故叱責しないかって?

 つついちゃいけないヤブだと思ったからだよ。


 くそったれが……下手な事を言えば、私がお前をどの程度信頼してるかモロにバレるだろうが。

 ……もうバレてそうだな。


 話が終わったと思って安心したらコレ。

 何とか誤魔化したい。

 何も分かってない振りをしろ。


「そう、なのですか? 三将軍の動きに注意を向けていたので気づきませんでした」


「……理由をお聞きにならないので?」


 ……胃が痛くなりそう。

 流してくれるつもりは欠片も無さそうだ。


「もし教えて頂けるなら。私に足りない所があれば直したく思います」


 謙虚な、警戒心を呼び起こさない答えだっただろうか?

 短時間で状況が二転三転して頭痛がしそうだぜ……。


「緊急の時にダン様がどのように対処なさるかを見たかったのでございます。天に誓って申し上げます。もしも捕らえられた場合には交渉し、必ずやお助けするつもりでした。どうか、お許しを」


 ……ついでに、恩を売りたかったってか? それに天に誓ったからって本当とは限らん。

 と、考えるのもきっちり想定してあるのだろうね。

 

 だが、動機は本音に聞こえる。

 それを正直に言うのは、信頼されてる証拠とも言えるが……。


 ぬぐあぁぁああ……。

 なんで一般人の私が、歴史を作っていきそうな謀略家の卵と読みあいしなきゃなんねーんだよ。

 無理無茶無謀じゃねーかふぁっくあっぷ。


 せめて事前に考える時間が欲しかった……ってもう何秒リディアを待たせた? ああ……もう……。


「試すのは、やめて頂きたいですね。バルカさんの試しに私が耐えられるとは思えません。もしも捕らえられた時には、正直に言いますとバルカさんだけが頼りでしたので、そう考えて頂けていたと聞いて安心できました。有難うございます」


 草原族に待機させていたのは知る由もあるまい。

 今日、笛を吹く羽目にならないで本当に良かった。


「……真に、恐ろしい方です貴方様は。どうかお許しください。出来心だったのです。この罪は、必ずや功を立ててつぐないます」


「許すも何も、元よりあのような場面で私を庇うのは貴方の仕事とは言えないでしょう? 後で助けて下さる為にも自分を大事にして下さらないと困る位だったのではないかと」


「いいえ。声を出してカルマを止めるなり幾らでもやり方が在りましょう……もしも再び同じような事態が起これば、必ずやこの汚名を返上致します」


 汚名じゃないつーに。

 ……この感じ、私があの時リディアが助けてくれるとは欠片も思ってなかったのがバレてそう。


「私としては、バルカさんに見捨てないでくださいと願うのみです」


「許す。とは仰って下さいませんか?」


「あの、許さないといけない事は何も無いと、さっきから……いえ、はい……分かりました。あの時私を助けようとするのが遅れたのを許しますバルカさん。また危険な時がありましたら、上手く助けて頂ければと思います」


「はっ。主君のご厚恩に臣、身を粉にして報います」


 リディアはそう言って頭を下げた。だから、頭を……下げないでくれ表情が……いや、もういいっス。

 これで、やっと帰ってくれ……ないの?

 ……。


「あの、バルカさん、まだ何か?」


「はい。明日カルマ達がダンの案を受け入れたとして、全体の指揮は誰が?」


 あー、名前を呼び捨てにされてかつてこれ程安心感を感じた事があっただろうか。いや、ありえない。

 しかし、そっか明日の話をしないといけなかったな。えーと、指揮は……。


「私としてはバルカさんに執って頂いて、経験を積んで頂ければと思っていました。難しいですか?」


「正直に申し上げて期待しておりました。しかし、彼女達の生死を分かつ一戦の指揮を経験の浅い小娘にとらせるのはかなり反発が予想されますぞ」


「経験が浅いと言ってもバルカさんですし……貴方でしたら上手くやると考えました。それに貴方の慎重さならば、グレースさんへ確認を求めるのでしょう? であれば遺漏は起こり得ないと……おもうんですけども」


「……反発は……いや。承知いたしました。ではそのように」


「ああ、これは私がグレースさんにお願いします。その程度しか出来ませんから」


「通常主君は臣下に泥を被せ、自分は人に恩恵のみを与える物。なのによろしく御座いますか?」


「実行部隊である皆さんの関係が悪ければ、物事がうまく運びません。きっとこの方が良いですよ」


「……御意のままに。感謝いたします。所で一言言上が」


 言上……。

 すー。はー。すぅぅううう。はぁああああ。


「はい。何でしょうか?」


「若輩者をほめ過ぎで御座います。(わたくし)が世の中を舐め切ってしまったらお困りでしょう?」


 ……。


「はぁ、えーと。……貴方は十歳の頃から褒められていたように記憶していますが、世の中を舐めた記憶がおありですか?」


「いいえ」


 じゃあなんでゆーたんねん。


「何もそのような顔をなさらずとも。我が君に構ってほしいという可愛い臣下の声ではありませんか」


「……それは失礼をしました」


「というのは冗談として、我が君は世にも珍しい程枯れたお方。経験の浅い(わたくし)が何か間違いそうであれば、御止め下さるのを期待している。そう申し上げたかったのです」


 冗談。枯れた……はそりゃまぁ、歳ですから。しかし……止める……。


「はぁ、まぁ、気が付きましたら。……所で、バルカさん。やっぱり我が君と言うのは止めません?」


「お断りいたします。我が君への敬意を欠きたく御座いません。付け加えますと、この程度の言葉には慣れた方がよろしゅうございます」


「はい……そうですね……」


 ごもっともなお言葉を残してリディアは帰った。

 ほんま……疲れました。

 とりあえず顔を水で洗いたい。


 しかし……あのリディアが私を恐ろしいだと?

 幾つか予想はしたが……それでか?

 それ程の事だっただろうか……。

 大体もしも予想を上手く当てられる賢者だとしても、私に実行力が無ければ意味は無い。

 所詮は庶民だ。リディアが恐れるような脅威とはならない。そう判断しなければおかしい。

 増してや臣下になる理由なんて。


 やはり分からん。

 何にしても、今日カルマ達の前で何もしなかった以上リディアは信用できる。

 今日よりも危ない橋を渡る予定は今の所無い。

 今日動かなかったのならもう動きはしないはず。


 カルマが私を取り押さえようとした時に動かなかったのは別にいい。

 もしもアイラが向こうに付いていたら、リディアが頑張ろうが無意味だろうし。

 あの時の反応で私を調べたいという考えも分かる。

 それで何か腹に抱えてると考えるのは、酷いこじつけだ。


 ……そう自分に言い聞かせても、自分より全てにおいて上の人間が何の含みも無く部下である訳が無いと考えてしまう。

 いかんな。これではリディアが言ってた自分に敵意を抱いた人々と一緒じゃないか。

 

 冷静に考えるべきだ。

 アイラさん、ラスティルさんが配下になると言ってくれた。

 彼女達はそう簡単には裏切らない人達だ。

 アイラさんに至っては同居してるのだから、その兆候は直ぐに把握できるしな。

 ならば、身の安全に不安はとりあえずない。

 である以上リディアには大きな信頼を置くのが最善。


 まぁ、それでも私の立場は不安定極まるが、後少し経てばずっと安定するだろう。

 ……よし。問題無いな。


 我が事ながら信じられない程上手く行っている。

 これで戦に勝てれば、多分今後カルマ達の動きに関与して更に諸侯達への干渉も可能だ。

 となれば、早く真田がどんな人間か調べたいが……ちと皮算用が過ぎるな。

 まずは明日。一歩一歩気を付けて動かなければ。


 あ、その為には外で待ってくれてるであろう草原族の人に、ジョルグさんへの文を届けて貰わないと。

 あっぶねぇ……リディアの相手をした疲れで寝るところだった。

 ずいぶん待たせてしまった。お詫びの酒壺を持って行くか。

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