カルマがランドに赴いた影響13
アイラが帰って来るまでは、今まで通り倉庫で仕事。
と思ってたら、リディアに呼び出された。
何かあったのだろうか? と思いつつ何時もと同じようにコッソリとリディアの屋敷に行く。
ちょっとリディアの表情から、情報の良し悪しを推測しようとしてみたり。
……無駄でした。分かってました。すみません。
下らない考えを捨てて、リディアの話を清聴するとしよう。
「お呼びしたのはカルマからの文が私の所へ来たからです我が君。それで対処法を考える為にご足労を願いました」
「あの、それは良いのですが……その我が君という呼び方、もしかして気に入りました?」
「はい。我が君の落ち着きが無くなるご様子でしたので。ま、そのうち慣れましょうぞ我が君。我が君、そのように表情を動かして如何なさいますか。我が君はトーク姉妹と渡り合わなければいけないのです。我が君が内心を悟らせないのは我が君の策を成功させるためには重要ですぞ我が君」
……でぃーす、冷徹臣下、そー、はーど。
いえ、こういう人だってのは分かってましたけどね。
他の人間なら煽られてるだけだと思って、フレンドリストから削除なんだけど……なんかこー、なんかこおおお、追い詰められてるような気しかしない。
不快感では無く不安感だけが増している。
一文字違いで大違いだぜ。
所で、気の所為かもしれませんが貴方様すっごく喜んでませんか?
いえ、私の反応ごときで喜んで頂けるのはとても幸せな事だと思います。きっと。多分。めーびー。
……いや、喜んでるのだろうか? やっぱり分からない。
「呼び名程度で狼狽えないように精進します……。それで、カルマからの文はどんな内容だったのでしょうか?」
「現在の状態とその相談。それに加えてマリオ・ウェリアの領土から聞こえて来た自分への悪評への対処法を聞いて参りました」
「あ、思ったより遥かに早く気付きましたね……いや、思ったよりも噂の広まり方が早かったと言うべきか」
「マリオの領地はランドに近いですからな。しかし、ここまで噂の広まりが早いのならばカルマを呼び戻すのを急ぐべきかもしれませぬ。アイラを待っていては、どうしようも無くなる可能性も出てきかねない」
「いいえ。アイラ様を待ちます。彼女が向こうに付いては暴力だけで何も抵抗出来なくなりますから」
「ふむ。カルマが生き残っていくためには私の協力も必須ですし、私だけでも何とかなるのでは? それにラスティル殿もこの状況ならば向こうに付く可能性は低く思えます」
確かにね。
だがラスティルさんは話し合いの場に居させたく無いんだ。
彼女はまだ客将、何時出て行くか分からない状態だ。
その時に真田の所へ持って行かれる私の情報を増やすのは不味い。
「仰る通り。しかし、駄目です。アイラ様が帰って来てからでも間に合う公算の方が高いでしょう?」
「それはそうですが……。カルマ以下全員よりもアイラ個人が重要だとお考えか? 不可解ですな」
ま、そりゃそーだな。
しかし、重要だ。
彼女と数年一緒に暮らして分かった。彼女は五感の全てが動物並みだ。
護衛として最高の存在だと確信した。
それに彼女がその気になれば、何時だって私の首は吹き飛びかねないのだ。
何だったらカルマ達が皆殺しになって、アイラだけが私に付いて来てくれる結果になっても一向に困らん。
他の所で最高の護衛と一緒に暮らしつつ、情報を集めるだけ。
ふ、夫婦みたいにな。
ゲヘヘヘヘヘヘヘ。
と言うのは勿論冗談である。
肘鉄を食らうとよく言いますが、彼女の肘鉄は多分私の心臓を爆発させる。
生き死にを掛けて女性を口説くような勇気はありませぬ。
トラックの前に飛び出して告白なんて無理っす。
何が百一回目だ。そんな痛々しい告白を思いつくメンタルだから振られるのだ。せめて髪を切れ。
ハンガー振り回してれば絶対にもっと若い美人と結婚できたぞ。なんでそうしないんだ。
……おっと、どうでも良い妄想をしてしまった。
さて、彼女の重要性は私の目的に合ってるだけで、普通ならおかしいのは間違いない。
どう言い訳した物だろうか。
……劉備でいいか。
「私は彼女と最初に約束しました。その義を果たしたいのです。例え人が私を裏切ろうとも私が人を裏切ることはありません」
うむ。
正に君子。
私カッコイイ。
「……我が君、あまりに下手な言い訳で御座います。大体今貴方様がなさろうとしてることは多くの人が裏切りと言いますぞ? ……どこでその嘘くさい言葉を聞きかじったので? 私は今人生で初めて人の言葉で寒気を感じもうした」
おっと、そうだったね。
鋭い突っ込みごもっともっす。
創作物で知った言葉を適当に使うと恥をかくという見本になってしまった。
「……とりあえず、そんな感じでお願いします」
「致し方ありませんな。我が君の私に対する厚い信頼を感じ感無量でございます。まぁ、カルマ達がランドで皆殺しになっている間に、アイラを筆頭の将軍として領地を手に入れる方が簡単かもしれませんが……それともそれをお考えか?」
……こいつ、間違いなく天才だ。
鬼だけど。
略せば鬼才……なんだ、間違ってないじゃん。
「その手、考えていませんでいた。良い手かもしれませんね。でも、その場合はバルカさんが主君ですよ? 私は無名でよろしくお願いします」
「気が向きましたら」
あ、この反応は駄目かも……。
元からそんなつもり無かったからいいけどさ。
何にせよ全てはアイラが帰って来てからだ。
文の返信は方針を踏まえて適当に返すようにお願いして解散となった。
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カルマの文から一週間程が経ち、アイラが帰って来た。
今頃カルマはリディアも頼りにならぬとイライラしてるかもしれない。
すまんね。諦めてくれやカルマ。
今はアイラとリディアの三人で話し合いの場を持っている所だ。
「アイラ様、こちらがトーク様より送られて来た文です。アイラ様の方はトーク様の評判を聞けましたか?」
あ、顔見ただけで分かった。
凄い評判が流れてそうだな。
「うん……。ビビアナの近くだと酷かった。カルマがどれだけ酷い事を民にしてるか、とか。どれだけ今の若い帝王を苦しめてるかとか……」
「そうでしたか……これで私が嘘を言っていないと理解して頂けたと思います。では、こちらがあの時トーク様に渡した箱の中に入っている文章です」
内容はこうだ。
『トーク様の予測される将来の一つはこうです。
1.ザンザが死ぬ。
2.帝王の後見人となり、ケイ帝国で並ぶものなき地位を得る。
3.諸侯の嫉妬を買い、トーク様の悪評が全土に広まる。
4.諸侯が作る連合軍と戦い敗北』
これを読んだアイラとリディアは目を見開いて驚いている。
……うん? なんでリディアも? 殆ど貴方の予想通りでは?
「ダン、ここの帝王の後見人となるというのは……もしやカルマがあのランドでの事件の時に、帝王を保護すると予測していたのですか?」
うん。可能性はあると思ってた。
論理的にもあり得るし。
ただ、やっぱり飛んでる予測なのかな?
董卓が保護したという話を知っていたから、思考がそれに影響されたという可能性も否めない。
が、そんな正直に言う気は無い。
「まさか。前も言ったじゃないですか。最悪を予想したと。大体トーク様が一番高い地位に着かなければ大した問題にはならないのです。そして一番高い地位に着く為には帝王の後見人となるのが必須。だからこう書きました。しかしバルカ様がそう考えるのなら問題ですね。どうしてこんな風に予測したかをでっち上げておきます」
「……本当に? とお尋ねしても答えてくださらない、か……。この文章を見せた上で帰って来るべきだと言えば、カルマ殿が余程の愚か者でない限りは帰って来るでしょう。となれば、後はアイラ殿次第。如何されますかアイラ殿」
「……どうしても、ダンの指示にカルマ達が従わないと助けてくれないの? ダンがカルマ達の中で高い地位に着きたいというだけなら、僕は喜んで助けるのに」
「ああ、誤解されています。私は地位だの名誉だのには興味がありません。彼女達が私に従わないのなら協力しないと言うのは、そうしなければ死ぬからです。
トーク様達は辺境の領主としては優秀だと思いますが、今はケイ全土における戦乱の時代となっている。バルカ様のお話では、トーク様が帰って来てもほぼ同時に隣の領主が攻めて来る可能性が高いとか。
そんな時に私の考え、いえ、バルカさんの考えに従って動いてくれなければ生き残れるとは思えません。実際、今死にかけているでしょう? トーク様が決定権を持っていては怖い、それだけの話なんです。
まぁ、まだ余裕はあります。数日かけてお考えください」
ケイ帝国の誰であろうがそうなのだが、誇りだの名誉だのに行動が左右され過ぎだ。
そんな奴等に決定権を与えるなんて冗談じゃない。
私がリディアの判断を極めて信用するのは、彼女が誇りで決断を変えない人だと思うからだ。
なんせ、庶人である私の配下になるなんて言ったんだぜ?
人によっては屈辱の余り自殺した方がマシと考える真似を、軽々としやがった。
ありとあらゆる意味で震えたが、一番恐ろしかったのはそんな行動が出来る彼女の精神だったと思う。
「分かった。僕は、ダンの配下になる」
え。
「え……。こんなに早くお決めになるとは思いませんでした……。あの、念の為に言いますが、私の考えだとトーク様が私の提案を飲む確率は半分もありません。更に言えば彼女が拒否した場合、アイラ様がトーク様の下へ行かれては困ります。まぁ、止めようはありませんけども」
うお、なんで私が言い訳がましくなんてんねん……。
あまりにも返答が早かったから……動揺してしまった。
「? でも……僕が配下にならないとカルマ達は死ぬ。違う?」
「私とバルカ様の考えでは、です。私自身も絶対にそうなるとは言えません」
「うん、分かってる。実は、カルマ達の酷い話を聞いて帰ってくる時に決めてたんだ。……ただ、カルマ達がダンと協力する様に、そして協力した場合には生き残れるように頑張ってくれないと……僕は悲しい」
そこまでカルマ達が大事か。
人格者と言うべきかもしれない。だが余りに世渡りが下手だ。
……そういう人だと思って行動している私が言って良い事じゃないか。
結局私は私の出来る誠意を持って返すしか出来ないのだ。
その誠意も、私の都合が許す範囲まで。
……私も中々に出来上がって来たね。
クソ以下の匂いが漂って来た。頼もしい。
「分かりましたアイラ様。今回のトーク様に起こった問題を解決する為に全力を尽くすと誓います」
私は深く頭を下げつつ言った。
又もや物見櫓様より支援絵を頂きました。
なんと三枚ざます。
キャラ描写を捨てざるを得ない下手作者が居れば、イメージを絵にして送って下さる神絵師様あり。と言った所ですね。
前回と同じく物見櫓様のコメントからです。
まずは真田総一郎。
イメージとしては正統派主人公。
多くの人から好意を持たれやすいタイプのイケメン。武力もイケメン。
?「イケメンで強いのね! 嫌いじゃないわ! 嫌いじゃないわ!」
こ、こいつ……ベルトに、指ぬきグローブ……だと!?
ググったら、格ゲーの主人公が身に付けるからサマになるという意見がありました。
あ、こいつ□ック・ハワァドと剣があればタイマン出来る位強いって事にしても問題無いし、サマになるじゃん。
それに文化的におかしくても、オリ主チートで自分の服をオーダーメイドしたとしてしまっても問題無いから大丈夫ですね。
ちなみに文化的な問題で、イケメンエルフの彼は一部の男性からモテます。
全てにおいてごく普通の感性を持つ私はそういう設定を全く考えてませんでしたが、物見櫓様の熱い要望を感じたので今そう決まりました。
主人公からクソ以下の匂いが漂っているとすれば、彼からは薔薇の匂いが漂うと来たもんだ。
うほっ。上手い事言った。誰か座布団一枚ください。
しかし……マジこの真田はステータスって呟いて無双するのが似合う雰囲気を持ってますね。
外伝として真田総一郎物語を書きたい所ですが、全く書ける気がしない……。
次、カルマ・トークとグレース・トーク
作中で容姿がある程度書かれていたので描きやすかったが、カルマに関しては不安。
バイトソルジャーに似た髪形というと、私はシュタインズゲートの某キャラを想像したがあっちはバイト”戦士”だからなぁ。ソルジャーと意味同じだけど作者様のイメージの差異があったらすいません。
すまん。そう言う意味でソルジャーでした。ただ作中でこんな優しい雰囲気を出したのはグレースの前のみでしょうか。
一人称がワシだったらジジイかロリだろうと感じてしまう皆さまに物申す。
別に可愛いお姉さんが言ってもいいじゃない。人の上に立つ物言いを頑張ってるお姉さんとか素敵じゃない。と。
私のイメージとしても、こういう感じの美人姉さんがカルマさんっす。
グレースも私のイメージと合ってます。真面目な所為で苦労してて幸薄そうな上に育ちの良い感じが。
手に持っている竹簡は、地形が中国で植生も中国のつもりなので、竹が多かったらそりゃ木の代わりに使われるでしょう。と主張いたします。
しかし、真田もこの二人も手袋してますが物見櫓様は手袋が好きなのでしょうか? 美容は手の保護からというお考えはよく分かります。
最後にフィオ・ウダイ
フィオちゃんも容姿が髪型だけとはいえ書かれていたので、それ以外は私の妄想力で補完。
長髪で先っぽを縛ってるこんな感じかしら?少しロリを意識して描いた。
なんかいじめたくなる感じのロリ。ちなみに物見櫓はロリは好きだがロリコンではない。
はい。こんな感じだと思います。所ですっごく弄られキャラな雰囲気が。
そして、右側のアイラにアッピルしてる感じにレズキャラの雰囲気が。
気の所為で無ければ……業の深い方です。
物見櫓様誠に有難うございます。最後に、
前回のダンの絵にも言えることですが、あくまで私の脳内のキャライメージなので温泉文庫様や他読者とのイメージとは違うかもしれませんが、温泉文庫様のモチベーションや読者が作品を楽しく読む上での糧になれれば幸いだと思います。
だそうで、お気遣いありがとうございます。私としてはもう好きなようにして頂ければ嬉しいですね。はい。胸を増やすも良し、減らすも良し。太ももを出すも良し、出さぬも良し。全てイトヲカシかと。
さてこの三者ですが、皆様のイメージと比べて如何だったでしょうか?
今のところ物見櫓様のピクシブは準備中のようですので、拙作の感想欄で絵について書いて下さって一向に構わんです。作品の感想を投げ捨てても良いんじゃよ?