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カルマがランドに赴いた影響5

 昼に連絡を取り、夜になったのでリディアの家を訪れている。

 彼女の顔からは少し、しかしはっきりと疲れが見えた。

 フィオが居なくなって仕事が増えているのだろう。


「バルカ様、お疲れの所申し訳ありません。アイラ様が二週間程ここを離れても大丈夫か教えて頂きたいのです」


「お気遣い感謝する。ダンが(わたくし)を手伝って頂けるなら少しは楽になるのですが」


「……すみません。下級官吏として出来る範囲しか私には難しく御座います」


「やれやれ、つれないお人だ。さて、アイラでしたな。獣人が襲ってくる可能性を考えると少し難しい」


「草原族は襲って来ないとお茶を売った際の縁を伝って聞いております。他の部族に関しては不透明ですが……如何でしょうか」


「ほぉ。確かに襲ってくる季節とずれてはいるが……獣人はどこも多数の氏族で構成されてるのはご存じでしょうな?」


「お茶を売っている氏族は、その利益で多方面に影響力を得たそうなので……その点もまず大丈夫と確認を取ってあります」


 これから大戦(おおいくさ)をするってのに、ケイを襲ってる余裕は無かろーて。

 日和見してる氏族もあるらしいが、そいつらも勝った方に即服従しようとクラウチングスタートで待機中だ。

 という事実をズバリ言わず、私と草原族の繋がりは出来るだけ細く表現したいのだが……難しいな。


「それならば大丈夫でしょう。所で、アイラが何故離れるのかは教えて頂けませぬのか?」


「休暇です。カルマ達に呼ばれるかもしれないでしょう? その前にゆっくりして頂こうかと思いまして。では、明日から向かって頂いても宜しいでしょうか?」


「休暇と来ましたか。羨ましい話だ。明日からも承知しました……それで、まだお考えを話して頂けないのでしょうか」


「すみません。もう少しお待ちください。それでは、私はこれにて失礼致します」


 あのリディアが疲れてる様子を見せてるのなら、少しでも早く帰るべきだ。

 眠い時の客をグーで殴りたくなるのは、世界が変わろうとも不変だべや。


「もう、ですか? まだ茶もお出ししていませんぞ」


「どう見てもお茶より睡眠の方がバルカ様には必要でしょう。バルカ様、人間は連続して疲れ続けると下手をすれば死にます。睡眠は大事にしてください」


「そのような死に方をした人間は寡聞にしてしりませぬが……分かりました。気を付けると致します」


「余計なお世話かもしれませんが……書き仕事をし続ける時には、定期的に立って肩を回したり、体を捻ったりすれば疲労が少しは軽減されるはずです。座りっぱなしはよくないと聞きました」


「ほお。それも存じ上げませなんだ。ご助言に感謝を」


「はい。是非お試しを。それでは失礼します」


 本当に疲れてそうだったな。

 この時代は過労死しても気づいて貰え無さそうだしね……。

 寿命を削るとは思われているようだけど。

 座りっぱなしによるエコノミー症候群には気を付けて頂きたいものだ。

 人はネットゲームをしながら死ねるらしいし。


 さて、まだ家へ帰る訳には行かないのだ。

 私は草原族の居る宿へ行って連絡要員の人と会った。


「明日の夜、アイラ様が出立できます。アイラ様の家まで迎えに来て下さい」


「分かりました。他には何かありますか?」


「文にも書きましたが、アイラ様にあの道具を見せないでください。後、かなり食べるのがお好きなのでいっぱい食べさせてあげて下さい。ああ、これは文に書いておきます」


「はぁ……分かりました。食料を多めに持つとしましょう。それだけですか?」


「はい。では、明日の夜お待ちしております」


 連絡も終わったので直ぐ家に帰って寝台に入ろうとすると、アイラが私の部屋に来た。

 どうも私が家を出たり入ったりすれば気付かれてるようだ。

 出来るだけに静かにしてるのだが……。


「ダン、何時行くか決まった?」


「明日の夜迎えが来ます。無いとは思うのですが、後を付ける人間が居ないか気を付けて頂けませんか?」


「……? オウランの所まで平原だから、こっそり付いてくるのは無理だよ」


 え……いや、遠くからとか色々……。


「野営の後を調べて付いていく、とかも出来ないと?」


「うん。分かるもん」


「あ、そう、です……か」


 マジなん?

 元からアイラに頼るしかないのだけど、分かるものなん?

 この子がビッグマウスを叩くとは思えないから……こ、こえーどんな察知能力だよ。


「それは、余計な心配をして申し訳ありません。私が言っても不快かもしれませんが、どうか体にお気をつけて行ってきてください」


「ううん。そう言ってくれるのは……嬉しい。行ってくる」


 ここで嬉しいと言えるとは……良い人だ。

 ……でも、もしもこれでこの人が手のひらを返して私の敵になったら……。

 ショックのあまり吐血しかねん。

 在り得なくは無い。私よりもカルマ達の方が大事だろうし。

 上手く行けば、私はカルマ達の大不評を買うだろう。


 最も敵になられた場合は、口じゃ無くて首から血が噴出してそうだ。

 アイラが理性的に考えられれば、私はカルマに必要な人間であると思えるはずだが……。

 やはり危な過ぎる橋を渡っているのかもしれない。


 だが、真田が居る。

 あいつが何をするか確かめ続けなければ身の破滅かもしれない。

 そうならない為には、この橋を渡り切る必要がある。


 何と言ってもあいつには、領地と頼りになる武将が二人に軍師が二人は居る。

 馬鹿でない限りは、これからの時代には力が必要だと思い着々と準備を勧めてる筈だ。


 それにしても……本当に私と同じ素性なのか?

 ラスティルさんは素晴らしい人材五人に心服されていると言っていた。

 ホンマか? ウソやろ?

 この世情不安定な世の中で頭を張ってるからには能力を示したのだろうけど……。

 すげぇ奴だとしか言えない。

 そのお陰で私は苦労してる訳だが。


 まぁ、今できる事をしていこう。

 アイラも、信じていいだろう……多分。

 彼女が私を守ってくれる限り不安は無い。

 だが、アイラの為もあるとはいえ、人の善い所につけ込むのは甘えてると分かっていても心が痛む。

 私はまだまだ足りていないとしみじみ感じる。

 ……家の掃除だけはちゃんとしよう。

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