表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/215

カルマがランドに赴いた影響4

 リディアの予想より十六日後、又も早馬が到着し持って来た報告が直ぐに街中へ伝えられた。

 何と言ってもカルマがケイ帝国の頂点、大宰相となったのである。

 空前の出世、領民皆で喜ばなければなるまい!

 という訳だ。

 それに伴って、カルマの仕事が急増したためフィオが8000の兵を伴って中央に行き、リディアが残留組のトップとなるのが告げられた。

 客分であるリディアがトップにならざるを得ない程、ランドでの人材が足りてないってこったな。

 凄いわリディア、予想日数ドンピシャじゃねーか。

 客分でトップになっちゃう貫目(かんめ)に関してはもう何も言えない。


 街中がお祭り騒ぎとなっており、私は見知らぬ人から何度も『目出度いな!』と声を掛けられた。

 その度に、私は多大の労力を費やして笑顔を作らなければならなかった。

 流石に同情を感じている。

 街の人とカルマに。


 この国で圧倒的に強い領主が、自ら血を浴びつつ国の為か権力の為か王宮に攻め入った。

 生半可な決意じゃなかったはずだ。まず在り得ない話だが、失敗すれば確実に破滅するのだから。

 しかしそれだけの覚悟でやってみたら、二週間後には名前を聞いた覚えすら微妙な辺境の伯爵が、自分の成りたかった大宰相の地位に居る。

 「は?」ってなって当然だよな。

 さぁ、こいつはどう思い、どう行動する?

 余りの理不尽。欠片も納得出来ない結果。誰を、どれ程恨む?

 全てがカルマの死へ直結する。

 しかもそれはこいつ、ビビアナ・ウェリアだけじゃない。

 当時ザンザは大将軍であり、主な武闘派貴族に粉を掛けてたはずだ。

 そいつら全員が、カルマが大宰相になったという結果に大小の違いはあれど怒りを抱いている。


 はっはっは。

 すんげー状況だぜ。

 カルマとグレースだって幾らかは気づいてるはずだ。

 しかし突然の大出世で判断が壊れてる上に、自分が権力を保持したまま、ケイ帝国の威信を使って何とか出来ればって思うよねそりゃ。

 誰だって、自分が手に入れた地位を手放したくない。

 二十一世紀になろうが、どれ程不相応の地位についてても自分からその地位を手放す奴なんて居なかった。

 

 カルマ、お前はもう絞首刑台の上に乗って、首に縄を掛けられている。

 例えここレスターに帰って来たとしても、山ほどの領主に恨まれているお前はこの乱世で孤立無援となるだろう。

 誰もお前を救えない。しかし、私なら可能性がある。

 お前に援軍を紹介できるからね。

 そしてその時には……お前から絞らせてもらおう。


---



 カルマの大出世が知れ渡った夜、私はアイラと夕食を共にしている。

 彼女の表情は暗い。

 私の予測を心配しているのだろうか?

 周りがお祭り騒ぎだっていうのに、この表情では何なんだと思われたのではなかろうか。

 黙ったまましばらく食べていると、アイラが凄く重そうに口を開いた。


「ダンが言ったとおり、カルマが凄く偉くなったって……」


 うっ。この人から聞いた記憶の無い暗い声音だ。

 ここまで私の言葉を重くとらえていたのか。

 普通に考えれば、まだ目出度い話なのだが……。


「ダン、カルマ達はこれからどうなるの? カルマが偉くなったらダンは続きを話すって言ってただろ?」


 この暗くなってる顔を更に暗くするのは流石にキツイ。

 しかし、そんな甘えを言っても誰も幸せにならん。

 ので、私は話した。リディアから聞いた通り、悪事を行わずとも悪評が立ちそれによって諸侯達が軍を起こす可能性、そして私が考えてきたどれだけ諸侯達が恨んでいるかという話を。


「……君はカルマがどうなると思ってる?」


「このまま行けばランドという中央に居る以上、全方位か、一か所に集まった諸侯の連合軍により攻められ、圧倒的戦力差に押しつぶされて死ぬかと」


「……」


 ふぁーっ!

 タスケテー!

 な、なんてこった。黙って俯かれるだけで辛い。

 かなり鍛えて来たと思ったのに……。

 しかも、この上支援の継続料金を支払えと言わなければならないのだ。

 こーいう辛さは想定してなかった。

 流石アイラ……無心故の強さを感じる。が、ここで引いてるようでは今後やってられん。

 深呼吸だ、深呼吸をして落ち着け私。但しあからさまで無いようにだ。


「アイラ様、私は幾らかトーク様を有利な状況に出来る考えがあります。以前お話ししたように貴方様が私の為に働いて頂ければです。具体的に言うと、草原族のオウラン様が部族内での勢力争いによる戦いを始める寸前らしいのですが、これを助けて頂けないでしょうか。

 これはカルマ様の為でもあります。全てが予想通りとなった時、草原族に恩を売り背中を安全にしなければ完全に詰んでしまう。あ、一応戦況は五分と聞いています。オウラン様がより少ない犠牲で勝つ為に行って頂きたいのです。……オウラン様はご存じですか?」


「名前だけは。でも……領地の背後なんてカルマがランドに居たら意味ないじゃないか」


「その為に、私とカルマ様を会わせたのでは?」


「! ……出来るの? 帰ってこさせられるの?」


「さぁ……。私が言えるのは皆無ではないとだけ。それでどうなされますか? 行かれるとしても誰にも言わず、お一人で行って頂かなければならない。

 それに今の内に申し上げます。もしも本当に悪い評判が立った時。つまりは諸侯の連合軍が立ち得る状況になった時、又お願いを申し上げます。それを聞いて頂かなければ私は動きません」


「ダン、欲張りだったんだね」


「はい」


「……でも、僕は最初から行くつもりだった。ダンの話に僕は間違いを見つけられない。本当にそうなったら、皆助けられないから……。……だけどダン、もしもの時はカルマを助けてくれないと、怒るからね」


 ……抵抗のしようがない程強い人にこう言われると怖いね。震えがくる。

 だが、少し勘違いをしている。それは正してくれないと、話を続けられない。


「アイラ様、私は最初から必ず助けられるとは言っていません。マシに出来る程度です。しかも、トーク様が私の言葉に従わなければ無意味となるでしょう。その時お怒りになって私の責任を追及されても困ります。

 ちなみに私の言葉をトーク様が聞かなかった場合逃げるのをお勧めします。貴方様が助けに行っても殆ど意味が無いような状況になるはずなので」


「うん……分かってる。言い方が悪かったごめん。忠告は有り難いのだけど……僕はそんな簡単に逃げる気は無いな」


「逃げない、ですか……まぁ、その時になってみないと分からないでしょう。どれ程になるか私も分かりませんし。それで、オウラン様の所へ行って頂けるのですね? 誰にも言わずに?」


「うん。何時行けばいい?」


「そうですね……バルカ様にアイラ様が二週間程居なくなっても良いか聞かなければなりませんのでその後で。ただ、この戦で無理はしないでください。アイラ様の命の方が大事です」


「大丈夫。……心配してくれて有難う。嬉しいよ」


 ぬぐぅぁっ……。

 ……。

 少し無理に作ったような笑顔が、き、きっつい。

 だけど、怯んじゃいけない。

 頑張れ私。カルマが今後生きて行くために必要なのは本当だ。


「お礼はお止めくださいアイラ様。ただ、約束致します。アイラ様が協力して下さる限り、私はトーク様の命を守るべく努力すると」


 私の言葉に頷くアイラを見て、又脈拍がおかしくなった……。




 辛い夕食の後、草原族と連絡を取るため、静かに家を出た。

 相手は顔だけしか知らない偶に護衛してくれてる兄さんだ。


「何かお疲れですかダン殿」


「ああ、こちらの問題ですから気にしないでください。それで、オウラン様の勢力拡大に必要な戦の準備は出来ているのでしょうか?」


「はい。言って頂ければ一週間中には整うでしょう。どうなされますか? オウラン様は貴方の言葉を待つおつもりです」


「有り難い。では、準備を始めて下さい。援軍はアイラ様一人です。一週間以内にこちらを発って頂こうかと。一人ですが、下手な軍勢よりよっぽど頼りになるでしょう。それとこの文をオウラン様に」


「武将一人、ですか。アイラがどれ程の物か私は知らないのですが……いや、私が判断する事ではありませんな。確かに伝えます」


「多分大丈夫だとは思いますが、もしアイラ様が行けなくても始めて下さい。カルマの大出世という話題に、恐らくは全土のケイ人が注目しています。今なら横やりも入りません」


「確かに。これほどのお祭り騒ぎならば。分かりました。他には何か?」


「アイラ様が居ない間の護衛を……いや、却って注目を集めかねないか。私はアイラ様の家に引き続きいます。定期的に居るかどうかだけ見て下さい」


「家の中に誰かを入れて守らせましょうか?」


「いえ、出来るだけ私が貴方方と親密であると示したくありません。多分、大丈夫でしょう。誰もがカルマと自分のことで忙しいはずですから」


「分かりました。他にありますか?」


「ありません。オウラン様によろしくお願いします」


 さて……後はリディアに確認を取らないと。

 明日の夜だな。


物見櫓様から二枚も支援絵を頂きました。

ありがてぇ話で御座います。

物見櫓様のコメント→私のコメントの順番で紹介させて頂きます。


一枚目は主人公です。

挿絵(By みてみん)

前作のころとまったく変わってませんが、性格も言動もまったく同じだから前のイメージが頭から中々離れてくれないので、妥協しました。

目が死んでるのはデフォです。現代に揉まれた社会人な”俺ら”ですからね。キラキラしてなくても不思議ではない(鏡見ながら)。

胡散臭さと「こいつ絶対主人公じゃない」という印象が伝わればいいなと思います。


ロト太郎さんのモブっぽい爽やか兄さんの真逆を行くイメージでした。

作中で主人公が目立たない様にしようと、幾ら努力しても目がマズイですね。

更に腕が見えない事で、より自分を隠してる雰囲気が出てる……ような?

所で私も物見櫓様と一部同意見でございます。

社会人になって十年経ったオッサンが、目に星を宿して居たら殴ります。「悟れよ」と言いつつ。

尚、ダンは人のいない所だと、稀によくこのような薄ら笑いをしてるイメージですね。

大変よろしく描いて下さったと感謝です。


二枚目はMOBをモデルにした下級官吏服です。

挿絵(By みてみん)

描き終わってみたら服よりイケメンモブ君が目立ってしまうと思ったが、妥協した(2回目)。

何故か無意識にイケメン描いてた。最初はのっぺらぼうのハゲだったのに。

ダンはこの下級官吏服をきっちり着ているイメージ。装飾のボタンなども金色じゃなく地味な感じ。

ソウイチロウ君も今描いているが、美少女よりイケメンの方が描きやすくて仕方ありませんね。練習しないと(使命感)。


昨今全てのキャラがイケメンでないと許されない時代、そりゃ描き手もイケメンを描く手癖が付きますわ。

などと訳知り顔で言ってみます。

はい。大変ダンを理解して頂き有り難く思います。

誰もが金ボタンでなければ、最も目立たないボタンを頑張って探して付けるのがダンです。

着方もこのイケメンと同じく真面目で地味に見えるように工夫するでしょう。

尚、私としてはボタンはまだ発明されてない世界……いや、何でもありません。

読者の皆様が、好きなようにイメージして頂けたら嬉しいです。

そして、そのイメージを絵にして下さったらゲヘヘヘ。

所で、このモブ君が書籍化された作品の、なろう主人公達に凄く似てると思うのは私だけなのでしょうか?

絵を描いた方達がキャラを考えた際のコンセプトが一緒なのかな?

モブっぽく、しかしイケメンにという。

所で、美少女よりもイケメンが楽というのは、一番得意なジャンルは……いや、よそう。

そういうシーンを書く予定はないですし……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ