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アイラと重なる不吉なイメージ

 今も困惑の表情をしておられるアイラ様を他所に、私は自分を落ち着けるのに必死である。


 ほうてんがげき……方天画戟は……西暦1200年頃の中国で使われていたっぽい武器だ。

 ハルバードみたいな感じで、扱いが難しいが上手く扱えれば色々出来るという武器だったらしい。

 そら色々しようと思って何かを付ければ、その分重くなるから使い難くて当然ですわ。


 しかしこの武器、何故か使われた頃よりも1000年近く前に超有名な使い手がいる。

 創作、そう、創作のはずなのだが……。


 えーと、つまり、それを持つアイラ様が、その超有名な使い手と私の中で非常に被ってしまって、それで私の心臓が、急性心不全に。

 何故なら、その使い手は個人最強の代名詞。

 そして裏切者の代名詞。

 親しくした人間が超の付く高確率で不幸となったお方。

 つーか、凄まじく世話をしてくれた人と、義理の父親だった董卓の二人を殺した人物。

 配下も負けた際にほぼ全員死亡という極まりっぷり。

 姓は呂布(りょふ)字は奉先(ほうせん)

 今アイラ様から見てトップ5に入るくらい親しい私にとって、最も共通点を持っていてほしくない人である。


 な、な、な、なんでやあああああああ!

 呂布は一応中国人的な人だったじゃろうがあああああ!

 な、なんで、遊牧民出身で、可愛い耳と尻尾が付いとんのじゃああああ!

 触角! 触角ねーぞ! アイラ様の兜見たけど触角付いてなかったぞおお!

 いや、知ってても、武器の名前を知ってても、選択肢が無いし近づいた可能性は高いけどさああ!!


 以前木で作られたコレをなんか見た覚えがあるとはおもった。

 しかし簡素な木で出来た物と、持ち手に何故か持ちにくくて堪らないだろう龍の彫刻が付いたり、金の装飾が付いたりする物の記憶とじゃ一致せんわい!


 お、落ち着け。

 武器が同じ名前ってだけだ。それで人格を判別するなんて


 先生、僕アイラ様は裏切ると思います。

 ほぅ、なぜかねダン君。

 はい。何故なら方天画戟を持ってるからです。

 おお、なるほどな。すまんなぁ、先生には良く分からない。だが、辛い事でもあったんだな?

 よしよしそういう相談を専門にしてる人を呼んでやろう。休める部屋も付いてるぞ?

 ちょっと窓に変な棒が付いてるが大した問題では無い。気にしない事だ。


 ってなって当然だ。気にすることじゃない。

 ……。

 ただアイラ様は、人の話を聞き過ぎて意見をコロッと変えちゃいそうな雰囲気が……。

 …………。

 すぅーって音がした。血の動く音がした。ちょっと気分が悪くなった……。


「ダ、ダン? 本当に大丈夫?」


「あ、いえ、はい。……すっごく突然なのですけど、アイラ様、私が持ってる物で何か欲しい物がある時には是が非でも遠慮なく言ってください。必ず差し上げます」


 ただし、腕だの、命だのは困るぞアイラ様。


「? ……うん? 待って、なんかそれって僕がしょっちゅう人の物を欲しがるみたいじゃないか。そんな事……無いと……思う。だって、そんな親しい人…………というか、何だよ突然。僕、何かした? ダンの物を欲しがった覚えは……さっきダンのおかずを欲しがったね……そういえば。ごめん……」


「あ、いや、違います。すみません。ちょっと同僚が友人にねだられた物を渡さなくて喧嘩になった話を突然思い出しまして。おかずを欲しがっていただけたのは、それだけ私の食事に満足頂けたという意味で嬉しかったですし。失礼を言いました。許して下さいませんか?」


「う、うん。良く分からないけど……まぁいいか」


 うむ。まぁいいのだ。そういうことだ。流して下さいアイラ様。

 このままではいかん。無理やり話を元に戻そう。


「しかし……この武器は重いですし本当に扱いが難しそうですね。これを使った時が一番強いとは流石アイラ様です。良い物を見せて下さって有難うございました」


「あ、うん。やっぱり大変でね。僕もいっぱい鍛錬したんだよ。……褒めてくれて有難う」


 すっごく嬉しそう。

 でも、私はほんのちょびっとだけど怖い。

 元から最強なのに、この武器を使った場合どれだけ強いのだろうか。


 そう、最強……ベトレイヤー呂布と同じ名前の武器を扱うアイラ様。

 今後よりアイラ様の感情には配慮しようと思う。

 べ、別に知識に振り回されてる訳じゃ無い。

 強いお方にはおもねるのが当然じゃ。

 そう言う事にしておくのじゃ。




---

 


 さて、今日は話があると言われてリディアの家に呼ばれている。

 どんな話だろうか。

 私も出来れば聞きたい話がある。

 今日の昼にランドから使者が来たらしいので、どんな話が在ったのかを聞きたい。

 もしかしたら、ザンザからの呼び出しかもしれないし。

 私がそんな事を考えつつリディアの家に行くと、直ぐに家主の部屋へ通して貰えた。

 そして挨拶もソコソコに本題が話された。


「お呼びした要件は今日来た王都からの使者についてなのですが、誰からの使者だと思われる?」


「えーと……そう仰るという事は……ザンザですか?」


「少々露骨過ぎましたか。その通り。軍を伴ってランドへ来いと言ってきたのです」


 本当にそうなったか。

 哀れだなカルマ、グレース。

 近頃は何もかも上手く行っていたというのに。

 いや、今は更に未来を明るく感じているか?

 地方の人間には、中央と繋がる機会が中々無いと聞く。


 しかし私の感覚だと、此処までボロボロとなってるケイという船に乗るのは問題だらけの行動に感じる。

 ただ一般的には、まだケイ帝国が完全に崩壊したと感じられてない。

 それに今までランドで名を成す事だけが出世コースだったらしく、その常識に縛られてるのだろうけど……。

 私が想像する程酷い目に会うかは分からないが……リディアの予測でも十分酷い。

 そう、リディアだ。何故こんな協力をしてくれる?


「バルカ様、教えて頂いたのは有り難く思います。しかし下級官吏に話しても良かったのですか?」


「貴方が周りに触れ回らなければ、何の問題も無いでしょう。それにこれは慶事。明後日には民も皆知るはず。それで如何される? 忠言でもなされるか?」


 どうするかは考えてある。

 それにリディアの協力は……要らんな。

 元々の考えでは、リディアの協力は計算に入れてない。

 謀は密なるを持って良しとする。

 私もこの意見には心から賛成している。


「下級官吏である私が何か言うなんて僭越というもの。予想が杞憂である事を祈るのみです」


「……それは残念。では、最後にもう一つ。ザンザの要請にどう答えるかまだ決まっておりません。数日の間に思案を纏めようとしてる段階です」


 その数日の間に動かないと、決まってからは厳しいぞという意味っすかね……。

 まぁ、元から今日中に話をしに行くつもりだったのだが。


「なるほど……。単に気になっただけなので教えて下さらなくても結構なのですけど、バルカ様はトーク様に忠告なさらないのですか? 貴方様が言えば二人もかなり真剣に考えると思いますが」


「しません。(わたくし)には要らぬお節介を焼く義理も義務も無い。その為に客人としてはたらいてるのです。それに、何を言っても二人の考えを変えるのは不可能とお見受けしました。今のところザンザの将来については明るい情報しかない。なのに側近になる機会を逃す判断は出来ませぬよ」


「そう、ですか。お答え頂き有難うございます。……もしもの時の為に逃げる準備をしておきますかね」


「おや、とっくにされてると思っておりました。(わたくし)が既に整っておりますのに」


「え、本当に?」


「勿論冗談です」


「……そ、そうなんですか。とにかく教えて下さって有難うございました。失礼します」


 そう言って、私はリディアの所を辞去した。

 感触としては、本当に逃げる準備がしてあるような気がする……いや、どうでもいいけどさ。

 何処までも掴めないお人だ。

 ま、私も何時だって逃げられるようにしてあるんだけどね。

 避難用具一式はバッチリである。


 しかし、さっきのリディアの言葉からして……高い確率で私が何かすると考えているようだ。

 普通に考えて下級官吏が何か出来る訳ないってのに。

 ……今までリディアに頼って色々し過ぎたかね。

 他に手が思いつかなかったからなぁ。

 あれだけ助けて貰ってこの言い様が恩知らずなのは分かってるけど、困った。

 

 いや、考えすぎだな。

 単なる有能なケイの人間と思って貰えるだけなら、大した問題では無い。

 面倒が発生すれば、名前を変えて逃げればいいだけだし。


 それよりも急ごう。

 私は家に帰り、出来るだけ目立たない服に着替えて家を出た。

 そして草原族が泊まっている宿に行き、その後アイラ様の家に向かった。

○アイラ・ガン 以下私見に塗れた紹介。正しさは保証せず。

呂玲綺(りょれいき)が元。


嘘。呂布(りょふ)が元。

方天画戟は本当に万能武器。

突いて、斬って、叩き潰して、開いてる穴で絡めとって、矢の的にもできる。

なおこの人は創作じゃなくて本当に強かった模様。

呂布と言う名前を付けた人物が筋肉的な意味で弱かったら、抗議の電話が鳴りまくりそうな位強くないと許されないお方。

床下から雷を纏って登場したり、言葉が話せなくなったり、三人の武将相手に一人で戦ったりする。

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