もう一人を聞いた日
義兄弟、いや、義姉弟? しかも、ケイ帝室の血を引くと名乗る平民……。
残り二人も、相当強いこの人と互角の武人。
劉備、関羽、張飛か!
やっぱり居たのかよあのトラブルメーカー共。
……待てよ? ジョイは公孫賛と共通項がある。
そこで武将をしていて、劉備達と会って、好感を抱いたこの感じ……しかも槍使い。
この人、もしかして趙雲だったり?
あかん……劉備と滅茶苦茶相性良いじゃん……。
い、いや、これだけ世界が違って同じとはならんが、これは不吉な話を聞いた。
というか、趙雲だったら此処に来てくれた時点で驚きだ。
劉備にベッタリで、ホモい関係でもおかしくないと私は思ってたし。
「そして、その三人の長ソウイチロウ・サナダ」
……。
あ?
劉備三兄弟に長? しかも、その名前の響きは……。
「この人物が不思議な方でしてな。拙者に一歩及ばぬとしても、良く剣を使う武人だというのに、殺したコルノ党を見て涙する優しさを持っておられる。まぁ、人によっては弱さだと言うだろうが、この乱世あのような人を守ってやりたいと思う者も多いはず」
「それはそれは……立派な方のようで。しかし、奇妙なお名前に聞こえますが……何処の産まれなのでしょうか」
「聞いて驚かれよ。本人曰く、違う世界から来たそうだ。なんでも、エルフも獣人も物語でしか見た事が無いとか。それはそれは平和な国で生まれ育ったと言っていたな」
居た……居やがった……もっとも恐れ続けた可能性が実現した。
は、はは、はははははははははははははははははっ!!!
クソったれがあああ居たああああああ!!!!
待て、笑うな。絶対に笑うな。
いや、普通のケイ人なら笑う場面か?
どうなんだ? 誰か教えてくれ。
「その顔は信じておらぬな? それも当然。拙者も眉唾物だと思ったとも。しかし、見聞きした事も無い物を良く知っていてな。ふむ……今から出す物を決して誰にも漏らさぬと約束して貰えるかダン」
「はい。誓いましょう。何を見せて頂けるんですか?」
ラスティルさんは周りを軽く見まわし、誰も聞き耳を立ててないのを確認した。
慎重だな。何が出て来る?
「単なる玩具なのだが……これよ。ソウイチロウ殿が考えたものだ。コルノの乱でジョイ殿が集めた義勇兵を率いて戦い、戦功により男爵となったので、自領の特産品としてこの玩具を売ると聞いている。流石に遊び方は二人っきりでなければ教えられぬ。彼らが一定の利益を得る前に誰かが考えを盗んでは事だからな。又今度教えよう。中々面白いぞ」
は、ははっ。
知ってるよラスティルさん。
リバーシってやつだな。
おお、木で出来た石の間には青銅で出来た盤に引っかける物があって、盤にもそれを嵌める所がある。
馬車でも出来るようにってか?
頑張って作ったんだろう。
そしてこれが作られたのはごく最近、二十世紀だったはず。
サナダソウイチロウ。
カッコイイ苗字を持ってやがるなぁ?
リバーシを知ってる以上、あの真田家ってのは流石に無い。
だが私の感覚だとこの世界は西暦100年程度の状態だ。
其処へ西暦2000年まで積み重なった知識を持ってる奴が又現れちまった。
こいつの行動によっては私の計画が、そしてこの世界もゾウに踏まれた卵みたいになるだろう。
最悪だ、ああ、これ以下が無い程に最悪だ。
そしてぇっ! 最高だぁ! これ以上望むべくもない程にぃ!!
居るかもしれないとは思っていた。
私みたいなやつが何処かに。
まさか同郷で、その上日本人名をそのまま名乗るなんてな。
私とは根本的に違う人間のようだ。
外人が日本人名を名乗るとは思えんし、まず間違いなかろう。
しかも、劉備三兄弟の長にして剣の達人だ?
スゲーよお前、私には絶対不可能だぜ。
ラスティルさんからの印象もすこぶる良いと来た。
尊敬する。お前は日本人の誇りだぜぇ?
更にリバーシを売って富、か。
派手に行くねぇ。
私だってその手を考えんでも無かった。
しかし、名を売りたく無くて諦めたのだ。
今となってはとんでもない英断だった事になる。
まぁいい。とにかく見だ。
どんな奴だ? 高確率で私にとって最大の敵であろうが。
敵と言っても男爵である今は大した事を出来まい。
しかし、より多くを手に入れた時……。
最悪になるかもしれない。
さて……ラスティルさんもっと情報をくれ。
「これは……確かに見た事がありません。碁には似ていますが……違いますね。しかし、ラスティルさんはそのソウイチロウさんに好感を持っているように見えますが……どんな方なのでしょうか?」
「おや……そう見えたか。まず見た目は早々居ない程の美男子だな。それ故とは言わんが、人を惹きつける物を持っている。
彼が男爵領を手に入れる程の功を立てたのは二人の若い軍師あってこそなのだが、その二人はソウイチロウ殿が遠くカメノ州から連れて来た者達で、凄まじく優秀。生半な者では仕えて貰えまいに、その二人が心服しているのだよ。大した人物と言うほかあるまい」
美男子と来ましたか。
そして遠くカメノ州……サポナの所からだとすると、一か月は掛かる場所まで行って連れて来た軍師だと?
嫌な感じがする。
「その二人の軍師、そこまで優秀な方なのですか?」
「それはもう。セキメイ・リヨウという少女が十七、フェニガ・インザという少年も十九程度だったはずだが、既に数多の知恵者と軍師として語り合う程で、龍と鳳凰に例えられていたとか。実際コルノ党と戦った時の策は見事だった。
ソウイチロウ殿も、自分が知る最高の軍師に劣らぬという意味で、コウなんたらと、ホウ……忘れたな。とにかく最高の軍師に例え大いに喜び、全幅の信頼を寄せていた」
……孔明と鳳統じゃねーか。
めっちゃくちゃしやがる……。
どうやって探した? 本当にあれ程有能なのか?
孔明って、若い頃はあっちこっち移動しまくってなかったっけ?
名前だって分からなかっただろうに。
それを探し当てて、20にもなってねーのを青田刈りか。
激運持ちだ。一緒に狩へ行きたくねぇぞ。
クソッ。てめぇ野良で入って来ないでテメェで激運剥ぎ取り装備部屋を建てろよな。
いや、愚痴っても仕方ねぇ。
現時点では未熟かもしれんが、超有能な軍師がソウイチロウに心服した。
知れて良かったわ……洒落にならん最悪の情報だが、知って無かったら……考えるだけで恐怖のあまり漏らしそうになる。
「そして、かくいうこのラスティルもソウイチロウ殿とユリア殿から配下になってくれないかと強く求められたのだよ?
『俺達はこのケイ帝国に住む人々を一人でも多く助けたい。その為に、ケイの血筋を持つユリアを旗印にして戦っていくつもりだ。民の痛みを感じれる優しさを持ったラスティルにも仲間になって欲しい』そう言われてな。数多の君主、男たちに言い寄られた拙者だが、あそこまで心が揺れた記憶は無い。しかし、ダンとの先約を守る為に私は後ろ髪を断ち切って此処に来たのだ」
あ、なんかめっちゃニヤニヤしてる。
む、むぅ、どう返答するべきか。
つーかツレーぞ。
考える内容がとてつもなく真剣なのに、同時に美人と楽しく飲み会しないといけないから脳みそがシェイクされてる。
サナダについて考えなければ良いのだが、あまりにも重要な情報過ぎてそれもならない。
笑える理想論を聞かされて腹筋が痛いってのに。
と、とにかく上手い返答を……。
○ラスティル・ドレイク 以下私見に塗れた紹介。正しさは保証せず。
趙雲が元。
劉備一家の護衛→冷静で信頼出来る槍の達人将軍→ドカベン→イケメン看板キャラ
という出世街道を辿った演義ドリームの具現者。
君主一家の護衛を任命されたのだから、信頼出来る武術の達人だったのだとは思われる。
更に言えば、兵隊を訓練する際に普通は秘匿する武術の技をあっさり教えてたようなので、兵を思いやる優しい人だったのではなかろうか?
尚将軍としてはかなり長生き。これは冷静な人格のお陰かもしれない。
つまり、現状の趙雲キャラも元になるエピソードがある。ような気配はあったりする。
○セキメイ・リヨウ 以下私見に塗れた紹介。正しさは保証せず。
孔明が元。
元から大した人物なのは間違いないけども、何時の間にか三国志最強最高の能力を持つ人間……いや、人を超えた孔明となるまでに盛られたお人。
ステータス鑑定をした場合、スキルの項目には
予知 読心 千里眼 人物鑑定 他人感情操作 天候操作 天才 アカシックレコード接触権利 不運
が出ると思われる。……人間じゃないと思いませんか?
今では剣と矢の時代にビームをパなしても日本人は納得してしまう始末。
それを初めて見た時には大爆笑でした。はい。
記録に残ってる人間としては、人類史上初めて過労死した人と言われている。
クソ真面目で、能力に見合った天高き厨二びょ……プライドをお持ちの方と思われる。
○フェニガ・インザ 以下私見に塗れた紹介。正しさは保証せず。
ホウ統が元。
三国志で最も有名な不細工。
不細工過ぎて、劉備からも最初首にされた模様。
尚、それをとりなしたのは呉の軍師。劉備の所にとりなしてくれる人が居ない程の不細工だったのだろうか……。
或いは同盟関係にあった呉から、取次役として期待されていたのかもしれない。
不細工過ぎて呉のトップである孫権から嫌われていたという噂もあるが。
すったもんだの挙句孔明と同じ立場となった不細工だったが、超短期間無双した後、蜀を攻略する時に矢で体重を増やして死亡。享年36歳。
能力在り、見た目無し、運無し。の可哀想なお人。
種族 エルフ 名前 真田総一郎
能力値(雑兵は全て20)
統率 71
武力 84
知力 基準値が違う為測定不能
政治 60
魅力 95
精神 70
スキル(lv10で最大値)
ケイ帝国共通語 異界の知識 計算lv6 剣術lv7 超運
異界の知識により、全能力が上昇。
現時点での能力値。相当に適当。
物見櫓様より頂いた真田をイメージした支援絵。