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ダンとリディアがテリカの受け入れについて話す

 私の推察はある程度当たってたか。それなら焦るのは当然だ。

 でもカルマを説得されたら困るな。

 

「少し待ってください。確認したい事があります」


 こんなに早くリディアが来ると思わなかったから、まだ欠けた奴が居るのか確認してなかったんだよね。部屋に戻ってメモを見なければ。

 ん……と、ああ……シウンの所で聞いた名前だったか。


「お待たせしてすみません。実は私先日の戦であちこちの陣営に兵糧を運んだ時、ついでに名のある人を調べてたんですよ。で、テリカ陣営を調べた時に聞いた名前が先ほど一つ無くて。ネイカンと言って元江賊の方らしいのですが……如何思われますか?」


「……かなりの確度で同行していると思われます。(わたくし)は諜報を主にやる者が隠れているのを疑っていたのですが、元江賊となれば適任でもある。……しかし江賊の配下が居たのは知っていても、ネイカンという名前は寡聞にして存じませなんだ。流石我が君」


 マジか。テリカが表に出さないようにしていたのか?


「歩いていたら兵たちの話に出てたんです。なので、何時も腰に下げていたお酒を渡してどんな人か聞きまして。それより教えて欲しいのですが、ショウチという名前は初めて聞きました。どんな方なんです?」


 戦場だと金より酒が分かり易く喜ばれるので酒を携帯してたのは本当。

 金よりも酒の方が不穏な気配が出ないし。やはり贈り物は消え物がベストってこったな。


「ショウチは昔内政官として名を馳せた名士です。十年ほど前に隠居したと聞いておりました。何でも大層有能で偏屈な人物らしく、マリオが仕官を求めた際に貴重な贈り物へ全く目をくれず追い返したそうで」


 ……それ、どっちかというと馬鹿なのでは。下手したら死んでたでしょう。

 自分の命より誇りを取る人柄なのか? ……マリオの配下になるよりは危険を冒した方がマシ。と、考えた可能性も在るので一概には言えんか。


「そりゃ凄い。隠居したと言いつつニイテ家と関わってたんでしょうねぇ。それでバルカさん、全てを考えた場合、テリカを受け入れた事で良い結果が出る確率はどれくらいありますか? 人質を取るなど何でもしていいとして、です」


「……テリカの目的が何かに大きく依存致します。推測を重ねてになりますが、マリオから命まで狙われたとなれば、父フォウティがマリオに謀殺されたとの噂は事実でしょう。よってテリカの目的はマリオの首と、何より以前口にしていた江東を我が物にする事」


「ですね。マリオの首、直ぐは無理でも乱世が続けば何時かは殺し合うのですし、難しく無さそうに思えます」


「はい。されど江東の地は問題となりまする。ビビアナがこちらの力を削ぐためにテリカを誘惑する事も考えられますので。全ては天次第なのを無理に数字で表せば……配下とし続けられるかは五分と五分。良い同盟相手とするを加えれば八分。向こうも流浪の身を救われたという大恩を受けながら裏切っては天下に誹られるは必定。よってこの程度は何とかあるかと」


 同盟相手、その手があったか。織田信長が家康と同盟を組み続けたみたいにすんのか?

 色々黒い噂はあっても一応は信長が死ぬまでお互いに利益を得たっぽいし、あんな感じに出来るなら悪くなさそう。

 しっかし八分とはスゲーな。私とカルマの争いの種になって色んな問題が出そうだとも思たのに。


「あら、意外に高いですね。それ程の確率があるなら、カルマが受け入れようとしても不思議ではありませんか」


「これは我等がテリカを配下とする為にカルマへ協力……いえ、大きく譲った上での話。下手をすればそのまま配下になるか逃げるかという事態にまでなりましょう。第一同盟しようとも独立した勢力となったのであれば、何時かは敵となるに決まっております。しかもこちらを詳しく知った恐るべき敵に。……少しの利益を得る為に危険を招くは貴方が忌避なさる事のはず。何故このような問答をなさいます。まさか……」


 あ、こちらが全力でカルマに協力しての話だったのね……。

 所で英傑を受け入れても少しの利益しかない説明が飛んでますよお嬢さん。

 一から十まで説明させんなって意味? それとも……大分焦ってるのでしょうかね。


「はいそのまさかでして。私の結論としてはトーク姉妹の好きにさせたいと考えます。出来ればバルカさんにテリカを受け入れる場合、会見の処理、ネイカンという人の扱い。と、いった我等の行動を考えて頂きたいのです」


「なんと……余りにらしく御座いません我が君。何故、何故あの者たちを受け入れようとお考えなのですか。どうかご説明ください」


「考えも何も……私たちはこれからイルヘルミと戦います。あちらの豊富な人材に対処できるようになりたいんです。又何時かビビアナが敵となる可能性だってあります。その時テリカが居ればとても心強い。ビビアナに引き抜かれる可能性も五割よりは低いでしょう。

 それにテリカたちはこの国一番の水上戦上手。トークは黄河と接したばかりで船戦を知ってる人間が全く居ません。時を得た貴重な人材ではないですか」


 水上戦に関しては本当に欲しい。自然の猛威はこの世の何よりも強い。水の上なんて特殊環境での戦い方を自分で身に着けるには、とんでもない時間が掛かるだろう。

 テリカに指導して貰えれば、これ以上無く理想的に上質の技術を手に出来るのだ。


「ダン、イルヘルミはビビアナが主となって戦いたがるはずです。今の人材で事足りましょう。ビビアナと戦う場合には確かに欲しいですが、我等が慎重に行動すれば十年、二十年同盟を維持できまする。人材はその間に育てられます。我等はまだ若い、長く物を見なければ。テリカのように優れていても不安要素のある人材は必要ございません。

 天に太陽は一つだけなのにこのトークには太陽と月がある。その上で更に明るく輝きかねない太陽を置くなど不安定極まりない話。

 テリカには諸国を巡って貰うべきです。流浪の末窮死すればよし。例え身を起こせようが今全く領地を持たない状態ならばどんな大器でも高が知れており、対処も容易。何でしたら恨まれないように多めの路銀を渡してもいい。……日頃の貴方様であれば、決して受け入れないはずですぞ」


 ははー。野垂れ死にが一番とは言いますね。ま、ごもっとも。なんですけどね。


「んー、どうしても、駄目ですか? でしたら諦めます。とりあえずお茶でも飲んでゆっくり考えてみてください。あ、これが水で出したお茶ですよ。違った美味しさがあるでしょう?」


「理解……致しかねます。何故、其処まで強固に受け入れを……。カルマたちでさえ、あそこまで簡単に受け入れを示したのは我等の反対があると見越してですのに……」


 あ、そーなんだ。高い所から始めて折衷案を探る系だったの。

 しかしリディアが絶対に反対なら無理だ。諦めるべきかなぁ。

 ん? 外から足音が聞こえる。リディアと二人で話し合ってるのを知らない人に見られるのはあんまり良くないけど……あ、アイラさんか。


「ただいまー。聞いてよダン、今日はクロと一緒に狩りへ行ったのだけど、あの子幾ら走っても満足してくれなくて……あ、リディア来てたんだ。……どうしたの?」


 クロてーと以前私に鼻水擦りつけやがった黒い馬か。あいつ我儘なんよね……。

 でも愚痴ってる風なアイラさんは凄く楽しそう。気配に敏感なこの人がリディアに気付かないくらいにニッコニコ。

 本当馬好きね貴方。


「……聞いてくれアイラ。我が君があのグローサとテリカ共を受け入れると仰っている……何故だ。分かるか?」


 あれ? リディアが敬語を喋ってない……。なのにアイラさんが変に感じた様子は無い。というか、こっちを驚きの目で見てる。

 口調について聞きたいけど……ま、いいか。


「えっ。あんなに誇り高そうなグローサをそんな簡単に? テリカだって簡単な奴じゃないんでしょ? ……どうしたのダン。変な物食べた?」


 そんなに奇妙でしたか。大望のある人は基本人材マニアですし、あの若さでケイ有数に有能な人間が複数だったら味方に付けたがって当然では無かろうか……。


「あ……もしやダン。グローサの美貌を我が物としたいのですか。お気持ちは理解できなくも無いですが、お止めください。

 立場の差がある以上、賢いグローサなら簡単に愛人とは出来ましょう。しかしあの者はテリカの為に首を賭けるとまで言った。非常に強い絆があるのです。それにあの態度の端々にあった天を突かんばかりの誇り高さ。幾ら肌を重ねようともテリカの為ならば迷わず寝首を掻いてくると断言致します」


 お、おおう? すんげー真剣に在らぬ疑いをかけられてる。


「あ、成程、グローサ綺麗だったもんね。でもダン、僕もグローサは止めた方がいいと思う。危ない気がする。何となくだけど」


「え、アイラさんまで? ……あのー、グローサってそんなに美人でした?」


「……? はい。理想的な骨相に加え在りがちな黒い瞳さえ美しく感じる美しい色彩、天下広しといえどあれ程の美形が他に居るとは思えません」


「うん。凄く綺麗だった。吃驚した」


 ほ、ほわー? 確かに美人だったよ? 足がやたら長くてスーパーモデルでナオミキャンベ……いや、例えが悪いなこれ。

 でも男性として言わせて頂くと、目の前のお二人が負けるとは全く……。美意識の違いを強く感じる。

 うーん、日本に居た頃も見た目の派手なモデルをとっかえひっかえするクリロナに嫉妬を感じなかったし、私の好みが違うだけなのだろうけど……。

 そっか、あれが天下一の美形だったんか……メモっとこ。

 あ、オスカル様タイプだから女性受けが大変良いとか。いや、それだと二人がグローサと結婚したがってるという事に……。


「えーと、とにかく違いますよ。グローサを愛人にしたいなんて心によぎってさえいません。何にでも誓えます。テリカを手に入れたいのは目の前を安定させたいからなんです。後の事を考える為には其処まで辿り着かないといけませんから。勿論、バルカさんがどうしても同意できないのであれば諦めます」


「……それも間違ってはおりません。……其処まで仰るのであれば同意致しましょう。……(わたくし)に出来るのはお言いつけ以外に御座いませんか」


「特に思いつきませんね。まず無いとは思いますけど実はマリオの間者であったり、いきなりテリカがカルマを殺してこの領地の主となっては困りますから安全に、そしてテリカが安心して配下となれるように考えて頂けませんか?」


「そのように博打の過ぎる手をテリカが使うとは考え難くありますが」


「ネイカンとやらの対処や、色々テリカへ注文を付けるのに今言ったような事を口実に使うのは駄目ですか?」


「それならば確かに。承知いたしました。では明日の夜再び伺って話を纏めたく思います」


「分かりました。私も考えておきます」


 次の日の夜、リディアに再びこちらへ来てもらって話し合った。

 私は幾らか訂正をお願いし、こちらの結論とした。


 後は近いうちに護衛長ジンさんとテリカについて話あっておこう。

私事により更新が一週間に一度程度まで遅くなります。

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