表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/215

ダンが居ない間のトーク領の変化2

「はぁ~。私がオウラン様のご厄介になった時は、生活と考え方の違いに苦労しましたのに。よくもまぁ一年で其処まで……。幾らお二人でももっと苦労すると思っていました」


「あたしもそう思っていたわ。あいつら安くはしたけど税を払うのにも応じたのよ? あまりに従順だったから、オウランに文で尋ねたのだけど『勝てない戦はしたくないので、ケイ帝国に逆らう気は無い。我らに羊を飼える地を貸して頂けるのはカルマ殿のみなのも明確であるし、恩に報いる為出来る限りの事をさせてもらう』ですって。オウランがこんなに天下を知ってるとは嬉しい誤算ね」


 はははっ! ヤルなぁオウランさん。

 トークを攻め滅ぼせる程大きくなれば、従順だと思わせる言動が出来なくなるのではないかと思ったが、どうやら杞憂であったようだ。

 大変喜ばしい。


「反乱なんてすればトークだけじゃなくスキトからも攻められるでしょうし、賢いオウラン様ならば当然の判断だと思います」


「獣人にしては賢いわね。結論としては非常に上手く行ってる。半年以上内政に集中できたわ。そっちはリディアの報告が全てで良いのかしら?」


「一つお願いがあります。ケント陛下が我々に言及した際レイブンさんに貧乏くじを引かせてしまいました。それに向こうにいる間色々と骨折ってもらいまして。厚く報いて頂けないでしょうか?」


「良いの? その分貴方の褒賞が減るけど」


「何割ほど減ります?」


「……二割かしら」


「では三割減らして結構ですので、その分レイブンさんにお願いします」


「……分かったわ」


「グレース殿、我が君の提案であると伝えてくださいましょうな? もしもカルマ殿の配慮とするおつもりであれば……」


「そ、そんな詰まらない考え思いつきもしてないわよ。えっと、それよりもダン、前から思っていたのだけど、貴方何が望みなの? 大業に関与したがるのに、富と名声を得ようとしないなんて理解しかねるわ」


 望みねぇ、分かり易いのは……。


「今の世情で安定した良い暮らしをしつつ、生き残るのが望みです。富と名声は暗殺や毒殺の標的になりかねないので、遠慮したいな、と」


「あたしたちがまだ危険だと言いたげね?」


「そんなつもりは無かったのですけど、まだ危険でしょう。ビビアナの気が変わるだけで滅びかねません。とは言え凡人はバルカさんに従って天命を待つのみですが」


「……なんで凡人の配下にこのリディアが居るのよ」


「それは本人に聞いて下さい。私なんかがこの人の考えを理解できると思ってます?」


「おや、異なことを。(わたくし)の考えは非常に簡単ですのに」


 あ、それ覚えてる。『Very Easy(ね、簡単でしょ)?』ってやつだよね。

 ……ほんま適当に言ってるのか、真面目に言ってるのかも分からん奴め。


「……じゃあ、なぜこの男の配下になったの?」


「天命を感じたゆえに」


「あ、そう……」


 天命て、あーたは感覚だけで判断なんて絶対しませんよね?


「また無駄な時間を使ったわ……。それよりダン。明日レイブンをチエン領攻めの援軍に向かわせるのだけど、ラスティルかアイラも使いたいの。良いわよね?」


「ああ、兵が集まってるのは知っていましたが、援軍だったのですか。もう攻めていたとは……素晴らしく速い行動ですね」


「ビビアナがチエン領を通って行ったのでな。ビビアナ軍が邪魔で兵を動かせない内に、主要な拠点を落とすくらいはするさ。しかし早く帰って来てくれて助かった。フィオとガーレだけでは指揮官が足りないし、レスターに将が居ないと危なっかしい。で、ダン。何か異論があれば聞くが?」


 これかるーく言ってるけど、グレースの周到な準備がありそう。

 そしてカルマの決断力も素晴らしい。

 拙速は巧遅に勝るを完全に実行するとはやるねぇ。


「バルカさん、如何思われます?」


「出す将はダンの気分で決めて宜しいでしょう。戦略の方は流石トーク姉妹の一言。献策は御座いません」


「そ、そう。有難うリディア」


 ……。実績がある人間に褒められると、誰でも喜ぶよね。

 でもこいつが策謀無しには褒めない気がして、怖いと思っちゃう私は心が汚れてるのだろうか。

 カルマだって素直に喜んでるのに……。

 ……深く考えまい。さて、どちらを出すべきか。


「んー、私としては出したくないのですけど、アイラさん、戦いたいですか? 戦を長く離れた所為で腕が鈍りそうだとかあります?」


「……? 腕がなまるって……なんで? 僕、ちゃんと鍛錬してるよ。賊の討伐もした」


「なんか、こー、偶には戦場に出ないと勘が鈍るなんて話を聞くんですけど……」


「? ごめん、ダンが何を言ってるか分からない。僕は、僕」


「……あの、グレースさん、アイラさんの為に出陣してもらった方が良いのでしょうか? 何時かは出て貰う日が来ると思いますし、私の我儘で温存し続けた挙句鈍った腕で戦場に送り出す日が来ては申し訳なくて」


「貴方の考えは分かるけど、その子、何故か更に強くなってるわよ。ガーレがまた差を付けられたと嬉しそうに言ってたわ」


「え、そうなんですか?」


「うん。ダンが来てから、色々ご飯が美味しくなったし、楽になった。僕、強くなったと思う。……でも暫くダンが居なかったから、少し戻っちゃった」


 そりゃ食生活には全知全能を尽くしてますけどね。

 鍛錬が終わって三十分以内の食事、動物の乳でカルシウムを摂取、等々。

 

 ま、本人がこう言う以上、たかがデスクワーカーの身で、最強が擬人化したみたいな人相手に余計な気遣いをしてしまったってこったろーな。

 見た目では今一感じられないから、ついつい余計な心配をしてしまう。

 しょっちゅう鍛錬でこの人にボコられてるのに、未だ女性は男性より殴り合いが弱かった地球の感覚を引きずってるのだろう。

 ……何とかして直さないとまずいな。


「じゃあ、ラスティルさんが嫌だと言わなければ、アイラさんにレスターを守って頂いて良いですか?」


 ……こっくり頷いてる様子は、やっぱり可愛いお嬢さんにしか見えない。

 ……。下心は駄目駄目。

 一緒に住めなくなると、私が身の安全をどうやって確保してるのかという疑念を抱かせてしまう。


「ラスティルにはあたしから尋ねるわね。で、貴方たちはどうするの? リディアも行ってくれるなら安心と言えば安心なんだけど」


「いえ、私たちは休暇を貰います。バルカさんには向こうで大変な苦労を掛けました。疲労を完全に抜いて頂かないといけません」


「ダン、(わたくし)はそれほどには疲れておりませぬ」


「もしかしたら無駄な気遣いかもしれません。でも自覚してない疲れがあって病気になったらと不安でして。お願いできませんか?」


 体調管理は一に休み、二に休みだと思う。

 ストレスは自分でも把握仕切れない。


「あら……恋人を気遣うように気遣うのね……」


「いや、これは娘相手のようではないか?」


「……私の方が年長ですし、若者が無理をしてるのでは、と心配するのは仕方ないでしょう? グレースさん、バルカさんが居なくても特には問題ないんですよね?」


「ええ。万が一に備えて、って程度よ」


「……承知いたしました。お気遣い有り難く頂戴いたします」


「そうしてください。で、カルマさん、チエン領戦の功を褒賞する時、バルカさんに高い名誉を与えて欲しいんです」


「また突然だな。今まで頑なにリディアを隠そうとしていたのに、どんな心境の変化があったのだ?」


「ビビアナと交渉する際、無名の者では向こうが悪く取るかもしれないと思いまして。型紙破りではありますけど、バルカさんの献策と努力あってこそ我等は大きく成長出来たのですから、建前を事実に少し追い付かせるだけだと思うんですが」


 カルマたちも、こちらが勢力のバランスを取ろうとしてるのは気づいてると思う。

 が、拒否はしまい。事実必要だしリディアの機嫌を損ねては向こうとしての最善手、私以外の人材を取り込む可能性を低めてしまう。


「尤もだな。リディアも良いか?」


「勿論。これは(わたくし)の献策です。今回準備を整えられたグレース殿にとってはご不快でしょうが、ご寛恕いただきたい」


「不快ではないわ。大本はリディアの献策だし、以前譲られた功の方がよっぽど大きいもの。

 心配なのは、窮地から脱してビビアナの気持ちが変わってないか、よ。リディア、気を付けてね」


「グレース殿の働きで環境は十二分に整えられております。多少の問題が起ころうと、何とでも出来る範囲に収まるでしょう」


「そう……流石ね」


 はい、流石です……。

 私も人事は尽くしてあると思う。しかし同じ立場でこの確言、出来る人が他に居るのだろうか?

 相変わらず理想的だ。何時か表面上だけでも同じ様子を保てるようになりたい。

『失敗すれば命を持って償いましょう!』みたいな気負いさえ欠片も無いってのがもう……。

 現実でそんなセリフ聞いたら、失敗した場合は相手側に付くつもりかな? と、思うけどね。

 

「カルマさん、褒賞を与える時は、全幅の信頼を置いていると人々が感じるようにお願いしますね」


「言われるまでも無い。それに実際リディアは信頼している」


 そりゃ結構。ちなみにカルマさんや、『は』って言いつつ私を見ても意味ねーずらよ。

 わたしゃオウランさん以外の誰に不信感持たれようが、何とも思わんからね。

 ……ちょっと違うか。何とも思わないようになるべきだからね。だな。


 さて、これで全て計画通りなのが確定した。

 後は流され続けて、ビビアナとイルヘルミの勝者が確定するまで出来る事は無い……かな?

 まぁ、ゆっくり考えよう。

ロト太郎様より、時節に適った絵を頂戴しました。

挿絵(By みてみん)

題を付けるなら、童貞殺すリディア。でしょうか。

訳分からない人の為に書きますと、中国で売り出されたセーターで、本当にこれがあるんです。

そして、一部で付けられた固有名詞が『童貞を殺すセーター』分かり易いですね。

ロト太郎様は、これならダンも即死やろーと仰っています。

ええ。五分と持ちませんね。

なので、四分以内に「私と会う際にはこの服を着ないでください」と言って脱兎の如くです。

ロト太郎様のピクシブは以下のurlになります。是非感想でもお書き頂ければと思います。

http://www.pixiv.net/member.php?id=12051806

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ