表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/215

リーア先生の解説2

「……ビビアナと裏で手を組んでいた真田が、情を通じていた彼女を使ってカルマと連合軍を不仲にする為の策。そういった感じで訴えるのは如何でしょうか? 侯爵であるカルマと精々子爵の真田であれば、幾らか無理があろうとこちらの言い分が通るでしょう。マリオから大層嫌われていたように感じましたから、マリオ、イルヘルミを使って真田ごと始末を。リーアさんが表に出る必要が出たり、無理そうなら逃げますか。軽騎兵隊である私たちには誰も追いつけませんし」


 さて、昔読んだ漫画だったら覚悟の決まった人間でさえ、敵からも応援して貰いながら涙目で『見敵必殺だ! それが誰であっても……』って言う場面なわけだが……。

 まぁ、覚悟決まったって言っても罪の無い人間数十人を殺す命令如きで、超重要な場面的感じに『見敵必殺! 見敵必殺だ!』って脂汗流しつつ叫ぶ程度の物だけどさ。

 ……自分が食べる豚さえ殺さない人用に作られたお話しと、生きたければ殺すしかないこの時代を比べてどーすんねんって話だった。

 しかし本当の意味で覚悟が決まってる此処に集まった人だって、万に一つの可能性とはいえ親しくしてる者を殺すと聞けば少しは動揺すると思うんだけど、リディアは眉をピクリとさせただけ。

 

 いやはや……十八歳でこれか。

 ……十歳でもこれだったかな。


「……よろしいので? 彼女の命は当然、名誉までも地に落ちますが」


「おや? 私を試してるのですか?」


「とんでも御座いません……されど彼女には特別な思い入れをお持ちでは? 彼女の事ですから何らかの逃げ道を用意してくれているかもしれません。しかし、その手法を取るなら様子見は不可能。最初から始末するつもりでやらねばならず、途中での修正も難しい。彼女がどうなろうと後悔なさいませんか?」


 あんれま……バレてたか。

 つーかその言いかたは……。


「やっぱり試してるんじゃないですか。関係ありません。不都合を起こすのであれば今後だけを考えて処理を。勿論もっと良い手があればそちらにしてください。とにかく手加減も配慮も無用です。そんな余裕は無いと思ったのですが? あるいは日頃親しくしていた貴方が情けを掛けたいのですか? そうであれば私は何も言えません」


「おや、(わたくし)が試されてしまった。関係ございません。敵は速やかに、良い結果になるのだけを考えて処理するに限ります。裏切り者となれば尚更に。それにしても全く迷いを見せないとは流石我が君、敬服致しました。

 古今を問わず主君が思い入れを抱く異性を取り除こうとして怒りを買い、逆に殺された者は無数に居る。その為どうするべきか迷っておりましたのに。主に迷いが無ければ(わたくし)としても大変やり易い。……彼女に爪の垢を煎じて飲ませたいほどです」


 ま、そう出来るよう何年も努力してきてますし。

 加えてラスティルさんがその手に出た場合、私にとって余裕は欠片もない。

 リディアが考えている以上に、ね。


「異性って……逆に殺すって……両方無理というか……。いや、まぁ光栄です。元より私に出来るのは貴方の邪魔をしない事だけですから、その点だけは努力しますよ。しかし……今思ったのですが実はこうなるの予想通りでした? 貴方に彼女の躊躇程度が読めなかったとは思えません」


「……はい。ご賢明であらせられます。あのように義理堅い性格、一度義理を果たさせた方が良いと愚考致しました。少々危険ではありますが、少しは解消しなければ何時まで経っても不安を抱えることになる。もしも敵となるのであれば早いほうがよい。……ご相談すべきだったでしょうか?」


 ごもっとも。

 獅子身中の虫が最も困る。

 なんせ知られたくない秘密が山ほどあるんでね。

 必ず私に従ってくれる人でなければ、配下として扱うのは不可能なのだ。


「いいえ。よく考えてなかった私が間抜けだったのです。足りない所を埋めてくださり有難うございます」


「お言葉有り難く。……ただ情けなくも一つ謝罪の必要が。ソウイチロウ・サナダとユリア・ケイの二人に関しては想像をはるかに超えておりました。あれは若者にとって余りに強い光です。目も見えなくなりましょう。計算していた以上に彼女が危うくなってしまった。

 ご相談頂いたというのに、愚策を献じてしまったかもしれません。どうかお許しください。サポナの件で幾らかでも我が君へのご恩を思い出させようと致しましたが……」


 そう言ってリディアは私に頭を下げた。

 ……やはりこいつに頭を下げられると嫌な感じがする。

 でも以前に謝罪が必要な時もあると言われて押し切られたんだよね……。


 しかしさっきのはそういう意図もあって厳しく言ってたのか。

 気遣いは有り難いけど、焼け石に水だろうな。


「謝罪は要りません。連れて来たのは先ほどの件も含めて最善手でしょう。しかしリーアさんでさえ魅力的に感じましたか。いよいよもって不味そうだ。貴方も若いお嬢さんですし当然でしょうねぇ……私の目にも多くの人にとって魅力的な人間であるように見えたのですから。大変な美形にも驚きました」


「今申し上げましたのは一般論。(わたくし)としては不快な男でございます。あの男、幼き頃よりさぞ周りから大事にされてきたのでしょう。この世の誰よりも自分が清く正しいと信じ切っていた。(わたくし)とは決して交わりません」


 は、ははっ。その通りだ。良くぞ見通した。

 日本人である以上、この国ではまず在り得ないほど大事にされて育ったと考えて良い。

 それに私の元の顔と今の顔に其処までの差が無いのを考えると、奴は元から大した美形だったんだろうさ。

 それにあの物怖じしない正直な性格に加えて、レイブンが褒める程強いのであればさぞ人気者だったに違いない。


「ふむ。しかし彼は民から非常に慕われているそうです。その上、以前細作が報せて来た画期的な農具とやらもある。多くの食料を作り、民を最も幸せに出来るかもしれませんよ? 清く正しいと言えるのでは?」


「それが領主として正しいのは間違いありません。イルヘルミ、カルマ、ビビアナ、皆そういった意味では己が正しいと信じている。しかし奴は違います。全ての意味で正しいと、清いと信じている。馬鹿な。どんな行いが清く正しいかなど結果が出て尚分からぬ物だというのに。……我が君、承知の問いをなさるのは趣味が悪うございます」


 はっ。ははははははっ!

 爽快な! 気分だ!

 そう、誰が真に正しいかなど神ならぬ身に分かる訳もない。

 私も自分が正しいかは知らん。

 最終的にマシになる確率が高い、と思ってる。いや、希望しているだけだ。


 リディアの両手を握って上下に振りたい気分。だけどそうもいかんのが残念だ。

 真田を嫌いと聞いてどれだけ喜んでるか、知られたくはない。


「すみません。私も同意見なのですが、人によって考えが違うと思ったので。

 正直な所安心しました。彼のような私ではとても取れない行動を取っちゃう人に、誰もが惚れこんでしまうのでは途方に暮れてしまったでしょう」


「あの行動、殆どの者には取れますまい。しかし若い者の目には決断力と天運を持ち、魅力的に見えるかと。マリオから兵糧をせしめたのは何も知らぬ配下と兵達にとってさぞや痛快だったはず」


 だろうな。

 真田もあいつなりに上手くやってるわけだ。

 困った話だが大したもんだぁね。

長くなったので分割。明日投稿予定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ