リーア先生の解説1
「と、いった所が其々の思惑かと愚考いたします」
リディアの説明ホンマ有り難い。
そっかー、マリオを扱いやすくするため先に戦ってたのね。
真田の超運と思った物も色々と根回ししてあったはず、か。
そうだよ、あいつにだって脳みそもあれば軍師も居るんだ。
幸運で何とかしたと思うなんて寝ぼけてた。
反省しよう。
「しかしサナダ陣営の思惑は判然と致しません。ケイの血縁を主張する者が居るのではビビアナと組むのは厳しいですが……。或いは今回の戦でどこかの諸侯と縁を繋ぎ、逃げ込もうとしてるのやも」
恐らくは……オラリオの所を狙っている。
そこを経由してケイ帝国西の果て、真田の知識をもっとも活かせそうな山に囲まれたムティナ州へ行きたいはずだ。
スキト家からでも行けなくはないが、中央に出やすいオラリオの方が良手と考えてそう。
しかしリディアにそれは言えん。
真田についてリディアより分かってしまうのを示しちゃあかん。
ここにはラスティルさんも居るのだ。
で、そのラスティルさんなのだが、話がすすむにつれて複雑な表情になってしまっている。
喜んでるような、悲しんでるような。
「ラスティルさん、どうかされましたか? 今の話に何か問題でも?」
「いや、恐れ入っていたのだ。私は素晴らしい主君と同僚を持った。リーアの説明、まず間違い無かろうと思う。そして全てが二人の考えによって崩壊するのだな? 誰もがビビアナとカルマの敵対を前提に考えているのだから」
「二人ではなくリーアさんの考えですけどね。そうなるでしょう」
「……実は我らの方針を決める話を聞いた時から、サポナ殿がどうなるのか気になっていた。或いはビビアナの配下となるのを選んでくれるかもと……。されどここにきてしまった。であれば……サポナ殿は死ぬしかないのか?」
それか。
今の方針を取るようにカルマたちを説得した時、遠まわしにサポナが敵になると言ったのにラスティルさんが何も言わなかったのを不思議には思っていたけども、今聞いてくるのか。
……このご時世に友人を殺したくないからと言って、何とかして助けたいなどと言い出したら……堪らんな。
「十中八九。して何が仰りたいので? 貴方の友人を守るため、カルマと我等に最善の一手を諦めろとでも?」
「いや、そうではない。我らがビビアナと組んだ。そう知った時諸侯がどれ程衝撃を受けるのかを考えると、正直に言えばこの陣営に居て良かったと安心してさえいる。しかし……二人の策においてサポナ殿の死は必要ではないと思うのだが……如何だろうか」
「……リーアさん、どうでしょうか?」
「確かに。されどサポナの領地を手に入れない限り、ビビアナはイルヘルミと戦わないでしょう。そしてサポナがずっと耐えてしまえば、イルヘルミとマリオの同盟はビビアナの力を越えかねず、我らも危険となる。サポナの支援は出来ませぬ」
「領地を守るのまでとは言わん。されど支障が無いのであれば、命だけは助かるように知恵を貸して頂けぬか」
「……ラスティル殿、マリオとビビアナは母違いの姉弟。イルヘルミとビビアナもザンザが死ぬまでは非常に親しかった。かく言う私も姉がイルヘルミの元で働いております。可能であれば助けも致しましょうが、殺す時が来るのも覚悟しているのです。全ての諸侯が領土を増やそうと争う今の世では当然でありませんか。貴方はこの現実を理解しておられるのか? 貴方のご友人が危機となる度に、私と我が君に助けてくれるよう頼むおつもりか?」
「そんな事はしない。どんな世の中かもわかっている。いや……本当に分かっていればこのように言いはしないかもしれない。しかし……義理があるのだ。彼女が死ぬ後押しをすると分かっていながら、今までと同じようにサポナ殿と付き合う自信がない」
「……我が君、如何なされますか」
はぁ……。ラスティルさんらしいとは思う。
……真田の分、頼み難くするくらいのつもりで願いを受けてもいいか。
「リーアさん、何も不都合が無ければ教えて上げてください」
「御意のままに。……ラスティル殿、三つサポナに助言されては如何。
一つ、ビビアナがランドに留まらず逃げた場合、領地に帰り着くのがビビアナよりも遅くなってしまわぬよう追撃せず自領へ帰る。
二つ、この連合軍でビビアナを殺せず、自領へ攻め込まられれば耐えきるのは不可能。ビビアナが兵を発した時は戦わず逃げるように。
三つ、連合軍と戦ってる間に諸侯と親しくし、受け入れてくれる相手を確保するのです。獣人達の領地を抜ける自信があれば、我等の元へ誘っても良いでしょう」
げ、最後の助言は不味い。
それだと一番親しい真田の所へ行くのではないか?
辺境に住み、百戦錬磨の武将でもあるサポナが真田の力となっては面倒が増えちまう。
シクった……もうどうしようもない。
いや……元領主であるサポナが真田の元に行けば、内部抗争の元となりうるか?
三国志で劉備の元に逃げ込んだ呂布が、劉備を裏切ったように。
真田とサポナが親しいのを考えると……あまり期待できんな。
……先を考えすぎか。
全てはこの戦次第。まだ何も確定してない。
「成る程……。貴重な助言感謝致すリーア殿」
「勘違いなさいますな。貴方が助言を得られたのは我が君のお陰。感謝する相手を間違えておられますぞ。
加えて先ほど『彼女が死ぬ後押しをする』などとおっしゃったが、サポナが領地と己の命を無くす結果になりそうな事、我々は関与しておりませんぞ? 我々がどうしようとも、サポナはビビアナに潰される。サポナが生き延びたければ、ビビアナに従属するのが最善手だったのです。
大変低い可能性に縋って独立を望みビビアナと戦うと決めたのは彼女。一族郎党皆殺しになろうとも我等に責は御座いません」
リディアのはっきりとした言葉を聞いたラスティルさんは、数回何か言おうとしたが、結局黙ってうなだれた。
サポナの領地は先祖代々らしいし、どうしてもって気持ちは分からんでもない。
が、この状況を選択したのは自殺同然だと私でさえ思うんだよね。
「そうだな……その通りだ。乱世の武将として情けない所を見せてしまった。拙者の拘りに配慮してくれて感謝するダイ」
「ラスティルさんのお気持ちもわかりますから。ただしリーアさんから聞いた話をする時は、グレースからだと言うのをお忘れなく」
「承知している。さて拙者は自分の幕舎に戻る。今一度乱世を生きる武将としての自分を、見つめ直すとしよう」
そう言った後ラスティルさんは去った。
私たちは黙ったまましばらく待つ。
ラスティルさんが二つ隣にある自分の幕舎へ入る音が……した。
さて相談しましょう。小声でな。
「……やはり普通は彼女みたいなものですか?」
「はい。乱世になってまだ五年程度。友人だった者の死ぬ要因があれば、排除して当然と考えても奇妙とは言えませぬ。吹っ切るであろうと思いますが……」
「ふむ……。戦場で槍を振るい、兵たちを殺すのと友人が死ぬ可能性を見逃すのはやはり違いますか」
「それは……当然では? 武人の本懐と、馬を並べて戦った友。しかも自分の生死に直接関与していない者の死を見過ごすのでは大きく違う」
分からんでもない。
が、やはり考え方が違うねぇ。
私がこの国では大きく違うと分ってはいるが。
いや、日本でも珍しい……のかな?
物語で死ぬ山ほどのモブを、どうこう言う話は珍しかったし。
この世に特別な人間なんて存在しないと思う私にとって、誰の死も同じ物。
そう考えられるようにずっと努力して来た。
でないと弱くなる。今のラスティルさんみたいに。
……物語、か。
色んな気が狂ってる悪人が漫画で描かれていたな。
そして大体の人間は人を殺してるから悪人だと言われていた。
何時の間にか、私はどんな物語に出てくる悪人よりよっぽど人を殺した人間になってるぜ……。
この国に居る殆どの人間がそうなんだけど。
もうどんな作品を読んでも鼻で笑ってしまいそうだ。
こっちに来てから実感したが、あの時代の日本は人類史において特に別だったのだなぁ。
倫理が余りに違う。
今の私はあの時代から考えればド外道なんだろうけど……日本に居た頃よりは今の方が善人だと思うね。
なんせ生活がエコだ。
日本に居た頃と比べて踏みにじってる物が少ない。
と、こんなどうでもいい事考える時じゃないな。
「……それはそうですね。さて、もしも私たちの方針がサポナへ、其処からイルヘルミ、マリオと伝わっては困ると思いませんか? その場合彼らは我々を捕らえてカルマとの交渉材料にしようとするでしょう」
そうなればカルマは私たちを切るだろう。
それは困る。
「サポナを助ける為に我々を殺すような真似はしないと信じておりますが……その場合は?」
さて……選択肢は無いとして……もしもの場合にずっと考えていた手を応用するのはどうだろう。
物見櫓様より支援絵を頂きました。ダン気味悪いverです。
改めて、というかまたもダンを描きました。衣装や髪型が変わったわけではないが、何となく雰囲気的に「胡散臭さ」だけでなく「気味の悪さ」も付け加えたほうがより黒幕ムーブが加速すると思った次第。もはや主人公といっていいのか。
やはりこいつは敵キャラですね(確信)
キャラ紹介文的な背景で描きました。
との仰せです。
……。うむ。酷い。いいぞ。
改めて言うまでもない気がしますけど、ダンは公明正大で人間の味方で、現代日本最高と思ってそうな『なろう主人公』ではありません。
というか恐らく累計作品におけるどの話に入っても、九割以上敵になりますねこいつ。
でもまぁ、俺らの中にだって彼の行動方針に一理あると思ってくれる人は結構居る……と期待してます。
所で、このダンには負けイベントで出て来くる、人類を塵芥のように考える悪役の雰囲気がムンムンしていると感じたのは私だけなのでしょうか。
物見櫓様が明察しているのか、誤解してるのかは秘密としておきましょう。
そしてもう一つ。
おまけ(パロ絵)
ジョジョ(アニメ)を視たあと、ふと何となくネタが浮かんだので描いてみました。
ダンとMOB官吏さんたちの日常風景
モブ「ダンさん よろしかったら・・・あたし達と『お昼』ご一緒しませんか?」
ダン「お誘いはとても嬉しいのですが・・・この書類をグレース様に早くお届けしなくてはならないので・・・申し訳ありませんが また、別の機会に」
自分で描いといてなんですが違和感なくて草生えそう。
重ちー役は誰になるのか・・・フィオ?いや、フィオはどちらかと言うと川尻早人か。
その場合、アイラがしのぶ役になってしまうがw
だそうですけど……やっべー。まじド嵌りしてるんですけどー。
ってちゃうちゃう。業なんて背負って……ました。
この素敵な悪役をモデルに描いてる訳じゃ無いんですが、ある日気付くとドンドン精神的に近くなってました。恐るべし荒木様。
フィオが川尻早人……ドキっ。いや、何でもありません。
アイラがしのぶ……ドキドキッ。いえ、何でもありません。
日常に関してはマジこんな感じ。というか、彼ほどの基礎スペックは無い……つもりで書いてるので、これ程の評価を得られてるかは微妙です。
しかし、目標がこの評価なのは間違いないですね。
詳しく考えちゃうと話が崩壊するので、適当に考えて欲しいのですが、百万人を支配しているカルマの妹グレースのお気に入り秘書官として動いてるので目立ちやすい立場です。
それをカバーするためにソツなく目立たない感じになるよう頑張ってます。
物見櫓様、深く内容を理解した上に支援絵を描いて下さり心より感謝いたします。
ピクシブurlはこちら。よろしければ絵の感想でも書いてくだされば私が喜びます。
絵をクリックすると、おまけ絵が出てくるシステムの模様。
http://www.pixiv.net/member.php?id=794715