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ケイ貴族の子育て事情

 私は其々思惑の違う諸侯が集まる以上、相当な混乱があると考えていた。

 しかしイルヘルミが場を仕切り調整することで順調に進んでる。

 以前会った時の人柄から考えて、さぞ無理をしてそうだけども。

 いや、やろうと思えば何でも出来てこそ、乱世の英雄と言うべきなのかもしれない。


 私は陰ながら応援するのみ。

 私としてのベストは、ビビアナがちょっと痛い目にあって泣きっ面の所を助けて恩を売り、その恩を使って隣に住んでる真田を捻り潰す事なのだ。

 イルヘルミにはそうなるよう頑張って頂きたい。


 私のそんな願いが何処かのお星さまに届いたのか、軍議は熱を帯びるようになり誰もが勝つための考えを発言し始めてくれた。


「なぁ、オレはソラの方へ行った方がよくないか? だってアクアは城攻めみたいなもんだろ? オレの兵は騎兵のみだから活躍出来るとは思えないんだ」


「確かに仰る通り。されどソラも城攻めになる可能性は高いのです。ゆえにテリカと八万の兵は外せませぬ。そしてアクアの兵をあまりに少なくしては、関より出て来た敵兵に一蹴されてしまいかねない。ゆえにメリオ殿が率いる一万の騎馬は外せないのだ。

 敵が出て来なければ待つのみとなってしまうが、我慢して頂きたい。相手がアクアの兵を減らせばこちらから抜いて、ランドまで一気に駆ける機会もありましょうほどに」


「それなら仕方ねーな。オレとしてもイルヘルミに文句を付ける気はねーんだ。ケント様を救えればなんだっていいしよ」


「ご理解に感謝をメリオ殿。ソラの方はテリカ殿に総指揮をとって頂こうと思う。彼女ほど攻城戦の経験を持っている人材はおりませんからな」


「アタシとしては望む所です。しかし所詮はマリオ殿の客将であるアタシの指揮では、不快に感じる人が多くはないかしら? それ位ならばジョイ・サポナ殿が指揮をとり、アタシが助言をする形にした方がよいように思えますが」


 テリカの地位は低いのか。

 私なんかはあの江東の虎フォウティ・ニイテの娘でイルヘルミが実績十分と判断したのであれば、と思うのだけど。


「テリカ殿はこう言っているが、サポナ殿はどう思われる?」


「アタイとしてはテリカに指揮を頼みたいさ。アタイの経験は火の部族相手の野戦ばかりだ。攻城戦は全然分からん。……この戦いアタイは絶対に負けられない。勝つ為だったら何だってやるよ。この戦の間テリカに従うと誓紙に書いてもいい」


 おー。サポナは謙虚な人だ。

 必死だからというのもあるだろうけど。

 で、テリカは……あんれま。

 あからさまに顔をしかめてる。


「それは流石に遠慮するわ。戦歴の多さなら、アタシの父上よりも多い貴女に誓紙を提出させるほど己惚れてはいませんから。むしろサポナ殿を頼りにさせて頂きたく思います」


「そんな風に言われると面はゆいな。戦歴が多いと言っても殆どは北方異民族相手。ケイ人同士の戦いにどれだけ当てはまるか分からないしさ。しかし……あのフォウティ殿があんなに早く亡くなられるとは思わなかったよ。生きていてくだされば、この戦でどれだけ頼りになった事か……残念だ」


「……その御言葉、有り難く思いますサポナ殿」


 サポナの言葉に殆どの人が頷いて同意を示している。

 確かにフォウティが生きていれば、ソラの街を攻める別動隊はより安定しただろう。

 

「……居ない人間を惜しんでも今は改善されぬ。サポナ殿、そう考えてくれると信じておりましたぞ。テリカ殿の補佐をお願いしたい。他の皆様も聞きましたな? サポナ殿の立場は大小の違いはあれど誰もが同じはず。テリカ殿を大将とするのが勝つ為の最善手。不満があろうとも抑えしたがってもらう。……マリオ殿、何かございますか?」


「ふむ……。このテリカの有能さは余も保証しよう。安心して従うがよい」


「テリカ殿、一応申しておきます。余りにも従わない者が居れば、わたくしとマリオ殿に言ってくだされ。処罰はこちらで致します。それと、それぞれの被害に偏りが出ないようお気を付けを」


「承知致しました。一軍の将として依怙贔屓はしないと誓うわ」


 はー、この中で一番若いだろうに立派なもんだなテリカは。

 大変堂々としている。


「虎の娘は虎だなぁ。こんな立派な後継ぎが居てフォウティ殿が羨ましい……」


「おやサポナ殿、子供は? 辺境では忙しくて子供を作るのも大変だったと思われますが」


「明察だイルヘルミ殿。何とか一人産んだんだけど、とてもテリカ殿みたいになってくれそうもない。せめて丈夫に育ってくれればと願う日々さ。イルヘルミ殿は……確か凄かったよな」


「ええ。世が乱れる前にと考え、二十のころ三人産んだのは少なからず自慢です。最も才のありそうな三番目は死んでしまいましたが、上の二人は丈夫に育っております」


 あ、自慢げに胸を張ったのに揺れてない。

 ブラジャーしてるんだなー。残念……。

 ……あれ? 姿勢変えた時横ちーちが見えたのだけど、ブラジャーは見えなかった。

 どういう構造をしてるんだこのドレスもどき。


 なんて考えつつマジマジと見ても顔を隠してるので、周囲に気づかれる心配はない。

 我ながらこの服は名案であったな。


「いや、この状態を予期してたってのも凄いけど、そうじゃなくてさ……。その子供たちの父親が配下の誰か分からないんだろ?」


「うむ。良い種を持ってそうな男は皆配下にして抱いたので、配下の誰かだとは分かってるのだが……。ま、大事なのはわたくしの子供だという事だけ。子供が優秀であれば父親は誰でもよいでしょう」


 うわっうわああああ。

 すんげー考え方だ。

 ビッチ、肉食系、そんなありふれた表現ができないこの感じ。

 戦国時代では女の腹は借り腹と言ったらしいけど、それの逆と来ましたか。

 こええええしツエー……。


「アタイはイルヘルミ殿みたいに割り切れんよ。しかし子供という意味でもこの戦乱には困ったね。何時戦があるかと思うと、子供を作ってる暇がありゃしない。配下にも愚痴られる始末さ。テリカ殿もそうじゃないかい?」


「……ええ、まぁ、確かに。アタシと配下の場合は男を見つける所から探さないといけないのですけど、その暇もありませんね」


「ほぉそうだったのかテリカ。ならば余の子供を産むか?」


 ひょげえええええ!

 何コイてんのこの耽美! イケメンでも許されない発言ってあるのだぞ!

 連合軍を作った手腕は大したものだけど、もしかして下々の感情を全く配慮出来ない人ですかこの人。


 待てよ? ……以前日本に居た頃金持ちイケメン権力者が、こういう台詞を普通の学生って事になってる主人公に言う少女漫画が結構あったような……。

 マリオだってイケメン権力者の超ブルジョワだ。

 人によっては許せちゃったり、胸キュンしちゃったりするのだろうか?

 テリカの表情には、ちょっと驚いた事を言われた程度の変化しか無かったけども……。


 この雑談もどき、連合軍の間、特に別動隊を動かすテリカが纏めやすいように親睦を深めようとしてる気が私はするんだ。

 テリカがイルヘルミ、サポナも認める戦歴豊かで立派な人物であり、最強と言われたフォウティの娘だけあると皆に知らしめようとしてる……のだと思う。

 少なくとも不快な顔をしていた人間は居なかった。

 さっきのテリカの愚痴にも諸侯は全くだ。という感じで頷いておられた。

 ……皆子供が作れなくて困ってたのね。

 いや、こんな戦乱の世ではどうやって後継ぎ作ってるんだろうなーとはおもってたけどさ……。


 なのにこの調子こいたイケメンよい空気をぶっ壊してませんかね?

 それとも私がお貴族様の常識を分かってないだけ?

 

「……お言葉は有り難く。されどこのように傷付いた体で、マリオ様が持つ美しい側室の方々と比べられたくはありません。加えてマリオ様の後継者争いに加わわる気があると誤解されても迷惑千万。配下達もご勘弁を。一夜を共にした配下が惚れてマリオ様の配下になりたい。と、言い出しては困りますので」


「なるほどそれは困ろう。ま、戯言だ。気にするな。しかし女どもは不便よの。子供を産むのも儘ならんのでは家が断絶してしまうではないか。領主となれる優秀な者が余以外に中々出て来ない男こそ情けないのかもしれぬが」


 あ、こいつ本当のアホだ。

 ほぼ全員が一瞬だけどイラッとしてたぞ。

 いや、マリオの権力をおもんばかって抑えたのなら、激怒か?

 ここに居るほぼ全員が子供で悩んでるのは分かり切ってるだろうに、自慢げにそんな台詞を言われたらそりゃね……。


 こいつ力を持ってる内は良いけど、隙を見せたら寄ってたかってむしり取られそう。

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