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連合軍軍議開始

「皆の者よく集まってくれた。余がマリオ・ウェリア。この連合軍の盟主である。そして横のイルヘルミ・ローエンが副盟主となる。異存のある者は去るがよい」


 おお、ズバッと来た。

 そして誰も不満の顔を見せない。

 流石マリオ。ケイ帝国ナンバー2は伊達じゃないってところか。


「異論は無いという事でよろしいかな? では副盟主として挨拶をさせて頂く。わたくしはイルヘルミ・ローエン。見知りおきを願おう。

 皆マリオ殿は当然として、わたくしの副盟主には不満があろう。しかしこの軍の軍師だと考えて我慢していただきたい。この諸侯連合が烏合の衆とならず、ビビアナを打倒する為に最善を尽くすと約しましょう。さて皆さま、お名乗りください」


 イルヘルミは微笑みながら敬語で喋っているだけなのに、目に見えそうな程の気迫を感じる。

 つまりは、それだけ気合を入れないとまずい戦いって事か?


 私が考えを巡らせている間に良く知らない諸侯たちが名乗りを上げ終わり、注目してる人達に順番が回って来た。


「アタイの名はジョイ・サポナだ。必ずビビアナを倒したいと思っている。皆よろしく頼む」


 そりゃ倒したいよね。

 領土が思いっきりビビアナに隣接していて何時潰されるか分からない人だし。

 なのに、だ。

 なんでここに居るの?


「サポナ殿が来てくださったのは正に僥倖。されど……ご自分の領地は大丈夫でしょうか? 貴女の領地がビビアナの物となってしまうと、我々も大変困るのですが」


 あ、イルヘルミが聞いてくれた。


「それは大丈夫だ。配下を国境線に配してあるし、ビビアナの主な将はランドに居る。ただ自領を守る必要から兵は五千しか連れて来られなかった」


 五千って……どうやって連れて来たんだ。

 一応ビビアナの領土と海の間に諸侯の領土があるけど……其処を走って来たのか?

 或いは船?

 リディアだって来ないだろうと言ってたんだぞ。

 それを覆すとは、どんだけヤル気に満ち溢れてるんねん。


「いやいや、その五千は五万に匹敵するでしょう。本当によく来てくださった。兵糧は大丈夫ですかな?」


「それが……心もとない。領地から運ぶのは無理だったんだ。鉄騎隊を連れて来たのに、馬も少し足りてない始末でさ。恥ずかしながら誰かの援助を頼みたい」


 やっぱり兵糧を運ぶのは無理だったか。

 だが当然援助をもらえるだろう。

 ビビアナを倒す為に最も重要な領地からきて、やる気に満ち溢れているサポナを助けず誰を助けるって話だ。


「その援助、このマリオが請け合おう。あの下女の娘を打倒する為には金も武具も惜しまんぞ。サポナよ、お前には特に期待している。よもや出自卑しいビビアナの足を舐めて生き残ろうとは思うまいな?」


「あん……マリオ殿、アタイを挑発してるのかい? アタイが独立を捨てビビアナの配下になっていれば、アタイの配下達が引きつけてくれている十万の兵はそっくりそのままランドへ行く。ビビアナだって悪くは扱わないだろうさ。だがアタイにそんな気はないよ。辺境だろうが父祖から受け継いだ土地を渡してなるもんかね。それともマリオ殿はアタイが態々戦の最中に裏切る為、ここに居るって言いたいのかい?」


「おお、お待ちをサポナ殿。皆貴女が一本気な豪勇の士であると存じております。誰一人裏切りなど考えるはずもない。マリオ殿、貴殿は盟主ですがわたくし個人としても大事な盟友であるサポナ殿には丁寧な対応をお願いしたい。彼女が居なければビビアナに対抗するのは難しく、下手をすれば我が領土も瞬時に征服されてマリオ殿ご自身が強大になったビビアナと戦う事になりますぞ」


「……それは困るな。どうやら口が過ぎたようだ。すまんなサポナ。お前を励まそうと思って言ったのだが。この詫びはお前に武具兵糧で苦労させぬ事で示そう」


「そりゃ有り難いね。言っておくけどアタイは最初からこれ以上無いくらい戦う気十分さ。励まされるまでもないよ」


「そうか。それはよかった。期待しているぞ」


 やっべぇ、マジウゼェこのイケメン。

 あのタカビーなイルヘルミが必死になって繋ぎ役をする羽目になってる。

 そら強くて偉いのは知ってるが……もうちょっと何とかしないと同盟が空中分解しかねないんでね?

 皆生き死にが掛かってるからある程度は我慢するだろうけど……。


「アタシはテリカ・ニイテ。マリオ様のもとで客将として仕えてるわ」


 そう言ってマリオに向かって一礼した後、全員に挨拶したこいつがテリカか。

 陸も優れているが川での戦いは滅法得意だと聞いている。

 誰よりもよく焼けた肌は、物陰の無い川で戦ってきた証明なのかも。

 それに炎のように波うち広がっている真っ赤な髪と金色の瞳……迫力あるねこの人。

 頬と腕のあちこちに走る多種多様な傷が、若さに似合わず多くの修羅場を潜り抜けて来たと言葉によらず語りかけてくる。

 ……いや、でもこいつ頭領だろ? なのにコレってずっと最前線に立ってたの?

 

 どう見ても耽美系で最前線に立つのは下賤な者の仕事。と、思ってそうなマリオとは相性が悪くね?

 だからってマリオに反意があるとは限らないが……後でリディアに聞いてみよう。


「あのフォウティ・ニイテ殿の娘がそなたか。マリオ殿のもとで幾つもの反乱を抑え、領内を安定させた勇名は我が領地まで聞こえておりますぞ。期待しております」


「戦いだけがアタシの取柄ですイルヘルミ殿。ゆえにその期待、必ずやお答えしましょう」


 命を掛ける戦で凄い自信だ。

 あの最強と言われたフォウティ・ニイテの娘なだけはある。

 ……マリオのもとで一将軍として戦うだけならまだいい。

 しかし独立し、こいつが長となって国を作りだしたら……。

 ……邪魔だな。

 この戦いの間よく見るとしよう。

 何時かこいつの情報を活用するときが来るのは間違いあるまい。


「オレはリョウ州のメリオ・スキトだ。父マテアスは異民族を抑える為に動けなくてな。ケイ帝国への忠誠を示してこいと言われてここに来た。しかしまさかトーク家より到着が遅れるとは思わなかった。待たせてしまったみたいでワリイ。これでも出来る限り急いで来たんだぜ」


「遠くからようこそお越しなされたメリオ殿。お帰りの際にはマテアス殿に北方の抑えをくれぐれもよろしくお願いするとお伝え願いたい。

 さて遅れたとの仰せだが、わたくしの予想より貴方は早く来てくださった。単にトーク家の参陣が早すぎたのだ。レイブン殿、どうやってわたくしの予想より三週は早く参陣できたのかご教授願えるかね?」


 あ、やっぱりそうなんだ。

 一言で言えば、リディアに任せたら六週間が三週間になりました。

 となるのだけど……。

 レイブン? 口を滑らせたら酒抜きだよ?


「そうは言われてもな……。ああ、失礼をした。某はカルマ・トークが配下レイブンでござる。お尋ねの参陣方法だが、グレースの言われるままに出来る限り急いで来たのみ。某は騎兵の指揮と移動速度ならば負けるつもりはないので、その功績もあるだろうがそれ以上は分らぬ」


 よーしよし、良いぞレイブン。

 今夜は二倍の量の酒を飲ませてやろう。


「ふむ……あの一戦で世に轟かせたグレース・トークの名に偽りなしといったところか。さてレイブン殿、グレース殿からの文でお主たちは戦わず兵糧の管理と護衛をさせてもらいたいと言って来てるのだが、それでいいのかね?」


「うむ。我が領地は今問題を抱えており、本当は参陣する余裕などない。されど以前に流れてしまった悪評を少しでも拭わんために、無理をして参陣いたしたので、それが限界でござる。

 もしも兵糧の管理を任せるほど信頼出来ぬというのであれば、従いまする。何にしろ前線に出る気はござらん。もしも兵糧の管理を任せて頂けるのならば、我が方の文官が皆後ろに居る二人と同じ格好をするのもご了承願いたい。皆さまの兵達が不満を個人に向けるようになっては対処に困りますので。

 某としても戦えぬのは非常に残念。されど寡兵ゆえお許し願いたい」


 あ、こいつ余計な一言を。

 いやそれよりもレイブンが参陣する余裕が無いと言った時、ここに居る全員が薄く、だがはっきりと反応したぞ。

 殆どの人間は同情を、少数の人間は馬鹿にしていた……。

 どっちとも、草原族と協力体制にあるとの情報を得ていれば出ない反応。


 やるじゃんグレース……すげーよ。

 フィオとリディアの分もあるだろうけど。

 ははっ! 素晴らしい! 完全に騙せている!

 しかも一番馬鹿にしていたのはマリオ!

 最も情報量が多い最大勢力を騙してんぞ!

 アハッ! 大好きだぜグレースぅ!


「ほぉ。トーク家と言えば辺境で戦い続けた武辺の家。まさかここまで来て戦わぬ臆病者の集まりとは思いもよらなかったぞ。武辺の者といえど三代目程度では家風が定まらぬということかな」


 おっとー。私たちもターゲットっすかマリオさんや。

 そう言えば君トーク家みたいな成り上がり嫌いそうだよね。

 加えてカルマが大宰相になった時の恨みも消えて無かったりする?

 私はこんな煽り屁でもないけど……。

 あ、やっぱりレイブンは怒ってる。

 抑えてくれるだろうか……。

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