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「分かったわ……負けを認める。さっきは嘘つき呼ばわりしてしまい、ごめんなさい。どうか秘訣を教えてくれないかしら。化粧を全くしてないアイラにも勝っているという事は、化粧以外にもあるのよね?」


「ワシからもお願いするダン殿。我らはこれまで犯してきたあやまちを取り返さないといけないのだ。何か条件があるなら言ってほしい」


 どうやら現実が分かったようだな。

 しかし少々勘違いをしてはいないかねぇ?

 二人に我が智の最奥を与える必要など全く無いのだよ?


「お二人とも、それは欲張りというもの。私は既に化粧の害を教えました。これだけでお二人は、他の女性よりも遥かに優位となったのですよ?」


「お、お前差に気付かせるだけ気付かせておいて、教えぬつもりか? それは余りに殺生というものだぞ」


「こ、こいつぅ……くっ……化粧をするなと言ってるけど、他にもっと大きな秘訣があるんじゃないでしょうね。第一あたし達は人前に出ないといけない時があるから、どうしても化粧を……ぐぬぅうう」


 二人はそう言うと考え込み始めた。

 何時もの私であれば、何を考えてるか分からなかったであろう。

 しかし今の私は違う。この二人の考えが手に取るように、我が考えとして分かる。


 私が二人に近づき、肩に手を置くと二人の体が跳ねた。


 そうだよなぁ、今私に肩を触られれば驚くよなぁ?

 クフッ。その考え、当ててやろう。

 私は驚愕も露わに目を見開いてこちらを見ている二人へ静かに、しかしはっきりと聞こえるようにささやく。


「お二人とも、今どうやって私から美肌の秘訣を聞き出そうか考えていましたね? あるいは……強引な手段を使ってでも、と。例えば……捕らえて体に聞くとか」


 おやおや、どうしたね?

 二人とも顔色が悪いよ?


 グレース? 忌々しい男がお前と姉に触れているが、良いのかなぁ~?


 お前が跳ねのけもしないから、二人が汗をかいてるのがよく見える。

 舐めずとも、何故汗をかいてるのかが分かる程に。


 つまり、このような汗をかくのであれば……。

 お前たちは次に

『誤解だ。そんな考えを持ったりはしない』

 と、言う。


「ま、まさか……命の恩人であるダン殿に対して強引な手段など……誤解だ」


「う、うん。姉さんの言う通り誤解よ。あたし達は誇りある貴族なのよ? そんな匹夫の考えを持ったりはしないわ」


 クカックカカカカカカカカカカ!


「成る程……確かに私は匹夫。誇りなど持ってはいません」


「ち、違うわ。い、今のは言葉の綾。ダンを侮辱した言葉じゃないの」


「そうですか。しかしお二人とも本心を隠さずともいいでしょうに。女性が美しい肌を求めてしまうのは業。千年前も千年後も続く業なのですから。それに私の配下も女性。この点に関してならば、協力さえしてくれるかもしれませんしね? ですが……」


「だ、だから誤解だと言ってるじゃないの。業だとしても、品位を失ったりはしない。当然じゃない。…………それで、何よ。まだあるの?」


「はいあります。私は肌を綺麗にする方法を知っている。ならば、肌を汚くする方法も知ってるのと一緒だと思いません? そして、私から強引に聞き出した知識がどちらの知識か分かるのはこの私だけ……。お二人が分かるのは、結果が出てどうしようもなくなった時かもしれない。私なら、拷問して恨まれつつ得たような知識は怖くて使えませんねぇ……フフッ、フフフフフフフフフ」


 伝わってくる。

 肩に置いたそれぞれの手から二人の怯えが、恐怖が伝わって来るぞ。


 そうか……これが、力か。

 数多の英雄が判断を狂わせるはずだ……。


 歴史に名を遺すかもしれない英傑四人を相手にして圧倒するこの力、本当は私自身も負け戦に抗っているだけだと理解していなければ、溺れていただろう。

 そう。突然見知らぬ他人に『私何歳に見えます?』とか聞いちゃう程に。

 有難う。そして有難うMHK。


 フフ、フフフフ。

 小鳥のように怯え、ウサギのように震えてるトーク姉妹が可愛いく見えて仕方がない。

 肌を美しくしたいのだよな? シミを消したいのだよな? よ~く分かるぞ。かつて私もちょいとばかり悩んだのだから。

 イチゴ鼻を消す為には、余り洗いすぎないのが大事ってのにはヤラレタもんだ。

 さて……話す前に二人の肩へ手を回して引き寄せさせてもらおう。


「お二人とも、まだ化粧をやめるべきか悩んでるのですよね?」


「し、仕方なかろう。これまでの十年毎日し続けて来たのだ。童で無ければ常にしておかなければ奇妙だとダン殿も思うのではないか?」


「すみません。私にそういう考えはありません。むしろお二人のような美人であれば、化粧は余計だとさえ思っています。しかしお二人の言葉が常識なのも分かる……そうですねぇ。化粧が必要な仕事を一部の時間帯だけに纏めて、その直前に化粧をする。そして終われば直ぐに落としてはいかが?」


「なるほど……。で、でも、本当にこの……クッ。し、シミは化粧の所為なの? 恥や常識を捨てて行動するだけの意味があるのか……不安なのよ」


「うむ。いいですよグレースさん。事は大事な肌に関しての話。慎重に慎重を期すのは当然。しかし……本当です。ねぇグレースさん、カルマさん。以前お二人が滅亡しかけた時は私の話に乗ったじゃないですか?」


「ぬぐっ。つまり『あの時のように救ってやろうとしてるのにその態度は何だ。肌に関しても恩を考えろ』そう言いたいのかダン殿は」


「いえいえ。それこそ誤解です。あの時私を試した結果は如何でした? 色々と我慢もあったでしょうが、こうして生き残り状態は良くなりつつある。少なくとも最悪ではなかった。これには同意してくださるでしょう?」


「……ええ。同意するわ。それで?」


「同じように、もう一度私を試してくださいませんか? 私が二人を助けるのかどうか。隣の領主に勝てたように。お知り合いの同年齢の人達と比べた時、勝てるかどうかを。加えて私としても磨かれた銀のように美しいお二人が、曇ってしまっては悲しい。ですから、今私はお二人に試してくださいと懇願しているようなものなのです。

 ……ああ、お二人ともすみません。肩を組むなど失礼極まりない。お許しください。同じ美しい肌を求める同士、親しみを感じてしまいまして……」


「べ、別に大丈夫よ。謝ってもらう程ではないわ。……近くではっきりと観察できたし」

「そ、そうだぞダンどの。……所で、やはりワシ達には他の秘訣を教えてくれんのか?」


「何時か機会がありましたらお話しします。お二人の美容と健康の為に有益な忠告をね。ただし、私たちの関係が良好な物ならば、です。……戦地の私たちに何か事件があったり、帰ってきたときに困った問題が起こっていれば……難しくなっても仕方ないと思いませんか?」


 私の言葉を聞いた二人は、更に顔色を悪くした。

 だよなぁ? 手としては色々考えていただろう?

 二人の状況なら当然だ。

 むしろ全く考えないような愚か者とは、同じ陣営に居たくない。


 だが……口が裂けたように笑顔となっていくのは止められんなぁ。


「さ、最初から誤解だと言ってるじゃない。安心して行って来てちょうだい。無事に帰って来てくれるのを願ってるわ」


「う、うむ。ワシもグレースも、皆が無事に帰ってくれるよう父母の霊に祈ろう」


「そうですか……有難うございます。お二人の言葉、とても、心強いです」


 私がそういうと、二人は挨拶もそこそこにふらふらしながら会議場を去っていった。

 それを見送った後、私たちも官邸を後にする。


 ……ウフッ、ウハハハハハハッ!

 いやぁ、滅茶苦茶楽しかったな!

 さて、アイラさんと家に帰るかねー。今夜の食事は何にしようかしら。奮発したい気分。

 と、リディアが付いて来てる。

 私が顔を向けると、ボソッという感じで呟き出した。


「……恐ろしい方だとは思っていましたが、こういった恐ろしさは考えに入っておりませんでしたぞ我が君」


 何を仰るリディアさん。

 悪い事はしてませんでしょうに。


「人聞きの悪い言い方をしないで下さいよバルカさん。私は親切にしただけじゃないですか」


「……はい。(わたくし)も以前して頂いた忠告にあのような意味があったと知り、ダンのご恩に感謝する事しきりです。しかし……(わたくし)どもにも他の秘訣を教えて下さらないのでしょうか?」


「おやバルカさんも欲張りですね。その内に、では駄目ですか?」


「主君であれば、褒美を出し惜しみするのは理の当然。しかし……早く知る必要がある知識に思われてならないのです……」


 確かになー。日頃の積み重ねが大事ではある。

 美人さんの肌が荒れて行くのは、私としても心が痛むのだけど……ちょっと勿体ぶりたい心もちぞね。


「うーん。やっぱり少しずつお話しして、段々とはっきりしてくる周りとの差を実感して頂いた方が有難味が増すと思いません?」


「我らの忠義は盤石で御座いますぞ? その様に勿体ぶって吝嗇な行いをすればかえって心を離れさせかねません。人は嫉妬に弱いもの。ご再考を」


「お、脅しても駄目ですからね。美肌に関しては幾つか試行錯誤してる物もあるのです。ある程度確信を抱いてから教えた方が親切でしょう?」


「確信をお持ちの知識が他にもあるのでは? アイラ殿。貴方からも願って頂きたい」


「え、でも僕はダンがこっそり色々してくれてるってさっき分かったし……。ダンが家に来た時よく分からない事いっぱいしてたけど、あれは全部僕の為だったんだよね? リディアにもきっと教えてくれるんじゃないかな? だってダン親切だもん」


 わ、わー。子供のように信じ切った目で見られてるー。


「……はい……まぁ、はい。……アイラさんには敵いません」


「なるほど……こう攻めればあっさり落ちるのか……。ううむ……流石アイラ殿と言うべきか……」


 うぬぅ、なんか一瞬で毒気を抜かれてしまった……。

 勿体ぶるのもいい加減にしますかね。

 ただリディアさん、その言い方はヒドない?


「バルカさん、今夜ラスティルさんと一緒に家に来て下さい。反ビビアナ連合へ連れて行く前に話さなければならないですし、三人に教えたい秘訣がありますから」


「承知しました。……ご厚恩、感謝いたします」


 ま、この方がいいかな。

 ラスティルさんの機嫌を損ねかねない話だけで終わるよりも、その後にアメがあった方がよろしかろう。

 それでもラスティルさんに話さないといけない内容を考えると……気が重いぜ。

物見櫓様より支援絵を再び頂戴いたしました。

オウランになります。

挿絵(By みてみん)

亜麻色のベリーショート、赤い目、遊牧民的衣装ってこんな感じかしら。

本格派な遊牧民衣装は検索で見ても分かりますが気が狂うほど刺繍が細かいので、私程度が描くにはすごく時間がかかるので簡易なもので勘弁してください(言い訳

現状(129話)で、ダンのパーソナルスペースの近い位置にいる登場人物…と思われる。出番少ないけど。

そして、ダンによってもっとも人生を(上方向に)狂わされた獣人の覇王(独身)である。

ダン「私と契約して遊牧民全てを束ねる王様になってよ」

オウラン「」

ダンとジョルグ師範、顔馴染みの草原族の仲間にしか素が出せず、権威が高まりすぎて結婚できない苦労人ケモ耳娘ほんと好き。

結婚できない独身同士、ダンとは奇妙な縁でも結ばれていますね(CP的な意味でなく)


との仰せです。

はい。出番が少なくてすみません。出そうと考えたけど、出る要素が無い……。

ダンがグニャグニャやってる中、オウランは北の草原で走り回ってるので交差しようがなかった。

しかしこのオウランさんは、大変ボーイッシュですね? 半ズボンによって少年風味が更に加速している。

ガンダムW以来、女性はイケメンの半ズボンを喜ぶ物と思ってます。

女性読者確保の為に、ずっと中世的男だと思っていたら実は女性だったキャラにしておくべきでしたかね?

あるいは「でもわたし女らしくありませんから……」ネタをやれというのだな?

出番自体ないのに無茶を仰る。

さてオウランですが、日頃は描いて下さった通り色んな人を睨んでます。

強者の元に集まってくる遊牧民な為、どんどん権威と配下が増えており、日々睨まれてチビるくらいビビっちゃう人が増えてますね。

そんなオウランもダンの前では書物渡されてションボリな訳ですわ。

アザトイ絵だ。誠に有り難い。


物見櫓様にピクシブurlの掲載許可を頂きました。

http://www.pixiv.net/member.php?id=794715

宜しければオウランの絵に感想を残してくれたりすると、私が喜びます。

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