表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
助けてください、魔王様!  作者: けとし
第1章
32/34

第30話 ファンムーゲン・会議

お久しぶりです。

今作は第1章で(連載中にしておきますが)一旦完結とすることに決めました。


理由としては改稿するためです。

またその場合章が追加されるので、書き終わりしだいデスマーチモードになる可能性があることを先にお伝えします。


なお、今回は前半で嫌う方がおられるかもしれませんが、生暖かい目でご覧ください。

 自分の部屋に帰ってきた俺たちを、律儀にお座りして待っていたヴァリーからおかえりの顔舐めを貰った。くすぐったいのでしかしに尻尾をさわさわしってやったらプルプル震えたのが面白かった。

 また、ナービィから封筒を貰いを今晩会議があることを知ると二人は着替えに行くと言って俺の部屋を出て行った。


 俺はフーとの戦闘による疲労を回復するために魔法を発動する。


「其は神樹から生まれし生命の樹。そはその種であり——命の始まり。この世を廻すため我にその力——『分けろ』。【生命樹の樹液(セフィロソーマ)】」

 そう唱えると、くるみのような種が空中に現れ、そのまま手のひらに落ちて行った。

 それを床に置いてゆっくり、ゆっくりと魔力を流しながら地面に押し込んで行く。


 そこの床だけ元から液体だったかのように沈んでいった。

 そして、数秒も経たぬうちに一本の赤い蔓が床を突き破り出現した。

 それを確認した後、ベットで横になる。

 蔓はというと、先端に切れ目が走りガバッと裂け、そしてそこからよだれのようなものを垂らしながら中のめしべが顔を出した。

 それはキュッという音を立てながら俺の胸あたりに近づき、押し付けてきた。


「っ……」

 服越しとはいえくすぐったくて変な声が出そうになった、あぶねぇ。


 種を植えた場所から脈打つ音と共に、膨らみが生まれ、上昇してくる。

 これは魔力の塊だ。それも高濃度の。

 それが段々と俺に近づいていくうちに、魔法と化して、そしてめしべから俺の体に注ぎ込まれるその感覚は、適温の風呂に入っているかのように心地よい。



 この部屋に使われている素材は高クラスの魔物からとれるモノばかりで、ゆえに魔力が残留している。

 いや、残留という言葉はおかしいくらいの魔力が残っているのだ。

 この蔓はその部屋自体から魔力を摂取している。


 そしてこの魔法の名前の通り、俺の中に入る頃には回復魔法の塊となっている。


【生命樹の樹液】。これは先代勇者が開発した魔法で、体力の回復と身体の中の魔力を循環し自然回復を促進させてくれる、イーリリンでは馴染みとなっている。魔法である。

 その効果ゆえに冒険者からも愛されており、熟練者になると複数作る事ができる。

 そういう人は店を立ち上げ営業していたりする。

 ただ問題なのはその先代が女性であること。その魔法を国に広めた時に言ったらしい言葉が、その……下ネタのオンパレードだったのである。ナニがなどは口が裂けても言えない。

 それにしても久しぶりに完全詠唱をしようとしたが後半部分を忘れてしまっていたとは。やはり俺も精神年齢的にボケてきたか。

 部分破棄したが……ま、通常の人たちが詠唱したものと比べたら魔力の通りが良く、一つだけでも全然回復できてしまう。


 このまま寝ても自動的にしおれ光の粒子となるので、さっきから頭の中で眠気を訴えていた本能の赴くままに俺は夢の中へと落ちていった。



 余談だがその一部始終をナービィ、ヴァリー越しにサドリアンに見られていたことを知って身が悶える思いをしたのはまた別の話である。





 夜になり、俺とガゼルとフィーシとサドリアンの四人で会議に参加したのだが、会議が始まって早々衝撃的すぎる事が、ヴァリーの口から発せられた。


「か、『カード』だぁ!?」

 そんな声を上げたのは誰なのか。俺が名前を覚えているやつではないことは確かだ。


「『カード』に使える召喚用の木版・金属板、どれもが大昔に壊されてる。どうするんだ」

「そんなこと俺に聞くなっ」

 あぁ、会議室が騒がしい。だが、無理もない。あれだけ『チェス』だと思って行っていた作業が台無しになったも同然なのだから。いや、正確にはこの『カード』でも使えるのだが。

 しかし、何故そんなに慌てる必要があるんだ?

 そう思っていると、何かが膝に絡みつく感覚を感じた。


「(あー。ガゼルか?)」

「(……おう)」

 気まずいと言った感じで応答するガゼル。無理もない。賢者タイムに入っている所に俺が入ってきたのだから。フィーシとそういう関係……というか結婚ではなく婚約だったようだ。

 もう一人、ちゃんとした奥さんがいて、その人は城下町に暮らしいているとか。

 そのあとサドリアンが来て色々収集つかなくなっていたが、まあいい。

 それよりも問題は『カード』ということに全員が焦っている理由だ。


「(あの時のことはどうでもいい。それより何故皆、そこまで慌てているんだ?)」

「(……すまんな。それで他の皆が慌てているのは、この城には『カード』に使われる召喚のための、魔法陣を刻む板も枯渇しているんだ)」

「(合わせ板ではダメなのか?)」

「(それでもいいんだよ。だが魔法陣の技術が失われているせいで、誰も作れないんだよ)」

「(あぁ、なるほど。だけどそれなら引き分けに持ち込めるんじゃ?)」

 この『カード』と呼ばれる戦争形式は、九割という割合で引き分けという結果に終わっている。


 何故かと聞かれれば、戦争に使われる枚数が限られているのと、戦争の際使われる砦を守る兵たちにある。


 この戦争形式で使える召喚板は7枚。この板には耐久力というものがあり、それが皆同等なのだ。代わりとしては、板として使われたモノによって召喚されるモンスターのステータスなどが変わると言ったところか。

 100人以下と制限があるのだが、その兵達はともかく、引き分けになる原因は召喚板にある。召喚板から召喚されるモノたちは、同じ召喚されたモノとの対決の際にしか、耐久力を持たない。つまり、魔法を当てればその魔法本来のダメージを与えることができる。

 つまり、広範囲殲滅魔法ロングレンジマジックをふんだんに使えばあっさりと終わる。


「(この国は天族との戦争の際、全ての召喚板を失ったのは知っているが)」

「(それがな、天族の中にいる差別派の奴らが、ルールを変更しやがったんだよ。どちらかが一体も出さずに引き分けに持ち込んだら、そいつは負けと言う風に)」

「(……いたんだそんなやつ)」

「(阿呆らしいと思っていたんだが、そんなこと言えなくなったわけだ)」

「(じゃあモンスター封印すればいいじゃないか)」


 封印板は召喚板の劣化した物と言える。

「(成功確率が低いうえ、ダンジョンのある所までどれ程の時間がかかるというんだ。大体、近隣にあったダンジョンは他国の侵略にから逃げてきた魔族が食い荒らしたも同然なんだよ)」

「(ああ、なるほど)」

 と、二人でコソコソと話している間も会議が進んでいく。


「召喚用の術式がない。板もない。これは詰んだとしか」

「いやまて。そもそも向こうはどうなのだ? 確かイーリリンにもないと記憶しているのだが」

「あそこはデュークという存在が魔王様を亡き者にしたことで調子に乗り周りの国々を取り込み始めたそうだ。恐らくその一つに板を所有するところがあったのだろう」

「くっ、勇者がいなければ……あんな国が付け上がることはなかったんだ」

 ほんとごめんね。まさかあそこまでクズだとは思ってもみなかったんだ。


 ——バンッ。

 勇者への罵詈雑言が次第に会議室を埋めて言った時、机を叩く音がそれを止ませた。

 音が聞こえた先にいるのは、古参派のスチュワ・ハイツだった。


「やむ終えない。先代魔王であられたルシフェル様が持っていた召喚板を使うしか方法はないかの」

「んなものあるのなら先に言えっ」

「いやしかし、あれに封印されているのは戦闘向きではないのでな」

「だからなんだって」

「自分から率先して魔王様に封印された好き者なんじゃよ」

 好き者って。古参派がそんなこと言っていいのか。


「その好き者なんだが、ルシフェル様がお亡くなりになられてからは引きこもりがちになってしまってな」

「いやまて可笑しくないか。引きこもりがち? 言うこと聞かせるのが普通ではないのか」

「そうなんじゃがなぁ……」

 禿げている天辺をぽりぽり掻きながら渋い顔をする。


「あやつそのものが強すぎるうえに、ルフォート様の言葉すら聞かないのじゃよ」

「だから」

「——我が父はその召喚板の主が見つかるまで、自分で自分を守るように言い残していたようなんだ」

 ルフォートが話に割り込んできた。


「つまり……その召喚板に封印されたやつは自分で自分守ってるというのか!? ありえない……」

 オンイッチはそういいながらも、しかしありえるかもしれないと呟いていたが、俺以外の耳には入っていないようだ。


「木版にしか封印できない存在ですからね」

 その言葉に動揺する者たちがちらほらいた。動揺していない奴らは恐らく試した者たちなのだろう。


 この『カード』に使われる板なのだが、TCGのごとく、レア度が存在する。

 下の位から順に。


 鉄によって作られた鉄板。


 銅によって作られた銅板。


 銀によって作られた銀版。


 金によって作られた金版。


 木によって作られた木版。


 この5つなのだが、木版が何故か最上ランクとされている。


 理由として大きく3つ。


 一つ目は魔力の流しやすさ。

 自然物である木の方が魔力を通しやすく、金属は乱れが多いのだ。例としてあげるなら、カクカクした道と曲線の道が分かりやすいと思う。


 二つ目は木版に使われている木の種類でセルフィシネスと呼ばれる気なのだが、ここファンムーゲンでは育てることが出来ず、輸入しかできないこと(その輸入先としてイーリリンも一応はあったらしいが、どうやら病気によって枯れてしまったらしい)。


 そして三つ目はその壊れやすさ。加工はしやすく、完成するまでの間はいいのだが、時がら流れていくうちにひび割れて魔法陣が途切れてしまったり、雨などによって水に濡れ腐ってしまうと中に封印しているモンスターが消滅してしまったりと、管理をしっかりしていなければ大損してしまうのだ。


 あと付け加えるなら、木であるからこその居心地の良さもあるだろうといったところか。


 鉱物のほうが良いというモンスターもいるようだが。


「それで皆の者に提案なのじゃが、その好き者に関して()、コタロウ様にお願い頂こうかと思うのじゃが」


 別にいいけど……と思っていると、スチュワは続けた。


「魔王様なら10日後の戦争までにどうにかしてくださると思ってのことじゃ、異論があるものはおるか?」


 ……は?


 目を点にしてスチュワを見ると、あいつはニヤと悪い笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

次回がいつになるのか……せめて今月中には投稿することをお約束致します。


また、初期では3日後としてましたが、流石に無理があると思い10日に引き伸ばしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ