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助けてください、魔王様!  作者: けとし
第1章
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第29話 イーリリン王国・会議

申し訳ないです。



活動報告に描いていたのより遅くなったのは、この話の前(今回のは本来第30話)が矛盾がやたらと多く、修正不可能のため一度保留にして、29話に使うはずだったネタは、SSか別のタイミングで使おうと思います。



今回はイーリリン王国、ブタことトゥレリオスの話です。

短いのは実力不足でござる(´・_・`)

 某日。イーリリン王国の城内部にある大部屋の一つで戦争形式についての会議が行われていた。


 この部屋は横長に作られており、半月状に作られた机が見える限りで十数個あるのだが、国を支える身である彼らは、バラバラに席に着かず、最前列にある机のみに座っている。


 社交界の時でしか使用されていなかったのだが、何者かの手によって奪われてしまった聖剣の力で守護騎兵ガーディアン暴君タイタンが倒されたのだが、その威力は衰えぬまま。その先にあった会議室——その空間を支える二本の柱が破壊され、崩壊。

 変わりとしてこの部屋が選ばれたのは、単純に最適な場所がなかったというだけである。


 ちなみに我は窓から差し込む暖かい太陽の光を背中に受けながら襲ってくる眠氣と目の前にある問題の資料に頭を悩ませていた。


「——また、我が領土はここ最近の謎の密雲不雨みつうんふうにより、不作であり、またそのせいで」

「話を伸ばしても何も良いことないぞ、クザクよ」

 木のコップに注がれたお茶を飲み干した後、一人長々と、それも遠回しな言い方で報告書を読み上げるクザクにそう言えば、彼は後ろで一つに束ねた髪を揺らしながら、身長に見合った長い手に持つ紙を机に置いた。


「はい、我が幹部の者たちとも話をした結果なのですが……申し訳ありませんが、返答は前と変わらず、戦争に割く人員がいません」

「……ポルバレの方はどうだ」

 言葉とは裏腹に全く感情を読めない声で答えるクザクを座らせ、その隣に座るボルバレに問いかけるも彼はいかつい顔を歪め、立ち上がることなく無言で首を振った。


「ファンムーゲンからの返事が来て既に10日以上経っておる。あの蛮族共に『チェス』以外で勝つ方法があるのか? 無いに決まっている」

 持っていたコップを静かにおきながら、天井に張り付いている馬鹿な密偵へと『記憶という名の悪夢(メモリー・ナイトメア)』を発動し堕とした。

 む……頭から血が流れているな、死んでしまったか。まあいい、終了した後に片付けさせよう。


 この部屋に他国のスパイがいた事に驚くものなんてもはやいない。蛮族である魔族達へ喧嘩いくさふっかけてからよく現れるようになったな。だが、気配の隠し方が下手である。新人としての課題として門番兵をやらせている新人よりも弱々しいわ。


「お言葉ですが王よ。どうして『チェス』にそこまでこだわるのですか?」

「簡単な事。この国は『チェス』で勝ってきた。ただそれだけだ」

「……『チェス』は得意とお聞きしましたが」

 確かに我が用事でインビナーレに行った際、戦争形式『リバーシ』が行われていたからついでとばかりに手伝いはした。だが、助言などをしただけで何もしていない。


「出来る出来ないではなく、信用出来る者がいない、それだけだ」

 全員が他国から送り込まれた者たちであるからということを臭わせ、睨みつける。だが彼らはどうとも思っていないようだ。ちっ、引っかかれよ。


 この国を含めた各国は、魔族の所有する領土を欲し、幾度も戦争を仕掛けた。だが、その結果魔王たった一人を相手に全敗。もはやほとんどの国が諦めてかけていた時、異世界ではなく、この世界に勇者が現れたという吉報が出された。

 あの時は我が父、先代国王フォーフツ・エクシリトーシュと共に喜んだものだ。

 だが、我が父……いや、あのクソジジイはある日から魔族に対して布告をしなくなった。

 訳がわからなかった。洗脳されたのかと急いで宮廷魔術師の一人に診てもらったが、異常はないとのこと。

 ようやく魔族をこの世界から消し去ることのできる勇者がこの世界に誕生したというのに。


 ゆえに、強行手段に及び——してそれは上手くいき、ついに勇者の手によって魔王は討伐された。

 このまま行けば……そう思っていたのだが、勇者は行方を眩ましよった。そのせいで今の状態まで彼奴あやつらを追い込むのに、どれだけ苦労したことか。

 幸いにもアッシュが聖剣ファトムを取り返してくれたようなのだが、聖剣は誰一人として所有者として認めず、アッシュの干渉すら拒みついに長い間眠りについてしまった。


 ……だが、そう考えればおかしいところがある。アッシュが聖剣を取り返した時、既にデュークは剣もまともに握れない状態だったという。ガタガタと体を震わせ、離したくないとばかりに抱きしめていたらしい。

 ……まさか、あやつに子供がいたというのか? いやそれはないな。なぜならデュークと共にしていた異性は皆……。


「できないのはただモノがない、そうですよね」

 思考の渦に入っていたところを、銀甲冑を体に纏ったペルメッソがそう口にした。

「ペルメッソ、発言のを許可した覚えはないぞ」

 彼女はせっかくメイドが解いだ髪を掻きながら申し訳ありませんと謝ってきた。

 やる気のない目だけは変わらずだが、形だけでも良くなったのは、昔からすると——。


「敬語を使うようになったのは大きな進歩だが、許可もなく喋るのはいただけないなボーイッシュガール」

「あ? なんか言ったかキザ男」

「おいおいおい、私にはドレッドスという名前があるんだ。ちゃんと名前で呼びたまえ」

「ふんっ、兵士ごときに弄られるお前に言われたくないわ」

「会話しないとわからない事もあるものなんだよボーイッシュガール」

 プレンシスト家の長男よ、お前マジ黙ってくれ。頑張ってるんだから、ペルメッソ頑張ってるんだから!


「はん、こんなのを結婚させようとしていた両親に反吐がでるわ」

「おぉ、怖い怖い。せっかくの美貌は大切にしなければ婚期を失うぞ、ペルメッソ王女・・

「上等だてめぇぇぇっ」

 ついに切れたペルメッソは背中に背負っていたクレイモアの柄に手をかけ、いつでも抜剣できるようにしているのに対し、ドレッドスは拳を作り徒手の構えをとった。

 ……撤回しよう。会議というのにこやつら、また暴れる気か?占領された地域担当させてやっておるのに、わしの息がかかったものに変えるぞコノヤロウ。


「やめんか馬鹿者」

「ぎゃっ」

 あと少しで爆発する……というところで、彼女の横にいたハーディスプが抜剣せず鞘にしまったままでペルメッソの頭を軽く殴った。


「くくっ、殴られてぶ!?」

「お前は空気を読め」

「ゴホッオェェ……ず、ずみまぜん」

 ドレッドスに対しては喉への突きが繰り出されるも、喉が苦しいだろうに謝罪の言葉を言う。


「……我が弟子が飛んだご無礼を」

「よいよい、素直な子は好きだしな。それでハーディスプ。主の弟子であるペルメッソがそのことを知っているとすると、喋ったのか」

「はい。誠に勝手ながらそうさせていただきました。それでいて、一つ提案があります」

 そういいながら周りの人の顔を見るハーディ。何かを読み取ったのか、周りの奴らは小さく頷いた。何を企んでいる。


「今回の件はこちらの非もありますし、謝罪の言葉を述べた手紙を」

「戦争がそんな簡単に止められるとでも? そんな甘いモノではないこと、お前がよく知っておろうか」

「……申し訳ありません。ではもう一つ」

「今度のはちゃんとしていおるよな」

「えぇ、こちらの手の内(・・・・・・・)をバラすようで嫌なのですが、今回それを使用していただこうかと」

「ほう、それは一体どういったもなのかね」

 ニヤニヤを顔には出さず真剣な表情を作りハーディを見る。


「……それは——『カード』です」

「ほう……」

 目を細め、ハーディを見る。


「この国には、『カード』に必要な召喚板も、その前の段階である封印版もありません。そしてあなたに申しこみ、カードを隠し切れば、倒すのは造作もありません」


 面白いことを言うな。しかしおかげでまた一人見つけたよ。

 また何かが倒れる音が聞こえた。隠れていた密偵なのは間違いない。せっかく気配を消していただろうに、思わずピクリと反応してしまいおって、面白くない。

 血を流している男と同ように、自身の記憶の奥底にの奥底に眠る悪夢のなかでもがき苦しむが良いわ。


「ですが、その前に倒れられては困ります」

「魔族に負けると? 我が化身部隊がか」

「はい」


 なるほど、ハーディも私と同じ考えに至っだというわけか。


「……では、今回の戦争にて勝利を収めることができれば、主たちの故郷を、一部解放する事を約束しよう」

「その言葉に二言は」

「……あるわけないだろ、我が旧友よ」

「それは子供時代での話です」

「それは残念。では、今回の会議は終わりとする。明日、細かいところの話し合いをすることにしよう。では『解散』」

 その言葉を合図に、閉まっていた扉が一人でに開く。そして外に待機していた兵士が数名、無力化された不届き者を引きずりながら連れて行った。


「こんな話をお聞きしたことはありませんか。『氏を招くは他人ではなく、己自身』と」

 座っていた椅子から文字通り重い腰を上げた時だった。ハーディは出口の前で振り返り私に対して、問いをかける。


「懐かしいものを。聞いていたではなく、覚えているな。答えは『はい』だ」

「では、その続きは?」

「『氏を払うは、不可。しかし遠ざけることは可なり』だろ。つまりなんだ? 私の前にもうじき氏が来るとでもいうのか?」

「……恐らくあなただけでなく、国そのものに現れるかと」

「いつ頃」

「分かりません。ですが、近いうち」

 苦い顔をするハーディは、恐らく嘘はついていない。誤魔化すことはできるが、嘘をつくことを誰よりも嫌う彼の言葉は信用できる。


「胸の片隅にでも」

「あぁ」

 そしてお互いに背を向け、部屋から出て行った。

次回はその形式を聞いたコタロウ達魔族側の会議となります。


本当に遅れてしまい、申し訳ありません。

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