俺の名は神代 祐助。都内の高校に通う普通の高校生なんだが、先刻からとてもウザったい奴が俺を尾行している。
そいつの名は成瀬 京香。容姿はつり目で背中まである金の長髪。頭の天辺にはアホ毛が生えている。服装は背中にドクロのマークが描かれたTシャツにEDWINEの505。
服装はどうであれ、俺好みの娘なんだが、こいつは学校一有名な不良で皆からは恐れられている。
「ったく、何で付いて来るんだよ!?」
自宅に向けて歩いていた俺は止まって踵を返して訊ねた。
京香は吃驚して立ち止まり「バレてたのか」と残念そうに言った。
「で、俺に何の用だ?バトルならもうしねえぞ」
京香は俺に近付き、地面に膝を着いて土下座をした。
「私を舎弟にして下さい!」
またか・・・。
俺は額に手を当てて溜め息を吐いた。
「私、成瀬 京香は神代さんの強さに感服致しました」
だから何だってんだ?
「ですから、私は神代さんの舎弟に成ろうと思います。どうか、私を舎弟にして下さい!」
困ったな・・・。
事の始まりはお昼休み。
校内の売店で昼食を買った俺は、颯爽と屋上へ登り、フェンス前に設置された椅子に座って先程買った焼きそばパンを食べ始めた。
「おい!」
俺は驚いて焼きそばパンを落とし、顔を上げた。
その先には背丈が俺と同じくらいの少女、成瀬 京香がいた。
「貴様、一体誰の許可を貰ってそこに座っている?」
可愛い・・・。
俺は目の前に立つ京香につい見惚れて頬を赤くした。
「おいっ、聞いてんのか!?」
京香は俺の胸倉を掴んで持ち上げた。
途端、俺は意識を現実に引き戻された。
「な、何だよ?」
「何だよ?じゃねえ!」
京香は俺をフェンスに向かって投げ飛ばした。
「うっ!」
フェンスに背中を打ち付けた俺は呻き声を上げた。
喧嘩売ってんのかこいつは?
俺は体勢を立て直して京香を睨んだ。
「いきなり何すんだテメエ!?」
刹那、京香の姿が消え、目の前に出現して腹に膝蹴りを放った。
俺はそれを避ける間も無く、豪快に喰らってしまった。
「うわっ!」
腹に激痛が走る。
「オメエ・・・一体・・・何だって言うんだ・・・?」
俺のその問いに京香は拳で応えた。
ブンッ!──俺は宙を舞い、コンクリに叩き付けられて数回転がった。
どうやら、マジで喧嘩売ってるらしい。だったらこっちもやってやる!
俺は素早く立ち上がり、京香の下に駆けて跳び蹴りを放った。
よしっ、手応えあり!
俺の跳び蹴りがヒットした京香は、勢い良く吹っ飛び地面に着くと数回転がった。
「てめえ、名は?」
京香は立ち上がり様にそう訊ねた。
「神代 祐助だ」
「ふっ、覚えておくぞその名。私は成瀬 京香だ」
そう言って、瞬く間に背後へ移動して回し蹴りを放つ京香。
俺は咄嗟に振り返り、京香の足を掴んで止めた。
「俺に喧嘩を売った事、後悔しな!」
言って京香を上に放り投げ、目の前に振って来た所で激烈連脚を放った。
Hit数146。新記録達成だ。
俺は147回目に回し蹴り。
京香は一直線に吹っ飛び、フェンスにぶつかって破砕し、外側へ飛び出して落下を始めた。
「やべっ!」
俺は慌てて駆け、彼女の足を掴んで引き上げた。
「何故助けた?」
「死なせたくなかっただけだ」
「そうか・・・」
「じゃあな」
言って俺が去ろうとすると、京香が服の裾を掴んだ。
「待ってくれ」
「何だよ?」と振り向く俺。
京香は裾を放し、土下座をした。
「神代さんに喧嘩を売った事、お許し下さい!そしてその償いとして、私を舎弟にして下さい!」
「はぁ!?」
な、何言ってんだこいつは?
これ以上関わるのはよそう──そう思った俺は、土下座をしている彼女を尻目に屋上を跡にした。
で、今に至る訳だ。
「解った解った、解ったから顔を上げてくれ」
京香は顔を上げ、嬉しそうな顔をした。
「それじゃあ、私を舎弟にしてくれるんですね!?」
「そんな事は言ってないだろ。兎に角、俺に付き纏うのはもうやめてくれ、じゃあな」
言ってその場を去ると、京香が後を付けて来る。
やれやれ、しょうがない奴だ。
俺は立ち止まり、振り向いた。
「そんなに舎弟に成りたきゃ好きにしろ。但し、俺に迷惑が掛かる様な事だけはするな。と言う訳で最初の命令だ、帰れ!」
俺がそう言ってまた歩き出すと、彼女が付いて来た。
「帰れと言った筈だ!」
「はっ、ですから今、言われた通り帰る所です!」
「お前の家、こっちなのか?」
「はい!」と頷く京香。
「横に付け」
「はい!」
京香は慌てて駆け、俺の横に並んだ。
手がムズムズして来た俺は、徐に京香と手を繋いだ。
「か、神代さん!?」
驚いて目を丸くする京香。
「悪い、暫くこうさせてくれ」
「駄目です!」と慌てて手を離す京香。
「駄目なんです、舎弟如きが仲良く手を繋いじゃ・・・。それに、端から見ればカップルみたいじゃないですか!?」
「良いじゃねえか別に。俺は舎弟よりカップルのが良い」
なっ!──顔を真っ赤に染める京香。
「か、からかわないで下さい神代さん!」
「別にからかってなんかいねえよ。マジでそう思ったんだ」
「そ、そそ、それはつまり、私に神代さんの彼女に成れと言ってるんですか?駄目ですよそんな事。だって私、神代さんの子分なんですよ?」
「否、それはお前が勝手に決めた事だから」
「そうだとしても、やっぱり駄目です。命令なら仕方ないですけど・・・」
命令?その手があったか!
「よし、今日からお前は俺の彼女だ!」
言って俺は人差し指を京香に向けた。
「それは命令ですか?」
「その通りっ、命令だ!」
沈黙が場を支配した。そして──
「や、やっぱりそれはお受け出来ません!私は神代さんの子分を続けます!」
そう言って京香は脱兎の如く駆け出した。
「おい待てよ!?」
しかし、俺の言葉はもう、彼女には届かなかった。
果たして、俺は正式に彼女と交際をする事が出来る日が来るのだろうか、疑問符。
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