第八話 別れの夜、そして新たなる旅立ち
Side 信孝
「ん・・・・・・」
俺が目を覚ますと周りは木ばっかだった。
俺はカミが言っていた「俺を不老不死にした」がホントかどうか確かめるために、心臓を霊力で強化した木の枝でとりあえず刺してみた。
「……わが生涯に一片の悔いなし!」
心臓を刺した結果もちろん胸に大きな穴が開いたが、一瞬で刺した傷が復元した。
「ホントに俺、不老不死になっちまったな」
どうやらあのカミちゃんが言ってたのは本当みたいだな。
「ってことはここは輝夜の屋敷のあったとこの近くか。 なら一旦都に行くか?」
とりあえず不比等のおっちゃんや妹紅達に会いに行くためにとりあえず京へ向かうことにした。
都に着いてから、とりあえず以下のことが分かった。
・あの事件によって輝夜は月へと帰って行った。
・妹紅はあの事件後行方不明。 恐らく輝夜の後を追ったと思われる。
・ついでに俺は死んだことになっている。
・慧音は俺の死を知って沈んでいたところに追い打ちをかけるかのように父親の高市皇子が病によって亡くなり、弟の長屋王たちの説得にも耳を傾けず塞ぎ込んでいるらしい。
・不比等のおっちゃんや四兄弟も本調子とは言えない状態らしい。
「こりゃまずいな・・・」
俺は今の情勢に頭を抱えた。
「とりあえずは不比等のおっちゃんのとこに誰にも見つからずに行って、それから同じように慧音のところに行くか」
特に慧音は塞ぎ込んだ結果、自害なんてなったら洒落にならない。
だが、俺は公式では死人となっている。 だから俺の身の振るまい方をおっちゃんと相談しておくべきかもな。
~移動中~
「潜入出来たな」
まさかこんな所で麻呂から習った隠行術を使うことになるとは思わなかった。
俺はまっすぐ不比等のおっちゃんの部屋へ向かった。 どうやら部屋にいるみたいだな。
「おっちゃん久しぶり」
「!? お前、信孝か!?」
「ああ、なんか甦っちゃった」
「そうか・・・。 よかったな」
今更だけど、よく俺って断言できたな。 化けて出た妖怪って言われてもおかしくなかったのに。
「俺がお前を間違えるわけないだろ。 何年の付き合いがあると思っているんだ?」
「心読まないでください・・・」
やっぱりこのおっちゃんもリアルチートだった。
~少年経緯説明中~
「そうか、そのようなことが・・・」
「ああ、それで気がついたら輝夜の屋敷の裏の山の中にいて、とりあえずここに向かったってわけ。 ところで妹紅はどうなったかおっちゃんは知ってるか?」
「あいつは蓬莱の薬を飲んだと奇跡的に生き残った侍女が言っていた。 恐らく不老不死になって輝夜姫の後を追ったのだろう」
「そうか・・・」
妹紅、やっぱりお前は不老不死になっちまったのか。
「それとおっちゃんに相談したいことがあってな」
「お前は今後どうしたらいいのか・・・か?」
「そう。 おっちゃんならいい案が出るかと思ってな」
「ふむ・・・、とりあえずお前は公式では死んでいる。 下手にお前の姿が見られたら化物として殺されるやもしれない。 だからお前はこの地を去らねばならない」
「やっぱりそうか・・・」
覚悟していたんだが実際言われると辛いもんだな。 生まれ故郷に帰れないって・・・。
「当座の資金くらいは俺から出そう。 あと、慧音姫のことについてだが、彼女は実家の上白沢家に帰っておるので、宇合に案内してもらってお前が直に行け」
「宇合にか!? あいつ俺が生きてること知らないだろ?」
「知っていますよ?」
「へ・・・?」
そう言って突然宇合が部屋に入ってきた。
「な・・・!? 何でお前がここにいるー!!?」
ホントこいつ何者だ!?
「私だけではなく、他にも知っている者はいますよ」
そういって宇合が部屋の障子の方に目配せすると、
「おい信孝、何でお前生きているんだよ!」
「兄上、御無事でよかった・・・!」
「・・・元気でなにより」
四兄弟が勢揃いしていた。
「そうですか。 兄上は不老不死に・・・」
房前は俺の説明に納得してくれたみたいだ。
俺の言ったことを無条件で信じてくれるのは嬉しいんだが、たまには「人を疑う」ってこともしてくれよ。
そんな純真な目で見られるのは、俺にとって眩しすぎるんだ。
「・・・これから大変になる」
麻呂、確かにお前の言うことは間違ってないんだが、その〇門や〇ッツリーニみたいな喋り方はどうかと思うぞ俺は。
「慧音姫は現在母方の実家である上白沢家にいらっしゃるということは父上から聞いているでしょう。 慧音姫のところへの誘導は私にお任せください」
宇合、宮城ほどではないにしろ、普通忍び込むって行為は自殺行為ものなんだが、お前が言うと絶対に行くことができるって断言できるのは何でだろうな・・・?
「信孝が生きていたとは・・・。 別にお前が生き返っても俺にとっては嬉しくないぞ!」
こっち向けや武智麻呂。 それにメタボ野郎にツンデられても悪寒がするだけだ!!
その台詞は今この場ではお前が一番似合わないんだよ!
「あとのことは俺に任せておけ。 そしてこんなことを言えた義理ではないが、妹紅のことを頼む・・・」
おっちゃん・・・ありがとうな。
妹紅のこと、しっかりと頼まれたぜ。
「では兄上、行きましょうか」
宇合が俺に行くよう催促した。
「兄上、本当に言ってしまうのですか・・・?」
「すまない房前、俺はもうここにはいられないんだよ」
「・・・いつかまた会える?」
「そうだな・・・、しばらく旅をして、多分お前らが生きている間に少なくとも一回は帰ってくると思うそ麻呂」
「ならその時までに私の罠にも磨きをかけておきましょう」
「テメェは何もするな宇合! お前が何かすると洒落にならないことが起きるだろ!」
「帰ってくんな」
「よしいい度胸だ武智麻呂、ちょっと表出ろ。 |O☆HA☆NA☆SHI《修正》してやる」
とりあえず武智麻呂をボコってから俺は慧音の屋敷へ向かった。
信孝 side out
Side 慧音
「はぁ・・・・・・」
この一年、私にとって大切な人を失いすぎた。
信孝が死んだときには私は目の前が真っ暗になった。
その後半年くらい私はずっと塞ぎ込み続けていた。
その時は父上や新九郎のおかげで何とか持ち直し始めたんだけど、4日前、その父上が亡くなってしまった。
父上は最期に、「孫の顔を見れて、わが生涯、一片の悔いなし!」って突然立ち上がってそのまま亡くなった。
・・・・・・私のことは?
そして、心の支えの一つだった父上までも喪ってもう私には信孝の忘れ形見の新九郎しかいなかった。
新九郎だけは絶対に失うわけにはいかない・・・!
そんな気持ちが心の中の大部分を占めていた。
「姫様、宇合様がお越しです」
私が心の中でそんな事を思っていると、侍女から声がかかった。
「宇合殿が・・・?」
信孝様の一件以来こちらには来なくなっていた宇合さんがどうして此処に・・・?
「分かりました。 すぐそちらへ向かいます」
「待たせましたね宇合さん」
「いえ。 姫様のためにこちらへ来たのですから少々待つことなど苦にもなりませぬ」
「私のために・・・?」
「はっ。 夜半遅くで申し訳ございませぬが、姫様に会わせたき者がおりますゆえ、こちらにまかり越しました次第で」
私に会わせたい者・・・? 一体誰・・・?
「では、お入りくだされ兄上」
そこには、私が亡くなったと思っていた最愛の人がそこにいた。
「信孝さん・・・?」
「やっほー。 久しぶりだね、慧音」
「信孝様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私は思わず彼に抱きついた。
「信孝様! 生きていらしたのですね!」
「ああ。 来るのが遅れてしまってすまない。 それと前にも言ったけど様付けはやめてくれないか? こそばゆくてさ・・・」
「す、すいません! それでも、こうして再び会えるだけで私は幸せです!」
「では、私はこれで失礼いたします。 兄上、またいつか会いましょう」
「ああ。 ありがとう宇合」
また・・・いつか?
「あの信孝さん? 「またいつか」とはどう意味で?」
「慧音」
急に信孝様が真剣な顔になった。
「は・・・はい」
「実は俺は、不老不死の体となった。 俺はこの地から去らなければならない。 だからお別れに来たんだよ」
・・・・え?
「そ、それはどういうことですか!?」
「俺は昨年の事件でとある理由により不老不死となった。
ただでさえ俺は既に公式には故人となっているのに、不老不死になったの知られれば、不老不死を望む馬鹿共が俺のみならず周りの者にも危害を加えるかもしれない。
だから俺は此処で消えなければならない」
「そ・・・、そんな」
折角また会えたのにまたお別れなんて・・・。
「おっと、もうすぐ夜が明けてしまう。 俺はお暇するよ」
「お待ちください信孝さん! 私も連れて行ってください!」
「ダメだ。 人間である君と不老不死である俺とでは結ばれてはならない」
「それでも!」
「すまない。 こんなこと言えた義理じゃないが、新九郎のことは任せた。 あいつは俺の見た限り天賦の才を持っている」
そう言って、信孝さんは徐々に体が薄れていく。
「それは・・・!」
「これは俺の術で、とある場所へ一瞬で移動するものだ。
日の出とともにこの術が発動するようにしておいた。
俺はこれから永い旅になるだろうから出来るだけ此処から離れなければならないんだ」
「信孝さん!」
「さようなら慧音。 願わくは君に幸あらんことを・・・」
「信孝様ぁぁぁぁぁ!!!!」
そう言い残して、信孝さんは消えていった。
「どうした慧音!?」
私の声が聞こえたのか、お爺様とお母様が私の部屋へやってきた。
「今、私は信孝さんに会いました」
私がそう言うとお爺様とお母様は驚愕の表情を浮かべた。
「何!? 彼は昨年亡くなったはずでは・・・!?
いや待て、先程藤原家の宇合殿が男を連れてやって来ていたな。
まさか彼が・・・?」
「恐らく。 信孝さんは不老不死の身となったためこの地を去ったのです。 私も同行を願ったのですが・・・・・・」
「不老不死の自分と人間である慧音とでは、必ず慧音が先に死ぬこととなり、信孝殿がその後長い孤独を味わうということに信孝殿は耐えきれないと思って、彼は断ったのですね」
「はい・・・」
今考えればそうだ。
仮に私が同行できても、将来必ずおいて死にゆく私といつまでも若いままでそれを見届けなければならない信孝様、それは確かに辛いこと。
だから信孝様は断ったのね。
「・・・慧音」
「どうしましたお爺様?」
「お前は人としての生を捨てる覚悟はあるか?」
「え・・・?」
「お前が信孝殿と添い遂げることが可能かもしれぬ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。 お前は白沢《はくたく》いう妖怪を知っているか?」
「いえ、存じておりません」
「白沢とは唐の地であらゆる知識を持つと言われている聖獣でな、我が上白沢家はその白沢の血を引くと言われているのだ」
「そうなのですか!?」
上白沢家にこんな伝承があったなんて・・・。
「そして、我が家に伝わる秘術を使えばお前は人間と白沢の混血となり、極めて長寿の種族となる」
「真ですか!?」
「だが、これをすればお前は妖怪となり、もはやこの地では暮らせず、新九郎とも離れなければならない」
「それは・・・」
私はお爺様の仰ったことを反芻した。
信孝さんの後を追うことは可能。 でも、それをすると、お爺様やお母様、藤原家の方々や新九郎とも離れなければならない。
私がここに残れば、その人たちと暮らすことは可能。 でも、信孝さんのあとを追うのは不可能となる。
私は・・・・、
「決めました。 お爺様、その術を使ってください」
「いいのだな?」
「はい!」
「あいわかった。 では術をおこなう」
そう言ってお爺様は呪文を唱え始めた。
そして、呪文を唱えてから10分ほど経って、
「ふぅ、完成じゃ。 これでお主は半人半妖となった」
「お爺様、ありがとうございました」
「うむ。 孫の思いをかなえるのも祖父の役目じゃからの。 新九郎のことはワシに任せよ」
「ありがとうございます! では、行ってまいります!」
「達者での」
「慧音、後悔だけはしてはなりませんよ」
「はい!」
こうして私は信孝さんの後を追って旅立った。
信孝さん、私は貴方のことをあきらめません!
一「完!」
信「こんなところで終わらせるな!」
一「言ってみただけだろ?」
信「言っていいことと悪いことがあるだろ!?」
一「まぁ、いいじゃん。 それにしてもやっとここまで来たな・・・」
信「当初は藤原京編は五話くらいで終わらせる予定だったからな」
一「それがいつの間にか伸びて伸びてこうなったってわけだ」
信「そう言うのを無計画って言うんだよ」
一「人生はいつでも行き当たりばったりだろ?」
信「威張って言うな!」
一「(スルー)さて、時間もないし次回予告と行くか」
信「そうだな。 次回はどうなるんだ?」
一「次回からは信孝の旅の様子とそこで出会っていく原作キャラ達との絡みが原作開始まで続く予定だ」
信「やっといろんなキャラが出始めるんだな」
一「そうだ」
信「では、次回第九話、「また宇合のターン」(仮)。 ってまたあいつが出てくるのかよ!」
一「だって宇合もう準レギュラーだし?」
信「何でまたあいつと絡まなきゃならないんだよ!!」
信「そう言えばさっき時間がないって言ってたよな? 何かあるのか?」
一「・・・・バイトまであと20分」
信「さっさと行けこのヘボ作者!」
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