友情伝説リターン・乙女ドラえもんズ(2/23)縦書き表示RDF


ドラえもんとのび太君がどうして部屋ではなく、ドラ焼き店にいたのか、そして茶髪の少女とは誰なのか(まぁ、ばればれだろうけど)。のび太視線で第一話のはじまり、はじまり〜。
友情伝説リターン・乙女ドラえもんズ
作:雪子



第一話『小学五年生ではセーフだよね、たぶん』



僕、のび太。
セワシという子孫から僕があまりにも頼りないので夢のような未来の道具を使いこなすお世話ロボ、ドラえもんを遣された、ある意味ラッキーな小学五年生として名高いのかもしれない。
しかし、その反面、事件に巻き込まれることが多くなった。
まぁ、ほとんど僕が原因だったりするけど、恐竜や過去の時代、どこか遠くの惑星、地下帝国、宇宙開拓地、魔境に異世界、パラレルワールド……といった普通では考えられない冒険を僕たちは数々こなし、成長していったのは皆さんもご存知なはずで……。

しかし、こんないろいろなことが起きても僕が驚かなかったことはない。
今回も、驚かされたよ、ドラえもん。
君の四次元ポケットが光ったと思ったら、いきなり女の子になるなんて!


友情伝説リターン・乙女ドラえもんズ

第一話『小学五年生ではセーフだよね、たぶん』


ここは少し落ち着くためにも話しを少し遡らせることにしよう。
ええっと、まだ雨は降らず雲がどんよりとしていただけの時間まで、かな。
いつものごとく僕は0点をとり、ママに叱られる前に隠そうと机の引き出しの奥につっこんだよね、そんとき。
「のびちゃ〜ん!」
階段の下から響くママの声。
内心どっきとしながらも、怒りを含んだものではなく、いつもの、いや、柔らかい声。
どうやら僕のテストに関するものでもお手伝いを催促するものではない。
「な、な〜に、ママ」
「しずかちゃんが来たわよ〜」
しずかちゃん?
僕は大慌てで階段を下りた。
引き出しを開けっ放しにしたような気がしたがそんなの些細なことだ。
好きな人が、僕にどんな用事があってきたのかのほうが百倍気になる。
眼鏡が擦り落ちない程度のスピードで僕は玄関に向かった。
「のび太さん。こんにちは」
聞きなれているソプラノ声。
やんわりとして、僕に長年の恋心を抱かせている、女の子しずかちゃんのものだ。
「やぁ、しずかちゃん」
幼馴染でいまさら畏まることもないのかもしれないが今日はしずかちゃんと遊ぶ約束はしていないのに、彼女からきてくれたことに舞い上がらない男はいるだろうか。いるはずないよ。もう、階段を猛スピードで下りたときから心臓がバクバクするよ――主に急な運動をした、息切れで。

くすっとしずかちゃんは微笑む。
白百合のように可憐で、僕もつられてにやけてしまう。
「あの、親戚の叔父さんからたくさんドラ焼きを頂いたの。よかったらドラちゃんと一緒に食べて」
しずかちゃんは両手で持っていた紙袋を僕に手渡す。
紙袋の隙間から見えるのは茶色い物体。中から餡子が見えることから間違いないドラ焼きだろう。
「じゃぁ、わたしはこれで。習い事もあるから」
「あ、ありがとう、しずかちゃ〜ん」
玄関の扉が静かに閉じられる。
なんだ、ただのおすそ分けか。
しかし、しずかちゃんからもらったものは大切に食べないと。
僕はママからドラえもんと一緒に食べるからといって白い大きな皿を台所から拝借し、僕の二階の部屋と戻った。

ところでドラえもんは今いない。
朝僕が学校に行く前に随分浮かれていた、と思い出すとおそらくミーちゃんとデートでもしているのだろう。
至極一般的な推理だ。しかし、腹が立つ。
「まったくドラえもんって浮気者だよな」
前にドラえもんの親友に聞いたことがある。未来にドラえもんの恋人がいるという。ドラミャーコといってかなりの美人らしい。写真などで見たことがないが、話からするとダンサーロボとして作られているから容姿端麗であるに決まっている。
耳をネズミにかじられ、なくしたドラえもんを笑ったというが、その後和解したはず……なのに。過去の僕の時代で浮気とは!
モテル男は違うのか!
……もしかして、セワシも彼女がいない僕にしずかちゃんの心をゲットのためにあえて彼女がいるドラえもんを寄越したのか!
モテルテクを伝授するために!
それなら鋭いヨ、セワシ!
僕の子孫とは信じられないくらいの気遣いに、余計なお世話だとか、深く考えすぎではとか、後から出て来る言葉は多くともその一瞬だけは感謝した。


「ただいま〜、のび太君」
低音のガラガラ声。青い古ダヌキと何度も間違えられるけどネコ型ロボット、ドラえもんが窓から帰ってきた。今日のミーちゃんのデートも絶交調だったらしく、満悦の笑みを浮かべていた。
「おかえり、ドラえもん」
「ん、この匂いは、そしてこの皿にのっているのはドラ焼き!」
目ざとく、そして一気にドラえもんは口に運ぶ。
「しずかちゃんからもらったんだけど……ドラえもん、全部は食べないでよ」
食い意地が張っていてしかも好物では警世しないと一瞬ですべてがなくなってしまう。
しかし、この考えは杞憂に終わる。
ドラえもんが一つ大きな自分の口に放り込んでからというと動きが止まっている。最初、僕はぼくが一つ手にするまで待っているのかと思っていた。
口に入れ、ドラ焼きの甘い香りが口いっぱいに広がる。柔らかいカスタードは少し歯に力を入れるだけで簡単に割れ、丁度いいくらいの大きさの僕の口の中に入っていく。
甘い。
ドラ焼きだからそういうものだけど。
僕は持ってきた麦茶を口に含みながらも一つ平らげた――いつもだったら既に二個目に突入しているドラえもんが、まだ固まっていた。
「ど、どうしたの、ドラえもん」
いつもと違うドラえもんに僕は戸惑う。
そして、薄暗かった空からぽつぽつと水の粒が落ちてきた。
「のび太君、これ、何処の店の……」
「え、えっと……」
とりいでたるは、紙袋。
詳しくは見なかったが、とりあえずなんとか堂。
東京都の……ここから遠くはない距離の場所の住所が書かれていた。
「ふ〜ん」
外はもう、凄絶に雨が降っていた。
だが、ドラえもんはこの時ある決意を秘めたのだろう……マルマルとした身体をすべて覆い包む、レインコートを装着し、タケコプターを頭につけると外へと飛び出した。
「ま、な!」
あまりのことで、僕は対応に遅れた。
でも、スペアポケットが押入れのドラえもんの寝ている枕の下にあるのは知っていたし、僕もレインコートをタンスから取り出すと、ものすごい形相出でいったドラえもんに続くようにタケコプターをつけ、窓から飛ぶ。
視界はいいわけではなかったが、ドラえもんの青く大きな身体は目立つので見失うことはまずない。
雨粒が眼鏡につこうと必死になってドラえもんを追いかけた。



  東京都 某ドラ焼き店
ドラえもんを追いかけたら、ここについた。
和風の、落ち着いた感じのデザインがなされた店内。硝子ケースに様々な色とりどりの和菓子がある。つい見とれてしまうぐらいの美しさがあったが、僕はそれらの奥にあるこの店の社名入りの紙袋が目についてきた。
しずかちゃんがもってきてくれた紙袋と同じソレを。
どうやらここが親戚の叔父さんからもらったドラ焼きを製造している和菓子屋さんらしい。
僕がそう推理していると後ろから肩を叩いてくる。
「がう」
聞き覚えがある、その声。
「ドラニコフ?」
振り返ると、青い長いマフラーを口元にまで巻いた、ドラえもんの親友。
ネコ型なのに狼になる、無口の謎多きロボット。
しかも声を出したとしてもほとんど鳴き声なので僕では翻訳こんにゃくがなければ通訳ができないけど、ドラえもんズ全員には意思の疎通がはかれ、彼の言いたいことを理解できるのだという。
ドラニコフ自身は俳優業をこなしていることもあり、しぐさを見れば素人でも彼の言いたいことぐらいはわかるけどね。
「がう♪」
僕に名前を言われたことには喜んでいるけど……すぐ彼の表情は曇る。
その訳とは……。


「ドラ焼きが、甘すぎる! こんなんじゃメタボになるよ! もう!」
「何を、青ダヌキが! こちとら百年の味を守ってるんじゃ!」
「タヌキじゃない! ネコ型ロボット!」
……できれば他人のふりで済ませたくなる。
ドラえもんと店の主との口げんか。

「このわからずや!」
店の奥からドラえもんが飛び出してきた。
どうやら真っ先に殴りこんできたらしい……まったくもってドラ焼きの味にうるさいロボットだな。
「ふん、そんなに言うならば買わなければいいじゃろが。ワシかてお前さんのような青ダヌキに食わせるドラ焼きなんてありゃしないぞ。客としても願い下げじゃ。帰れ、帰れ」
まぁ、もともとこれしずかちゃんからもらったものだし。
頂き物でここまで怒鳴り込むドラえもんの方がずうずうしい気がする。
これ以上店に迷惑をかけるわけにはいかない、そこで僕らは――
「帰ろう、ドラえもん」
「がう、がう」
――ドラえもんの身体を抑えた。
ドラニコフは羽交い絞めにし、僕は前のほうを押さえる。
「の、のび太君!」
「ドラえもん、とにかく帰ろう。ドラニコフもせっかく日本に来たことだし」
ドラニコフがここで何をしに来たのも知らないし。
ここはゆっくり僕の部屋で昔の話なり、近状を語るなりして親友同士の交流のほうを重視するべきだろう。
僕はドラえもんの胸を強く押した。



その、刹那、ドラえもんのポケットとドラニコフのマフラーが光った。
目が強い光に反応し、瞼と閉じる。
むにゅっと妙に柔らかい感覚が僕の手に伝わり、強烈な光がなくなったので再び目をひらくと――僕はわが目を疑った。


青い髪の僕よりも年上の可愛い少女の胸を僕は触っているという信じられない出来事が起きていたのだ。

嬉しいけど……て、ちがう!

ドラえもんの、あの、丸くてずしんとした姿が見当たらない。
しかも青髪の少女を羽交い絞めにしているのは――茶色の髪の少女――彼女は長く青いマフラーをつけて、本来耳があるところからネコのような狼のようにとがった耳が生えている!
「……」
僕は冷静に、もう一度青髪のお姉さんをまじまじと見た。
着ているのはレインコート。
お姉さんのボディラインで多少形が変わっているように見えていたが、このコートは間違いなく――ドラえもんが先ほどきていたものと同じ。

立ち位置、状況……一つ一つありえないものから消し去っていくとおのずと答えが見えてくるとはいっても……僕は僕が出したその答えに驚かずには要られなかった。
できれば夢だとか、悪くても妄想で済ませたかった。
でも、僕はその答えをはっきりと口に出してしまう。









「ど、ドラえもん!」



と、いうわけでドラえもんとドラニコフの女の子姿はのび太君と店主に目撃されたというわけです。
ちなみに、人間でいうとドラえもんは十九歳、ドラニコフは十七歳という設定。未来の道具によっていくらでも年齢設定を変えることができるでしょうが、スタンダードではそんなところとさせていただきます。では、つづきは次回で。それにしてもドラズ全員でてくるまで何日かけるのでしょう。何話かかるのでしょう。できるだけ早く主要キャラを出せるようにします。











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