第四話:二つの家
ほんと俺の育った家の環境は今の俺以上にクソだった。
まぁ、よくある話かもしれないが親父は無類の女好きで、その程度はほとんど病気と言っても良い程だった。
親父は不動産会社を経営していて、そこそこ景気が良く元々財産も結構あったので、俺は経済的にはかなり恵まれていた。
かなり広い土地に家が2軒立っていて、池を挟んで母屋(本宅)と離れ(別宅)があり、親父は離れにはその時のお気に入りの愛人を住まわせていた。
俺があの女の腹の中に入ってる時にも、その時付き合っていた愛人を離れに住まわせ当たり前のようにそっちにばかり通っていた。
あの女は両親が他界していて、あまり身体も丈夫ではない方だった為、頼れるのは親父しか居なく別れることも出来ずに居た。
今思えば可哀想な女だが、同情できないほどの事をあの女は俺に長い期間行ってきた。
最初は所謂、虐待を始めてきた。それは小学校低学年の頃から始まった。
親父が離れに通ったり、外の愛人の家に行った時等に、普段だったら怒らないようなくだらない悪ふざけを俺がしたら、そんな時は烈火の如く怒り、両頬が腫れ上がるほどに打たれた。
その後、お手伝いが作ってくれた夕飯を俺の分だけ処分して、腹が減って眠れない夜を過ごさなければならなかった。
朝になると、あの女は涙を流しながら俺を抱きしめて謝り、何度も何度も許しを請う。
その姿が可哀想で痛々しくて俺も泣きながら、あの女の背中をさすっていた。
その頃の俺の怒りは親父のほうに向けられており、いそいそと楽しそうに出て行く親父の背中を何度刺してやろうかと思った。
だが、親父は幼い頃から柔道をしており、かなりの腕力と強靭な肉体を持っていた為、雰囲気からして恐ろしく小学生の俺はあまりにも無力だった。
女癖が悪くても子供を可愛がる男というのは沢山居ると思うが、親父は俺に対しても無関心で、ほとんど話すことも無く俺の両頬が腫れていても何も聞く事は無かった。
後々分かった事だが、親父は俺の産まれた後パイプカットをして、愛人には子供が出来ないようにしていた。子供を作らせたのは本妻のあの女だけだった。
それが、親父なりの俺とあの女に対しての愛情と誠意だったのだろう。
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