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忘れん坊サンタと雪だるま
作:叶愛夢



◆第二話◆





『雪だるまくん、もう少しで着くよ』


地面に降り積もった雪の精達が呼び掛けます。


何とか、無事に街に辿り着いた雪だるま。


夜のクリスマスの街は、光りに溢れていました。

どのお店もクローズなのにクリスマスリースやツリーなどキラキラ瞬いています。


――キレイだなぁ

雪だるまは街の美しさに溜め息をこぼしました。


『雪だるまくん、これがその鐘だよ』


雪の精は、そう言って教会の前に雪だるまを止めました。


――えっ……あ、うん!



雪だるまはハッとした様子で返事をしました。


そして、雪だるまは教会の鐘へと目を向けました。


古びた教会の大きな鐘。長い間働いたのを証明するかのように至る所さび付いてます。

さらに―……


――弱ったな、あんな高い所にあったら届かないよ……

そう、教会の鐘は手を伸ばしても届きそうにないほど高い所に吊されていました。

――どうしよう……?

雪だるまは困りました。


『こればっかりはオイラ達もどうしてあげる事も出来ないな……』



――そんな……ここまで来たのに……


雪だるまは、何もできない自分が悔しくて悲しくて堪りませんでした。



そんな時……


『顔を上げて、雪だるまくん』


雪だるまに声を掛けたのは北風でした。


『あたしが雪だるまくんの代わりに鐘を鳴らしてあげる。だから、雪だるまくんはみんなの分までお祈りして。サンタクロースを起こしてあげて』


北風は優しい口調で雪だるまに言いました。



――うん! ありがとう!

そう言うと北風は鐘を揺らしました。



雪だるまは祈りました。



――サンタクロースのおじいちゃん、聞こえますか? 今日はクリスマスです。みんな待っているんです。早く起きて、来て下さい。


何度も繰り返す様に強く、強く祈りました。



雪の精達も一緒に祈りました。


不思議な事に北風が揺らした鐘は音がなりません。


不安に思いながらも雪だるまは祈りました。




すると……



シャンシャン……




遠くの空から微かに鈴の音がします。



シャンシャンシャン……



その音はどんどん近付いてきます。



『この音はサンタクロースの鈴の音だぁ!』


雪の精達は嬉しそう言いました。



――えっ? サンタクロース……


雪だるまは、急にドキドキしてきました。


そんな雪だるまを余所に鈴の音は大きくなります。



シャンシャンシャン



暗い夜空に赤い物が近付いてきます。


『やっぱり!』


そうです、トナカイを引き連れてソリに乗った白髪と白鬚をたずさえた優しそうなおじいさん。ニコッと雪だるまに笑い掛けました。



『やぁ、こんばんは。私とした事が今日がクリスマスというのを忘れていたよ』

サンタクロースは笑いながら言いました。


不思議な事にサンタクロースの乗っているソリは宙に浮いていました。
そうして、スゥーと滑る様に雪だるまの前に降りてきました。

『もぅー! ダメじゃないか!』


舞い散る雪の精達はプリプリとした様子で言います。
『ダメじゃないか!』

降り積もった雪達が繰り返します。

『すまんかったのぅ』

サンタクロースは笑いながら頭を掻きました。



『笑い事じゃないよ! 雪だるまくんなんて、心配してこうやって起こしに来たんだよ!』


ハラハラ舞い散る白い雪達は少し強い口調でサンタクロースに言いました。



『うむ……』

サンタクロースは目を閉じながら頷きました。


――あ、ボクたいした事やってないよ! だから、サンタクロースのおじいちゃんを叱らないであげて。


雪だるまは優しい口調で言いました。



――それに北風さんがボクの代わりに鐘を鳴らしてくれたのに、音が鳴らなかったし……


そう呟いては雪だるまはまた下を向きました。


――ボクの想いが足りなかったのかな……? だから鐘鳴らなかったのかな……?



雪だるまは悲しい気持ちでした。自分のせいで、鐘が鳴らなかった気がして不安で不安で溜まらなかったのです。




『顔を上げておくれ、雪のボウヤ』

そう呼び掛けたのはサンタクロースでした。口調も表情もとても穏やかで優しいものでした。



――えっ?

雪だるまは言われた通り顔を上げました。



『この鐘は、もう長い事働いてのぅ……今では、音が鳴らなくなってしまったのだよ。けれど、雪のボウヤの暖かい気持ちはちゃんと私に届いたよ。そのお陰で今日がクリスマスだと思い出したのだ。ありがとう、ボウヤのお陰だよ』


サンタクロースはそう言ってニコッと笑いました。

その優しい笑顔に雪だるまはとてもあったかい気持ちになりました。




『本当にありがとう、お礼っと言っては何だか、よかったら私と一緒にプレゼントを配らないかね?』


――えっ? いいの?

雪だるまはびっくりした口調で聞き返しました。

『もちろんだとも』

サンタクロースは優しく答えました。

雪だるまは真ん丸の目でサンタクロースのソリを見ました。
立派な角をした二頭のトナカイ。フカフカのソファーの様なあったかそうなソリ、白く大きな袋にはたくさんの愛と夢が詰まっているのでしょう。


雪だるまはニコッと笑いこう答えました。


――喜んで!


雪だるまは、サンタクロースと一緒にプレゼント配れる事が嬉しくて堪りませんでした。


『そうと決まれば―……』

サンタクロースは雪だるまの返事を聞いて指をパチンと鳴らしました。


すると、不思議な事に雪だるまの身体はふわりと浮き、サンタクロースのソリに乗りました。

初めて座るソリに雪だるまの心は、まるでボールの様に弾んでいました。


『よし! そうと決まれば早速、街に行こう!』


ハラハラと舞い散る雪の精達が言いました。


――うん!

雪だるまは元気に答えます。




『ちゃんとつかまるんだぞ』

サンタクロースがそう言うと、トナカイが駆け出しました。


『いってらっしゃい! 雪だるまくん!』


ソリが地面から離れ、どんどん空へと向かっていきました。

雪の積もった白い地面から雪だるまを見送る優しい言葉が聞こえてきます。



――うん、いってきます!

雪だるまはそう答えました。












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