気づいてほしかった
離れていってほしくなかった
「ぅん……ゴメン…」
リビングを物色する
「少し熱出ちゃって……そぅ……」
冷蔵庫から牛乳を出し、コップに注ぐ
「ぁ。充電切れるかも……ごめんね。ありがと…ん。」
ピ……
充電が一個も減ってない携帯電話をソファに投げる
「ふぅ。」
携帯電話の横に座り牛乳を一口、口に含む
テレビを付けると、いつものように暗いニュースばかりやっていた
「幸せになれる人は…限られてるのかな…」
しばらくして、私は仕度をし始めた
「お金……5000円か……まぁぃぃや。」
財布にティッシュ、タオルにチョコレートを小さなバッグに投げ入れる
スウェットを着替えた
ベージュ色をしたキャミソールの上にデニム生地の長袖を羽織る
「地味かな…?どうでもいっか。」
ジーパンに足を入れる
「外寒いかも……上にスカートはいてこうかな…」
ジーパンの上に、最近買った白いスカートをはく
「………やっぱコート着よう。」
デニムの長袖を脱ぎ捨て、灰色と紫色の中間の色を
している腰あたりまであるコートを羽織った
「さぁいくか。」
バッグを抱えて私は家を飛び出した
ピンポンパンポーン……
「まもなく一番線に、列車が参ります…」
乗れればどんな電車でもいい
歩いて5分の駅に足を運んだ私は一番早く来た電車に乗り込んだ
「どこへいくんだい?」
「ぇ…?」
座って窓を眺めていたら、70歳くらいのお婆ちゃんに話しかけられた
「ぇと…いや……決まってません…」
お婆ちゃんは驚いた顔をしてすぐ、和やかな顔に戻った
「そうかぃ……これをあげるよ。」
そう言って彼女は私に5つ先の駅までの切符をくれた
「でもお婆ちゃんは……」
「いいんだょ…頑張りんしゃい。」
「………」
適当なところで降りて、あっちでお金払えば良いと思ってたけど…
なんだかお婆ちゃんに悪い気がした
お婆ちゃんは隣の車両へ歩いていってしまった
「まもなく、牟田町駅、牟田町駅、降り口は左側です。」
プシュー………ガ…タン…ガタン…ガタンガタン…ガタンガタン…タン…
「聞いたことない町…降りたの私しかいないや…」
ただでさえ大学に入ってから、隣町にも行ったことがないのに
(実家からはかなり遠い)
「迷ったらどうしょぅ…」
いきなり不安になった
自分が馬鹿なことをしていると思って、涙が出そうになった
でも進んでみるしかない
階段を降りると、そこには河原と自然であふれていた
「空気が綺麗…」
思い切り深呼吸した後、河原の原っぱに寝転んだ
『卒業したら、結婚するんだ。』
『あの真緒と俺が結婚するなんて…思ってもみなかった…』
『俺たち3人は、昔から兄妹みたいなもんだったしな。』
タイヨウは私を優しく照らした
時たま吹く風で、やっぱり少し寒かった
「ねぇ……何してるの?」
ビックリして起きあがり振り向くと、そこには高校生くらいの青年が
私の方を興味深そうにじっと見つめていた
「あの……君は……ここに住んでるの?」
私が怖い奴じゃなぃと安心したのか、彼は微笑んで私の横に寝転んだ
「違うよ。惹かれてきたんだ。」
青年は意味深な言葉を発したが、深く追求しようとは思わなかった
「そっか…」
彼はごく普通の短髪で、髪質は猫っ毛でふわふわしてる
目は澄んだ茶色
服装は学校のらしき学ランだ
「あなたは何しにここにきたの?」
「何しに?何にもしたくなくてここにきたの。」
「ふーん…僕と一緒か。」
「なんで?」
「僕……恋をしたんだ。」
恋?
「それでなんかここに辿り着いた。」
恋をした……
「よくわかんないや。」
「うん。僕もわかんない。」
「お姉さんは?」
私は…私…
「私は………君の逆かな…」
「恋を…失ったの?」
「もう取り返しつかないんだ。」
振り向かせることもできない
わがままを言うことも出来ない
ずっと一緒にいたのに、私じゃダメだったの?
「お姉さん…?」
見ず知らずの青年の前で、私は涙を流していた
「好きだったの……大学まで追いかけて…」
彼は何も言わない
「2人に幸せになって欲しくないわけじゃない。」
雫はどんどん溢れてくる
「私も彼と幸せになりたかったの…」
何を言ってるんだろうって思った
でもなぜか言葉が次々出てきて…
きっと誰かにはき出したかったのかもしれない
「運命だよ…」
「…え?…」
「僕たちが出会ったのは、運命だと思う。」
運命?
どういうこと?
私には理解できなかった
「わかんなくてもいいんだ。独り言だと思って。」
「……ぅん。」
「でも、恋は終わらないよ。また種をまくから。」
「た…種?」
彼は静かに頷いた
「1つの恋がダメだったとき、恋という花は、また種をまくんだ。」
「……」
「そして長い時間をかけてでも、次の芽はしっかりでてくる。」
すごぃ…
「いつか実を結ぶ時までね。」
すごぃ…
「途中で枯れちゃっても、大丈夫なんだ。自分で水をまけば。」
「何度でも何度でも芽が出てくる。だから恋に終わりはないんだよ。」
彼女は帰っていった
彼女の笑顔が、僕にはタイヨウに見えた……
「青村 千里」
『じゃぁね、和樹先輩。また明日学校で。』
『先輩はいらねぇっつてんだろ?』
『だってなんか面白いから。それじゃ…』
『あ…千里……』
『何…?』
『俺、卒業したら、結婚するんだ。』
彼女は、和樹という人が帰った後、笑ったんだ
『私が15年好きだったこと…気づかなかったの?』
僕は彼女を見つめていた
『勝手に離れていかないでよね…』
彼女は笑いながら泣いていた…
僕は思ったんだ
彼女を幸せにしたい
次の日僕は学校をサボって電車に乗った
70歳くらいのお婆ちゃんに、切符を渡されて…
次の電車で君が来た
ほら…
『運命』だって…
いっただろ? |