FILE1 [2]薔薇に狂う男
真一に適当な仕事を押し付けて事務所から追い出した後、翠は机の上で腕を組んだ。
翠がいない間に、真一が勝手に受けてしまったた依頼内容。
それが、翠にはどうも不可解だったのだ。
――数日前、依頼主である作野英也におかしな招待状が届いた。
招待状は全部で5通。
1通目は、『貴殿を薔薇の晩餐会へ招待します。』
2通目は、『必ず黒いスーツで来て下さい』
3通目は、『バラを一束もって来て下さい』
4通目は、『薔薇の刺にはお気をつけ下さい』
5通目は……
『貴方は助からない』
送り主は不明で、いつ、どこで晩餐会を開くのも招待状は一切書いていない。
しかし必ず、この5通の招待状には赤い薔薇のしおりがついていたという――。
とにかく見覚えのないこの招待状を誰が何の為に出したのか、翠に突き止めてほしい――。
というのが、だいたいの依頼内容だった。
悪戯にしては手が込みすぎているこの招待状。
5枚を机に並べ、翠はふっと小さく笑った。先程は勝手に依頼を受けた真一に文句を言ったものの、新たな難事件の予感にぞくぞくしながら。
(前菜には…、なるかな…)
この招待状の奇妙な点は、2つ。
まず1つ目。
1通目では作野を『貴殿』と言っているのに、5通目では『貴方』に変わっている。
次に2つ目。
1通目と2〜5通目では明らかな違いが見られる。
それは……書き方。
招待状は全てワープロで打った文字なのだが、どうも違和感がありすぎるのだ。
まるで――1通目は大人が、2〜5通目は子供が書いたかのよう。
他にも奇妙な点はいくつかあったが、とりあえず翠は招待状をまとめて鞄にしまった。
翠はこれから、学校だ。 |