挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

ショートショートの駒台(玉)

くるくる

 俺は部屋に帰り一息ついて、テレビのリモコンを探した。いつもあるべきところに無い。リモコンという物は勝手に旅をする。よくある事だが、その度に苛立つ。
 ソファのクッションをめくる。
 無い。
 脱ぎ捨てた服を蹴り飛ばす。
 どこにも無い。
「リモコンはどこだ?」
 思わず口に出した時、ふと手の甲に何かが触れた。
「なんだ?」
 いつの間にか手の甲に一本だけ長い毛が生えている。透き通るように白く、光沢がある。こういった毛は昔から宝毛と呼ばれている。抜いてしまうのはもったいない。
 毛は風もないのにそよいでいる。揺れながら次第に円を描き、くるくると回転を始めた。何周かした後、何かを指し示すようにまっすぐになり、止まった。
 もしやと思い、毛の指す方向へ目を向ける。
 キッチンカウンターがある。上にはリモコン。いつもは置かない場所だ。
 リモコンを手に取ると、針のように直線だった毛は、役目を終えたことを示すように緊張を解いた。
「なぜリモコンはこんなところに?」
 持ったままキッチンカウンターに行き、何か他の用事をした拍子に、忘れてしまったのだろうか。しかしもうリモコンやテレビのことなどは、どうでもよくなってしまった。
 問題はこの毛だ。
 試しに「テレビはどこだ?」と聞いてみる。
 すると、先ほどと同じように、毛はくるくると回転――ピタっとテレビの場所を示した。
「冷蔵庫はどこだ?」
 くるくる――ピタ。
「トイレはどこだ?」
 くるくる――ピタ。
 正確に場所を指し示している。
 間違いない。
 抜いてしまわなくてよかった。探し物をするのに便利だ。
 ただ、どこまで探してくれるものなのだろうか。
 物じゃなくても通用するだろうか。
「俺にとって幸運を得られる場所は?」
 毛はくるくると回転を始めた。


 それからずっと、毛の指し示す場所に向かい、毛の指示通りの選択を繰り返した。
 俺は幸運な人生を歩み始めた。金にも時間にも余裕のある生活だ。
 文字通り宝を手に入れた。
 ただ疑問はある。
「何でお前はそこに生えてるんだ?」
 問いかけると、毛は回転を始めた。
 くるくる。
 しだいに速度を速め、回る毛。
 くるくる。
 毛の先が手の甲から徐々に離れ、描く円は小さくなっていく。
 くるくる。
 そして毛は、チクリと痛みを一つ残して空へ飛び立ち、自分探しの旅へ出た。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項をご確認ください。

名前:

▼良い点
▼気になる点
▼一言
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ