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第39章
~出歩いて…落っこちて・第39章~




今日はオフの日を利用して久々に全員でお出かけ、しかもなんとダンジョンに来ています。

「うへぇ、久々に来たけど・・・」
「またゾンビが増えているというかなんて言うか」
『新しく主が現れたのかも知れませんね』

 ・・・・・と言っても、以前ドラゴンを倒したあのダンジョン何だけどね。
 そう僕たちは懐かしのあの森にあるドラゴンが巣くっていたあのダンジョンに来ているのだ。
 ウィンディは初めて来たけど、そこら辺は気にしてはいけない。
 
「そう言えば漂う魔力と言うか妖力というか・・・」
「濁ってるな。しかも随分強力だ」

 なんて言うのか、良く霊地とか呼ばれる様な廃墟のオカルトスポットに行くとする。そこで夕刻の薄暗い時間帯に廃墟の中に居るかの様な淀んだ感じだと言えば良いだろうか?
 つまりは淀んでいると言う事である。

『この辺は環境が良いですから、この感じからすると上位アンデットかもしれません』
「ソレって吸血鬼とか?」
「だけど遺跡に吸血鬼とか、イメージがなんか違うぜ」

 ゾンビの方は別段強くなったとかは無いらしく、以前と変わらずダンジョンの力で動いているようである。しかし、気配からするとゾンビ以外にも何か住みついたようだ。
 これは用心して進まねばなるまい。初めて感じる気配が沢山いるのが解るからだ。

「しっかし、またココにくることになるとはねぇ?」
「うん、まさかヴァルさんに頼まれた場所がココだったなんて」

 実は今回、この遺跡ダンジョンに訪れたのは、オフの日を利用してヴァルさんにちょっとした頼まれごとをされたからだ。ちょうどヒマだったし、運動にも良いかなぁって思って二つ返事で引き受けたのである。

 ちなみにココまでは空を飛んできた。最近なんとか出来る様になったんだよね。
 ITシールドボードに紅とニケツして・・・この場合ニケツとか言うんだろうか?

『たしか最奥の宝物庫から、ある物を探して来て欲しいんですよね?』
「うん、なんでも最古のドールがあるかもしれないんだって・・・で、研究したいから」
「とって来いって訳だ。つまりは簡単なお使いだな」

 お使いとは言うモノの、その実中身はかなりデンジャラスなお使いだと僕は思う。
 ちなみにドールとは人形の事を指すけど、この場合は魔法によって動く人形だと考えて欲しい。うーんどんなのかなぁ?動くパペット人形とかだったら面白い。
 でも最古のドールって言うくらいなんだから・・・藁人形とか?まさかね。
 
 とりあえず入口付近にいたゾンビ達を、僕は威力を抑えたフレイムブラストで火葬し、紅は気功で一瞬身体を強化した後、剣の腹でゾンビをホームランし、ウィンディは指先から圧縮した水流を放ちゾンビを両断しつつ奥に向かった。

 一応前に来たことがあるので、ある程度罠の配置は覚えているけど、主が変わった事で、もしかしたら新しい罠が設置されているかもしれないので、サーチをかけながら進む。


 そして案の定―――


「うーん、槍とは古風な・・・」
「か、かなめ!?大丈夫か!?」
「なんとか隙間に入ったから無事だよー」

 新罠が設置されていたりした。
 なんか通路に穴が空いていたのは解ってたけど、まさか槍が出てくるとは思わなんだ。
 サーチかけてたのに気がつかないなんて、何かしらの魔法処置でもされてたのかしらん?

 ちなみに冷静に分析してるのは、怖すぎて現実を直視したくなかったからです。
 現在膝関節がガクガクブルブルと超振動を起しております。
 ・・・・・・膀胱が空で良かったと思った日であった。

『ここの壁の色が少し違いますから、設置されたのは大分最近の様ですね』
「そういや以前来た時は、ココで大岩に追いかけられたっけ」
「あー、そういやそんな事もあったなぁ」

 あんな某アグレッシブな考古学者さんみたいな体験をしたのは生れてはじめてだったなぁ。
 もっとも、普通はみんな初めてだろうけどね。

「しかしこの分じゃ何が設置されている事やら」
『私が先頭を努めましょう。本体を液状化させれば、物理的な罠は効果を為しませんし』

 ちょいと心苦しいけど、彼女に頼むことにした。彼女は身体を液体にすることが出来る。
 水系統の精霊ならではと言うか、精霊さんなら誰しも身体を自分の特性に似合った姿に変えられるのだ。

 風の精霊なら身体を空気に出来るし、土なら土、火なら火ってな具合にね。
 普段ウィンディが人の身体でいられるのは僕から大量のMPを持って逝って具現化しているからだそうな。その構成を液体にすれば、物理的な攻撃はほぼ無効化出来ると言う訳である。
 
 この後は下に向かう階段に付くまで、適当にゾンビを相手にして進んだ。
 しかし、ココのゾンビも、レベルが上がっている僕達にとっては、もはや経験値にならない。
 というか最近手帳の様子がおかしい。ステータスの表示がしにくくなってきているのだ。
 まぁ別段力が抜けるだとか、体に変調が出ているとかの様な症状は出て無いんだけど・・・。

「ん?なぁかなめ、なんか“カラカラ”音が聞こえねぇか?」
「・・・うん?ゴメン聞いて無かった。なんだって?」

 ちょっと考え事をしていた所為で、紅が話しかけて来たことに気がつかなかった。
 なんだって?カラカラ音がした、だっけ?

「・・・・そんな音するの?僕には何も聞こえないけど」
「さっきから俺の耳にはカラカラ聞こえるぜ?それも段々近づいてくるような・・・」

 うーん、僕には聞こえないんだけど、紅は耳が良いから聞こえるのかな?
 警戒のアビリティで気配を感知してみると、確かに何かが近づいてくる。

「――――この先、そこの曲がり角から、何か来る」

 ダンジョン内で遭遇する“カラカラ”と言う音・・・・なんとなく想像がつくけど、僕は音が聞こえてくる方へ顔を向ける。
 最初に見えたのはとても細い手足、真っ白でまるで骨の様――――

≪カシャン、カシャン、カラカラカラ≫

 いや、むしろ骨だった。鎧付きの骨がカラカラと骨を鳴らしながらダンジョン内を闊歩してる。

「アレはスケルトンだね」
『魔法で疑似生命を与えられたか、悪霊が憑依したのかは知りませんが悪趣味な事です』

 僕の言葉に捕捉してくれるウィンディ。
 スケルトンは相変わらずゆっくりとこちらに向けて闊歩してきている。
 まだこちらを捉えてはいないらしい、目とか無いのにどうやって周り見てるんだろう?

「とりあえず粉砕するか燃やすかしないと、永遠に戦いを止めない戦闘マシンだ」
「じゃ、ぶっ飛ばしていいのか?」
「むしろゾンビとそう強さは変わらないんじゃないかな?それに問題は別にあるし」
「ん?なんか問題あるのか?」

 ――――ソレはね?と、僕が説明しようとしたその時!

「あぶねぇッ!」
≪ヒュカ!≫

 僕がいた所に矢が突き刺さった。
 紅がとっさに押し出してくれなかったら、背中に突き刺さっていた事だろう。


「・・・・スケルトンの厄介な所は」


≪カラカラカラカラ―――――――≫


「その人海戦術も馬鹿らしく見える程の数だ」


 後ろを見れば、通路を埋め尽くさんがばかりのスケルトン達がやってくるのが見える。
 先程の矢はどうやらスケルトン達の中に、弓兵に相当するヤツがいたらしい。
 見れば何体か弓を掲げている骨がいるのが見て取れた。

「ま、大抵のスケルトンの単体での能力は、普通の人間よりも弱いらしい。書物にはそうあった」
「・・・・ハッ!これくらい敵がいた方が壊し甲斐があるってモンだぜ!」
『ふふ、ゴミはゴミです。幾ら集まろうが敵じゃないですね』

 僕たちはそれぞれ戦闘態勢を取る。
 僕はITで振り回しやすそうな錫杖を作りだし、紅は剣を抜いて気功術で強化する。
 ウィンディは身体の周りに浮いているバレーボール大の水滴の数をドンドン増やしていた。
 ま、倒しちゃった方が後腐れが無くて良いし、帰り道も安全になるだろう。
 

 と言う訳で――――


「火葬?氷葬?水葬?土葬?それとも珍しい雷葬とでも行こうか?」
「粉みじんに変えてやるぜ!」
『水は全てを押し流す・・・チリに帰る物は、きれいさっぱり流して差し上げますわ』

 カラカラと音を立てながら迫る骨達、ただ目の前の動くものを壊す事しか出来ない哀れな骨達。
 そして、そいつらとのバトルが――――

「エレメンタル・ミサイル!」

―――僕の魔法によって、切って落とされた。

 放たれたのはエレメンタル・ミサイルの炎バージョン。
 当たった対象を炎に包みこみ燃やし尽す魔法である。

 対人戦に使うには、流石にちょっと躊躇出来る魔法であるが、相手が人じゃ無いアンデットの様な存在なら遠慮することなく使用出来る。そして効果はかなり有効だったようで、複数放ったエレメンタル・ミサイルは付近に立っていた2~3体も巻き込んで骨を灰へと変えていた。

「オラァッ!」

 そして、スケルトンを数体燃やした事で出来た穴に、紅が壁を走り抜けて降り立つと、剣を振り回すことでミキサーの様に骨を骨くずへと変えて行った。

『消えなさい、ウォーターアロー!』

 その工程を3~4回続けた所で、ウィンディが水滴を圧縮させた水の矢を、いまだ残っている骨達に向けて放った。その数合わせて40発以上、しかも以前紅の模擬戦で使用した様な、威力を抑えたモノでは無く、キチンと魔力を練り込んだ魔法の矢である。

≪バシャバシャーン!≫

 当然威力はケタ違いな訳で、水の矢にあたった骨達は纏めてトラックに激突されたかのように、空中を舞っていた。衝撃で空中分解を起すほどなのだから、かなりの衝撃である。
 そして更にアクアストリングスで切り裂くという追い討ちをかけているのだからすさまじい。

「何だぁ?ゾンビよりもろいな」
「そりゃ風化してるしねぇ。唯一の怖さはその数の多さだけど、もうすぐ全滅出来ちゃうし」

 既に大半の骨を灰にしたり屑に変えたり水で洗い流したりしている。
 このペースで行けば、スケルトン達が消えるのも時間の問題だろう。
 幾らこのダンジョンが広くても、無限に魔獣が増えると言う訳ではないのだから。

『それじゃ、数も少なくなりましたし、敵を利用して時間制御魔法を試してみましょう。かなめ様』
「え゛!?」

 もう何体目かは忘れたけど、骨さんをIT錫杖で粉砕してたらウィンディがいきなりそう言ったので、僕は驚いた。まだ時間制御魔法は制御が難しくて・・・。

『あら、だからこそ実戦で鍛えるんじゃありませんか』
「いや、だけど・・・」
「諦めろかなめ、彼女は一度決めたら引かない。というか、そんな面白そうなことを逃すヤツじゃ無いだろう?」
『あら、随分な言われようですね?ソレは確かに面白そうだっていうのもありますけど』

 彼女はクスクスと笑いながらそう言いつつも、敵を倒して行く。
 
『かなめ様の力になる。それだけは確かですわ。というかやれ』
「・・・・了解しました」

 ある意味諦めた僕は彼女の言う通りに魔法を展開する。
 紅とウィンディに足止めして貰い、とりあえず時間制御魔法の詠唱を開始した。


「“我は黄昏の調律師”」


 言霊使用により、周辺のマナ及び目に見えない程の下級精霊たちがざわめく。


「“我は虚構の先触れ”」


 僕の中の魔力が空間に広がり、キラキラとした光の粉の様になる。


「“我は事象を選ぶ裁定者”」


 詠唱が続くにつれて、僕の目の前に光で出来た魔法陣が展開されていった。


「“我はオータンを描くもの”」


 繊細な魔力制御を行いつつも、僕は最後のスペルを口にする。


「“我は―――悠久の時間の中の零れ人”」


≪――――――――≫



―――――そして世界から、音という音が消えさった。



 別に色が消えるだとか、動くと加速線が見えるだとかそう言った現象は起きない。
 ただ、まるで世界が停止したかの様に、周辺から音が消えただけなのだ。
 その中で自分は普通に動くことが出来る。もっとも相対的に見たら、今の僕は光の速さすら超えて動いている事になるんだろうけど、そこら辺は考えても解らないのでパス。
 使えちゃうんだから、使わないと勿体無って事でよろしく。

 さて、無事に時間を止めた訳だけど、これにはかなの問題があったりする。
 ソレは体力の消耗が著しいって事、魔力の方は普通の魔法より多いかなぁって感じ(勿論普通の魔法使いなら気絶出来るほど)なのだが、何故か体力も消耗するのである。

 ウィンディ曰く、空間圧縮による時間制御を無意識かで行っていたりするので、それに対する身体強化の副作用ではないかとの事。一体何のことなのかよくわからないけど、様は使えば疲労がたまると言う事である。

 おまけにどんなに魔力を込めても、今の僕では30秒しか時間から逃れられない。
 だから今いそいで色々と下準備している最中だったりした。

 やることは簡単、至近距離で敵を取り囲むようにブラストを撃ちこみ、その際ただの魔力の塊が浮いている状態なので、ソレごと敵をITで作った二つの巨大ボウルの中に閉じ込める。
 後はそのボウルが壊れない様に、耐圧の効果を持たせておけば準備完了である。


≪――――ボコボコボコンッ!!!≫


 そして30秒という時間が過ぎ去り、周りに音が戻ってくる。
 目の前では中でブラストが暴れたのだろう。内圧でボコボコに変形したITボウルが見て取れた。
 中に突っ込んでおいた敵がどうなったかは・・・まぁ見れば解るが粉々だろう。

「あぅぅ・・・」

 だけど、こっちもものすごく疲れた。
 水泳で20分連続で泳いだ時程度だろうか?身体が疲労感で重たく感じる。
 コレでまだ時間制御の初歩だって言うんだから、習得はまだまだ先っぽい。

「おお!?さっきまで後ろに居た筈のかなめが!?」
『どうやら成功したみたいですけど・・・そこに居るとスケルトン達がいっぱいよってきますよ?』

 おう、そうだった。今の僕の位置は標的にしたスケルトンを挟んで反対側。
 ちょうど敵さんのド真ん中に居るわけで、とにかく慌てて紅達の所へと戻る僕だった。

***

 さて、奥に行けば行くほど、スケルトン達との遭遇率が上がっていった。
 曲がり角でぶつかった事もある。コレがラブコメだったら、そこから恋のお話と行きそうだが、生憎ぶつかっちゃったのはスレンダーを通り過ぎた骨だけの魔獣である。ラブコメのラの字もありゃしない。

「そういや、何気に良い装備してるねコイツら」
『鋼製のブロードソードは標準で、鎧も鋼製。しかも槍とかのオプションを持っている個体もいますね。コレはボスはかなりの資産家の様で』

 ふと見れば、高く売れるものではないが、需要があるので安くもない鋼製の武器と防具で武装している。かなりの量だから、持ち帰れたらお金になるだろうなぁ。まぁ問題は―――

「こう言うのって売れねぇかな?」
「誰が運ぶのさ?」
「ソレもそうか」

 なんか空間圧縮が出来る魔法とかあったら良いんだけど・・・・。
 こんど調べてみようかな?何でも入る袋とか作ってみたい。
 とりあえず、このダンジョン制覇したら、ヴァルさんに色々と教えてもらうんだ。

 そう言えば、こう言った骨の敵もアンデットに分類されるけど、銀の武器とか効くのかな?
 あーでも、銀の武器は吸血鬼とかそっち系かな?どうもそこら辺度忘れしちゃって。
 まぁとりあえず出てくる骨達を壊しつつ、奥へと進んだ訳だが・・・。

「ねぇ、なんか感じない?」
「何かいるみたいだぜ?ソレもココの連中とは次元が違うのが」
『まぁ、勝てるレベルではあるみたいですが・・・』

 もう少し進んで、下の階層に行く為の階段がある部屋までもう少しと行ったところなのだが、そこにつながる扉から異様な気配が漏れているのに気が付いた。
 一応殆どがスケルトンの気配なのだが、その数が半端じゃ無い上、感じる気配のなかには同じスケルトンでもどうも上位種みたいなのがいるようである。

「警戒した方がよさそうだね」
「そうだな。景気づけに入ったら一発頼むぜ?かなめ」
『水系統を使ってくださいな。私もサポートしますから』
「わかった。それじゃ、行くよ!」

 そして僕たちは、下へ行く階段へ続く部屋へと踏み入れた!
*久々にダンジョンに連れて来てみたぜ。



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