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第21章
~出歩いて…落っこちて・第21章~





さてさて、あの魔力過多の料理事件の所為で半日程時間食ったけど、
何とか目的の町にたどりつく事が出来た。
全体的に見れば、何気に予定よか速かったりするから問題ない。


「―――で、着きましたのが国境の町ネテか。」


クノルの町よりも、強固な城壁がある以外は、殆どクノルと変わらない町並みだった。
国境を跨いでいるとはいえ、基本的な生活様式はさほど変わらないからだと思われる。

ちなみに親方たちは持ってきた交易品を渡したり、商品のレート決めたりする作業がある為。
丸二日はネテから離れられない…なので護衛の僕たちはそれまで自由時間なのだ。


――――という訳で、各々好きに行動してるって訳。


ルードさんは武器屋と鍛冶屋めぐりに行くらしいし、ロアルさんは酒場で飲みまくるらしい。
ネテは一応交易が盛んなとこだから、クノルとは違った酒が楽しめるからなんだそうで。

ちなみにシエルさんは昔の知り合いに会いに行くとか言ってました。
あの薬の材料の幾つか分けてもらうとか何とか……いつか刺されるんじゃないアノ人。

え?キースさん?アノ人は自己鍛錬してくるとか言ってすでに町から出てるよ?
―――――方向音痴なのにね……………後で捜索しないといけないかも知れない。

「おお!大ネズミのかば焼きだと!!か、かなめ!!」
「はいはい、無駄遣いしなきゃ怒らないから一々聞かなくてもいいよ?」

僕たちも僕たちなりに、観光気分でネテを散策しておりました。

「うめぇ!!」
「ちょっ!何本買ってるの!?」
「軽く10本だけど?」

神さま…財布がどんどん軽くなりそうです。

………………………

……………………

…………………

ちょっと財布の中身が心もとなくなって、ルーと涙が出そうッス。
まぁ、いざとなればそこら辺の魔獣狩って、毛皮なりなんなり売れば良いから?
それほど深刻に考える必要も無いけどさ。

「それにしても、人が多いねぇ」
「クノルの2倍はいるんじゃねぇか?」

―――――――――ガヤガヤと人でいっぱいの市場。
クノルの町のバーゲンの日並みの人だかりだけど、ネテで今日はそういったイベントは無い。
コレがネテの普通の風景なんだろうなきっと。

「でも町自体はあんまりクノルと変わらない≪ドンッ!!≫――イタッ!」
「ぼうっと突っ立ってんなバカ野郎!!」

歩いてたら、いきなり誰かに追突された。
見れば小さな子供が、ちょうど道を抜けて走って行ってしまうところだった。

「かなめ!!あのガキ!!」
「紅、大丈夫だから!ちょっと驚いただけだし……ソレにしても活気ありすぎだよ」

怒った紅をなだめつつ、ホント活気がある場所だなぁと苦笑した。

「ん?これは?」

ふと足元を見ると、小さな袋が落ちている……財布かな?
で、拾ってみたら、どうやら何かのお守りっぽい。

「誰のだろう?」
「あん?ソレさっきのガキの落したもんだぜ?」
「解るの!?」
「おいおい、俺が元々何だったのか忘れたか?」

あ、そう言えば犬でしたねアナタ。

「ま、ココに落としておくと誰かに踏まれるかも知れないし、一応預かっておくかな?」
「良いんじゃねぇか?どうせ後二日はいるんだし、もしかしたらどっかでまた追突されるかもしんねぇぞ?」
「はは、追突はいらないかな?」

僕は袋を懐にしまい、その場を後にした。

***

「紅ッ!見つかりそう?!」
「(任せろッ!かすかだが匂いが残ってやがるッ!!)」

はい、いきなりの事で驚きでしょうが、実は―――――――

「それにしてもスリだなんて…」
「(町中だからって気を抜いた所為だな)」
「あぅ…言い返せない…」
「(とにかくあのガキ追うぞ?)」

―――――――さっきの子に、財布スラれましたですハイ。

イヤね?腰巾着みたいに腰にぶら下げて置いたんだけど、それがあだになったみたい。
え?なんでスリだって解ったか?
うんとね?腰巾着自体は、一応きちんと結んでおいたから、落すと気が付く筈なんです。

何よりも決定的だったのが、腰巾着を結んだ紐が、鋭利な刃物…多分ナイフで切られてた。
紅によると、その切られた紐にさっきの子の匂いが付着してたらしいんだ。
だからスリだって解ったって訳。

しっかしなぁ、クノルじゃスリなんていなかったしなぁ。
紅の所為で財布の中身がカラっ穴に近かったとはいえ、一応財布は財布。
取り戻さんといけないでしょ?

「この先かな?」
「(おう!この道を真っ直ぐ抜けてやがる)」
「いそごう、時間が経つと余計に解らなくなる」
「(言われるまでもねぇ…ちょっと飛ばすからちゃんとついてこいよかなめ?)」

紅はそう言うと、四本の脚で力強く地を蹴り、人の間を縫うように走り抜ける。
ついて行く僕も一苦労だ…あ、ちなみに現在、紅には久しぶりに犬モードになって貰っています。
犬の姿の時の方が、吸覚とかの感覚器の性能がハネ上がるからだ。


―――――――そう言う訳で、さっきの子供の追跡が始まった。


「ふぅ…クノルとおんなじ程度の広さだけど、それでも広すぎるよ」
「(泣きごと言っても始まんねぇぞかなめ?)」
「わかってるけどさぁ」

一応捕捉しておくけど、クノルの大きさは円でしめしたら半径五キロはあるんだよね。
ソレで“町”って言っているくらいだから“街”になったらどれだけデカイのだろう?

「クノルよりも入り組んでいるのが厄介だね」
「(だな)」

そうなのだ、クノルよか幾分か古い所為か、裏側の住宅街辺りは今だ区画整理が行われていない。
その所為なのか、ネテの裏町はかなり入り組んだ迷路みたいな構造をしている。

「……まだ匂い続いてる?」
「(……おう、段々強くなってきたけど…この先か)」

紅がちらりと視線を向ける。
その先にあるのはどの世界でもおなじみな――――――

「どう見てもスラムだね」

――――――素敵な裏の世界の入り口でした。

クノルには無い光景だから、ちょっと新鮮な感じもあるけど、それよりもアレなのは、
ココの空気がかなり澱んでらっしゃる事だ………なんかいかにもな雰囲気。

「(周囲に気を付けた方がよさそうだな)」
「……いつでも魔法使える様にしておこう」

悪党の巣窟っていうのはスラムがセオリーだけど、実際にそうだと何だかなぁって感じ。
でも……さっきの子、ココに住んでるんだろうか?

しっかしどこの世界にも闇の部分はあるとは思っていたけど……
元一般ピーポーからしたら現実感を伴わない事この上ない。

だいたいスラムなんて映画位でしか見た事が無いよ。
日本には……あー、あったかもしれないけど、ソコは認外だったし…うん。
とりあえず、ココまで殺伐として閑散としたトコは無かったなぁ…。

「―――――ん?」
「(…つけられてるな?)」

ふと気が付くと、先ほどからずっと後を追って来る気配。
スラムだしなぁ……追剥でもする気かな?

「(どうする?)」
「んー、とりあえずは静観しよ。紅は気にせず捜索を続けて?」
「(あいよ)」

スラムっていうのは往々にして、何らかの裏組織があるってイメージがある。
もしかしたら、今付けてきている人達はそういった所に所属している人達なのかもしれない。

もしそうだとしたら、こちらから下手に手を出すのは非常にまずい。
例えこの町に2日しかいないとはいえ、夜は安心して眠りたいです。

「(―――――ぬ?)」
「紅、どうしたの?」
「(いや、匂いがこの家の中に続いている)」
「って事はココがアノ子の家って事になるのかな?」

目の前にある家は二階建て長屋の様な感じだ。
微妙に小奇麗にされているところを見ると、空家という事は無さそうだ。

「これは…出てくるまで見張るしかないね」
「(だな)」
≪ガチャ≫
「え?」
「(お?)」
「ゲッ?!」

な、何と言うグッドタイミング(!?)
あまりのタイミングの良さに僕らの時が止まった。

「――――ちぃ!!」
「(テメェ、逃げる)――≪ボフン≫――ギャワンッ!!(クセェ!!つーかイテェ!!)」
「紅ッ!?」

スリの子が一番最初に再起動して、いきなり何かの粉が入った袋を地面に投げつけた。
その途端紅が苦しみ出した…まさか毒?

「……やられた…コショウと唐辛子を混ぜた粉だ」
「がううぅ!バッシュ!!(イテぇそして鼻痒い!!ハックション!!)」

僕は幸い嗅がなかったから大丈夫だったけど、至近距離で浴びちゃった紅にはキツイだろう。
目から涙を流してくしゃみし続けている。

「と、とにかく目を洗わないと!!」
「(なぁぁぁぁ!!!)」

とりあえず一時撤退した。

***

「紅、大丈夫?」
「あうぅ、まだシパシパしくしくするぜ…」

犬型よりも人型の方が処置がしやすかったので、人型に戻った紅。
目も洗い晴れない様に一応回復魔法かけたけど、それでもつらそうだ。

「アノガキゆるさねぇ…ぜって噛みついてやる…ガブっとな」
「……ちょっと、やり過ぎだしね…お話して、お仕置きもしないといけないね」

実は僕もちょっとだけ怒りがわいてるんだぁ。
大事な相棒を傷つけられたからねぇ。

「さて、とりあえずスリの子の家かアジトだと思われる家に来たんだけど…やっぱりまだ無理?」
「…………だめだな、まだ鼻が効かねぇ…麻痺してやがる」

ふ~む多分この分じゃ犬型にしても、匂いでの追跡は出来なさそうだなぁ。
じゃあ…やる事は一つだね。

「仕方無い…家宅捜索だ!!」
「え?!いいのかそんな勝手に?」
「だって紅がそれじゃ仕方無いよ…それにこの世界、警察いないからねぇ…」
「クロっ!かなめが黒い!!」


―――――ふふふ、別に怒ってるからそんな事するんじゃ無いデスよ?これは捜査の一環です。


「じゃあお邪魔しま~す」
「おいおい、家にはカギが付いてるだろ?」
「ふっ!!」≪ガキャ―――≫
「……おい」
「え?なに?なんか言った?」
「………いや、何でもねぇ…俺はもう何も言わね」
「??へんな紅」

思いっきりノブを回したら普通に開いたから別に問題無いと思うけどなぁ。







「…………うん、何も無いね」
「ほんと、寝るだけの家なんじゃねぇか?」

とりあえず家宅捜索を開始したんだけど、一階は何も無かった。
いやもうほんと文字通りの意味で何も無い。

間取りは結構広くて、スラムの住宅にしては珍しく2LDKはある上、おまけに二階建てだ。
建物自体は古い木造の住宅なのだが、大事に使っているのが見て取れる。

でもそれだけ広いのに、置いてあるのはテーブルが一つと小さな椅子が二つ。
ソレと食器が幾つかあるだけ…。
本当に人が住んでるのかと言われれば、住んでいるとは思うけど――――――

「きちんと掃除もしてあるし、普段使っているって事は間違いないんだろうなぁ」
「だな………」

―――――どうにも怪しいねぇ。

とりあえず残った二階を捜索しようと思ったその時だった。

「!!かなめ!」
「――――帰って来た?なんで?」

扉の陰から入り口を覗き見ると、逃げた筈のアノ子が入って来ていた。
ドアが破壊されていたからか、いささか警戒している。

「紅」
「応」

警戒しつつも奥に入って来たスリの子。
物陰に隠れて気配を消して様子をうかがう僕たち。

「テメこの野郎!!」
「!!な!やっぱりいやがった!!」

紅が一気に飛び出し、動けない様にスリの子を押さえつけた。
さて――――――――――

「どうしてこうなったかは解るよね?」
「チッ…………」
「君には選択肢が二つある」
「ぐ…」
「さっき紅にした事を謝り財布を返して、この袋を受け取るか。お仕置きされて受け取るかのどちらかだ」
「………はぁ?」
「おい!かなめ!!」

スッと手をかざし紅を黙らせ、僕は懐からアノ時に拾った袋を取り出した。

「!!――返せ!!ソレ返せ!!財布なんて返すからソレ返せ!!」
「返しても良いけど…返事は?」
「…………解った、ドワーフの姉ちゃんごめんなさい…な、コレでいいだろ!!」
「―――紅、放してあげて」
「………仕方ねぇ。」

渋々と言った感じだったが、紅はスリの子を解放した。
強く押さえつけられた所為で赤くなった腕をさすりながら、スリの子は袋を受け取った。

「で?なんで君みたいな子供がスリをしているの?」
「……………」
「黙ってちゃ解らないんだけどな…事とによっては、僕は君を待この町の警備の人に渡さなきゃならない」
「ぐ…………」
「改めて聞くよ?なんでスリなんかてしたんだい?」


ひざまずき、目線を合わせて待つ事10分…小さな声で少しずつ訳を話し始めた。


「…病気の…」
「うん、病気の?」
「弟が居る…この家の二階」

おう、まだ人が居たのかこの家…というかまだ二階は調べて無かったけ?

「栄養のあるの食わせてぇし…薬だって高額だし…もうこの家に売るもんもねぇ…」
「そう…だからスリを…」

ふ~ん、やっぱりねぇ。
一応事情を聞いてから、色々と後始末しようと思ったけど…
どうにも嘘では無いみたいだなぁコレは。

「親もいねぇ俺達はこうするしかなかったんだ。この家まで売っちまったら、もう後がねぇ。」
「…………」
「仕方ねぇからこうしてアタシが稼いでいたってのに…運がねぇよ…」

そう言ってうなだれる……彼女―――――というか女の子だったのね?
あまりにボロボロの服装だったから解らなかった

「おまけに兄さんから盗んだ財布には殆ど入ってねぇし…貧乏だし」
「…………ほう?」
「旅銀にしても明らかに少なすぎ出し…貧乏なヤツからスッちまったと思ったよホント」
「…………それで?」
「服装は良いモノ来てたから当りだと思ったのになぁ~アタシも目が狂ったかね?」
「ふ~ん…そうなんだ…」

―――――――旅銀は本当は結構多めに持ってたさ。

「ふぁ~、もう用はねぇなら行こうぜかなめ」

その旅銀を一気に減らした張本人がすぐ隣に居るけどね!!

「――――――ふむ、まぁ訳はわかったよ」
「え!それじゃあ!!」
「うん僕は財布が戻ってくればいいから?気にはしないよ?」
「ありがとう兄ちゃん!!」

――――――うん、僕からは何も無いよ。僕からはね?

「まぁ最も?後ろの人が謝られただけで気が済んでいればいいんだけどねぇ」
「ええ?!」
「ふっふっふ、そう言う訳だから覚悟しろこのガキ。」
「そんな!!だってさっき謝ったじゃんか!!!」
「この俺が謝られたくらいですませる訳ねぇだろう?目には目をってな?」

そう言うとじりじりと彼女ににじり寄る紅。
まぁ怒気とか感じないから?只単にお仕置きするだけだろうけどね。

「く、くるなぁ!!」
「悪い子にはなぁ?古来から尻叩きって相場が決まってんだよォォ!」
「い、いやぁぁぁ!!!」

そう言って彼女を抱きかかえた紅は、大きく振り被った手を振り下ろした。
そしてスパーンという素晴らしく良い音が響いた。
ま、まぁ相手子供だからさ?ほどほどにね?紅さんや?










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