ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第17章
〜出歩いて…落っこちて・第17章〜





さて魔獣襲撃から少し後、魔法とはすばらしいと再認識したあの日から一週間経過したある日の事。
宿屋にてチビを愛でながら、僕はとある問題で頭を悩ませていた――――それは。

「お金…貯まんない」

そう、拠点として家、もしくは土地が欲しいと思っていたのだが、思ったほどお金が貯まらないのだ。
生活費諸々を差っぴいても、手元にある金は7万G………対して平均的な家屋の値段は約数十万G。
土地や購入時にかかる経費などを入れると百万は逝く。

ギルドの仕事は身入りが良いとはいえ、これは流石に時間が掛かる様な気がする。
しかしだ、ギルドで手っ取り早く稼ぐ方法は、危なっかしそうな依頼を受けるか、ギルドランクを上げるか無い。

――――だが正直、後者のほうはあまりしたく無い。

だってさ、ギルドランク上がるって事はさ?命の危険度上がるんだよ?
今はそれほどじゃないとしても、ランクが高ければ絶対危険な依頼ばかり受ける事になってしまう。
というか、あまりランクが高いと、下のランクの仕事はあんまり受けられなくなるのだ。
何故かって言うと……まぁアレだよ?高レベルの剣士がドブ攫いしてたら異様でしょ?

それに強さの次元が違い過ぎる訳だから、大抵の依頼はすぐにこなしてしまう。
そんな事になったら、他のギルドの人達が仕事がなくなってしまう訳で……。

え?僕達はいいのか?僕たちはそこら辺気を付けてやっているから良いんだよ…うん。
恨まれて殺されたくは無いからねぇ……と話がズレたね。

「はぁどうしようかなぁ?いっその事……アノ【実験台が欲しい】とかいう依頼でも――――」
「怪しすぎるからやめれ。」
「あ、紅おかえり」

余程考えに没ッ頭してたんだろう…紅が部屋に入ってくるのに気が付かなかった。

「ただいまだ……で?かなめ今度はどした?」
「いや、まぁアレな話で恐縮なんですが――――――」

僕は家を買うお金があまり貯まらない事に悩んでいたと素直に告げる。

「―――簡単に言やぁ金がほしいと?」
「んまぁ…そうなるかな?」
「そう言えばさっき長期の依頼になるけど、それなりに高額な依頼書がギルドの掲示板に張ってあったぜ?」
「マジで?!」

新しい依頼書かぁ?どんな奴だろう?それに長期?

「ああ、俺も詳しくは見て無いんだけど…荷馬車の護衛だってよ」
「へぇ、面白そうだね?」

おお、荷馬車とかの護衛依頼、ファンタジーの定番ですか?

「とりあえず今日出たところらしいから、まだ受注しているヤツは少ないと思うぜ?募集も複数人らしいし…やるか?」
「うん、近頃運動不足な感じだったからね。ちょうど良いかも知れない」

護衛で町の外に行くんだから、ちょっとした旅行…小旅行だね。ハプニングは御免だけど、面白いものとか見れたらいいなぁ〜。
そうだ!宿で埃かぶってるミスリル製のポールアックスも持って行こう。外でなら振り回せるだろうしね。

――――そう言う訳で、掲示板を見に行く事にしたのでありました。

……………………

…………………

………………

――――で、やってきました掲示板の前。

さて、件の新しい依頼ってのはどれかな?―――――――お、コレか?

【荷馬車の護衛】
基本金 一日3000G程
・仕事は隣国ドラニまでの商品の護衛を求めます。出発は3日後、定員6名まで4人集まり次第締め切ります。
※尚、1〜2週間ほどの長期依頼な為、出来る方のみ募集。魔獣および盗賊に襲われる可能性も有。
★依頼主 ジャイオ・ゲイル

おお〜、隣国のドラニ公国までね?そう言えば、確かこの町はドラニ公国との国境沿いにあるんだっけ?
この間の魔獣襲撃で沢山品物が造れたから、交易品として売りに行くってところかな?

「コレだね…じゃあ早速受け付けてくるよ」
「だな、それと旅支度もしとかねぇといけねぇな。」
「じゃあ、後で市場に行ってみよう。いろいろいるかもしれないしね」
「そうするか」
「お姉さ〜ん、コレお願いします〜」

僕は依頼書受注用の用紙をもってカウンターに向かった。
そういえばこの町の周辺から出るのは久しぶりか……旅用に外套の一つでも買っておいた方がいいかな?
あとシェラフ(寝袋)とか―――食器とかはIT(イマジンツール)で代用出来るから買わなくて良し。
あとは……まぁ適当にみつくろうことにしよう。


――――受付に申し込みをした後、僕たちは市場へと足を向けた。


いつも人が絶えない市場、美味しい匂いが漂う屋台の群れを抜け、ひっそりとある路地裏への道へと足を向ける。
路地裏にあるのはいつもお世話になっているアノお店―――――

「――――また立ち読みしに来たか知識泥棒よ…あと紅坊主」
「知識泥棒って…幾らなんでもひどいですよラジャニさん」
「紅坊主言うな、紅坊主。」

立ち読みでお世話になっているラジャニさんの本屋に寄ってたりする。
ん?何のためか?それはね―――

「で?お主実際何しにきたんじゃ?」
「いや、まぁ…色々と調べ物を…」

――――調べモノの為である。勿論旅の為のね。

荷馬車の護衛としてドラニ公国に行く訳だし、その国ついて色々と調べておいた方がいいかなぁ〜って思ったからだ。

「お主……この店を図書館か何かと勘違いして無いか?」
「いえいえ、まさかそんな……貴重な情報の宝庫だとは思ってますけどね」
「ならば一つくらい買えッ!立ち読みですませようとするで無いッ!」
「まぁまぁ――あ、コレお土産のお菓子です。」
「ん?おお!すまんのぅ」

怒りかけたラジャニさんに、来る時に屋台で買ったワッフルに似た焼き菓子をあげると、嬉々として受け取った。
だんだん扱い方が解って来た気がする……というか甘いモノ好きなんだよなぁこのヒト。
………序でに猫とかの小動物も好きだったりして……まさかね。

「――――ところでラジャニさん」
「ん?なんじゃ?」
「あのですね?ドラニ公国辺りの書籍ってどのあたりにありますか?」
「ドラニ公国?隣国のかのぅ?」
「はい、今度依頼で行くもので、初めて行く国ですから手に入る情報は集めておこうかなぁ〜って思いまして。」
「ふむ、なるほど。いい心がけじゃな。未知の事に関して調べる…いいことじゃ。」

うむうむと首を縦に振るラジャニさん。
しかし、焼き菓子一つでこの態度……良いのかなぁソレで。

あ、ちなみに紅はすでに本棚の方で、勝手に本を出して読んでいる。
―――――彼女意外な事に本を読むのは好きなのだ。

てっきり頭痛くなるとか言うかと思ったけど、自分の好きなジャンルならば問題無いらしい。
で、彼女の好きなジャンルだが……挿絵つきの料理本だったりする。
勿論料理を作りたい為じゃない、挿絵の料理がうまそうだからだ。紅らしいと言えば紅らしい。

「じゃあ、奥の方借りますよ?」

すでにお菓子にパクついているラジャニさんを尻目に、僕はさっさと店の奥の方に向かった。

……………………

…………………

………………

「…………ふぅ、読み終わったぁ。」

立ち読みする事1時間、ドラニ公国の事が書かれた本を読み終えた僕はあくびをしながら背を伸ばした。

「あー…バキボキいってる…」

立ちっぱなしで固まった身体をほぐしながら、本を本棚へと戻した。
本に寄ると、ドラニ公国は国土のほとんどが山岳地帯となっているらしく、農業はあまり発達してはいない。
だけど、その代わりに製鉄などの技術が発達している鍛冶の国なんだって。

鉄や銅やソレらで作った武器、他にも貴重な鉱物を他国に輸出する事で生計を立てており、お国柄かお酒を好みさっぱりとした性格の人間が多い…らしい。
というか、性格ウンヌンはどうやって調べたんだろうか?――――アンケート?まさかねぇ?

まぁ表向きはそういった国で、実質豊富な資源により強力なそうびを持つ軍を持っている軍事大国でもあるんだそうで。
昔は他国との戦争に明け暮れた歴史を持つ古き鋼の国…と他の国で言われているんだって。
昔はクノルの町があるグランシュバッテとも戦争してたと本に書いてあった。

と言っても、かれこれ数十年前の話だしすでに国交も結んでいるから、両国間での問題は今のところ無い。
とりあえず、コレだけ解ればいいでしょ。

「そういえば、嫌に静かだな?」

いつもならラジャニさんのハタキが来る筈なんだけど?どうしたんだろ?
気になっていつもラジャニさんが居るカウンターの方を覗き込んだんだけど――――

「おおー♪良し良し良しッ!!」
「くぅーーーッ!!!!」

――――見なきゃよかった…つーかチビ済まん、僕には君を助ける事が出来ないよ。
アイコンタクトで助けてと言って来るチビにそう返すと、いささか絶望に打ちひしがれたような目になった。
多分かなり長い時間拘束されてるんだろう……ご愁傷様。

僕はラジャニさんに気付かれない様に、また店の奥へと戻って行った。

……………………

…………………

………………

「くぅ…」
「すっかりおつかれだなチビは」
「そりゃアレだけ撫でられ続ければねぇ?」
「くあう…」

紅の頭の上でぐったりとしているチビをみて苦笑する僕達。
今僕達は何時も泊まっている宿への帰り道を歩いている。

「しっかし、いざ準備してみようと思ったら、寝袋くらいしか買うモノが無いなんてな」
「まぁ新しい服と紅の分の外套も買ったけど、基本的に旅道具のほとんどがIT(イマジンツール)で造れるもんねぇ」

紅は市場で買った寝袋を持ち、僕も新しく買った服を持つ。
ちなみに寝袋はケルピーと呼ばれる馬に似た水の妖精の毛を使って編まれているので、耐水性がかなり高いらしい。
朝霧に濡れても大丈夫らしいので野宿には最適なんだとか。
普通の寝袋2つ分と、やや高いお値段だったけど他のモノを買わない分出費は抑えられた。

服は…まぁ普通の木綿の服だね。耐久力はまぁまぁだけど、防御力は皆無なヤツ。
でもまぁ元々紅はミスリル製の胸当てがあるし、僕はあのダンジョンで手に入れたマントのお陰で防御力に関しては問題無い。

紅の外套は黒いウールのマントで、コレも普通の奴だから特別な効果は無かったりする。
まぁあろうが無かろうが自力が強いから大丈夫。

「夕食はどうしようかな?昨日はシチューだったけど…」
「パスタなんてどうだ?」
「お、いいね。確か鷹の爪とニンニクが残ってたから、ぺペロンチーノが出来るよ」

一々外食すると、出費がバカにならないので、最近は宿の女将さんに頼んで厨房を貸して貰って自炊している。
やっぱね、外食も良いんだけど自分で造った料理ってのも良いモノでさ…何より美味しいって食べてもらえるのは癖になるよ。

「……くー」
「はいはい、チビは果物があればいいんだよね?」
「…くあ」

―――未だクテっとしたチビ。流石に可哀そうだったので、この子の好物である果物を買っておく事にしよう。

***

「さて」

取り出したるはオリーブオイル、ソレをIT(イマジンツール)にて造り出したフライパンに一ミリほどの厚さになるように入れる。
ちなみにフライパンには炎熱効果が付属されているので、すぐにオリーブオイルは熱くなってきた。
異世界だったけど食材のほとんどが元の世界と同じなのは助かったね。お陰で普通にレシピが使えるからさ。

「次は〜ニンニク〜」
薄くスライスしたニンニクを熱したオリーブオイルの中に投入!こんがりしてくるまで待つ。

「序でに鷹の爪」
鷹の爪も忘れない。これが結構味のアクセントになるからね。

「麺は茹で上がってるかな?」
ITで出来た鍋を覗き込み、中のスパゲッティを一本取り出し口に入れる。う〜ん、アルデンテ。

「よし!後はスパをフライパンに入れてっと。」
油をからませて完成じゃッ!トッピングのパセリも忘れないのが僕クオリティ。

「紅〜、ご飯出来たからお皿出して〜!」
「わかった」

出来あがったぺペロンチーノをお皿に盛っていく。
香ばしいニンニクの香りが鼻孔をくすぐり、胃袋が唸り声をあげるかの如く音を出す。
今日の晩御飯はぺペロンチーノと簡単なサラダ、後は果物が少しである。

「さて、それじゃあ」
「「いただきます!」」
「くー!」

さて今日の出来はどうかな?

「どう?おいしい?」
「おう、いけるぜ!」

そいつは良かった。誰かが美味しそうに食べてくれるとホント嬉しいねぇ。
あ、ちなみになんだが、普通犬は玉ねぎとかに中毒をおこすけど紅はそういったの平気になんだって。
まぁ今日の料理には入って無いけどね。



「相変わらずかなちゃんの調理はみてて飽きないね」
「あ、女将さん」

食事をしていると、宿の女将さんがやってきた。

「あの光るフライパンも魔法なんだっけ?」
「ええ、僕の魔法のひとつです」

便利だよねぇ〜IT(イマジンツール)

「でも良く料理するのに魔法使うなんて事考えたもんだ」
「はは、コレが結構良い訓練になるんですよ」

いやホントの話なんだよコレ。
さっきの調理だけでも、鍋とフライパンの並列使用と温度調節を同時にしてたからねぇ。
魔力制御のいい訓練につながるんだよ。料理は魔法っていうけど、まさにその通りだね。

「使った後は消せるから洗いモノしなくていいなんて、こっちからしたら物凄〜クうらやましいもんだ」
「確かにそうですね〜。」

意外と面倒だもんね食器とか洗うのって。

「そういえばいつも調理場使わせてくれてありがとうございます」
「気にせんでいいよ。いつも面白いもの見せてもらってるからね。レシピも幾つか教えてもらったし、それが代金代わりさ」
「いやでも男料理ですし…」
「いいんだよ美味しい料理だったらさ。複雑だけど美味しく無い料理よりも、簡単だけど美味しい料理の方がみんな喜べるからね。それじゃごゆっくり〜」

彼女はそう言うと、奥に引っ込んでいった。

「おかわり〜♪」
「はいはい」

美味しくご飯が食べられるって良い事だよね。


・ども、最近うっかりが多い作者のQOLでございます!
さてさて、かなめ君たちはどうやら旅に出られる様です。
という訳で今回はその準備編だったりw

以上作者からでした〜


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。