第3話 迷走
教会を出ると、ナオコとジーンが待っていた。
『隊長、銃声がしましたが大丈夫ですか?』
そう言いながら不安そうな顔をしている彼女の後ろには何体もの死体が転がっていた。
2人で隊長の命令を忠実に守っていたのだろう。
「大丈夫だ。ちゃんと退路も守っていてくれたようだな。礼を言うぞ」
その声に2人で別々に答える。
『このくらいならまだ大丈夫です。』
『当然です。』
そこでトムが口をひらく。
『隊長、それよりこれからどうするんです。生存者なんて1人も見当たりませんよ。』
「そうだな、まず他の隊に連絡を取ってみよう。 こちらBチームのディラン任務を続けている隊は応答せよ。」
しばらく待ってみるが返事は無い。
『無線の故障でしょうか?』
「だといいんだが、 そうだなそろそろ弾薬も減ってきたところだからな。確かこの近くにアンブレラの研究施設があったはずだ。そこへ行こう。あそこならそこらの銃器店より質のいい武器もあるはずだ」
そう聞いて街の地図を見ているナオコが言う。
『えっとその施設はここから南東へ1キロ程行った所にあるようですね。それなら隊長あの、』
「何だ?」
『そろそろ食事にしませんか』
確かに最後に食事をしたのは食事をしたのは大分前だ。
その状態でこれだけ戦闘行為を繰り返したのだから当然疲労もたまる。
「そうだな。ジーン、食料は残っているか?」
『飴玉が1つと板チョコが2枚』
「レーションの類は?」
ジーンは首を横に振る。
『甘いものが嫌いだったから残しただけだ。誰か要るか?』
視線がまず隊長のディランにいく。
『いや、俺はいい。他のやつにやってくれ」
次にトム。
『僕はその、飴が欲しいんですが、いいですか?』
誰も反対はしない。
トムは飴玉を受け取った。
甘いものは脳のエネルギーになるし、生きようとする意欲にもつながる。
『じゃあ後要るか?』
ジーンは二枚のやや小ぶりなチョコレートをナオコに差し出す。
『いいんですか?』
『もちろんだ』
『あっありがとうございます』そう言ってチョコレートを受け取った彼女の顔は僅かに微笑んでいた。
何故これほどまで食料が不足しているかと言うとアンブレラ社に与えられた情報の少なさが原因だった。
ラクーンで起きた暴動の鎮圧、という一言で終わる指示しか受けていないのだ。
故に食料など誰も持ってきてはいない。
最も元傭兵のジーンは別だったが。
「よし、ならそこらの民家にでも入って適当に食料を探すか。じゃあ二手に分かれよう。俺は1人でもいいが、誰か来るか?」
そこで手を上げたのはナオコだった。
『じゃあ私が隊長とご一緒します。』
「じゃ、30分ぐらいで戻ってこよう。」
そういってディランたちは二手に分かれた。
ディランたちは近くのスーパーマーケットに入っていった。
中は荒れているというか、既に略奪に遭った後のようだった。
生存者がいるのかもしれない。
「あまり離れるなよ、奴ら何処から現れるか分からんからな」
『隊長、あれは一体何なんですか?死んだ人が歩き回るなんて』
「さあな。アンブレラから回ってきた情報によると軍隊が作ったウイルスの副作用だとか言ってたが、よく分からん。わかるのはやつらは人を襲うことと、頭を撃ちぬけば死ぬことだけだ」
2人は適当に棚をあさりながら会話を続ける。
『でもなんで人を襲うんですか?』
「お前奴らをよく見ていなかったのか」
『?』
「やつらはタダ人を襲ってるわけじゃない。人に噛み付いてその肉を食べるんだ。奴等皮が剥がれてたり、肉が千切れてたりしてただろ。あれは食いちぎられた跡だ。犬や猫みたいな鋭い牙じゃない、人間の歯だ」
えっと彼女は息を呑んだ。
『そっそんな人が人を食べるなんて、』
「奴等はもう人じゃない。死ん出るんだ。」
そこまで聞いて彼女は遂に持っていた缶詰めを落とした。「大丈夫か?」
『隊長はこわくないんですか?』
彼女は少し震えているようにも見えた。
ちなみに、戦争向きではないとすら思われる性格の彼女がアンブレラ特殊警備部隊に選ばれた理由はその手先の器用さと銃の腕前である。彼女は他のものが必要とする期間の半分程度の期間でほぼ完璧にヘッドショットを決められるほどに上達したのである。
「俺だって恐いさ、死んだやつが歩き回って噛み付いてくるなんて。でも、ここで食い止めずに俺たちが逃げちまったらどうなると思う?今はアンブレラ社が町を封鎖してくれているから怪物どもは待ちの外へは出れないが、いずれ突破されてしまうだろう。もちろん俺たちだけでラクーン中の怪物を倒すことは出来ないし、俺たちもいずれ撤退するだろうが、それで少しでも被害を防げたら、少しでもこの事故に巻き込まれて死ぬ人を少なく出来たら。そう思うと俺は戦う気になるんだ。」
ディランの長い話を彼女は静かに聞いていた。
『そうですよね。いつまでも恐がってばかりじゃダメですよね』
その後でディランたちは見つかった分全ての食料を持ってジーン達と合流し、持ち寄った食料でささやかな食事をした。
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