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転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
53/98

転生世界がマゾゲーだった件

※7月12日改訂

ちょっと昔の話である。

娘のユフィリアが私、メーリンの寝室にやってきた。


「まま。ごほんよんで」


ユフィの催促に私は笑った。

愛おしい我が子を腕の中に抱くと私は小さく頷いた。


「はい、ユフィ。このご本ね」


「うん」


ユフィリアが一番大好きな絵本を広げる。


「ん、ゆふぃ、この本好き」


「勇者ユキウスの竜退治ね」


「うん」


子供の目はきらきらと輝いている。


勇者ユキウス。


神々に代わって、魔王を倒し、竜を倒した。

英雄の物語。


たぶん、世界で一番人気のある英雄譚ヒーロイックサーガだ。


ふと、思い出す。

そういえば、ミリアの息子であるユノウスはこれにあやかった名前らしい。




◇◇◇◇◇





「ユノウスさま、実は来客がおりまして、お通ししてもよろしいですか?」


「え?客?」


なんか予定あったけ?


これから僕は工房に行って、例の夏休みの工作をする予定なんだけどな。


会う人?訪ね人?

心当たりがまったく無い。


「名前は?」


「それが」


「よう、ひさしぶり」


と声が響いて、僕は驚いた。意外な顔だった。

その少女の名前は、確か。


「ユキアさん」


「私にさん付けとかいらねぇよ」


フィーゲルで初めて出会った冒険者。

まさか、彼女が僕の領地を訪ねてくるとは。


「何か用ですか?」


「おう、暇か?」


「めちゃくちゃ忙しいです」


「はは、そうは見えないけどな。めちゃくちゃ暇してる顔だな。そりゃ」


いやいや、忙しいですよ。ほんとに。


「随分と楽な顔してるじゃんか。もう老成したのか?ん?」


変なふっかけだな。

喧嘩でも売りに来たんですか??


「なんですか。絡んできて。用件は何ですか?」


「驚いたぜ。お前がアルファズスが異世界から拾ってきた魂だったとはな」


僕は立ち上がった。隣ではエヴァンがぽかんとしている。

ちょ、それは。


それにアルファズス!?

えーと、創世神だよな。どういうことだ??


「おう、お前もいい加減、知りたいだろ?」


「なにを?」


少女は笑った。


「この世界の真実って奴をだな」





◇◇◇◇◇





わけわからん。

僕はユキアに連れられるままにべオルググラードを出た。


「西のカイゼル諸国まで幼竜を撃退、封印しに行く。まぁ、ちょっとしたお使いだな。得意だろ、こういうの?」


そりゃ、RPGなんて半分はOTUKAIですから。

ちょっと魔王倒して来てとか、お使い頼まれるのも普通なご時世ですし。


西の辺境、カイゼル諸国。

行ったことはないな。

全力で走って、急げば一週間ってところかな。


「ここからなら、三日もありゃ着くだろ」


・・・。


「ところで幼竜を撃退ですか?退治ではなく?」


細かい事かも知れないが撃退だとニュアンスが微妙に違うよね。


「甘く見てるだろ。例え幼竜だろうと今のお前じゃ相手にならないぜ」


え?まじで?


「いやいや、そんなはず無いですよ」


僕は自信を持ってそう言った。


あれから結構強くなったし、ね。


「へぇ、面白い。じゃあ、どのくらい強くなったかお姉さんが見てやろうか」


そりゃ、面白い。いつぞやのリベンジもあるしな。

ご教授いただくかな。





◇◇◇◇◇






僕は顔面から地面にたたきつけられた。


ぐおお!


「速すぎる!!!!?」


何だよ。今の動き!

わけわからない!!


魔法式とか無かったよね!?

え、内燃魔法??いや、そういう感じでもなかったけど。

え?


ユキアとの手合わせ。


結論から言うと全く歯が立ちませんでした。


まず、剣とか目で追えないし、気づいたら、転がされてる。


あれ。おかしい。


こいつ、こんなに強かったっけ??


「遅すぎだよ、ユノウス」


いやいや、僕が遅いって。

そんなバカな。


HAHAHAは・・・え、まじ?


「大体、お前の魔法式。超騎士オーヴァーナイト四肢繰マリオネットじゃ、せいぜい稼げてLV400分プラスってところだな」


LVプラス400の強化。

まぁ、僕の内燃式魔法の強化量だと、たぶん、そのくらいだけど。


十分だよね?


あれ?


「なぁ、お前LVはいくつだ」


「この間、155になったけど」


「よわ」


いやいや、弱いって事は無いだろう。


155だぞ。

十分に強いでしょ。

まぁ、LV上げはサボりがちだったけど。


「あ、ちなみにあたしは今で1272な」


・・・。


はぁ?1272??


え?

レベルが??


はははは。

嘘だろ??


おい。

まじかよ。


例えば、僕の今の筋力が700前後だけど、ユキアは素のままのステータスで元数値にLV補正込みで3000を余裕で超えるってことだよな?


僕の場合、超騎士オーヴァーナイト諸々付きでも精々1500ぐらいだから、2倍は差があるわけか。


なるほど。

そんな次元の差だと魔法とかのもう、些細な問題でしかないよな。


って、ふ・ざ・け・ん・な!!


「おかしいだろ。おかしすぎるだろ!!1000越えたら神なんだろ!?」


「500を超えると半神だな。あたしは500年以上は余裕で生きてるしなぁ。まぁ、普通だろ」


うわ、こいつ、ロリBBAだった。

まぁ、世界観的にありえなくは無いけど。


そうなのだ。

この世界の人間はLV=存在力が上がると寿命が伸びるんだよね。

というか、まぁ、経験値=他人の魂(魔素)を喰らう行為だからね。


例えば、LV150もあれば、Sランク冒険者だけど。

連中は無事に引退すれば、120才ぐらいまで普通に生きるらしい。

若さも保つらしい。


それこそ、毎日ヒール(成長促成)漬けでもね。

差し引き0だな。


まぁ、非戦闘職のパートタイム従業員はヒール多用しすぎると多少早死にするかも知れんし、要注意だな。

ただ、それこそ戦闘行動ほどの消耗はありえないしな。


要は軍人はこきつかっても大丈夫。壊れないってことだね。


ただ、高レベルほど、次レベルへの要求経験値が糞みたいに増大するからなぁ。


LV1000越えとか理論上の存在じゃなかったのかよ。


「僕は魔素が分かるんだけど」


「外に放出する魔力の調整ぐらい余裕で出来るだろ」


そ、そんな方法が!

僕の妖怪アンテナ兼スカ○ターの故障じゃ無かったね。


「試しに解放してみてくれ」


「あ?別に良いけど、魔獣が寄ってくるしなぁ」


すると、ユキアの雰囲気が一変した。


「うわぁあああああああああああ」


オーラで目が焼ける。神々しいすぎる!!


「・・・・・・大げさだな、お前」


「あ、うん。ちょっとオーヴァーリアクションすぎた」


ごめん。

別にそこまですごくは無かった。

しかし、地味にやべぇ。


普通の基準がおかしすぎる。

どんだけチートなんだよ、こいつ。


まぁ、良いさ。例外はどこにでもあるし。


「お前なぁ。神だと創世神とか5500ぐらいだし、人間でも千刃王とかたぶんそれと同じくらいのLVだぞ」


はぁ?


「千刃王?なにそれ?」


どっかで聞いたことあるような。

ないような。


「知らないのか?遙か東に呪われた封印大陸があるのは知ってるよな」


一応、知識としては知っている。


「ああ、聖魔暦がアルファ創世暦に代わってから、早々の頃に神々によって、封印された大陸だろ?」


封印された大地とか、かっこいいよな。

王道だわ。


「其処に居るのが千刃王だ。まぁ、脳筋野郎だけど、くそ強いぞ」


待て、このユキアがくそつえってどういうレベルだよ。

どういう次元の強さだよ。


劇場版竜珠の神さまぐらいかな?


あたまおかしいよね。


「強いってどれくらい?」


「たぶん、封印が破れたら、神々が総力戦仕掛けるぐらいだな」


・・・・・・。


まじかよ。

おかしいだろ。


「しっかし、最近はどいつもこいつもレベルが低すぎるぜ。一昔前の魔人なら500、600LVクラスの奴がごろごろ居たのになぁ。あのガスロとかいう餓鬼魔人は150ちょいだったし」


あいつ、そんなにレベル高かったのか。

いや、ユキアに言わせれば低いんだろうけど。


ま、まぁ、良いさ。変態級の乙戦士が二人居るってだけだろ。


くやしくなんかないもん。


「じゃ、というわけで負けたからには例の物を寄越せよな。ユノウス」


そう告げるユキアは非常に良い笑顔だ。

そう、僕はユキアととある賭けをしていた。


僕が負けた場合はとある物をユキアに譲ることになっていたのだ。


つまり。


それは。


「ぐぬぬ、・・・・・・サモン」


僕は嫌々ながら召喚魔法を唱えた。


僕がサモンを使い呼び出したのは大吟醸試作品一号、月下桜である。

僕はこの勝負に、この秘蔵の酒樽を賭けていたのだ。


「へー、これがおまえが作ってた酒か」


「ああ、新商品なんだ」


「じゃ、さっそく」


待ちきれない様子でユキアが酒樽からコップを使い、酒を掬った。


「うめぇ!!てめぇやるじゃねぇか!!喧嘩の才能は大した事ねぇけど酒作りの才能はなかなかだな!!はは!!」


「お、おぅ」


絶賛だな。でも、素直に喜べないよな。

うん。


「じゃ、幼竜っていうのも1000近いレベルなんだな」


「ん?そうだな。今日のは雑魚だから精々2000ぐらいだろ。たぶん」


「なんだ。たった2000か。あはははは」


あー。聞こえない。きこえない。


レベル2000って嘘だー。

僕は信じないぞ。


・・・。


・・・・・・。


「あー、酒うめぇ」


なみだでそう。


「なぁ、竜ってどれくらいの数がいるんだ」


「あー、たぶん世界に軽く1000は居るなぁ」


へー。1000かー。

おー、想像の10倍ぐらい居るなぁ。


・・・。


まじかよ。


しかし、RPG竜冒険だと思ったらSRPG死大地だったって感じだな。

完全に別ゲーになっちまったがな。


そういや、こいつの外見、ちょっとエ○ナに似てるわ。


うん、どうでもいい。


「なぁ、お前って、竜ってどんなものだと思ってる?」


ユキアの質問に僕は少し考えると答えた。


「凄い高レベルのモンスターかな。色々な文献を見たけど時々出てきて壊滅的な被害を人間に負わせてる」


僕にとっては竜なんて、そんな程度の認識だったんだけど。

今まで。


「うん、まぁ、高レベルな魔獣みたいなモンではあるわな」


「?でも、大抵、勇者と呼ばれる存在に駆逐されるんだよな。つまり」


世間でもそんな感じだろ。


「あー、そうか。なるほど。そういう誤解があったのか」


「誤解?」


「ああ、現状で竜を完全に倒す手段はこの世界にない」


・・・。


「え?」


竜って倒せないの?

まじで?


「竜は神より上位の存在。いや、遙か根底的な最下位存在だからなぁ」


「何だよ、竜って??」


ユキアは僕に言った。


「竜っていうのは人間が名付けたんだな。神は古き獣と呼んだか。

まぁ、いろいろ呼び名があるが、どういう存在かを簡単に言うとだな。

この世界そのものだな」


何それ。


「この世界そのもの?」


意味が分からない。


「いや、世界じゃないか。違った。この次元じゃなくてすべての次元を収束させた因果律の現出体だ。あー、くそ、伝えにくいなぁ」


似た様な存在を良くマンガでみるな。


えーと、つまり。


竜ってのは、くらやみ、抑止力、そういうスーパーファクター的な存在か?

そういうお約束的な。


まてまて、そんなのに人間が喧嘩を売って勝てる訳ないだろ。


嘘だよな?


「まずは神って存在について説明すべきだな。お前は神って何だと思う?」


「まず偉そう」


「それは感想だろ。いきなりバカな振りするんじゃねぇ。ぶっ殺すぞ。


いいか。


この世界はゼロレイヤーである全なる根源っていう混沌の海の上にある。

これをハイパーイド、その力の現出を竜と呼ぶんだ。


そして、その上部レイヤーにあるのが全にして個たる魂の根源。


お前が集団的無意識コレクティブ・アンコンシャスとか、スーパーイドとか呼んで利用しているすべての魂の帰る場所だ。


すべての魂の総体。地獄や天国みたいなモンだな。


ここまでが基礎部分だな。


その上位レイヤーが人間の魂があるエゴイド面。


神って言うのは、さらにその上にいる。スーパーエゴだな。


神って言うのはエゴ、つまり人間の魂の力、理性が集まって生み出された存在だ。


火をこうあらんとみんなが考えた結果、信仰が生まれ、共有された認識から奇跡の存在である火の神が生まれる。


言い方を変えようか。神っていうのは人々の祈りの総体が魔法化したものだ。


神っていうのはな、お前が作った魔唱結晶とほぼ同じだ。


お前の言うマテリアって言うのは実は神様の一部を作っていた訳だ。


魔法そのものが神唱結晶化して、存在となったものが神だ。


そして、魔法とは祈りだ。


祈りとは願望だ。

つまり、神になることで人間の願望は魔法として実現してしまった。


神級魔法ってあるだろう。あれは別名、奇跡だとか原種魔法とか呼ばれる。


魔法結晶である神そのものを使うのが神級魔法というわけだ。


神と名付けられたエゴイド面の上にあるスーパーエゴの神唱結晶を直接使用するのが神級魔法。で、派生が色々な下位魔法。


さて、さすがにここまで都合の良い力を世界という存在は認めちゃくれないのは何となく分かるよな?


どういうしっぺ返しが起こるか分からないでもないだろ?


本当の奇跡を得てしまったこの世界は世界を管理するハイパーイドによって、無に消されるしかなくなってしまった。


で、世界というか始原が神を消去する為に生み出したのが、


つまり、竜だ 」


おー、分かるような、分からないような。


いや、分かっているけどさぁ。

それ理解したら終わりじゃん。


つまり、竜はセカイのつくった神への抗体だろ。


何を敵に回してんだよ。お前ら……。


「じゃあ、神様が全滅すれば、竜は消えて世界は平和になるのか?」


「ばか、この世界のエゴ存在はスーパーエゴを生み出しちまった。そんな危険なものを残しておけるかよ。

だから、この世界は竜によってすべてがリセットぼされるきまりだ」


おい。まじかよ。


一蓮托生か。


「な、なぁ、この世界って滅びるのか?」


「おう、予定だとな。いつかは現れるであろう七つの原罪を具現化した終末竜に滅ばされる。ちなみにその竜のLVの推定が150000以上だ」


・・・・・・。

じ、15万れべるぅ??


あはは。

なんだよ、それ。


数字の暴力すぎる。


「急におなかが痛くなってきました。トイレはどこですか?」


「おー、見ててやるから、のぐそしろ」


この変態!!


ちっ、くそ。

無理ゲーじゃねぇか


くそったれ。


「なぁ」


「何?」


「試しにマテリアによる防御魔法を使って見ろ」


「え?あ、うん」


何だ、藪から棒に。


と言うか。


何で、僕がマテリアによる絶対防御魔法を既に収得していることを知っているんだ?


まぁ、良いか。ええと。


無唱結界マテリアル・フィールド


「ほぅ、大したもんだな」


ユキアが感心した声を発する。

そうだろ。なんせこれぜったい・ぼ・


「ラグナ」


彼女は何気に剣を一閃した。

たったそれだけで。


理論上、破壊不可能な存在証明式。

究極の盾。

マテリアの結界魔法が斬り裂けた。


・・・。


う・・・嘘・・・だろ。


え、だって。


これ、概念魔法だぞ?


「お前、今まであたしに散々負けても、奥の手であるそいつがあれば、ノーダメージで勝てるとでも踏んでただろ?」


・・・。


思ってました・・・。


「おまえなぁ。言ったろ。神様は神唱と呼ばれるマテリア生命体だってな。竜はそれを殺せるんだよ。簡単にな」


竜にはマテリアが効かないってことか。


最悪じゃねぇか!!


構図的に竜>>超えられない壁>>神ってことだよな。

色々、おかしいだろ。


「元々、「ハジャ」は真にして唯一なる否定の概念式の古き闇竜の牙の力、根源能力「ラグナレク」を戦神メルティウスが魔法によって使用できるようにしたものだからな。この「ラグナ」は神の存在を全否定する力なんだ」


「まじ?」


「マジだよ。戦神ってのは「神と戦う」って存在願望だからな。聖魔戦争以降に開発された極めて特殊な魔法形態なんだよ」


そ、そうだったのか。

つうか、聖魔戦争ってガチで神殺しの戦争してたのか。


怖ええ時代もあったもんだな。おい。


「そういや、前、酒をおごったらハジャを教えてやるって言ったよな?」


そんなこともありましたっけ。


「と、言う訳でお前に教えてやるよ。真のハジャ、神滅概念式「ラグナ」をな」


え。お、おう。

ラッキー。


でも、ないのか?





◇◇◇◇◇






ラグナの修得には時間がかかるようだ。

道中で練習を始めたもののなかなか難しい。


「意外だな。教えりゃすぐ使えると思ったが」


「そうなの?」


「んー。まぁ、私もラグナを完璧に修得したのは聖魔戦争の後でLV1000超えた頃だからなぁ。条件的にLV1000は必要なのかもな」


もし、そうなら100%、今の僕には無理だわ。

くそ、脳筋魔法なのか、これ。


「なぁ、戦神メルティウスの神級魔法がラグナなんだろ?だったら」


「いや、メルティウスに魔法式は存在しない。メルティウスの神唱結晶は人の持つイドとハジャの力があるスーパーイドを中繋ぎする只のチューナーだからな。だから体の内から魔法式を持たずにハジャは発動するんだ」


「お、おー、と言うことはスーパーイドの先、ハイパーイドまで深く潜れば、ラグナが使える訳か」


「そういうことだ」


おー何となく分かってきたぞ。


ハイパーイド=竜、ラグナ

スーパーイド=魂の総体、ハジャ

イドエゴ=人間やら

スーパーエゴ=神、魔法


となると。


「ハイパーエゴは唯一神か」


「そんなのいねぇから」


「多神教なのかぁ」


残念。


僕の元世界には居るかもしれないなぁ。


ん、エゴイド。つまり、魂魄か。


あれ?どっちが魂で、どっちが魄だっけ?


「何考えてるんだ?」


「あー、いろいろ。あとでユシャン先生と検証しないとなぁ。んー」


「残念だが、そろそろ時間だ」


時間?なんの?


「さぁ、竜のお出ましだぜ」


そう言って。


ユキアは笑った。





◇◇◇◇◇






目の前の存在に対して、僕はサーチを唱えた。


幼竜、グオランブゥーヅ Lv2500。


ふぇぇ。

2500??


マジで2000オーヴァーなんだ。


い、色々おかしいよね!?


「あれが幼竜だな」


「あ、あのですね。れ、レベル2500とかでてるんですけどぉ」


「おう、死ぬなよ」


無茶な。

余裕で死ねるわ!!


ユキアが良い笑顔で僕の首根っこを掴んだ。


「おーし、いくぞ」


「のぉおおおおおおおおお」


誰か助けて!!


「ほら!頑張れ!」


「おにぃいいい!!」


僕の目の前に竜のアギトが近づく。

イマジンブレーカーきたぁあああ。


「くそったれぇええ!!」


僕は奥の手を使った。



―――  精神加速アクセラレート



精神時間加速2倍!!

さらに!!



―――― 精神倍速レートアップ



4倍!8倍!16倍だっぁああああ。


「お!てめぇ」」


竜の牙が僕に向かう。


「うぉおおお」



――――  十六重・無唱結界マテリアル・フィールド



幾層に駆けられた理論結界が牙を阻む。


おお、やはり!

いくらラグナレクの力でも神唱結界の解消には多少時間がかかるみたいだな。


最強の防御魔法が時間稼ぎにしかならんのかよ。


竜がビーフジャーキーを噛んでる間に次の魔法を唱える。



―――― 無唱限定結界リミテッド・マテリアル



「くらえぇええやぁあああ」


竜の周囲を魔唱防壁が覆う。

続く魔法で、僕は限定空間内の全ての物質の箍を解き放った。



――――  物質崩壊エネルギーチェンジ



人相手じゃ、かるーくコロしちゃうので封印している魔法だぞ!


「ど、どうだ!?」


すると、煙の中から。


ちょっと焦げた竜が出てきた。

えええええ!?


ちょっとぉ!??


「お、結構効いてるな」


これで効いてる方なの??


「ど、どうすんだよ!??」


「こうするんだよ」


ユキアが双剣を振るう。


はぇえええ!???

精神加速状態(16倍速)で漸くちょっと見えたぞ!?


ふぇええ!???


ユキアの剣が竜の前足を切断した。


斬った!斬れるのか!これ!!


「た、倒せる!?」


「傷つけるだけなら誰でも出来るぜ。竜が持つ概念核の完全破壊が不可能なだけだ」


そうなのか!

だったら!!



―――― 十六重・次元刹断グランザッパー



どうだ。空間断絶!!!


「お前さぁ。馬鹿だろ?」


「え?」


竜に空間断絶は破壊された。

あれ?


魔法効果マジックエフェクトを直接ぶつけてもラグナに消されるに決まってるだろ」


そうでした。相手は全身リアル神浄さんですもんね。


「あぁああですよねぇえええええ」


竜きた。喰われる!!

噛むのいやぁああ。


「楽しそうだな」


「実はちょっとぉ」


僕は竜の攻撃を避けた。


超絶速いが、甘いわ。

ふふふ、データが集まってきたぜ。



―――― 妖精演算式フォーチュン・テラー



補助魔法。未来観測。


魔法が消されるなら。

内燃式で戦えば、良いじゃない!!


「サモン!!」


神唱が破壊されるなら物質ローカル武器の方が良いな。

僕は手に持った普通の剣を振るった。


・・・あれ。ささらん。

ダメージ0だと!?


きずひとつ、つかない


「筋力が2000は足らんな」


「この脳筋!!レベル至上主義反対!!!」


竜が攻撃を開始する。

甘いわ!!

動きは読めるんだ!避けるだけならいける!



はは、わたしにもみえるぞぉ!!



・・・。


で。


どうしよう・・・。


このままじゃ、完全にアウトな未来しか見えないわ。


「助けて!ユキアさん!!」


「お前なぁ」


ふざけんな。

攻撃避けて、蛸踊りしてるだけじゃ絶対勝てねぇだろ!!


ダメージ0とか、壱兆回、殴ってもダメージ0だし。


僕、無力すぎる!!


つか、やばいから!

MPがマッハだぁ!!


「まー、お前が竜を引きつけてくれるから楽だわな、うん」


「僕を囮に使うなんて!!」


この外道!!

こちとらまだ9才なんだぞ!!外見上は!!


「暫く、時間稼いでくれ。私の真の力を解放する」


え?何?真の力??

あと3つの変身を残してる冷凍庫様かよ!?


と、とにかく時間稼げば、良いのね!


頼むぞ!まじで!!




――――   十六重・無唱結界マテリアル・フィールド




「GUAAAAAA」


うぉおお、シールドエフェクト掛け直す!

掛け直す!掛け直す!掛け直す!


やべ、この方法。MPの消耗が悲惨すぎる!

あと一分もたねぇええええ。


失敗したぁああああ。


「おう、待たせたな」


そう言って少女が前に出た。


え?


誰??


いや、外見はユキアだよな。

髪がちょっと黒いな。

それぐらいだよな。


でも、なんだこいつ??


存在感がおかしいような。


「GuUUUUUuuuuuu!!!」


「うるせぇ。滅びな」


ユキアは手を掲げた。

見たこともない魔法式。


そして、世界を喰らう漆黒の爆発が生まれた。




竜滅アルティネ





少女が放った魔法が竜を貫いた。


え、ラグナの効果は?

ちょ、え??魔法が発動した!?


幼竜の胴体が無惨に砕け散った。


そして、残った核に別の魔法を近づける。



「58連式神唱式(時空停止・断絶・封因)結界」




お、おい。何だよ。その魔法式。


それ自体が膨大な魔法式を内包する神唱結晶体に剥き出しの竜の概念核が一瞬で封印処理コーティングされる。


「おい、ユノウス。あんまり時間がないんだ。こっちにこい」


何故か。ユキアが僕を手招きする。


「え?え?」


僕はよく分からないがユキアに近づき。


そして、僕は。








べロチューされた。








◇◇◇◇◇








「・・・」


・・・。


「・・・おう、なんか言えよ」


何かって、何?

えーと、キスの感想?


「ほのかに甘いような」


「まぁ、さっきまで酒飲んでたからな」


ですよー。あー。

えー。


「何でキスした!??」


初めてだったのに!???


ほ、ほれてまうやろ///


「必要だからだよ。自分のステータスをサーチしてみろ」


え?


「サーチ」


ん。あれー。


なんかおかしいぞ。

パラメーターがおかしい。


原因はすぐに分かった。


創造神の祝福・・・(条件)竜を撃退する。(パーティでも可)(効果)レベルアッパー:LVアップによる能力上昇を1、5倍にする。


魔王神の祝福・・・(条件)魔王神とキスをする。(効果)コンセントレート:知力の値分、魔力をアップする。


なにこれ。


「どういうこと?」


「そういうことだ。今回の目的の一つがお前に私の祝福を与える事だったんだよ」


「魔王神??」


「はは、知らないか。無理もない。聖魔戦争で滅んだはずの最強の魔神だからな」


「ユキア、お前」


まさか。


「ああ、私の魂はとある事情で神唱化しているんだ。その魂の形が魔王神だな」


「じゃ、さっきの力は」


「あたしは自分の体を仮死状態にすれば、魂の力を解放できるんだ。ちなみに魔王神のLVは5800だな」


・・・5800。


あー、また随分と頭の悪い数字が来たなぁ。

うわぁ、どんだけぇ・・・。


「これでお前にも私の魔法式が使えるようになったな」


「え、まさか、あの竜を一瞬でぶっ飛ばした魔法は」


「そう、あの神級魔法 竜滅アルティネが竜を殺せる唯一の魔法なんだ。ただし、未完成だけどな」


まじで?

え、未完成??


「私は元々魔法タイプじゃないしな。魔王神の力を使ってもアルティネを完成させられなかった」


「そうなの?」


魔王神でも駄目ってどんな魔法だよ。


「いや、アルファズスのくそ野郎が言うにはこの世界の人間には使いこなせないらしい。


そういう仕様の魔法なんだ。


だから、アルファズスは本来魔法の効果が及ばないスーパーイドの奥深く、輪廻を司る魂の回廊にほんの僅かな横道を作って、何千万何千億何千兆という魂の循環を見続けた。


魂の本流から逸れて、その横道に入ってくる魂を待っていたんだ。


それで500年くらいかけて、漸く捕まったのがお前の魂な」


え、まじで?


そんな方法で僕ってこっちに来たの??

そんな理由で僕ってこっちに呼ばれたの??


「でも、なんで祝福の条件がキスなんだ?」


「あーそれな。あたしが魔王神になったときに適当に決めたんだが。あたしが絶対に嫌な事にすれば、誰も祝福しなくて済むなと思ってなぁ」


適当すぎるだろ。なんだよキスって。


「え、自分でやっといて嫌だったの?」


「自惚れんなよ。別にガキとキスするぐらい好きでも嫌いでもないわ」


なんだそりゃ。

微妙なハードル設定だな。おい。


「ところでなんでべロチューなの?」


「おう、その方がお前が嫌がるだろ」


・・・。


「で、でもそんな設定じゃ使い手が増えないだろ」


一応、不完全でも竜への対抗手段になるわけだし。


「アルティネはこの世界の因果律そのものを破壊する魔法だぞ。そんなものをばらまく気か?」


「え、そうか。確かに・・・」


やばい代物だな。うん。


しかし。

どうよ。この状況。


はぁ、僕は天を仰いだ。

考える。


しっかし、勝手なもんだな。

まぁ、往々にして召喚モノなんてこっちの事情を考えずに呼び出しておいて勝手なてめぇの事情を押しつけるモノだが。


相手がデカすぎるな。


難易度がおかしいな。


あかん。この世界くそげーだ。


まじでくそげー。


ゲームバランス悪すぎる。


難易度設定、ベリーイージだと思ったらヘルモード、つかノンフューチャーモードだったとか。


トロコン目指してたらプラチナトロフィーどころか、ゲームクリアすらミッションインポッシブルじゃねぇか。


まじオワタ。わろたよお。

笑うわ。笑えよ。


僕は無力だ。


でも。


「おい、9才のおこちゃま」


「なんだよ。魔王神」


「と言うわけで悪いが世界を救ってくれ」


やすぅ。


そんなOTUKAIありかよ。


はぁ、なんだよ。最悪じゃねぇか。


僕はため息を吐いた。


ちくしょう。でもマゾクソゲーマーの血が騒ぐぜ。


クリア不可とか。


いいじゃん。

おもしろそうじゃん。


やろうぜ。

やってやろうぜ。


根源に、概念に勝ってやんよ。


俺がこの世界を救ってやんよ。



「おう、任せろ」



僕が言って。


少女は笑った。


「お前は面白いよな。おもしれえ奴だ」


「そうか?」


自分ではこんなに面倒な性格の人間もそう居ないと思ってるんだが。


「竜を殺す為の力、竜滅アルティネ魔王神わたしを殺す為の力、神滅ラグナ。それをこれから、お前に徹底的に教え込む」


「え」


私をコロス?

なにを、言って。


「もし、もしだ。私のこの力が暴走したら、この世界は壊れちまうかもしれん」


彼女は、笑った。





「いいな。その時は私のことを殺せ。私の魂を殺せ。頼むぞ、ユノウス」






◇◇◇◇◇








こうして、僕と竜と神々を巡る長い、永い、戦いの幕が切って落とされたのだった。

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