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転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
52/98

妖精に中の人などいない

※7月12日改訂

エルヴァン国。

この国は非常に豊かな大陸の中央に位置しており、他国との交易も活発な国だ。


テスタンティスに比肩する規模の大国である。


そこのやや北方に位置する大公領に僕とクレイはそこの視察に来ていた。


ここの領主、クリフト大公の要請により新店舗の出店を計画しているのだ。


「クリフト大公が用意してくれた土地と言うのはここですか」


確認する。うん。これは。


「見事に何も無いな」


用意されたのは町外れの土地だった。

町からは目と鼻の先でアクセス自体は悪くない。


しかし、見事に何も無い更地である。


「どう見ます?」


どうって。


「ひとまず、良くも悪くも無いかな。土地は相当に広いし、契約金も安い。そこは良いところだね。ただ、経路パス考えると目立った目標物が無い」


人が自然に集まる場所では無い。

そこは難点だ。


コンビニなら速攻でつぶれるだろ。


こういう場所には集客力を自前で確保する必要があるなぁ。


「郊外型店舗か」


「郊外型ですか」


そう郊外型。僕は決断した。


「ここには商店街より集客力の高い百貨店デパートを建てよう」


「デパート?」


ん、この世界には無いのか、デパート。

僕はクレイに計画のおおまかな内容を説明する。


「なるほど。面白い案ですね。でも、人の足はどうします?」


「無料の巡回馬車を設けて人を集める」


待ってても人が来ないなら、こっちから出向いて集めれば良い。


しかし、大型店舗を展開するとなると予定していた物よりずいぶんと規模がデカくなるな。


「目玉は昇降機とかか?アレは意外と簡単に設置できるし。吹き抜けのイベントホールでライブパフォーマンス的な何かをするとか」


いろいろ出来そうだが。するとクレイが不安そうな顔で行った。


「しかし、中央市場の供給能力を見た感じではそこまで大きな需要の喚起は難しいのでは?」


確かに、ここには非常に完成された市場がある。

用がそこで足りるのに、デパートのような場所に都市の人間の足を向けさせるのは大変だ。


必要なのはブランドイメージ戦略だな。

しかし、そういう戦略は時間がかかるしなぁ。


だから、手っ取り早いのは・・・。


「まぁ、こういう完成された都市では、もともと新規需要の入り込む余地は薄いんだよ。だから、巡回馬車は都市巡回に加えて郊外巡回も加える」


「なるほど。しかし、大がかりですね」


いっそ、列車でも走らせるか?

しかし、そうなると用地を買うのが大変だしなぁ。


奇天烈大公は喜ぶかも知れないが無駄すぎる。


「オープンは例のS級大会に合わせるのがベストだよな」


初期ブーストかけられるよね。


「大会は4ヶ月後ですよね?並行してやるのは、さすがにかなり無茶ですよ」


うーん。

同時がベストだが確かに人的プールには不安がある。


新店舗がデパート型となると人材確保に、育成に、と時間がいくらあっても足りない。

うーん、そうだよなぁ。


「プロモート用に資材と人員を確保して、それを新店舗にスライドするか」


ベストではなくベターな選択だが仕方ない。


「資材横流しですか。良いですね。ありですよ」


やけに食いつきが良いな。


無駄がなくて良いけど。

クレイってほんとリサイクル・省エネ嗜好だな。

小市民だし。


「デパートの開発に3ヶ月。周辺開発に1ヶ月。育成に1ヶ月。ここの土木作業を進めながら、まずはS級の方のプロモート活動。それが4ヶ月。ざっくり、そんな感じで良いかな。クレイは計画書を作ってくれ」


「分かりました」





◇◇◇◇◇







俺、アデル。職業、ニート。

かあちゃんから仕事見つけてこないと家に上げないって言われた。


つまり、これ。俺、死んだ。ホームレス確定。

はぁ・・・。


「こらアデル!しっかりしなよ」


「なんだよ。アカネ。うるせぇなぁ」


さっきから俺にうるさいこの女は幼なじみのアカネだ。

ちょっとボーイッシュな割とかわいい系。


おいおい、睨むなよ。

別にこいつが俺にほの字とかねぇから。


俺は割と本気でほの字だけどな!はは!!


脳内彼女じゃねぇよ!!ちゃんといるさ!ここに!!


こいつの前じゃ格好悪いところ見せらんねぇなぁ


もっとも、俺がこいつに格好良いところを見せたことなんて一度もねぇけど・・・。


「この仕事を成功させれば、きっとお母さんも見直すよ!」


「無理だろ」


世の中に俺が出来る仕事なんて無いわ。

仕事が俺を嫌がってるだから仕方ないぜ。


「見てよ、この募集要項!」


アカネが妙にしつこい。俺は嫌々ながら、ソレをみた。


俺はみた。其処にかかれた衝撃の項目を。



駄目人間、可。



なんだと?


「ぴったりでしょ!」


「お、おぅ、まさにてんしょくだな」


まさにてんショックだわ。


アカネが俺のこと、其処まで底辺したに見てたなんて・・・。


し に た い。


「私も付き合うから頑張ろうね!」


「お、おぅ」





◇◇◇◇◇






「はい!もっとコミカルに!ちがう!!もっと愛らしく!!」


バイトの募集に応募したら、おかしい連中に捕まったった。


目の前で真ん丸顔の愛玩動物が軽快にステップを踏んでいる。

なんだ、これ。


「すごいかわいい♪」


アカネはなぜか喜んでいる。

え、あんなズングリムックリの短足生物のダンスがかわいいの?


わけわからんな。


短さだけなら、よう、俺のアレの方がカワいいぜ?

つまり、皮入いんだけどさぁ。


ほら、みる?


・・・・・・と、最低な冗談はさておいて。


「なぁ、このユノウス商会オレエンタランドって会社、大丈夫なの?超ヤバメな香りがしない?」


「そう?」


そもそもあんな着ぐるみにわざわざ入ってコミカルなダンスをするなんて意味が分からん。


どんな拷問だよ。


見学していた俺らに一人の男が近付いて来た。


「お前が駄目夫のアデルか」


なんかごついおっさんだな。こえ。

って。


「誰から聞いた!?そんな話!!」


誰が駄目夫だ!?てめぇ!


「私が言いました!」


犯人はアカネだった。


言うなよ!知れ渡ってしまうだろが!

俺のMEISEIが!!!


うおー、うぎゃぁあ。


「※※・・・・・・というわけで、アデルくん、君には怪人役をやってもらう」


お、おお、いきなり仕事の話かよ。

内なる心の葛藤との戦いで全然、話を聞いてなかったけど、なんか説明とかあった系ですか?


だ、誰か説明してくれよ、最初から。

理解できる保証は無いけどな!


「怪人役ってなんだ?」


「ヒーローにぼこられて、引きずりまわされて、コロされる役だ」


ほぅ・・・。


「最悪じゃねぇか!!」


「それならアデルでも出来るね!」


おう!出来るだろうな!って出来るかよ!?


俺を何だと思ってやがる!!くそ!!


「ただし、この怪人には特殊なアクションが必要なんだ」


「あー、それじゃ、アデルには無理かなー」


え、いやいや。

ちょっと!?評価低すぎじゃないですか!?


俺を諦めないで!


俺を見捨てないで!!


「俺が手本を見せよう」


そう言って、彼は得体の知れない奇妙な青色の物体に体を入れた。

なんだ、こいつ。


「ぶしゃー!!!ぶしゃーーーー!!!!!」


な、なんだ、この奇声は。


「ぶしゃ!ぶしゃ!びゅ、びゅうぅうううう」


なんだ、この気持ち悪い動きは。


見ていて気分が悪くなる。


最悪だ。


最低だ。


こいつは最低最悪のクリーチャーだ!!!


「(ご、ごく)こ、これなら!」


「何がこれならだよ!?おかしいだろ!こんなの!!!」


「どうだ?出来そうか?」


「出来ます!アデルなら!!」


謎の信頼すぐる。


「出来ませんよ!?無理だから!!」


無理すぎる!というか絶対に嫌だ!!


「そうか!出来るか!」


「私、アデルを信じる!」


あれ?俺の話を聞こうね!?

ちょっとぉ!


「何が、だよ!?やりませんよ!?」


「あー、すまん、君のおかあさんからは「何を言ってもやらせるように」と頼まれているんだ。済まんな」


「ゴメンね」


え?

え??


う、うわぁあああああ。うちのおかんキターーーー。

おかんの謎の交渉スキルきたーーーーー。


最初から逃げ道ねぇぇえええ。


うちのおかんナニモノぉおおおお????


ただの主婦でしょぉおおお???


「ところでこの子はなんて名前何ですか?」


男は頷いた。


「ああ、こいつは林檎型怪人えるっしー(青)だ」





◇◇◇◇◇






2ヶ月後。


思えば、頭のおかしくなる日々だった。


「もっと狂え!そうだ!!良いぞ!!」


何がだよ。なんでこんなキチガイの演技をしなきゃならんのだ。


「様になってきたね!アデル!」


嬉しくないよ!ぜんぜん嬉しくない!!


こうして。


微妙に逃げることも出来ないまま、本番当日になった。


今日はヒーローショーの初日なのだ。

何が楽しいのか子供たちが集まっている。


餓鬼って趣味悪いんだな。

俺は にょたい と言う生命の神秘にしか興味が無い哲学人だというのに。


そして。

なんかよく分からん寸劇が始まった。

よく分からんし、着ぐるみなんで良く見えないので割愛。


そして、俺の出番だ。


「ぶしゃぁああああ!ぶしゅうぅううううう」


「あはは、きもー」


幼児に笑われた。最悪だ。

俺は怒りの動きをした。見よ。この二ヶ月の成果を!!


「きもぉー」


「やべぇ!きもー」


くそ!!!!さいあくすぎる!!!!

すると向こうから別の何かが出てきた。


「エルヴァンご当地ヒーロー、デュエルマン参上!!」


だ、だせぇ。激ださだぜ。


銀ぴかの全身ボディースーツ。

俺はこいつな奴に負けるのか。最悪すぎる


「BusYAああああ!!ぶしゃあAAAA!!!」


くそ、ヤケクソだ。

適当に動いてやる。


「うぉ、さらにすげぇきもい動きだ!!」


「すごい!怪人きもい!!」


ぐは!?

待て!こういう演技なんだよ!俺はきもくねぇ

きもいなんて言うなよ!!

俺の豆腐メンタルが、クライマックスじゃねぇ!?


「完璧だ!!練習以上じゃないか!!」


おい、そこ褒めんな!!!嬉しくないわ!!!

何、受けてんだよ、おかしいだろ!?


「うわ、きもっ・・・」


「ぶしゃああああぁあああ!???(てめぇ、アカネ!!!?何、素で呟いてんだよ!!)」


そうなのだ。


そう、アレの中身はアカネなのだ。

アイツ、あれがやりたくてオカンを焚きつけて、俺を売ったんだYo。


その魂胆に気がついた時、俺は切れたね!

切れまくったね!


思わず怒りを静める為にパンティ寄越せと言っちまったぐらいに切れたわ。


アカネはパンツをくれなかった。


ゆるせねぇ!!ぱんつくれよ!!


くそ、くそ。


俺は怒りに震えていた。


そして、その瞬間、俺は気がついたのだ。


いや、まてよ。

このボディスーツ、微妙に体のライン出てねぇ?


ぴっちぴっちじゃねぇ?


あのぴちぴちスーツに上からアクシデンツぅでおっぱい揉むとしよう。


ほぅ。


最高じゃん。


ほら、アクシデンツぅなら仕方ないよな?

仕方ないから、おっぱい揉むわ。


「ぶしゃぁあああああああ!!!(おっぱい!!!)」


「うわぁ!!今までで一番気持ち悪い!!」


「気持ち悪いよぉ!!」


幼児たちが引いているが関係ない。


おっぱい!よこせぇえええええええ!!!


「ひっ!いやぁああああ」




どごん!!!!!!




あ、あれ?


「あ、ごめん」


アカネが謝っている。

あれ、おかしいな。ぱんちとか寸止めの予定じゃない?


ほら、ぱんつは歓迎するけど、ぱんちとかねぇ・・・。


アカネのパンチ、それは運悪く俺の鳩尾にクリーンヒットした。


あ、あ、あ・あ。・き・くぅう・・・

きた、きてるきてるきたきたこれやばいのキターぁああああああ


「ぶしぃうぁあああああああああああああ」


中身がもれるぅうううう。


おぇえええええええええええええええ。


「いやぁああああああ」



「えええええ!?すげぇええええええええ!!!!」



「なんかでたーーーー!!!!!」





嗚呼。





しんだ。







◇◇◇◇◇








「林檎型怪人凄かった!」


「楽しかったね!!」


「最後の謎液すげぇーの」


アレは俺の魂のプラズマだ。


なお、俺は死んだ。

社会的に。


「ゲロだけでなく失禁までするとはなぁ!迫真の演技だったぞ!!」


演技な訳ないだろ。

人をコケにするのも大概にしろよな!ばかぁあああ。


「ぅうう」


駄目人間からゲロ人間に昇格してしまった。

働いたりするからこうなるんだ。


「ごめんね!次はもっと上手く殴るから」


やめて!乱暴はいやぁ!!


「次はもっと、こう、下から上に向かってレバーを抉る感じで」


「中身でるわ!!もっと上手くって、そういうベクトルかよ!?」


何考えてるんだ、アカネ!!


「さて、次までにちゃんと洗濯しとけよ。えるっしー」


まてや。誰がえるっしーだ!!


「ちゃんと名前で呼んで!!俺の名前で呼んで!!」


おれ、かなしい!


「大丈夫だよ!あでるっしー名演技だった!(ちょっとひいたし)」


「演技じゃ無いから!本気でやばかったから!!!って、アカネはいつも通り呼んでよ!!その名前をくっつけて愛称っぽく呼ばないで!!」


酷い。ひどすぎる。

そんな渾名なら、えろっしーの方がまだマシじゃんか。


「がんばれ、あでるっしー!!」


「いやぁあああ」


こうして俺は変な会社に就職が決まった。

さ、最悪すぎる。


おっぱい揉みたかっただけなのに・・・。

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