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転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
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イベントプランナー

※7月12日改訂

試験が終了し、待望の夏休みである。

夏休みはいいなぁ。最高だ!


みんなは領地に久し振りに帰るらしい。

僕は公爵領には帰らないけどね。


本業に精が出るぜぇ。


「ね、ねぇ、あんたは休み中はどうするの?」


アリシス姫が近付いてくる。


「仕事だな」


「はぁ?お休みでしょ?」


「おう、趣味の仕事がいっぱい貯まってるもんで」


「あ、あのね。実はおにいさまの別荘が」


ぴぃぴぃと音が鳴った。

おお、連絡用無線機か。


「誰だ?クレイ?おお、なんだと?そんなうまい話が!でかしたぞ!直ぐに行く!!」


「・・・」


「済まないが急ぎだ!じゃあな!」


「あっ!?ちょっと!ねぇ、それ、私にもちょうだい!」


それってこの通信機?


「やだ」


絶対無駄な通話してくるだろ。やらんがな。


呪文を唱え、転移門を開く。


「まてぇえええ!!このばかああああああああ!!!」


「ははは、じゃ、二ヶ月後会おう!!」


と、言い残して、僕はユノウス商会本部に転移した。

さらば、学友共。





◇◇◇◇◇





その日、

グランメゾン・ソラニテには奇妙な来客が来ていた。


「ふむ、この上に乗った物はなんだ。スバラシイぞ」


「フィレステーキのロッシーニ風にございます」


僕の説明に彼は何度も頷いた。


さすがにフォアグラは製法に難ありなので、いろいろ工夫し、特殊な製法で作った偽フォアグラが乗ったフィレステーキに珍客は満足した。


この疑似フォアグラを用意するのは大変だったが、今では人気メニューの一つである。


「しかし、この店は素晴らしいな」


「ありがとうございます」


僕の礼の言葉に彼は何度も頷いた。


「ふふ、事前に使用人から料理の趣向や記念日などのリサーチをし、特別な趣向で迎えるそうではないか」


「大抵のお客様はサプライズがお好きですので」


オモテナシと言う奴である。


「ふふ、若いのに、なかなか貴族の情報にも精通しておいでの様だ」


「ええ、その方が儲かるのですよ」


僕はにっこりと笑う。


「さて、ちょっと趣向を変えて見ましょう。クレイ、例のものをシェフに」


「はい」


ウェイターが新たに運んで来た料理は美しかった。


「むぅ、これは?」


宝石の様に輝くそれを見て、彼はうなった。

僕は説明する。


「スシにございます。これはリフレッシュを使い、魚の腐敗菌や食中毒菌を殺した上で増殖細菌のみをヒールで促成し、旨味をじっくりと熟成させたものです」


熟成鮨と言う奴だ。

べ、別に腐ってる訳じゃねぇぞ。


このレストランでは、わざわざ鮮魚や生肉を殺菌する為だけに一人魔法使いを雇い、置いてある。


美食の為に必要なコストである。


「ほぅ、面白い嗜好だ!生の魚は初めて食べるぞ。お前さん、俺の奇天烈好きをよく知っているではないか!!」


一貫を一口で食べる。


「口の中でほどけるだと!?」


「お味は?」


「まて、もぐ。ふむ、これは、むむ、」


しばし、無言で食べ進む。


すべてを食べ終えて、彼は言った。


「こんな物を喰っては、もう領地に帰れんな」


「おや、おきに召しませんでしたか?」


「逆だ!最高ではないか!!ははは!!」


そう言って、クリフト大公は高笑いをした。





◇◇◇◇◇






「では、お食事も済みましたし、案件に移りましょう」


「そうだな。ずばり、君たちユノウス商会の店をうちの領地に招きたい」


エルヴァン国への出店要請か。面白い。


僕は笑った。


「理由は何ですか?」


「君たちはなかなかキテるだろ。俺の一族はこう言うことには敏感でな。こう、びびっと、来たわけだ。俺の領地の開発にも役立つだろう」


面白いおっさんやな。

僕は営業スマイルで頷いた。


「お役に立てて頂ければ光栄ですよ。我々は商人ですから」


「それと、別で間もなく告知される今年のS級チャンピオンシップを全面的に任せたい」


クレイがその提案に、ひ、と声を漏らした。

僕は平然と笑顔で笑う。


デュエル大会のプロモートという訳か。

面白い。


「予算は?」


彼は笑った。


「ずばり、一億Gだ」





◇◇◇◇◇







「クレイはどう思う、今回の案件?」


「今回は回避しましょう。うちは弱小過ぎます!」


クレイは臆したのか。

まぁ、無理もないか。

プロモート料1億Gのビッグイベントなんて失敗できないもんな。


でも、別に今年の三校選をちょっと派手にするぐらいだろ。


例えば、オリンピックやWカップみたいな規模でやれ、話じゃ無いんだし、大丈夫じゃねぇ?


わりと楽勝だと思うけどなぁ。


人の手はくそいるけど。


「お前が懸念してるのは人件費だろ?確かに、今のうちの事業規模で無計画に人員増やすと反動多いもんなぁ」


人の手は足りないぐらいにセーブしながら、事業展開を進めていくべきだ。


「そうです。無理はやめましょう」


確かにユノウス商会のみでは今回の案件を受けるのはやめた方が良い。

しかし。


「べオルグ軍やら契約農家の人的プール使えば、楽勝じゃん」


「そっちを多用すると軍配備に遅れが出るのでは?エヴァンの奴が職権乱用で切れますよ」


「べオルグ軍と5000万Gで折半だ。心配しなくても、僕の人外軍が良い感じで使えるからなぁ。当面は軍需関係の案件増やすのやめるわ!はは」


隣国もなんだか、大人しいし、ね。


人外軍??クレイが不思議そうに首を捻っている。


「しかし」


「クレイ。良いか。クリフト大公は僕らに1億Gをぽんと出せるほどの大金持ちなんだぞ?そういう次元の金持ちになりたきゃ、そういう感覚を持たないといけない。小銭の勘定ばかり上手くなっても商人としては成功出来ないぞ」


「それは」


「しかも、今回は多少、失敗しても、違約金は無いんだ。持ち逃げは許されないがね。経験を買う良い機会だ」


「分かりました」


大体、2ヶ月も休みがあるんだぞ。

こんなたのしそうなことをみすみす逃すかよ。


「くく、楽しめそうだな」





◇◇◇◇◇






「本当に大丈夫なんですか?」


「ああ、なんとかするさ」


エヴァンは了承してくれた。他国の領地に軍人を派遣するのは結構あれだが、まぁ、軍務じゃないし。


バレなきゃ大丈夫だろ。


エヴァンは僕の夏休みの工作(予定表)を見て眉を動かした。


「今度は何を作らせる気ですか」


「簡単に言えば、幻視イニシエーション光源ライトで姿を隠せる超高度飛空挺と高速駆動の超神級魔法砲戦車と誘導魚雷を撃てる潜水艦だな」


また得体の知れない物を言う顔でエヴァンは歪んだ顔をした。


「そんなもの、本気で作れるんですか?」


「まぁ、工房に籠もっても普通に数ヶ月は掛かるんじゃない?ちなみにこれは僕が魔法を使いまくって、主導的に作るから」


「貴方が魔法で作るんですか?それなら大概は可能でしょうけど、何の為に?」


そりゃ、僕が居なくても抑止力が働くようにデスよ。

ガスで浮くだけの飛空挺なら結構簡単に作れるだろうし、魔法砲戦車もバカでかいキャストガンと玉用意するだけだから意外に簡単だろ。


潜水艦はちょっと特殊かな。

潜水に耐えられる高気密、高強度のボディーは簡単に作れるけど、移動系がねぇ。


スクリューとか、ジェットとかヨークソンに開発してもらう必要があるなぁ。


フォースとかで駆動しても良いけど、やっぱジェットだよね。

排水系とかどうしようかな。


まぁ、最悪、魔法を使えば、良いわけだし。


「また、そんな余計な物を作って・・・」


「良いんだよ。工場生産の技術が無いから、ちまちま数用意するよりデカイの一個作った方が楽だし」


「人件費の無駄じゃないんですか?」


うーん、まぁ、若干、道楽入ってるのは認めるけど。

たぶん、必要になるはずだよ。


たぶん。

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