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転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
47/98

鉄は熱いうちに叩け

※7月12日改訂

三校戦が終わって一ヶ月が過ぎた。

慌ただしい日々が終われば、次のイベントが待ちかまえているものだ。


「中間試験ねぇ」


この学校の中間試験は剣術・魔法実習と筆記とダンジョン攻略試験の3つに分かれる。

どれも特にすることはないが。


「あのね。ダンジョン攻略試験で10階越えに挑戦したいの!」


アリシスがそう宣言するを聞いた僕は首を捻った。


「何か意味があるのか?」


「たしか以前、ライオット陛下が一年生にして10階越えを果たしたという逸話が残っていますね」


これはシエラ。

どうやら有名な話らしい。


「そうよ!これを超えるの!私たちで!」


意味があるのか?


「しかし、大したものだな。僕らは今、7層だからあと3層も上に行ってた訳か」


「まぁ、陛下やそのお付きの護衛騎士四支忠星はこの学校に入った時点ですでにLV15を超えてたらしいから」


そりゃすごい。どんなレベリングをしたか知らんがLV1から始めているシエラたちに比べれば、無理が利くのも当然か。


「その四支忠星ってのはなんだ?」


「エリオット・カーム、ロック・ベリンジャー、カインツ・ロウ、ジヴ・ロウの4人です」


「ああ、ライオット王の取り巻きじゃん」


たしか、エリオットとロックはチーム戦で倒したなぁ。


彼らが優秀なのは分かった。


あのレベルで固めたチームなら相当強いだろう。

デュアルのチーム戦で優秀な成績を納める訳だな。


元々、ライオットの身辺警護の親衛隊だったわけか。

しかし、完全無欠オール・パーフェクトと言い、ここら辺のネームセンスはどうにかならないのかな?

星と言うからには例の黄道十二なんちゃらも持っているんだろうが。


「そう言うことなら僕に手がある」


「手?」


「そうだ。良い手がね」





◇◇◇◇◇






ユノウスは放課後、貴族街に来ていた。

そこには一足先に来ていたクレイと秘書のエリエスがいた。


「そのお姿ですか」


「ああ」


「違和感がありますね」


9歳の僕の姿にクレイは眉を歪めた。


「しかし、ユノウスさんがまだ9歳の子供だったとは」


「まだ言ってるのか、お前は」


いい加減隠すのもアレなので簡単に説明はしている。


「隠してた理由は説明しただろ」


「ええ、確かに一般市民相手には9歳のお姿では舐められるというのも分かりますよ。商人相手でも信頼を得る為に大人の容姿があった方が便利だと」


ただそれだったら、あの頼りない外見にあえて変装する必要も無かったような気もするが。


「お前が表に立ってくれるなら、僕があえて姿を変えて商談をする必要も無いしな」


「すべて押しつけられて感がありますが」


「気のせいだ。別にお前一人に押しつけてないさ」


「では、何人に?」


「うん、いっぱいだな」


いずれにせよ。今日は貴族であるユノウス男爵が必要なのだ。

ユノウスが先導して歩くと一つの大きなお屋敷が見えて来た。


「おお、ユノウスさまですな」


「そうです。貴方がここの管理をしている商人のブルックリンさん?」


「そうです。いや、良かったこの曰く付き物件を欲しがる方がいらっしゃるとは」


曰く付きねぇ。言うほど酷い話でも無いはずだが。


「曰く付きと言っても以前はべオルガーヴィさんの邸宅だったというだけですよね?」


「ええ、そうです。只、これだけの大豪邸ですし、貴族の方が買うにしても予算がねぇ」


「おいくらですか?」


「1000万になります」


さすがに高いな。


「中を確認させてもらっても?」


「ええ、どうぞ」


中を確認する。さすがに豪勢な屋敷だ。

正直、公爵家の僕でも引くぐらい凄い。


「どう思う?」


「ちょっと高すぎでは」


クレイの意見に僕は首を振った。


「そうか?中にある調度品の価格を考えれば、妥当な線だぞ」


「確かにこれぐらい豪勢な方が貴族の方には喜ばれるかもしれません」


どうやらエリエスは僕の意見に賛成らしい。

ブランド品は女性の方が目利きかな。


「部屋数は20か。工事が必要だがここに大ホールを作って、こっちにオーナー控え室を作って、良い塩梅だな」


悪くない。

そう悪くはないが。


「1000万Gは大金だがこれだけの格が買えるなら安いと見るべきだ」


「では、900万Gまで落とせれば、買いましょう」


「いや、800万Gまで落とすぞ」


僕らが計算を終えるとブルックリンに向き合った。


「出来れば買おうと思います」


「おお、そうですか」


「しかし、1000万Gで即決と言う訳ではありません」


「いや、しかし、当方としましてもこれだけの品々を値切る訳には・・・」


彼は笑った。

一つの絵を差して言った。


「まず、この絵ですが」


「おお、ミストワードの笑みですな」


「これがこの屋敷では一番高い調度品ですね。これがざっと120万Gはするはずです」


「ええ、そうです」


「これは外しましょう。それで900万G」


「お?」


「それとこのローベルクの大壷50万G、大皿30万G、カテリエの石像20万G。これを外して800万Gでどうですか?」


「えーと、つまり、この調度品を当方に渡してその分を値切ると」


「そうです。今申し上げた品はさすがに保存も良く商品価値も高い。売るのにさほど困らないでしょうから悪くないはずです」


「なるほど、確かに人気の調度品ですな。しかし、バラでお売りするならこの屋敷に付く価格の額面は1000万以上ですぞ」


彼は動じずに言った。


「そうでもないですね。たとえば、このプリシエの絨毯は使い込みをかんがえれば、中古でせいぜい5万G。実際のところ、中古では貴族には売れないでしょう。そう言った商品価値の低く、不良在庫になりかかった商品をまとめて800万Gです。実際、先ほどの商品のみを220万で売ってくれと頼まれても困るでしょう?」


「む、む」


「先ほどの調度品の価格は220万Gです。一部分は迷惑料込みで200万Gの800万G。どうでしょうか?」


「・・・ふふ、分かりました。それで良いでしょう」


交渉成立。

その後、法神契約を結んだ僕らはブルックリン氏に即金を渡して屋敷を譲り受けた。


僕は僕の商会の物となった屋敷で手を広げた。


「ふー、じゃ、明日から工事を始めてくれ」


「はい。しかし、随分と高い買い物になりましたね」


「グランメゾンには、はったりも必要だろ」


ここには貴族向けの高級レストランを作る予定なのだ。

すでにウェイターやシェフの育成は開始している。


貴族相手の方が収益性が高いのは間違いない。


貴族街に用地を確保するにはすでに建っている屋敷を獲得するしかない。


ここは中心に近い上に屋敷の規模は最大級。

商売を始めるには立地は最高と言えた。


ただそれなりに本物を持ち込む必要がある以上、シェフの確保やレシピの確保に時間をかけた。


「改装に一週間。試運転期間を3日でグランドオープンだ」


「はい、その予定で組んでみます」


「改装にはべオルグ軍の工作部隊の精鋭を連れてくるよ」


「助かります」


実際、回してみないとどこまで儲かるか分からないが。


「ここにテレポートポイントを作ったら、僕は一旦、べオルグに飛ぶよ」


そう宣言して僕は適当な部屋を探して歩き出した。




◇◇◇◇◇





「グランメゾン・ソラニテ?」


「そうなのよ。奥様。今度出来たレストランですのよ」


メーリン公爵婦人は困惑した様子で興奮気味の婦人の話を聞いていた。


サロンではすでにその話題で持ちきりになっていた。

信じがたい絶品料理を振る舞うらしい。


「そんな店ができるなんて」


「あそこのプリンアラモードは絶品ですわ」


「あら、私はババロアの方が」


いろいろとおすすめがあるらしい。


「デヴァン公爵夫人たら、お昼にあそこを貸し切ってサロンを開くそうよ?なんでもパテスリーが新作スウィーツを用意して」


「あらあら、まぁまぁ、私も呼ばれないかしら」


「呼ばれたいわぁ」


あのデヴァン夫人が。

さすがに大金持ちだな。


「いくらかかったのかしら」


「貸し切りだと一日100万Gはくだらないそうよ」


予想外に高い。しかし、それだけの価値があるのだろう。

さすがに公爵婦人は太っ腹である。


同じ公爵でもさすがにそんな額のサロンを開く余裕はメーリンには無い。


「そんなレストランどこが開いたのかしら?」


メーリンの質問に婦人の一人が笑顔で答えた。


「あのユノウス商会ですって!」


「ああ、あの銀座商店街の!」


「・・・・・・」


ユノウス商会はメーリンの義理の息子の経営する商会である。

商店街を建てたと聞いたときには驚いたが今度は貴族街に店を構えたのか。


「商才まであるのね・・・、あの子」


今度、格安でサロンを開けるように打診してみようかしら。





◇◇◇◇◇






その男と子供が来たのは一週間前のことだった。

俺はいつものように黙々と剣を打っていた。


「貴方がこの剣を打った鍛冶職人ですか?」


そう言って子供は持っていた薄刃の剣を掲げた。

それを一瞥すると小さく頷いた。

確かにアルグレッドが打った剣だ。


こんな幼い子供が何の用だ?


「帰んな。餓鬼のおもちゃはここに置いてねぇよ」


「マイスター・アルグレッド。貴方をスカウトしたい」


何?


「この剣の打ちは素晴らしい。この波状。並の技術ではここまでの波紋は出ませんよ。是非、僕の用意した工房で働いて欲しいのです」


驚いた。

アルグレッドの剣を誉める人間は数少なく無いが、そういう人間は大抵、名の知れた剣士だったからだ。


大した見立てだと思ったが。

しかし。


「ふざけんな、餓鬼の遊びに付き合うつもりは無い」


「では、勝負をしませんか?」


「勝負だと?」


子供はアルグレッドの前に剣を差し出した。


「僕が作った剣です。これを超えるものを打ってくれたら諦めます」


「てめえ、なんだ。こりゃ」


ぞっとする程に鋭い剣だ。

おそらく、普通に金属を叩いて打った剣ではない。

別の超技術で作られた剣。


「こんなもの打てるわけが」


「こちらをお渡しします」


そう言って彼が用意したものは不思議な色のインゴットとハンマーそして両手にはめるグローブ。


ハンマーとグローブは魔法の一品だな。


そして、未知の金属。

武器鍛冶としてこの金属に興味が無いと言えば、嘘になる。


ミスリルか?いや違う。

純度の高い魔法金属なのは間違いない。

いじり倒してみてぇ。


「どういうつもりだ」


「これはさすがに当方のものを使わないと勝負にならないでしょうから」


「ちっ、期間は?」


「では、一週間後」





◇◇◇◇◇





「おじいちゃん。もう寝ないと体壊すよ?」


「うるせい。仕事中だ」


「もう」


孫娘のアズサがふてくされたような顔で近づいてきた。


この変わり者の孫娘は女の癖に鍛冶に興味があるらしい。


最初はハンマーさえ触らせるつもりなかったが、ついには根負けし、今では時々鍛冶技術を教えている。


連中の持ってきたインゴットで仕上げた剣を俺は見ていた。


「凄い剣だね」


「・・・まだだな」


あのハンマーとグローブは驚くべき品だった。

何倍もの力を与えてくれる万力のグローブと強靱な金属を伸ばす為に打撃物に瞬間的に軟化アンロックの魔法をかけ、仕上げには逆に硬化ロックを掛けてくれるハンマー。


打っていて作業が捗る、捗る。


「これがありゃ、お前でも打てるかもな」


「え?」


「なんでもねぇ」


あいつが置いていった剣を手に取る。


「ほんと凄い剣だね」


「ああ、あの餓鬼。こんな名剣を置いて行きやがって」


売れば、この工房ぐらいなら軽く買えるだろう。

いや、この金属だって。


相当な価値がある。


「ち、打ち直すか」


出来る限りはやってやろう。





◇◇◇◇◇






一週間後。

またあの連中がやってきた。

俺は孫娘のアズサと一緒に彼らを迎えた。


「どうだ」


俺は早速、小僧に打った剣を見せる。

一週間かけて打った最高傑作。


「お見事」


「ち、超えたなんて思ってないぞ」


出来た物は彼が見せた剣には遠く及ばない剣だった。

しかし、これはこれで渾身の一振りだ。


今まででも最高の。

しかし、それでも届かない。


「そんなことはありませんよ。あの素材で作れる物としては限界に近いですね。これだけの物が打てるなら十分だ」


「俺の負けか?」


「いえ、貴方の勝ちですよ。この剣は記念に差し上げましょう。行くぞ、エヴァン」


「はい」


彼らは自分たちの剣を回収すると席を立った。


「待て、お前の狙いはなんだ?それほどの剣を打てるなら俺の腕はいるまい」


「僕は鍛冶屋では無いので。これを僕が何千本も打つのは効率が悪いでしょう。それだけです」


何千本だと?


「何者だ、お前」


「僕はべオルグ領、領主のユノウス・ルベット」


べオルグ領主だと?


「領地の騎士の為の剣を打ってくれる鍛冶屋を探してるんだ」


何だと。


「で、何人集まった?」


「エヴァン?」


「今のところは2人です。腕は多少、物足りませんが」


・・・まったく。


「おい、アズサ」


「え、は、はい」


「行ってこい。お前の修行には良いだろう」


「え?私が??」


「そうだ」


少年がアズサの顔を見る。


「彼女の腕前は?」


「技量では俺に劣りはしない。ただ経験と体力と腕力は相当に劣るがな」


「それは頼もしい。歓迎しますよ」


「え、良いの?」


「何がですか?」


「だって私、女だし」


「はは、この僕がそんなことを気にする訳が無いだろう」


幼児は自分を指差しながら愉快そうに笑った。


確かにこの幼児が気にするはずもないか。

それを言い出せば、この幼児が領主と言うのがすでに規格外だ。


「良いの?おじいちゃん?」


孫娘があの剣を見てそわそわしているのは知っていた。

あれだけの剣を自分の手で打ってみたい。


その好奇心がこの孫娘にはあるのだ。


「行ってこい。アズサ」


「はい!」




◇◇◇◇◇





翌日。


べオルググラード近郊の施設に私、アズサは来ていた。


「今日、ここに工房隊を新設する」


べオルグ領、領主ユノウスがそう宣言する。


総勢400人の軍人と9人の鍛冶師たちが集まっていた。

工房は出来立てらしくまだ真新しい。


「サー!!」


「指導官四名だ。右からグラン・マイスターのヨークソン、メイシャン。チーフマイスターのアズサ、フレドリック、デレフ。マイスターのセドン、レイオス、ガリング、エイシャだ。おまえたちは彼らの指揮下に入れ」


「「イエッス・サー」」


私は驚いた。鍛冶は私の他に3人と聞いていたのに。

というか、チーフマイスター?


「あ、あのー、9人ですか?」


「アズサさんですね。最初の戦略会議を行います。こちらへ」


工房の奥は簡単な会議室になっていた。

と言ってもここは図面を引いたりする図作の為の部屋なのだろう。


机の作りが独特だ。


「よく集まってくれた。私がこのべオルグ領地、領主のユノウス・ルベットだ。まずは座った人間が右から自己紹介をしてくれ」


「と言うことは私だな。ユシャン・エーリン。このべオルグ領地の魔法技術開発部顧問だ。まぁ、ただの魔法研究者だ。一応、君たちの直接的上司になるがあくまで一応だ」


「エヴァン・リッカー。このべオルグの文官長です。予算や人員の話は私を通してください」


「事実上の最高権力者だと思って良い」


その言葉に一瞬、困った顔をしたエヴァンが呟いた。


「・・・。まぁ領主がこの様に申しておりますので」


領主が次の人物に目配せした。


「次は私か。グラン・マイスターを仰せつかったヨークソンだ。肩書きは発明家。ここにエヴァンの薦めで来た。随分と興味深いものを見せられてね。ここでは彼の言う蒸気機関の研究をさせてもらうつもりだ」


発明家?え、鍛冶師じゃないの?

すると次の方も自己紹介を始めた。


「ヨークソンさんに付く様に指示を受けています。チーフ・マイスターのフレデリックです。自分の前職は時計技師です」


と、時計技師??

何でそんな優秀な技術者が?


「マイスターのガリングです。ヨークソン、フレデリックと組んで研究に当たります。前職は町の修理工です」


また、別職種だ。


「グランマイスターのメイシャンよ。付与魔法及び魔晶石機関の研究をさせてもらいます。私とデレフとエイシャはユシャンに誘われて来たの。職は魔法使い」


ま、魔法使いまで。


「デレフだ」


「エイシャっす」


あ、私の番だ。

どうしよう。


「え、あ、そのチーフマイスターのアズサです。私はその、剣を打ちに来ました。以上です」


だ、だめだ、全然説明に成ってないよ。


「マイスターのセドンだ。鍛冶師。得意なのは鎧や防具だな」


「同じくマイスターのレイオスです。鍛冶師ですが自分は見習いでした」


見習い?ってか、私もチーフだけど見習いなんだよなぁ。


「と言うわけでヨークソンのチームが科学技術班、メイシャンが魔法技術班、アズサの班が武器開発班だ。それぞれに得意な分野を補って新技術を開発して欲しい」


「良いだろう」


「分かりました」


「え?わ、私がリーダーですか??」


「さし当たってヨークソンには渡した資料から使えそうな技術の開発を頼む。メイシャンは悪いが当面は研究に並行して、アズサのサポートについて、騎士たちの標準装備の魔法付与を行ってくれ」


無視された。


「分かりました」


私は自信ない。

で、でも頑張らないと。


「わ、私たちは騎士や兵士たちの武器を打てば良いんですね?」


「そうだ。ただし、数を打つ必要があるから工房隊に技術を仕込みながら頼む。最終的に二万人分の武器を打って貰うからな」


2万人分も??


「た、大変ですね」


他人事の様に呟いたが実際に作るのは自分たちなのだ。


「ゆっくりで良いさ。出来たうちの極一部はユノウス商会経由で市場に流すつもりだ」


「どんな武器を作るんだ?集団戦用なんだろ」


「ああ、まず、防具はこれだ。サモン」


そう言って彼は目の前に召還魔法で防具を取り出した。


機能的な形をした、えーと。


「これは。鎧というより服だな。細かいプレイトを仕込んで防御力を上げているのか。この布自体も凄い素材だ」


「そうだ。こいつを見てくれ。サモン」


彼が呼び出したのはケージ?

中をのぞき込んだメイシャンが息をのんだ。


「これはLv102の魔獣グレイズスパイダー??」


「の上位種エロジオン・アレニエです」


「まさか、この超高レベル魔獣の蜘蛛の糸で!?」


「ええ、服を作って貰います。苦労しましたよ。この魔獣を見つけて交配して増やすのは」


ナニヲヤッテイルンダ、この幼児。

魔獣の糸を素材に服を作るなんて。


「何体いるんですか?」


「魔素の関係でここでは無く、ダンジョン最下層に牧場がありまして、そこに100体ほど確保しています。心配しなくても、ギアスとメモリーセットで人間は絶対に襲わないようになっていますよ。自分の意志で蜘蛛の糸の繭を作ってくれますのでそれを回収するだけですし、維持の為に餌代は多少、掛かりますがおそらく最高の糸素材です」


無茶苦茶だ。


「それで2万人分の服を作るのにどれくらいかかる?」


「一日の採取量から計算して丸5年は掛かりますね。これにこのフルフェイスヘルムを併せて半年後までに差し当たって1000セット作るのを目標にしましょう」


あれ意外に少ない?

でも無いか。


「防具はこれで良いとして、武器は?」


「これです。サモン」


複数の武器が机の上に並べられる。

見たことが無いものが半分ぐらい。


「魔法の掛かった剣にダガーだな。それにこれは?」


「こっちが魔法力を利用した魔法銃キャストガン。こっちが完全機械式の火薬銃だ」


「銃?」


なんだろう。用途が分からない。


「言ってしまえば、小さな大砲だ。これの量産体制をヨークソンとアズサ君たちには開発して貰う。差し当たって、テスター用にべオルグ軍正式装備5つを早急に頼む」


大砲は存在をもちろん知っている。

なるほど、銃と言うのは個人で携行出来る小型の大砲なのか。


「5つ?」


「ああ、サイズはこれだ」


渡されたオーダー表を見て私は首を捻った。


「え、子供用サイズ??」


彼は一体何をするつもりなんだろう?

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