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転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
46/98

大会終了

※7月12日改訂

「うぉおおおおおおお!!!!ヴィクトリー!!!!!」


そう言って勝利の雄叫びをあげたのは雄々しい雄ならぬ娘っ子だった。

というか、僕の妹であるユフィであった。


何故にそこまで喜んでいるのか。

まぁ、分からないでもない。

負けが続いてフラストレーションが溜まりまくったのは分かる。

でも。

いや、だけれども。


しかし、だ。

やって良いことと悪いことの分別ぐらいは付けてほしい。


うちの妹はとんでもないことをやらかしたのだった。





◇◇◇◇◇





初等科女子部門は正に、ユフィVSアンネリーゼさまの構図になった。


圧倒的魔力値(おそらく単純な出力だと僕やアルヴィスより上)を誇るアンネリーゼにユフィは個人戦決勝・団体選抜戦大将戦と2縦を食らっていた。


普通にやったら、妹はたぶん勝てないな。

僕ですらそう思っていたところで、


2連敗の後、満を持しての女子団体戦チーム戦決勝。


ユフィはやりやがった。


騎士学校は伝統的にチーム戦にむちゃくちゃ強いのだ。

その騎士学校がアンネリーゼを旗にするチーム戦で負けるはずがない。


しかし、お互いに順調に勝ち星をあげて同率決勝試合となった最終戦。

ユフィは(この場合、完全に個人の独断で)とんでもない作戦に出た。


まず、逃げた。


ひたすら逃走。


まさかのキング全力逃走にユフィのチームは混乱に陥った。


女子騎士たちは哀れな彼女たちをきっちりとしとめると逃げまくるユフィを追いかけ回した。


ユフィは追撃者を個別撃破するわけでもなくひたすら逃げる、逃げる。


このまま時間切れと言うところで事件は起こった。



突如として。




会場であるコロシアムのフィールドが全て爆破されたのだった。






◇◇◇◇◇







チーム戦でも一回の詠唱で魔法として使えるのは単発のフォースだけだ。

しかし、単発のフォースであれば用途や形式、回数は問わないというのがチーム戦のルールである。


ユフィは僕が面白がって開発した魔法式が読みにくくなる偽装魔法式と遅延発動式を駆使した地雷型フォースを会場にばらまきまくったのだ。


その数、推定、5000発。


終了寸前、遅延魔法の時間差による一斉発動で唯一の安全地帯である自分の場所以外に居た全員を無差別に吹き飛ばしたのだ。(審判含む)


さすがのアンネリーゼさまも自分に向かって飛んでくる数千発の力場を単発フォースで防げる訳も無く。


ふるぼっこの挙げ句に全身ぼろ雑巾のようなお姿で空に舞って、地に落ちたのだった。


ユフィは周囲が唖然とする中で勝利の雄叫びを発した後に。

一人冷静な顔に戻り、呟いた。


「きたねぇ花火だったです」


・・・・・・虚しそうに言うんじゃない。


これを機に、「最強は聖人アンネリーゼさま、最恐は王立学院の魔女ユフィリアだ」と人々が噂するようになったとかならなかったとか。


こうして、国家の恋人とまで呼ばれる聖人を観衆の中でぼこるというとんでもない事件(暴挙)を起こして、僕の妹も有名人になりましたとさ。



めでたくない。



ちなみに審判への加撃は普通に減点対象なのだが審判を標的に狙った物以外は取られないという原則がある。


今回は、特に、すでに発動していた魔法に審判が勝手に当たった場合に含まれるために減点は取られないらしい。


おかしいだろ、そのルール。


とにかく、こうしてユフィはチーム戦で見事(かはさておいて)勝利を収めたのだった。





◇◇◇◇◇







2日目が終了し、初等部の全日程が終了した。


僕は一応出場したすべての競技で優勝を果たした。


何故だか知らないが例のキングオブデュエリストのアルヴィス・ウォーは個人フォースのみのエントリーらしい。


まぁ、あれだけ強い奴が全部の競技に出たらみんなやる気なくすもんな。

イシュヴァリネは層が厚いし、当然かもしれない。


まぁ、僕の方も自重しろって感じでしょうけど。


フォーメーションのチームBはともかく、星取り戦形式のチームAはかなり際どかった戦いだったが、フォースで結果を出したウォードを補欠から繰り上げ、なんとか奇襲先勝作戦でぎりぎり二校から勝ちを拾った。


女子は例のごとく聖女ことユリアさまが他を圧倒した。

ユフィも健闘したがチームBで優勝し、他は準優勝という結果に終わった。


結果的に初等部の総合成績では王立学院が圧勝した。


「やるじゃない!この完全無欠くん!!妹さん!!!」


「痛いですよ。メルフィナ会長」


エンプティング会長のメルフィナが大はしゃぎで僕を迎えていた。

テンションあがり過ぎで抱きついてくる。


うん、良い胸だ。


「にいさま…」


「どうした妹よ」


何故かジト目で見つめる妹に僕は首を傾げる。


「んもう、これはうちのお茶会に予算すごいわよ」


「そうですね」


あまり興味のなさそうなエスト先輩の相槌である。


「お二人は中等部と高等部ですよね?」


「ああ、今年は初等部が結果を出したからな。もうドべは御免だ」


「そうね!頑張るわよ!エスト!王立学院に栄光あれ!!」


テンション高いな。

まぁ、それだけ王立学院にとっては快挙だったのだろう。


終わってみれば、前回王者のイシュヴァリネが第三位。

波乱のスタートである。





◇◇◇◇◇






「今年は調子良さそうね。ライオットくん」


「カタリーナ先輩」


俺はゆっくりと振り返った。

かなりの負荷をかけて運動したので体は重かったがそれでも調子はよかった。


いや、以前とは比べものにならないほどに、だ。


調子が良すぎる。


以前。


ベルセルクの前と後。

あの神化魔法で、俺の脳は体の限界値を学習したようだった。


以前とは体にかかるリミットの具合が違う。

意図的に体の箍を外せるようになった。


そして、魔獣化の後遺症。

俺は以前は感じなかった魔素の存在をかなり敏感に感じるようになった。


あの頃とは見る世界すら変わって見える。


体を動かす。

剣をしならせて振る動作一つですら以前とは比べものにならない完成度だ。


加速する。加速する。加速する。


体のギアが切り替わる。それでも意識はそれに全く遅れない。

剣撃が重なって、ついには打撃で木人が砕けた。


強く打ち込みすぎたか。


「凄い!!ほんと凄いわ!!」


「まだまだですよ」


今のでリミット50%と言ったところか。

まだ限界では無い。


「今年の目標は?」


面白がる先輩の口調に対して俺は宣言した。


「すべて倒しますよ」





◇◇◇◇◇






「はぁ・・・、めっちゃしんどい」


私、エリカは何度かのため息を吐いた。

特別報酬が出ると聞いて志願した売り子は正に地獄だった。


バックに回っても地獄の注文ラッシュ、会場の売り子も注文がひっきりなしだ。


気持ちの休まる時間が欲しい。


「あ、お姉ちゃん、変わるよ♪」


「リリア」


対して、妹は何故こんなに元気なのだろうか。


そりゃ、初日、2日目と違ってユノウスオーナーが現場復帰しているために細かい作業の効率が全然違うけれど。


疲労をヒールで取ってくれるだけでもめちゃくちゃありがたい。


けど、元気になる程ではない。


「なんで元気なの?」


「だって、私この仕事好きだもん」


その言葉に私はたじろんだ。


う、妹が輝いて見える。

眩しすぎるわ。


「そう。そうよね・・・」


仕事が好きなら仕方ない。

元気にもなるよね。


私は仕事はそんなに好きじゃないかも。


「ちょっとリリアが羨ましい」


「そう?でも、お姉ちゃんの方が仕事の覚えも速いし凄いじゃない」


いやいや、やる気や疲労の蓄積が違うでしょ。


結局、好きこそ物の上手なれって言うことだし。

私なんてその内この妹に抜かれるわね。


うん。絶対そう。


「お姉ちゃんはきっと上に行くと思うの」


上って何?と思わないでもないが。

おそらく店長とか班長とかだろう。


「ないわ」


「違うの、だってお姉ちゃんは一人でお仕事するのは大好きでしょ?」


「え、うん。そうだけど」


確かに一人で全部やる仕事は気が楽だ。


「生真面目だから他人と一緒に仕事するとその分、負担になるんだよ。だからたぶん店長とかになった方が良いと思うの」


「そうかな?」


周りに気を使ってるつもりは無いけど。

周りが気がかりになることは多々ある。


「うん、絶対そうだよ!」


でも、店長とか班長なんてポストそうそう転がっている訳ではないでしょうに。


「あのね!実はコスナーさんが言ってたんだけど、今居る初期メンバーの中で希望者には新店の店長をさせようって話が出てるらしいよ?」


「え、そうなの?」


「そう、みんなね、幹部候補なんだって」


しかし、店長。


「・・・めんどくさそう」


やっぱりやりたくないわ。

私は単純に仕事が好きじゃないのだ。





◇◇◇◇◇






食材管理担当のエリエスが整った顔を引き付かせている。


暗い面もちでクレイに報告をする。


「どうしますか、そろそろ品切れが」


「ああ、彼がもうすぐ」


すると、その言葉と同時に転移用の魔法陣が光った。


「ただいま。ほら、補充だ。サモン」


その呪文だけでバックヤードに大量の食料が補充される。


テレポートとサモンの合わせ技は正にチートだ。

主に食料輸送の面で効果覿面である。


「今回の補充リストはこれだ」


「あ、ありがとうございます。はい!これなら後2日は持ちます」


「今日はどちらまで?」


「おお、北のオーブネル共和国まで行ってきたぞ。あそこの市場もでかく便利だな」


念のために5大国、オーブネル共和国、エルヴァン皇国、ファーラデン王国、エデル神国にワープポイントを設置しておいたのが奏功したようだ。


人気に火がついた。

今やユノウス商会の儲けは天井知らずだ。


「とにかく売れまくっているからな。今がチャンスだ」


「気持ちは分かりますが人の数がもう限界です」


疲労や不満度がコントロールし切れなくなっている。

さすがにこれだけの長期労働はこの世界の人間には厳しいのだ。


それこそどこかの国の社畜の様に動ける訳ではない。


「そうだろうと思って助っ人を頼んだ」


「助っ人?」


「ああ、頼もしい助っ人だ」




◇◇◇◇◇





「パン焼き上がり!!」


「よし!こっちだ!野菜を挟め!!」


「パティまだです!」


「遅いぞ!!!きさまぁ!!」


思いっきり良い音がして殴られた男が倒れる。


「だ、大丈夫ですか?」


「は、自分は大丈夫であります!!!」


「女性と任務中に私語をしたな!!!きさま!今夜は監房だ!!」


「さー!!」


「え?え??」


リリアは目を丸くしている。

バックに軍人が居た。ものすごいたくさん。500人ぐらい居るし。


そして、料理をしている。


どういうこと?


「お嬢様方、後方は我らべオルグ給食隊が守ります!前線のお勤めをよろしくお願いします」


「あ、はい。えーと、なんで軍人さんが?」


べオルグ?片田舎の軍人さんがなんで500人もここにいるの?


「は、上官より任務を受けました」


「それは何で?」


「は、それを知る権限は私にはありません!!」


え、そうなんだ。

あのー、・・・どうして?


「が、がんばってください」



「「「「「イエッス、マムゥ!!!」」」」」



その大音量にリリアは一歩、後ずさった。





◇◇◇◇◇






最終日。

8日間の全日程が終了した。


「よーし、お前ら!帰るぞ」


「「「お疲れさまでした!!」」」


軍隊を引き連れてユノウスがテレポートする。

嵐は去った。


「つ、つかれた」


「ヒールでも疲労がとれないことがあるのね」


グロッキー状態の売り子たち。

無理は無い。


ユノウス商会の商品はまさに飛ぶように売れまくった訳だし。


すべての軍人をテレポートで送り返したユノウスの元にクレイが嬉しそうな顔で報告に来た。


「売り上げは2000万Gを超えました。儲けでも1000万Gは行ったかと」


「なかなかだな。報酬は一人一日1000Gだ。それぐらいはいいだろう」


最終的に売り子は100人ぐらいまで増員していたため、人件費は80万Gていど。


バックの軍人には特地加算金が一日300Gで延べ人数5000人(5日×2隊×500人)の150万Gに特別協力費150万Gの合計300万Gを商会名義でべオルグ軍の金庫へ。


これら諸々、人件費約400万を除くと余剰留保金が600万Gである。


ユノウス商会の留保金はこれで大体1500万G程度である。

まだまだ弱小の域は超えないな。


「多少は蓄えが出来たな」


「はい。ところで、今回の臨時バイトの売り子から今後も働きたいという者が何人も出ていますが」


「そっちの判断は任せる。商店街の二階に設置する新店舗の人員も必要だろう?」


「ええ、確か、居酒屋に、ラーメン屋に、定食屋にファミリーレストランですか」


どれもそれなりに人数が必要だ。


商店街は今のところ軽食メインだが、スペースを整理して、定食メインに切り替えていく予定なのだ。


「ユシャン先生の研究室はべオルグに移転予定だ。さらに寮を別の場所に移設する」


「空きスペースには?」


「服屋と雑貨店と花屋と武器屋だな。今回で周辺5国分は交易が広がったからな。俺がテレポートで軽く飛んでサモンで収納して戻ってくれば馬車を使う連中より遙かに速く安く良い物が届けられるだろう?」


確かに。


「なるほど」


「商品開発棟も別の場所に移転するか」


「ですね」


となると、別の用地を確保して、開発する必要がある。

もっと大きな寮と商品開発棟、工場、そして工房。


そして、さらに、これとは別の用地の確保も進めている。


「そういえば、最終日打ち上げ用のパーティーデリバリーはどうだった?」


「ええ、500セット売れましたよ。ああ、その儲けを試算してませんでしたね。1セット1万Gで500セットだから500万Gですね。儲けはこれも大体250万Gぐらいです」


「ほー、相当な需要があったな」


実のところ、軍人を500人も動員する羽目になったのはバックでパーティー用の総菜を作る人手が完全に足りなくなったからだった。


今までは打ち上げ料理は自前の料理人に作らせる場合がほとんどだった様だが、ライオットの茶会やユリアの口利きで騎士学校に打ち上げのデリバリーを打診したところ快諾され、口コミと波状効果で注文が膨れ上がり、深刻な人手不足に陥っていたのだ。


軍人には総菜作りにデリバリーを任せた。


この軍人たちも意外に優秀なのだ。

早々に雇い入れた元宮廷料理人の料理指導官の元で毎日2万人分の料理を作り続けている。

メニューを書くのは料理指導官と僕で、僕の場合、気分で結構無理難題をふっかけるのだが、結構形にしてくることが多い。


基本的に本部の軍食はバイキング形式を取っているため、作れる品数も豊富だ。


大半は作り置き総菜だが味は悪くないはずだ。

サーチとリフレッシュで入念に点検しているから食中毒の心配もない。


使用人が出来る程度の軽く加熱する料理も入れてある。


「評判が気になるなぁ」





◇◇◇◇◇






「みんな!おめでとう!!」


「かんぱーい」


茶会エンプティングの打ち上げにユフィ、アリシス、カリン、シエラ、シェイドついでにレオが参加していた。


参加人数は40名程度。

中規模の茶会なのでこんなものである。


ちなみに8割が女性である。


「私、ここのお茶会じゃないんだけど」


恐縮した面もちのアリシスに呆れ顔のユフィが告げた。


「なら、帰れば良いじゃないですか」


「い、いやよ!で、あいつは?」


「にいさまは遅れて来るそうです」


そうなんだ。

残念そうにアリシアが周囲を見渡すとシエラ・シェイドの兄弟が料理を頬張っていた。


「ご飯美味しいね!」


「ああ、見たこと無い食べ物がいっぱいだ!」


ローストビーフ、シーザーサラダ、サーモンのカルパッチョ、ウナギの蒲焼き、厚焼き卵、鳥の唐揚げ、ソーセージ盛り合わせ、白身魚のムニエル、ポテトフライ、サンドイッチ、ピッツァ、暖め直したコーンポタージュ、ビーフカレー、ライス、アイスクリーム、プリンなどなど・・・。


さらに各種フルーツの炭酸ジュース。


ユノウス商会の商品は庶民は知っていても貴族には未体験な物が多い。


「ちなみにここの料理は我らが超新星ユノウスくんからの差し入れでーす」


「おー」


歓声が上がる。

その主役はここにいないのだが。


「何やってんのよ、あいつ」


「にいさまは忙しいのです」


「しかし、まさか、うちが総合優勝するとはねー」


そうなのだ。

今まで辛酸を嘗め続けて来た王立学院がついに、10年ぶりの総合優勝を奪還したのだ。

ちなみに10年ぶり2度目である。


絶対王者のイシュヴァリネを打ち倒した最大の要因は二人の全勝者の存在だった。


ユノウスくん、そしてライオット陛下。

最終日にまさかの完全制覇を成し遂げたライオット陛下の活躍で見事に王立学院が総合優勝を果たしたのだった。


他に地味にブレイドで優勝のエスト先輩とかの頑張りもあったけど。


「で、いつ来るのよ」


「来ないかもです」


「ちょっと!私はわざわざおにいさまのお茶会抜けてまでこっちに来てるのよ?」


「しらんがな、です。お一人でロイヤルの方に行けば良いのです」


「つ、冷たいわね!私も友達でしょ!?」


実はアリシスは王室茶会にカリン、シエラ、シェイド、ユフィ、ユノウスを誘ったのだが全員がこっちに参加すると言い、にべ無く断られたのだった。


アリシスは自分の人望の無さに少し泣いた。


実際のところ、下級貴族のカリン、シエラ、シェイドは場違いすぎると言う理由で断っただけなのだが。


さすがに一人で王室茶会に行ってもまったく面白くない(お友達が一人もいない)のでアリシスも大好きなおにいさまを諦めて、こっちに参加することにしたのだった。


「大体、そんなに、にいさまが好きならあっちを優先すれば良かったのです」


「だ、だっておにいさま、最近忙しいんだもん」


なんせ事実上の王様だ。

以前のようにお話する機会がほとんどない。


「それは・・・、まぁ、わたしのにいさまもそうですが・・・」


領地に商会。

どこもかしこも上手くまとまっているようでいないのだろう。


「お、ユノウス師匠だ」


来た。

アリシスとユフィが駆け寄ると不思議そうな顔でユノウスが彼女たちを見た。


「どうした?」


「にいさま!にいさま」


「ちょっと何抱きついているのよ!ずるい!!」


思わず出た言葉にユノウスが反応した。


「ん?ズルい?」


え、いや、今のはちがう!!

全然、そういう意味じゃなくて。

その、


「なんでもない!なんでもないの!!」


「ぷぅ、こんなに遅くなって、どうしたのですか?」


ユノウスがため息混じりに言った。


「ああ、王室茶会で一言挨拶してきた。面倒だが一応、ライオット王からの要請だしな」


「え?」


なにそれ。


「ば」


「どうした?姫?」


「ばかぁあああああああ!!!!!」


肩を怒らせたアリシスが歩き去っていく。

突然怒られたユノウスは困惑した顔で呟いた。


「どうしたんだ?こいつ?癇癪持ちか?」


「さぁ?」

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