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転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
36/98

銀座通り

※7月12日改訂

その日、朝から何か話題になっていた。


しゃべり好きのブルエおばさんが私に声をかけてくる。


「こんにちは」


「こんにちは、ねぇ、聞いた?広場近くの崖に綺麗な階段が出来たでしょ?」


確か一週間前ぐらいからあったはずだ。

気になって見てみたが入れない様に柵が施されていた。


「うん、ちょっと前にだよね」


「今は自由に通って良いですよって、看板がしてあるのよ」


「へー、でも、あんなところ登っても意味がないんじゃないの」


確か、あの上はちょっとした森になっていたはずである。


「それがねぇ、その森がなくなって道ができたのよ!聖神さまに挨拶に行くならこのルートが一番近くなったのよ」


「そうなの?」


そりゃ、便利になったなぁ。

感心しているとさらに畳みかけるようにおばさんは言った。


「そうなのよ!ついでにね、そこにちょっとした商店街が出来たらしいのよ」


「え、商店街が?」


王都には昔ながらの商店街通りが数多くある。


武器屋と鍛冶屋の立ち並ぶ青銅通り、服など生活用品、雑貨や書籍の並ぶ青墨通り、生鮮商品や乾物の並ぶ青空通り。


これらは自然と人が集まって出来た商店街だ。


そういう物ではなさそうだが。


「ねぇ、今からちょっと冷やかしに行きましょうよ」


「え、うん。じゃ、ちょっとだけ」


ということで、私は親に許可を取るとブルエおばさんと商店街を見に行くことにした。


階段に続く道端に立て看板がおいてある。




この先、聖堂への近道。




ここだ。


商店街へ続く階段はかなりの広さがある。

大人が5人ぐらい並んで登れそうなくらいに。


「綺麗な階段だねぇ」


すべてが何かの石作りの階段で細かい装飾はないが石の表面を非常に綺麗に削ってある。

ちょっと姿が映りそうな程に綺麗な鏡面である。

足下は逆に何かの細かいパターンが掘られていて滑らなくなっており、歩きにくさはまったく無い。


「頑丈そうです」


よく見ると崖の山肌にも何かの加工がされている。

崩れるのを防ぐように何かを覆ってあるみたいだ。


「ふぅ、結構登るのはたいへんだぁ」


「そうですね」


登って直ぐに立派な意匠のゲートがあった。

どうやら商店街の入り口らしい。


男の人がゲートに隠れる様に座っている。


「なんか書いてあるね」


ブルエおばさんと違い、すこしだけ学校で文字を習っていた私は文字を読んでみた。


「えーと、銀座通りって書いてある」


「気障な名前だねぇ」


登った先には綺麗に整然とした商店街が並んでいた。

すごく大きな建物が何個も並んでいる。


壮観だ。


「こりゃすごい人混みだねぇ」


ほんとうに何人も人がたむろしている。


そして、何だかとても美味しそうなにおいがする。


「はーい、試食の方はこっちに並んでください」


店先で何かを配っている。


「試食だって!ならんで見ましょう」


「うん、そうだね」


私も興味津々だ。

ただ列はめちゃくちゃ長い。


暇だなぁ。


並んでいると男女のカップルが列の横を歩いて行った。


「だから、買っちゃった方が早いって、試食、すげぇ並んだもん」


「そうなの?」


「これこれ、アイスクリーム。やばいの」


なんだろう、白い物体を食べている。

普通の席もかなり混雑している。


テーブル席は中にも外にも並んでいる。

外の席には大きな綺麗な傘がテーブルの上に張られていて、とてもおしゃれだ。


何個も食べ物を並べて食べているおじさんもいる。


凄い勢いで食べてる。


「おばさん、待ちきれないわ」


「そうだね」


小一時間も並んだろうか。

漸く、私たちの番だ。


「いらっしゃいませ。ご試食でよろしいですか?」


「あ、はい」


試食の客にも愛想がいいなぁ。

私と同じくらいの女の子が一人で対応してくれた。


「嫌いな物はありますか?」


「ないです」


「わたしも無いわ」


商品の試食品がちょこんと乗った配膳を渡してくる。


どれも一口サイズでちょこんと乗っている。


本当に試食だけど。只で贅沢は言えないかな。

ちょっとしたおやつにちょうど良いかも。


「こちらがハンバーガー、こちらがポテトフライ、こちらがアイスクリームに、こちらの飲み物が炭酸グレープです。アイスクリームは氷のお菓子です。しばらくすると溶けてしまいますのでお早めにお食べください」


アイスクリームには銀色のスプーン。

ジュースには銀色のストローが付いているようだ。


なんだろう。良い香り。


そして甘い香りのジュースが気泡を吐いている。

これ、飲めるの?


「当店はセルフサービスになっております。お食事は席まで自ら運んでください。席は空いているところを自由にお使いください。すみません。それから、こちらの容器は回収になってますので、あちらの回収口に並んで置いてください。容器には持ち出せないように魔法がかかっています。持ち出されますとゲートで守番の担当者が声を掛けることがありますので了解お願いします」


矢継ぎ早に言われて少し困惑する。

変わったやり方だな。


まぁ、なんとなく分かるけど。


空いてる机を探して二人で座る。


「いただきます」


「いただきます」


まずは忠告通りアイスクリームから。


それは口にした瞬間に口の中でひんやりとろけた。


「んー!!」


絶品だ。

美味しすぎる。


次にハンバーガーなる食べ物に口を付ける。


「美味しい!!」


「なんなの!?これは」


この揚げたポテトもなかなか美味しい。

そして炭酸ジュースを口にする。


「え?何これ??」


シュワってする!凄い。


「ねぇねぇ、次はあそこの試食に並びましょうよ!」


「え、でも」


なんか試食ばかりで悪い気がする。

それにまた一時間も並ぶの?

親に怒られそうだ。


「こんな美味しい物を逃す手はないわよ」


「そ、そうかな」


結局、ブルエおばさんといっしょに半日も過ごして親に怒られた。





◇◇◇◇◇





僕は初日の売り上げの回収に学校帰りに立ち寄る。

40人全員。疲労でぐったりしている。


「どうだった?」


「はは、軽く戦場だったようだよ」


特に何もしていないだろうユシャン先生がそう言って笑う。


「ゲートは?」


「あのー、容器の持ち逃げ未遂が10件です」


意外にすくないなぁ。

聖団教徒だから当然か。

この国、窃盗などの犯罪も少なくて本当に治安が良い。


「売り上げは」


「ここにあります」


確認する。

薄利多売な上に、試食を大判振る舞いだったから従業員に日当を払って材料費と、とんとんかな。


持ち逃げは無いかな?

まぁ、一応、法神の契約書があるし、大丈夫だとは思うが。

一応、信用しておこう。


「あのー、試食なんですけど、何度も並んでる人が居て」


「良いよ。トラブルにするより構わず、対応して」


「え?はい、分かりました」


はっきり言って、只飯なんて犬、猫に食わせるのも同じだ。

誰に食わせようと一緒なのだ。


どうせ、試食を実施するのは最初の3日間だけだし。

試食でリピーターが付くわけがない。


あくまで初動における客寄せの為の処置に過ぎない。


人通りと列が出来れば、商品なんて美味くても美味くなくても売れるものだ。

客寄せパンダは機能さえ果たせば、平等性など無用だ。


僕は全員にその場で日当を配った。

日当を受け取るとみんな目がやたらぎらぎらしている。


何かしら充実感を味わっているのだろう。


早速、みんなで遊びに行こうと声を掛けあっている班もちらほら。

元気なものだな。


「それじゃ、全員で一時間清掃の後に解散だ。寮の者は寮に戻って、家通いの者で風呂を利用するものは利用して帰るように」


しかし、意外に儲かってないな。


「どうした複雑な顔だな」


「いやぁ、商売も難しいですね」


「商品価値に比べて安すぎるのだろう?」


「うーん、でも競争力がある価格だと妥当だと思うんですけど」


たとえば、ハンバーガーは一つ15Gで売っているが、パンが1個で10Gだから、このくらいに抑えるのが妥当だと思うのだ。


肉と野菜とソースとチーズのコストを考えると一個10Gはかかってしまうから一個当たりの儲けは5G。


100個売っても、500Gは一人分の日当にしかならない。

今日はハンバーガーは目標の150個を達成したので、今のところ廃棄率はゼロだが。それが出だすと一気に赤字になる。


やはり、商品価値の低い不揃い果実を優先的に回して貰った果実ジュース10Gやポテト5Gが主力だな。

ジュースも甘みを増すために多少砂糖を増やしているが低コストだ。

ポテトが3G、ジュースが7Gの売り上げがある。


ハンバーガーに比べるとお好み焼き屋とたこ焼き屋の利益率も悪くない。

材料費のコスト的にやっぱ練り物は強いな。


ただ、お好みソースと出汁作りは材料費以上に手間がかかってる。

良いことばかりでもないんだな。


やれやれ、色々と大変だ。

その後、しばらく、僕はいくつかの補充の仕込みと二人の商人からの仕入れを受け取ってから家に戻った。


人も足りないなぁ。むー。

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