21☆蘭があの方である理由
ーー十年前ーー
蘭がまだ小学二年生だった時のこと。
新一の家に着いた。
「じゃあな…蘭」
新一は手をふってくれた。
「新一、じゃあね。」
私も笑顔で手をふった。
ここから家までは、
一人ぼっちだった。
風はとっても強くて
冷たい・・・
何かが起こる前ぶれかのように・・・
ポトンと軽く何かが落ちてきた気がする。
何だろ..と思った。
私は拾ってみた。
吸ったあとのタバコだった。
そのタバコはとても黒かった。
私の背後に誰かいるような気がした。
「だ、誰・・・?」
「私?私はね…クリス・ヴィンヤード」
クリス・ヴィンヤード
それはアメリカの大女優
そんなことは、こんな幼なかった私でも
知っていた。
なぜ、大女優が私の目の前にいるのか
わからなかった。
「ごめんなさいね…。
そのタバコ私が、捨てたのよ。
拾ってくれてありがとう。」
「なんでタバコを捨てたの?」
「理由はないわ・・・
単なる己に対する苛立ちかしら・・・
自分の犯したことにイラついているのよ。」
「どうして・・・イラついているの?」
「私はね、人を殺すという最も卑劣な行為を
犯してしまったの・・・
もちろん殺すつもりはなかったわ・・・
でも私は人を殺したという罪悪感に押しつぶされているのよ。
あれはずいぶん昔のことよ。
あの時の少女には悪いことを
してしまったわ。」
「あの時の少女って・・・」
「名前は確かジョディ・サンミリオンだったわ・・
しかし少女の顔は覚えていないのよ。
私はその子の父親を殺してしまった。
私の自分勝手な行為のせいで..」
クリスはうつむいた。
蘭からタバコをとって、
自分のタバコケースに入れた。
「大丈夫・・・?」
「ええ…‥大丈夫だわ。
私はかつては凶悪犯グループの一員だったの。
その中にも罪に耐えきれず自殺した人はいたわ・・・
凶悪犯のグループの生き残りは
ジンとウォッカそして、私よ・・・
少女の父親はFBIの捜査官として
私たちのことを調べていたの。
彼は私たちについての調査資料を
保管していたわ。
このままでは私たちの悪事を
ばらされてしまうかもしれない。
私はそれが怖かった・・・
自分たちを保ちたかったから
だから私は私の存在を知っている
彼女の父親を殺したの・・・
罪に罪を重ねてしまった。
どうにも罪は薄くならないわ・・・
どうしても私は自分の罪から逃げれないわ・・・
ねぇ…私を助けて・・・
そして、私たちを悪夢から救って・・・
もう………
これ以上たえきれないの」
クリスは涙を流した。
その様子は私を頼っているようだ。
彼女がなぜ私を頼るのかは
わからないけど
とにかく私を真剣に見ていた。
「クリスさん・・・
私にはあなたを助けるなんてこと
できないよ・・・
私は何の役にも立たないよ。」
「いいえ…‥私たちを救うことができるのは、
毛利蘭さんあなたしかいないのよ。
私たちもうあなたの優しさがないと
限界なの・・・」
途切れ途切れに聞こえてくるクリスの声。
私の目の前にいるクリスは、
女優としてのクリス・ヴィンヤードとは
別の表情だった。
「でも私は、あなたのために何をすればいいの?」
「私たちを匿ってほしいの。
私たちの存在を世間に知られるのがとても怖いから・・・
お願い……私たちにはあなたの優しさが必要なの。」
クリスは蘭の小さな肩に手をのせた。
ブルブルと震えているのが、伝わってくる。
クリスさんは犯罪を犯しまったけど、
きっと何かあるんだ。
心の奥にはいろんな思いが、
秘められているんだ。
表情を見ればわかる。
クリスさんの心境や今のこの状況だってわかる。
私がいくら幼くても
クリスさんの気持ちは良くわかった。
「お願い…Angel」
この彼女の必死な声に
私は痛感した。
「私は、あなたたちを救ってあげる。
いつか私があなたたちに光を与えるわ。
それまでずーっと私があなたたちを見守るからね。」
「ごめんなさい…
こんな闇の包まれているだけの私のことを
助けてくれるなんて・・・」
「ううん…‥。誰だって最初は光のような心を持っているのよ。
それが人の感情によって
殺意などがめばえて闇のような心を
持ってしまうだけのことよ。
あなたたちだって光を取り戻すことはできるわ。」
「ありがとう……。Angel」
微妙に涙を流している。
蘭はさりげなくハンカチを渡した。
「ありがとう。」
それだけつぶやいて
ハンカチで涙をふく。
クリスは蘭の優しさに耐えきれず、
大量の涙を流した。
この時のベルモットは、私に本音を話してくれた。
今のような秘密主義のベルモットでは
なかった。
凶悪犯の間では、
酒のコードネームで呼び合っている。
クリスのコードネームは、
ヴァムース
そして日本でいうと
『ベルモット』というコードネームである。
あとベルモットの仲間の
ジンとウォッカも私たちと
一緒に行動している。
最初の内は蘭の影響で彼らも明るかった。
彼らも犯罪など
決して犯さなかった。
しかし月日が経つにつれ
いろんな犯罪者が私の周りに集まってきた。
それはコードネーム
キャンティ、コルンと呼ばれた人たちのこと
そしてピスコも私の前に現れた。
それから、彼らは犯罪を多く犯すようになった。
そして多くの人々が集まりやがて組織と
呼ばれるようになった。
ベルモットだって蘭の言った言葉を忘れて
次から次へと人を殺していく。
ジンやウォッカ、
そしてピスコ、キャンティ、コルンも
私でも止めることの
できないぐらい犯罪を犯していく。
しだいには、超最強な組織になってしまった。
私はそんな彼らの姿を影から見ているだけだった。
私はこの組織のあの方になった。
そしてずーっと光を忘れ
輝きを失ってしまった彼らを見守っていた。
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