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すみません……相当遅くなりましたがやっと投稿できそうなので投稿させていただきます
今回デュエルはありませんがそれでもボリュームはある方だと思います
それでは
第19話「精霊争奪戦~争奪者の三重奏~」
~SIDE:冥~
「ふぅ……平和ですね……」
 そう言いながら僕は食堂で静かに緑茶を飲んでいます
「ああそうだな……平和なのは――って少し爺くさくないか?」
 そこに一人の少年――青髪の少し体が痩せ気味な――が声を掛けてきました。
「いいじゃないですか~こうやって平和な時を楽しむのはいい事ですよ、黒木さん――平和なんていつ崩れるかわからないし」
 その少年――黒木 幸助――に笑顔――妙に悟ったような――で返していきます。
「……なんと言うか冥、お前って妙に物事を達観してるような――まだ18歳にも満たないのにな」
 黒木君はそんな僕にため息混じりな声で言ってきます。
……まぁ確かに少々達観しているのは認めますよ。
 だって、いじめれていた事や姉の事、さらには流奈さん達の事、そして――
(水無月先生……)
――現在同居している強欲教師がもたらす数々のトラブルを経験したら悟りの境地に達してもおかしくありません。
「まぁ……人生色々ですよ、色々」
 うん、と言うか悟ってますよね……
(それだけここ数ヶ月の出来事が濃かったと言うべきか)
 と、心の中でつぶやきながら残りの緑茶をすすっていきます。

 さて、今僕と話をしている少年――黒木君――と知り合ったのはここ数週間――丁度僕が椿さんとデュエルをして勝った後の事です。
 その日、僕はいつものように食堂で昼食をとっていたらそこに偶然黒木君が隣に座ってきたのです。
 そこで黒木君が僕に話しかけて来て、それに受け答えしていたらいつの間にか盛り上がって――今では時々食堂で談笑しながら時を過ごせるぐらい仲良くなりました。

「はぁ……なんと言うか大変な目にあってるみたいだな」
 で、今の黒木君は僕に哀れむ様な目を向けて話を続けてきます。
「大変な目ですか……確かにここ最近は大変な目にあってますね――しかもほぼ間違いなく水無月先生からのとばっちりで……」
 僕はそれに乾いた笑みを浮かべながら言葉を続け――
「――それでも皆に会わなかったら僕は何も変わらなかった――少なくとも『弱い』自分からは脱せなかった――と思います」
――最後の方は決意を込めた表情で締めていきます。
――確かに水無月さんや霧島さん、それに流奈さん達に会わなければ今でも虐められて、それを『姉』が晴らすために制裁を行いそのせいでまた虐めが悪化し、また制裁を加え――と言う悪循環に陥っていた――実際になっていた――かもしれません。
(でも今は……)
 あの人達に出会って、色々な経験――大半は巻き添え等碌な事じゃなかったとはいえ――をした事で僕は変わる事でき、そのおかげで黒木君みたいな友達もできました。
 今まで『姉』ぐらいしか頼れる人物いなかった僕にとってそれはずっと欲しかったものである事は間違いありません。
(……その意味では感謝しないといけませんね)
 と、感慨に耽りながら時間の確認をします。
(今は午前12時……あっ!)
 その瞬間今の今まで思い出せなかったある事を思い出します。
 それは今日精霊界から戻って来る人物――流奈ちゃんを寮で出迎える……と言う予定です。
 で、大体流奈ちゃんが帰って来るのが今の時刻から30分後だと霧島さんから連絡があったので食堂からの距離から考えても少々名残惜しいですが――
「すみません、少し予定があるのを思い出したのでここで失礼させて頂きます」
――ここで一旦終了する事にしました。
「おう、頑張れよ、冥!」
 黒木君の励ましの言葉を背に僕は席から立ち上がり寮の方へと足を進めるのでした。
――この後に起こる事件等、露も知らずに。

~SIDE:木津根~
「……様子はどうじゃ? 氷川」
「問題ない……二階堂 詩音は……寮の方へ向かっている……」
 と、わっちと氷川は携帯電話口から淡々とした口調でお互いの現状を報告したのじゃ。
 現在わっちは計画のためある仕掛け――ほとんどわっちが立案した――を準備しておる最中じゃ。
 その仕掛けとは……かなり大きめ――最低人が六人ぐらいは入る――の結界を使い標的ターゲット――小原 流奈――の友人らを足止めあるいは人質に取るというものじゃ。
 そのために氷川には二階堂を、風祭には冥を、そして私は水無月の奴を監視しておる。
 なんたってこの策、一人でも抜けられるとそのまま破綻しかねんからの――ちゃんと寮の方へ向かっておるかは知っておらぬといかんのじゃ。
 じゃが――
(風祭からの連絡がないの……)
――常識を色々超越したあやつからの連絡が無いというかなり不安な状態に今なっておるのじゃ。
 あやつは暴走しやすい――と言うかいつでも暴走しているが――からの……もしわっちの言うことにを聞かずにデュエルを挑んでおったら、わっちが折角立てたこの策も全てが水の泡になってしまう。
 そうなった場合、わっちがここ数週間でしてきた事が全て徒労という結果となる……。
(……それだけはいかん!)
 人が苦労して準備してきた計画を仲間内の暴走で無にきっす等、誰も――特にわっちが――求めてはおらぬのじゃ。
(そうじゃとも、この策は絶対に成功させねばならぬ――ガルアのためにも、わっちのためにもの……!)
――三本尾の狐のクセに、生意気じゃ!
――お主みたいな妖狐、わが一族にとっての恥じゃ。
――悔しければ何か功績ぐらいあげろ、できたらじゃがな。
(どいつもこいつもわっちをバカにしおって……今に見ておれ!――っといかん、いかん)
 と、少しだけ過去の嫌な思い出を思い出してしまい軽く歯軋りをしながらもこれからの事を考えようとする。
「しかし、あの常識外れのバカ……あれほど言っておったのにまったく聞いておらぬ……」
 じゃが、すぐにわっちの口からあのバカ――風祭の奴――の愚痴がこぼれはじめてきたのじゃ。
「わっちがどれだけ苦労していると思っとるのか! 少しは氷川の冷静さでも見習えと言うのじゃ!」
 どうせあやつは此処におらぬのじゃ、ちょとぐらい愚痴をこぼした所で咎められ――
「で……何を見習えと言うのかしら? 『ダメ狐』?」
――たようじゃな… …
「……ッ!? いつの間に来ておったのじゃ?」
「う~ん、そうね……貴様が『あの常識外れのバカ』って言ったあたりからよ」
(うわぁ、あそこから聞かれておったのか……)
 わっちは思わず自分の迂闊さに頭を抱えこんでしまったのじゃ。

 まさかもう此処に来ておったなんて夢にも思っておらなかったからの……色々吐き出しすぎてしもうたわい。
 そのせいで、今目の前におる風祭は侮辱された事に眉毛を震わせながら私を射殺さんと言わんばかりの殺気を向かせておるのじゃ。
 さしあたって、このあまの殺気をどうにかせねばわっちは確実にあの世へゆく――冗談でも誇張でもなく、割と本気での。
「そうか、まぁその事は後でいいのじゃ(と言うか忘れてくれ……)、それよりお主が監視しておった冥と言う少年についてじゃ」
 じゃからわっちはこの話題を変えるために、さり気なくあの少年の事を出したのじゃ。
(風祭がこれで気を逸らしてくれればセーフなのじゃが……)
「ああ、その件については大丈夫、私が見た感じじゃあ間違いなくこっちに向かっているわ」
 風祭の奴はその事に反応して私が言った愚痴の事も忘れて堂々と報告してきおる。
……しかし、あまりの堂々とした報告にかえって怒りがわっちの中で再び燃焼し始めてきおった。
「……なぜすぐに報告しなかったのじゃ?」
 じゃがここは抑えて冷静に理由を聞いておいた方がいいじゃろう。
 ひょっとしたら特別な理由が――
「えっ? 報告すべきだったの?」
――なかったようじゃな。
「貴様、何を聞いておったのじゃ!?」
「え? う~ん……最初の方は覚えているけど最後の方は寝ていたからよくわからないわね」
「寝とった……じゃと?」
 こやつ……わっちが真剣に説明しとる最中、事もあろうか寝とったと言うのか!
「貴様と言う奴は……少しは真剣に作戦の事を考えろ!」
「作戦? そんなまどろっこしい事やってられないわ――私なら全員ぶちのめし奪い取るわ」
 と、風祭の奴は鼻を高くして宣言してきおる。
 確かにそっちの方が簡単じゃと言うのはわっちにもわかる、が――
「アホか!? あれだけの人数を一人で相手にするなんぞ無茶を言うな!」
――そもそも物理的に不可能な事は自明な事じゃ。
「あら? 雑魚はどれだけ集まっても雑魚よ――私の敵じゃないわ」
「お主の敵になりえないと言われようとわっちらにとっては紛れもなく難敵じゃ!――そんな無策に等しき事できるわけ無いじゃろ!」
「……あんたが考えた下策だったら、むしろ無策の方がもっといいわ」
「貴様……!」
 わっちはこやつの暴言に最早我慢の限界に達してしまうのじゃ。
「そんなに言うのなら、今ここでわっちがその天高く伸びた天狗の鼻、叩き折ってやろうか!」
 じゃからわっちはその怒りをぶつけるためデュエルディスクを展開してデュエルの準備をする。
「ふん! なら教えてあげるわ――誰が上で誰が下だと言うことを!」
 風祭の奴もそれにつられてデュエルディスクをセットしデュエルの準備を始めてゆき、このままデュエルを行おうとする。
じゃが――

「……そこまでに……してください……」

――そこで冷たく澄んだ声がわっちら二人を止めに入ったのじゃ。

「もう来ておったのか、氷川よ」
 わっちはその声――氷川 水月――に反応し、展開したデュエルディスクを戻しながら振り向く。
「意外に早かったわね」
 風祭の奴もデュエルディスクを戻し、少々物足りなさそうな表情を浮かべながら氷川のへと顔を向けたのじゃ。
「……二人とも……今はケンカしている……場合じゃない……」
「まぁ、確かにそれはそうじゃが……しかしこやつをこのままにしておいてもわっちの腹の虫が収まらん」
「……それでも……『姉さま』……ここは抑えておくべきです」
 と、氷川は今にも泣き出しそうな顔をしながらわっちを説得してきたのじゃ。
「(『姉さま』か……)確かにそうじゃ……ここは争うよりも協力して事にあたるべきじゃな」
 さすがにこんな表情を出されれば、折れるべきじゃろうな。
……決して『姉さま』とか、氷川の浮かべた表情が存外かわいかったとか、そう言った理由ではないぞ!
「(っといかんいかん……忘れるところじゃった)……そう言う訳じゃ『協力』させてもらうぞ、風祭」
 わっちはすぐに気持ちを切り替え、風祭の方に真剣な表情を向けながら言ったのじゃ。
「……チッ! わかったわ『今』の所あなたの策に『協力』してあげる――」
 さすがに、風祭でもこの状況で自分の我を通す事はせず、渋々ながらも『協力』の姿勢を見せおった。
 わっちは協力をしてくれた事にホッと胸を撫で下ろした――
「――だけど終わったら覚悟しておいてね」
――直後にもの凄い殺気を出しながら風祭の奴が言い放ったのじゃ。
「ふん、そっちこそ覚悟しておくのじゃな――」
 それに対してわっちも負けず劣らずと言った感じ――少なくとも表面的には――で言い返した後すぐに氷川の方へ顔を向け――
「――それと氷川はすぐにデュエルをする準備をするのじゃ」
――っと、次の行動に移るよう指示を出したのじゃ。
「わかった……すぐに準備をするわ……『姉さま』……」
 そして、氷川はわっちの命を受け自分のデッキの最終確認をし、それをデュエルディスクにセットしてゆく。
(また『姉さま』か……)
 わっちは闘うための準備をしていく氷川の姿を見ながら心の中でポツリと呟いてしまう。
……わっちがあやつに掛けた術――『魅惑』の術――の影響なのか、なぜか氷川がわっちを呼ぶ時に『姉さま』と呼ぶのじゃ。
 『姉さま』と呼ばれる事自体は別にいい――と言うかむしろ嬉しいとさえ思うのじゃ。
 じゃがその反面、虚しく思う事もある。
 その理由わけはこの関係が所詮わっちの『術』によってもたらせた仮初めのものである事実……。
 『術』を解けば再びわっちと氷川は敵同士となり、そこに今の状態のような、『尊敬』や『敬愛』なんぞ一つも含まれておらぬ。
(それは少々、寂しいかの……)
 それでもじゃ、それでもわっちは求めるのじゃ――他人の愛情を、『姉さま』と呼ばれ私に縋ってくれる存在をの。
 それ程までにわっちは『愛情』と言うモノに餓えておるのじゃろうな……。
(ならばどうすればよろしい?)
 簡単な事――この関係を継続していく事じゃ
 そのためにもここは是非ともこのデュエルに勝ち、策を成功させる必要があるのじゃ。
 そうすればガルア達もわっちの事を少しは認めて、彼女をわっちの部下として手元に置いておく事に異論はしないじゃろう。
(……結局のところそれしかないか)
 そう、わっちは結論づけて、この策を成就させるためにより入念に確認――ほぼわっち自身の気持ちを抑えるためじゃが――をしておいたのじゃ。

――じゃが、今にして思えばこのような気持ち――若干心の平静をなくした状態――で実行すべきではなかったのじゃ。
なぜならば、結果としてわっちは醜態を風祭達の前で曝してしまったのじゃからな……

~SIDE:ガルア~
 フッ……読者のみんなは久しぶりかな? リーダーのガルアだ。
 4話もの間出演がなかったので忘れてないかかなり心配してたなんて思ってないぞ、本当だぞ!
……っとメタ発言はここまでにしておいて。
 俺は現在戦艦にて木津根の奴から連絡を受け、そして指示を出しながら待機している。
 ぶっちゃけて言おう――特にやる事がないので物凄く暇だ。
 木津根の奴はしっかりしているので特に俺が指示を出さずともやるべき事はやり、定時連絡もちゃんとしてくれる。
 そうなると現場にいない俺は手持ち無沙汰となってしまう。

 なら直接現場にいればいいかって?――リーダーは最後に出るべきだし、何よりもあの二人――真木と風祭の奴――を相手にしたら間違いなく俺の胃のライフポイントは尽きる。

 と、まぁこんな訳でこの件に関しては木津根の奴に任せている。
……そこ、責任を丸投げしたと言わない、あくまで『任せ』てるだけで有事の際にはちゃんと指揮を取る――たぶん。

「ガルア様、ただいま昼食ができました――食堂に置いておりますのですぐに向かってください」

 と、ここで部屋を軽くノックしながらファルミアが尋ねてくる。
「うむ、丁度良い時間だしな――すぐ食堂に行くから待っておいてくれ」
 俺はすぐにファルミアの問いに返答を返す。
「了解しましたガルア様――すぐに食堂に来てくださいね?」
 そして、ファルミアは妙にウキウキとした口調で了解の言葉を出してその場を立ち去っていく。
 部屋から離れていくのを確認した後、俺は立ち上がり壁にかけてあった白い軍服に袖を通し、帽子をきっちりと被った後食堂へと足を進めていくのだった。

「何だと……これは……!?」
 で、食堂についた俺が目にしたのは――
「何と言いましても……蟹鍋ですよ?」
――もくもくと煙を上げて蟹鍋がそこには存在していた。
「それはわかるのだが……あえて言わせてもらおう、何故今この時期にしかも昼食に蟹鍋なんぞ作る!?」
「何故、とは言われましても……今この船にある食材で作れるのはこれしかなかったとしか答えようがありません」
「くっ……ならしかたあるまい、だが今度からしっかり計画をたてて食材を使うように、わかったなファルミア(……次から食材の補充は多めにしておいた方がいいな……)」
 俺はファルミアにそう言って注意をし、蟹鍋に手をつける。
(やっぱりファルミアの作った手料理は美味しいな)
 なんだかんだ言ってファルミア俺の手駒の中で一番料理がうまいからな。
 これが風祭あたりとなるとカーボンと化す――しかもそれを無理やり勧めてくるからまたタチが悪い。
 断れば何が飛んでくるかわからんし、さりとて食べると確実に腹を壊すと言う悪夢の二択が待っている。
 そう言う意味でもここにファルミアが残ってくれたのは幸運である――木津根には気の毒だがな。
「……それにしてもだ――蟹を見てると奴の事を思い出すな」
「……? えっと誰の事なのでしょうか」
「蟹と言えば奴しかいないだろう――」
 と、奴の名前を言い出そうとした瞬間、俺は奴とのデュエルの事を思い出し少し苦笑を漏らしてしまう。
――俺はシューティングスター・ドラゴンの効果を発動――デッキの上から5枚をめくりその中にあるチューナーモンスターの枚数だけ攻撃できる……この効果によりめくった枚数は5枚――したがって5回攻撃できる!
――バカな!? 俺のマシンナーズが全滅だと……ッ!

(アレは……さすがに無いわな)
……5枚連続チューナーなんて普通なら事故るような奇跡の引きを見せつけこの俺を敗北させた張本人――
「――不動 遊星だ」
――サテライトから綺羅星のごとく現れ瞬く間にキング――ジャック・アトラス――を打ち負かし新たにキングに襲名した不動 遊星――その人の名を出していく。
「なる程納得しました――あれは確かに蟹ですね」
 ファルミアは俺の言葉を聞いて理解をした表情を浮かべていく。
「ああ、あの髪型はどう見たって蟹だろ――っと髪型の話は置いて……俺たちがこのに来た理由、わかっているな?」
「ええ、わかっています――一度、敗北をした不動 遊星を打ち負かす戦力を集めるためですね?」
「……ああそうだ――俺達は戦力を集める必要がある」
 遊星に再戦をしリベンジを達成するためには以前にもまして戦力が必要となる――兵力としてもデュエリストとしての意味でもだ。
 それはな――
「奴に――遊星に勝つ為にも、俺達の真の目的の為にもな」
――遊星にリベンジを果たした後にすべき当初の目的を考えると戦力はあるにこした事はない。
なんせ俺の最終目標は――

――曰わく悪の首領なら誰もが通る道。
――曰わく時の支配者なら誰もが描く事。
――曰わく男なら一度は叶えてみたい夢上位に存在する事。

――世界のあまねく全ての存在を支配し、自らの手中に治める行為。
 すなわち――
「世界征服――ですね」
「そうだ、この俺の壮大にして素晴らしき野望を実現するために必要となるモノ――それもかなりの量がな」
「それこそ今ある手駒の数十倍は必要――ですよね」
「ああ、真木や風祭は十分に強い――制御はしづらいが――がしかし、所詮は単一戦力――世界征服を達成するための戦力としては数が少ない」
 『戦いとは数』とはよく言ったモノで今現在、戦力と呼べる人物は正直俺も含めてたった五人である。
 とてもこんな人数で世界にケンカを売るなんてマネ、できるはずがない。
 ならばどうすればいいか?――答えは単純だ。
 戦力を増やせばいいのだ。
「でだ……その足りない戦力を補う為にも今回の作戦――『聖霊使い セルフィー』の確保は成功させねばならない」
「はい、わかっています――確か精霊達を長く現世に留めらせておくためにはどうしても『聖霊使い セルフィー』の力が必要になってくる……であってますよね?」
「そうだ、理解が早くて助かるよ――今俺達の手駒には二人の精霊使いがいる……今デュエルアカデミアに向かっている真木の奴と――」
「――私の二人ですね」
「ああ、その通りだ、お前達の持つ精霊――真木の『デーモン』とファルミアの『リチュア』――は強力な力を持っている――それらを戦力として組み込めれば……」
「野望の達成に一歩近づける……と言う訳ですね?」
 ファルミアはニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべながら言葉を返してくる。
「フフフ……全くその通りだ、ファルミア――やはりお前は俺の手駒の中で最高だ!」
 その笑みに俺は微笑みながらファルミアを誉めてやる。
 すると突然顔を赤く染めながらもじもじさせていく。
 多分、俺が誉めた事で嬉しくなったのだろう――彼女のこう言った可愛い所があるから面白い。
 これが風祭とかああ言った連中になると「私をもっと称えなさい」とか言って無理矢理迫って来るのが目に見えている。
 あいつら揃いも揃って我が強すぎて俺の言う事を聞いてくれないし、暴走しがちだから手が着けられない。
(恐らく木津根の奴は苦労しているだろうな――後で俺が愛用している胃薬を渡した方がいいだろう……)
「ところで……一つお聞きしたい事があるのですが、ガルア様」
 と、俺が物思いに耽っている間にいつの間にか元の調子に戻ったファルミアが真剣な眼差しで口を開いていく。
「何かね?」
「ガルア様はあの女――エルナ・シャリントンの事をどう思っておられるのですか?」
「……あの女の事か――」
 エルナ・シャリントン――あいつは俺達がこの時代で初めて出会った協力者であり、俺達にあのカード――『聖霊使い セルフィー』――の情報をもたらした女だ。
 と、ここまで聞けば風祭達よりもましな人物に思える。
 しかし――
「――正直言って信用ができない」
――あの女に関しては色々信用に置けない所がある。
 まずはじめに、あの女の経歴――俺に会うまでの経歴――が謎に包まれすぎている点――一応どこかで『研究』していたのはわかるが所詮その程度しかわかっていない。
 で、次に彼女の行動もこれまた謎が多すぎる――俺達に協力はしているのはしているが時々俺達の目を盗んで独断で行動している点。
 最後に、俺が最も彼女を警戒している所、それは――
「あの女が俺達や他人を見る時、まるで実験動物を見るような冷ややかな目線」
――人を人として見ず、自分にとって利用価値があるかないかでしか物事を見ないどこまでも打算的そして冷酷な彼女の本質。
「――あれは危険だ……いつ俺達に牙を向けるかわかったモノではない」
「……なるほど――ですがそれならなぜガルア様の手元に置くようなマネを?」
 ファルミアは不満そうな顔をして俺にまた問いかけてくる。
 それもそうだろう――あの女を手元に置くのは危険だと自らの言葉で示している。
「理由か、そうだな――」
 だがそれでもこの俺が手元に置いておく理由、それは――
「――あの女の能力を考えると俺の野望を達成するためには多少のリスクはあるがそれでも必要だ、それにな――」
「それに?」
「――あの女がいずれ牙をむくなら、それこそ手元に置いて奴の手札を覗かせてもらうのもいい――そうしておけばいざ事を構えた時に対策をたてやすい」
――と言った具合だ。
「あの女もその事を知っているから下手な手を打つ事はできない――そもそもあの女の目的は『聖霊使い セルフィー』を手中に収める事……まだ手に入れていない今仲違いするわけにもいかぬ――あの女『一人』の力だけでは奴らから『聖霊使い セルフィー』を奪い取るのは無理だからな」
「なるほど、流石はガルア様――そのような深い考えの元に奴を手元に置いていたとは……この私でさえ気付きませんでした――」
 先程の疑問がとけたのか、不満そうな顔から徐々にいつもの冷静な顔に戻しながらファルミアは語っていく。
「――ですがそう言う事でしたらこの私がやるべき事は唯一つ……この作戦が成功して『聖霊使い セルフィー』を手に入れるまであの女の監視を続け情報ないしは牽制をしておく……であってますよね?」
「そうだ――そしてファルミア、お前ならそれを容易く行う事ができる筈だ」
 そう言って俺はファルミア……のデッキに目線を向ける。
「正しくは私の精霊『リチュア・エリアル』と『リチュアの儀水鏡』の力です」
 ファルミアは自分のデッキから2枚のカード――『リチュア・エリアル』と『リチュアの儀水鏡』――を見せて俺の言葉に返答していく。
 さっきも少しだけ言ったがファルミアの所持している精霊は『リチュア・エリアル』である。
 『リチュア・エリアル』以下『リチュア』共は古くから『儀水鏡』を用いて様々なモノと交信し利用してきた。
 そしてファルミアの話によれば『儀水鏡』の力が最大限に発揮されるのは『水』関連のモノとの事……そして今エルナは俺達の共にこの船に乗っている。
 当然この船は『水』の上に浮かんでおり、『儀水鏡』の力を使えば常にあの女を監視するのは容易い事だ。
「何度も言うがファルミア、お前の精霊が持っている力には期待している――勿論お前自身の力もな」
「ありがとうございます――ガルア様のそのお言葉は何よりも励みになります」
「ふっ……お前にはもっと働いてもらわんといかんからな――駒の一人や二人元気付けてやるのも俺の仕事よ」
 俺はそう言った後再び鍋の方へ箸を進める。
 釣られてファルミアの方も鍋をどんどん食べて行く。
 こうして、俺達二人は季節外れの蟹鍋を処理していくのだった。

追記・普通に蟹鍋の方はおいしかった、マル。

~SIDE:???~
「……どうやらガルア達も動き出したみたいね」
 薄暗い研究室のような部屋の一室で、赤色のロングヘアーで黒い瞳にメガネをかけ綺麗で真っ白い白衣を着た一人の女性がイスにリラックスした姿勢で座りながら呟いていく。
「私もそろそろ動き出したいところだけど――『儀水鏡』の監視がある手前、下手に動いたら真の『目的』が露見されちゃう恐れがあるのよね……」
 そう言って女は困ったような表情を浮かべながら考え込んでいく。
「う~ん……でもデータだけは欲しいのよね――って、あっ! あの手があるじゃない」
 と、何かを閃いたのか困惑から微笑みへと変え、おもむろにポケットから携帯を取り出しそのままどこかへメールを送っていく。
「――これでよし、最悪ガルアの作戦が失敗したとしても私の『子供達』がデータを送ってくれるわ」
 メールがきちんと送られたのを見届けた後、女はさらに呟いていく――
「ふふふ『子供達』が送るデータと、以前に送られたデータがあれば『目標』までかなり近づける――そう私の真の『目的』――」
――その顔にどす黒い悪魔のような笑顔を張り付かせながら。
「――『永遠とわ幸福こうふく』をね」

 女の名は、エルナ・シャリントン――氷川の産みの親にして、彼女の復讐相手のマッド・サイエティスト。
 彼女と流奈達の道は残念ながらまだ交わらない。
 しかし近い将来彼女達の道は交わるであろう――その心に宿りし『狂気』を解放しながら。
 果たしてその結果がどうなるかは――まだ誰も知らない。

――かくして奏者は舞台に揃う
「詩音さん、水無月先生お待ちしていませんでしたか?」
「いえ別にそこまで待ってませんよ」
「詩音に同じく別にそこまで待っちゃいないぜ」
――三者三様の思惑が入り乱れる舞台へと
「それは良かった――あれ? だけど氷川さんは何処へ?」
「氷川さんなら少し用事があると言って席を外しております」
「まぁその内戻って来るだろう――むっ?」
――奏者は奏でる
「ちょ、水無月先生何で突然外に出て……って、ええっ!?」
「……? 一体何があったのです?」
「盲目のあんたには見えないだろうけど……寮全体が光の壁に囲まれてるわ」
――思惑乱れる三重奏を
「それってつまり……」
「ああ……わかってる――」
――決闘デュエルと言う形で


「――完全に包囲されている、何らかの力でな」

~ライナとケルベロスのラジオ・精霊談義~
ライナ:は~い、ライナと
ケルベロス:ケルベロスの
ラ&ケ:精霊談義の時間です。
ライナ:第8回目の今回はリチュア・エリアルちゃんです
ケルベロス:うむ渡された資料によるとエリアを付け狙う変態変態ドMらしいな
ライナ:後エリアの妹でもあるわ
ケルベロス:そうかエリアも大変だな――ところでなぜ今回名前だけの彼女が選ばれたのだ?
ライナ:ぶっちゃけ今紹介しないとタイミング逃すから
ケルベロス:メタ発言だな……


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