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わたしの愉快な旦那さん 作者:yuma

本編

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俺はやつの弱点を知っている。

山田視点
 なあ、心の友よ。

 俺は冗談めかしてそう言いつつ、親友の肩に手を置いてみた。親友は嫌々俺のほうを振り向いた。

「急に気持ち悪いことをしなくてもいいんじゃないか」

 マジトーンのガチ口調で言われたのが、地味にショックだった。冗談が通じなかったよ、こいつ。
 自分の彼女には気持ち悪いほどの甘々っぷりを見せてくるくせに、自分のことはいいのかよ。たまに見せつけられる俺の身になってくれよ。俺にはまだ彼女ができねーんだぞ。少しは察してくれよ。

 コージンは俺の主張をまとめて聞くと、じゃあさ、と溜め息混じりで言われた。

「僕が最近高校時代や大学時代の友人の伝手を使って、山田に紹介した時の女の子の条件って何だった?」
「あ? まあ、美人で賢くて、巨乳で優しい人って答えたな」
「それだけじゃないでしょ。他には料理上手で掃除上手、自分にお弁当を作ってくれて、可愛い笑顔で『どうぞ』って言ってくれて、自分のギャルゲー趣味に付き合ってくれて、自分を好きだと言ってくれる女子だって」
「よく覚えているな」

 本気で感心していたのだが、コージンはそんな俺を軽く睨んでいる。

「山田は理想が高すぎる」
「何でそうなる!」

 自分だって、大学時代は「理想の女の子が」云々言い出す『夢見る夢男ゆめお』だったくせに!

「じゃあ言い方を変える。――ギャルゲーの女の子を現実で求めるな」

 うっ、と俺は胸を押さえた。
 わかってた……わかっているんだがな……。それでも求めてしまうんだよ、伝説のギャルゲ『どきどきシスターズ』の天然系王道ヒロイン妹『雅ちゃん』!

 柔道ばっかりやってた高校生活の唯一の潤いだったんだよ!

「昔さ、山田が押し付けてきたことがあっただろ、『何とか』っていうギャルゲー」
「『どきどきシスターズ』な」

 声スキップしまくりで翌日にはしれっと全ルート制覇しておきながら、「ふうん。こんなものなんだ」って冷めた顔で俺を見てきた思い出深い伝説のギャルゲーである。

「うん。まあ、なんでもいいか。あのギャルゲーに出てきた女の子たちって男性目線の『可愛い女の子』で、作られた女の子なんだよ」
「そりゃ、そういうもんだろ」
「そうだけど。もしああいう感じに女の子が見えていたとしたら、大抵その女性はそう見えるように振る舞っているものだよ。現に山田、僕が紹介した相手と上手くいかなかっただろう?」

 思いだす。コージンは確かに俺の条件に限りなく近い女子を連れてきてくれたが、結局二三回食事をしただけで、相手は何も言わずにフェードアウト。秋口に紹介されたが、今では顔も思いだせない。胸はでかかった。

「ああいう女性は自分に自信を持っているし、安売りもしない。おっとりしているように見えても内面はしたたかなことも多いよ? それでも自分を選ばせてみせるってぐらいに山田はアプローチをしたのかな」
「しょ、食事は誘ったよ」

 最後は断られたけれども。

「それだけ?」
「それだけ、と言いますと……」

 勤務時間外の居酒屋で突如として敬語に戻る俺。やべーよ、何か地雷踏んじまったよ……てなことに今更気づいた。こえー……。

「相手を見て、気遣うとか。相手がどういう女性で、どういうことを求めているのか、ちゃんと真正面から向き合ったかってことだよ。山田、その子のよかったところとかわかる? 可愛いなと思った時とか。上っ面だけ見てても仕方がないだろう?」

 ……思いだせねー。

 俺はビールとともに言葉を飲み干した。これ以上突っ込まれてはかなわんと思い、話の矛先をそらせようとする。


「なら、お前はどうなんだよ? 自分の彼女のどういうところが好きか言えるのかよ」
「梢さんの? やだよ」

 コージンは即答した。

「は? なんでだよ」
「僕だけが知ってればいいからね。これを聞いて山田と三角関係にでもなったら笑えない」
「発想がとんでもねーな!」

 コージンはちまちまと枝豆を口に運んでいる。手元のビールのジョッキは空になり、頬は赤らんでいるようだ。
 あ、と気づいた。どうも不機嫌な様子で言葉がびしびし飛んでくるかと思えば……。

「酔ってるだろ」
「多少ね」

 ふう、と息をつくコージンは否定しなかった。
 そういや、そんなに飲めない体質だったよなぁ……。
 酒量のわりにすぐに顔が赤らむから、勝手に周りが止めてくれるとか言っていたよな。
 まあ、多少顔が赤くても、頭の回転は全然鈍らず、ほとんど素面と変わらないらしいがな。

「今度からは気をつけなよ。意外と相手は自分にどういう関心を持っているかということに対して敏感だからね。山田の場合は特にわかりやすいし」
「へえへえ」
「行動で伝わってる、と勘違いするのもやめるべき。言葉も伴ってこそだからね」

 行動も言葉も惜しまない男、コージンは含蓄たっぷりにそう言ってのけた。説得力があるな。

 コージンはあらかじめ注文しておいたノンアルコールのドリンクがテーブルに置かれるのを待ち、それを少し掲げ、

「山田に新しい出会いがあることを祈って乾杯」

 なんてぬかしながら、俺のジョッキに軽く当てた。軽い音がテーブルに響く。

 ……ちっ。自分に熱愛中の彼女がいるからといって余裕綽々かよ。あ、なんかむかついてきた。
 くそう。女にもてるさわやかイケメンは絶滅すればいいのに。

 酒も手伝ってか、物騒な方向に走り出す思考。ジョッキに残っていたビールをぐいぐいと飲み干した。




 ……そして気づけば、コージンに肩を支えられながら道ばたを歩いていた。あれ。記憶が飛んでる?
 確か最後にイカのフリッターを頼んだ辺りは覚えているが、食べた記憶がないぞ?

「……いや、食べてたよ。僕は一口ぐらいしか手をつけられなかったよ。最終的に皿を抱えて号泣してたのはどこの誰だったかな?」

 急に夜風が身にしみるように……。あ、右隣からブリザードが。コージンか。

「山田。ちょっとは飲めるからといって調子に乗るのは感心しないよ。もうそろそろ自分の適量を考えたらどうだ。いつも家まで連れて帰っているのは僕じゃないか」
「お、おっしゃる通りで」
「学習しなよ」
「おっしゃる通りで……」
「家ならともかく、外で酔っ払うと周囲に迷惑をかけることになるんだから」
「おっしゃる通りで……」

 もはや俺は「おっしゃる通りで」連呼マシーンと化した。コージンの指摘がいちいち的を射ていて、胃が痛む。酔いがすうっと抜けていくのがわかった。現実とはこんなもんだよな。

 コージンはじっとりとした視線で俺を見る。信じられないって書いてあった。思いっきりため息をつかれてしまった。

「男の酔っ払いの世話よりも、酔っ払った梢さんの世話をした方が何万倍もマシだったよ」
「またのろけか」
「うん、まあ。でもそういうものだろ? 同性の酔う姿よりも自分の彼女の酔う姿を見てみたい」

 平然と肯定しやがった。良いところは話したくないと言いながら、のろけはいいのかよ、まったく。

 ……ここで俺は常にない洞察力を発揮した。

 つまりはコージンなりの牽制なのだ。「彼女は自分のものだから、ほかにやるつもりもないから!」ってこった。ほほうー。ふぅーん。……コージンも俺が思っているよりも余裕がなかったてか。

 内心、俺に取られるかもーなんて心配してるってことだろ?

 そう解釈すれば、俺の気持ちの持ちようも変わった。少なくとも俺はコージンの危機感を煽れる存在だっつーことなんだからな。捨てたもんじゃねーな、俺!

「どうした、山田。そんな気色悪い笑みを浮かべるなんて」
「気色悪い言うな」
「事実だから」

 そんなやりとりをしながら俺は自分の家の前まで来た。
 一人暮らしのコージンと違って、俺は実家暮らし。なんだかんだと居心地がいいからずるずると居着いてしまっている。彼女作れたら一人暮らししてみてもいいかもな、なんて思っている。

「じゃあね」

 コージンは玄関前に俺を立たせると、あっけなく去って行く。
 方向から考えて、今日は近所にあるやつの実家に泊まっていくんだろうか。両親が長々と喧嘩してるって気にしてたからなー。

 いろいろ文句を言いつつも親孝行してるよな、あいつも。




 
どきどきシスターズについては22日の活動報告に若干説明載せておきます。
いや……何かすみません
+注意+
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