挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
わたしの愉快な旦那さん 作者:yuma

本編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

12/64

俺は親友がわからない。 前

他者視点は疑問符なしにするつもりです。
前後編でお届けします。

山田から見た菱川について
 俺は山田。菱川産興の店舗部分で店員をやっている。主な業務は接客とレジ、商品の管理など、まぁ仕入れ以外に関する店舗業務大体はやっているんじゃないか。どこからともなく怪しげな品物を仕入れているのは店長、それ以後、お客へ商品が渡るまでを仲介するのが俺、ということになる。多少の例外はあるけどな。うちの客は好事家も多くて、変なこだわりとか持っているやつらも多いから、その辺は店長に丸投げすることもある。

 うちの店は基本何でも屋だ。ありとあらゆる商品、それこそ胡散臭い古代の土器の欠片から、新品の海外製薪ストーブまで国境・時代問わずに色んなものを扱っている。店に並べる基準はというと、「売れそうなもの」(儲けは必要)。あとは「食べられないもの」(腐らないから)。これに限るらしい。その割には店の中が魔窟と化し、特に三、四階の倉庫部分は年に何度か雪崩を起こし、そのたびに社長含めた社員全員(それでも二十人に満たない)で発掘、復旧作業に追われてる。そんなになるぐらいなら仕入れるなと言いたくなるが、これまでもどうにか儲けを出してきたのだから、どうにかしているのだろう。会社の資産運用とか、裕福な好事家からの個人注文の利益からそれなりに収入はあるらしい。ここ数年でさらにネット販売も始めた。品揃えのマニアックさに一部の固定ファンがお金を落としているのだとか。

 だが実際にある店舗そのものは平和なものだ。冷やかしにやってくる客も多く、利益を出しているわけでもない。最悪店に一人いればこと足りるぐらいだ。だからバイトもほとんど雇っていない。実質店で働くのは新卒の柏原と俺、あと店長のコージンぐらいだ。


 柏原はまだよくわからない。なんでも俺と同じく今時珍しい縁故採用だったらしい。柏原の父親が菱川のおじさんと古い知人だったとか。俺の前でいつもおどおどしているような男だ。口数も少ない。……それで就職失敗したんじゃねえかなぁと俺は思っている。自信喪失しているのはわかる。俺も就職失敗組で菱川のおじさんに頼み込んだからな。


 柏原がよくわからないと言ったが、俺の親友コージンはもっとわからない。近所の公園デビューからという年季のいった付き合いをしているがまだよくわからん。前々からよくわからんやつだと感じていたが、最近になってもっとよくわからんやつになった。あの、人当たりがよさそうで、実は何か企んでいそうな胡散臭い笑みがさらに胡散臭くなったというか、ぶっちゃけキモくなりやがった。

 覚えている限り、あの笑みは小学校時代から張り付いていた。
 小学校時代の俺はガキ大将もどきだった。近所の子ども相手にえばってた。一方のコージンは俺が誘わなければ家に籠って勉強してるやつだった。あだなはもちろん「がり勉君」。ちっこくて、ひょろひょろして、眼鏡もしていたから余計そう思われていただろう。このころのパターンとしては、俺が無茶な遊びを提案、コージンはやり過ぎを止めるが、強行した俺が痛い目を見る。結局、コージンも一緒に怒られる。
 怒られるのを嫌がって、他のやつらが逃げ、俺も逃げようとする中でも、コージンは逃げようとしなかった。俺の腕をひっつかみ、俺の親父と菱川のおじさんのところへ行って、わざわざ怒られに行った。
 今から考えればそう簡単にできることじゃないわな。俺が変にねじくれないで育ったのはコージンのおかげだと思う。

 ま、このころはただの悪友というか、親友という意識はなかった。幼馴染は他にもいたし。

 中学に入ると、俺に初恋が訪れた。クラスメートの女の子。好きになった理由は笑顔が可愛かったから。
 どうやってかこのことを知ったコージンは、俺の周りで「あの子可愛いよな」と盛り上がっている中、一人、「やめた方がいいんじゃないかなぁ」とそれとなく言ってきた。なんだと! と俺含め憤る連中に対しても、コージンはぶれなかった。

「確かに見た目は可愛いかもしれないけれど、心まで可愛いとは思えないでしょ。あの子。なんだかさぁ、振る舞いに色々透けて見えるから、少なくとも見た目通りの子じゃないと思うよ」

 やつはすでに一人だけ大人だった。俺たちのいたグループの中でも軍師というか、ご意見番みたいな立場だったし、何だかその言葉にみょーな説得力があったのも確かだった。
 俺の初恋は叶わなかった。あの子に彼氏ができたのを知ったからだ。なんだかやけ酒したくなった俺はこの時初めてチューハイに手を出そうとコージンの部屋に持ち込んだ。もちろんめっちゃ怒られたけど。

 そんなこともあったが、俺の初恋にはもう少し後日談があった。初恋のあの子がいじめをしたとして、両親が学校に呼び出されたらしい。そして逆にあの子の方がいじめられるようになった。彼氏がいたという話もあったが、二人いたらしい。つまり、二股をかけたんだ。

 これを知った時、コージンが俺を止めたのが正しかったのだと思った。


 高校は別々のところへ行った。コージンは地元の超進学校。そして俺は柔道のスポーツ推薦で強豪校へ。それでも相変わらずのご近所だったから、たまに遊びに行って、よくつるんだ。とっくの昔に、やつは俺の親友になっていた。ま、相変わらず胡散くせえ笑み浮かべて、何考えてるのかよくわからん感じだったけれども。
 コージンは高校に入って、背が伸びた。俺も高かったが、最後には視線がそこまで変わらないようになった。このころから、コージンは女にもて始めたらしい。頭良くて、人当たりもよく、顔も悪くないからだと。

「僕、追いかけられるより、追いかける方が好きなんだけどなぁ」


 よく愚痴を零してた。何度か告白されて、辟易してしまったらしい。羨ましいやつだ。俺なんか、顔が怖いし、男子校だから、ファンの声は皆野太いぞ。


「だったら、お前、どんな女の子なら好きになれるんだよ」
「そりゃ、僕が全力で守りたいって思える女の子だよ。今までもこれぞという女の子に出会ったことがないけれど。でも、きっと一目見ればわかるはず」
「なんだよ、それ。ロマンチストかよ」

 俺が鼻で笑い飛ばすと、コージンは開き直った。俺の反応は予想済みだったらしい。さすが親友。

「そうだよ。僕の理想は、年下の女の子を思いっきり構って、甘やかすこと。ほら、僕って世話好きだからね」

 いつもお世話されてる俺には何も言えない。特に理想を語って、胡散臭さ二倍になっているこいつには。ロリコンか、とか絶対言わない。

 結局、コージンは誰とも付き合わなかった。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ