G・ガール!(21/28)PDFで表示縦書き表示RDF


G・ガール!
作:りき



G・ガール! 21



「大丈夫? 石崎さん。どっか痛くない?」
「……ええ」
 爽汰は心からほっとした。
「かすり傷が結構あるみたいだから、これからお風呂とか入るとき、ちょっとしみるかもしれないけど」
 理沙子は軽く笑って答えた。
「大丈夫」
 爽汰も笑い返してから前の席へと注意を移し、丸刈りに話しかけた。
「あの、さっきは、ありがとうございます」
 丸刈りは、顔色を変えるでも無く、運転しながらさらりと答えた。
「いえ、別になにも」
「でも、越智さんにあんな事しちゃって、あの、大丈夫なんですか? 俺が言うのは変ですけど、めちゃくちゃにしちゃったし……怒らせちゃったし。しかも、置いて来ちゃったし……コレからのお仕事とか……」
 鼻から大きな息を一つ吐いてから、丸刈りはいつものトーンで言った。
「いいんです。元々自分も、いつか辞めてやろうと思ってたんで、ちょうど良かったです」
「え? 本当ですか?」
 丸刈りは、口を歪ませてわざと意地悪そうな顔で笑った。
「あんな男、自分も大っ嫌いですから」
 それを聞いて、爽汰は驚いたが、いい人だな、としみじみ感じて笑ってみせた。
「あ、すいません。今までお名前も聞いてなくて。俺、青山爽汰です」
 さっきまでの嫌な雰囲気を捨て、一気に楽しい気持ちになれた爽汰は、明るく聞いた。
 高速に乗り、まっすぐの道を軽快に進みながら、仮名、丸刈りは名乗った。
「マルカリです。丸バツの丸に、稲刈りの刈りで、丸刈」
 爽汰は意表を突かれ、一瞬返事に困った。
「……珍しい、お名前ですね」

 帰りの道中も、渋滞に遭う事もなくスムーズに帰って来られたので、二時間程で自宅前に送り届けてもらえた。
「ありがとうございました、丸刈さん。本当に感謝してます」
 爽汰は、理沙子が車から降りるのを手伝いながら言った。
「いえ。彼女と仲良くね」
 お互いを笑って挨拶しながら、爽汰は車の後ろのドアを閉めた。
 エンジンをかける音して、黒いワンボックスはまっすぐ先に消えていった。
 ふう、と息を吐いて爽汰は理沙子に向き直る。
「気をつけて」
 ゆっくりと、倒れないように気をつけながら、爽汰は理沙子を家に連れ入れた。
 玄関の鍵を開け、ドアを開けようとした時に、理沙子は言った。
「すまねえな、爽汰」
「……え?」
 爽汰は目が点になった。
「ええええ!」

「そんなにがっかりすんでねーよ」
 爽汰は家のソファーで、うつ伏せになってふて寝していた。
「しょうがねっぺ? 言うタイミングさ、無かったんだから」
 爽汰は顔だけ横に向けて反論する。
「だってさあ、帰りの車に乗るときにも、女の子みたいな喋り方したじゃない。あれは何よ」
「あれは、あの丸刈り君に聞かれてると思ったからよ、わざとだ。どうだ、爽汰も騙されたか」
「俺まで騙してどうすんだよ!」
 思わずソファーから乗り出してしまった爽汰は、肩を落としてまま座り直す。
「とにかく。石崎さんがまた一瞬だけ出て来たんだ。やっぱり、衝撃を体に受けたのがきっかけだった」
 ふん、と徳二郎はその時の事を思い返す。
「んで、お嬢ちゃんはなんて言ってたんだ?」
「うんとね……うぐっ!」
 思わず言われたままを口にしてしまうそうになり、寸でで詰まる。
 泣かないでと言われたと話せば、泣いていた事もバレてしまう。
 それは、困る。と言うより、嫌だ。
「うぐ、ってなんだべ?」
「え、ええ? ああ、えっと、大したことは……」
 慌てて違う事を言おうとしたが、思いつかずにはぐらかしてしまった。
「大したことなくはねえっぺ。きっと何か……」
「あああ、そうだあ!」
 いきなり大声を出すので、徳二郎も驚いて話を止めてしまった。
「そう言えば、これ、これ何よ」
 爽汰はズボンのポケットから、林の中で見つけたあのメモを取り出した。
「これ、さっきじいちゃんが倒れてたとき、胸ポケットから落ちて来たんだ。これって、俺が昨日渡した奴でしょ?」
 徳二郎は、そのメモを覗き込んで何度か頷く。
「んだんだ。爽汰に言われた通りに、風呂場さこれ持ってってよ。前の日と同じように、記憶がなくなったと思ったら、目の前にこれがあってよ」
「書いてあったのは、これだけ? なんかさ、これ文の途中みたいじゃない」
 徳二郎は横に首を振った。
「なかった。切り取られたその紙だけだ。余白の部分は、側のゴミ箱に入ってはいたんだけんども、なーんも書いてなかったで」
「うーん。『私は大丈夫』ってのはわかるんだけど、『仲良くし』って方がね。どういう意味だろうって」
「さあなあ……」
「だよねえ……」
 うーん、と二人はそれぞれに考えてみる。
 元にもどる為のヒントを。
 二人とも必死に考える。
 故に、自然と沈黙が流れる。
 ………………。
 ………………。
 ………………ぐうう。
「寝るな、じいちゃん!」
 徳二郎は、ちょっとお疲れだった。
「むにゃ、ちょっとだけ……」
「……まったくもう」
 そう言いながら爽汰は笑ってしまっていた。
 今日は朝から結構動いたし、怪我もして、大変な一日だった。
 まだ夕日も沈んでいない時間だが、少しくらい休ませてあげよう。
 何も言う前に、もう寝息をたてている徳二郎を見ていると、なんとなく爽汰もあくびがでてくる。
「俺もちょっと寝よっと」
 爽汰と徳二郎は、束の間の休息をとることにした。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう