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「おーい、どうしてだーい?」を改題。
#38 少年的疑問形
 どうやらシャンデリアとスクランブルエッグは違うらしかった。同じごちゃごちゃ加減なのに違うらしかった。なぜかと母に訊くと苦笑を返されるだけで明確な応えはかえってこなかった。

 どうやらスクランブルエッグと詩集は違うらしかった。同じなくても困らないもののはずなのに違うらしかった。なぜかと父に訊くと詩集は高尚だからとだけ説明された。続けてどこが高尚なのかと訊くと母のそれと同じ表情ではぐらかされた。

 どうやら詩集と刺繍は違うらしかった。同じ発音なのに違うらしかった。なぜかと兄に訊くと見たら判るだろと怒鳴られた。見た目以外の違いを訊いたのになんだいなんだいと怒鳴り返したら殴られた。

 どうやら刺繍と画集は違うらしかった。同じ手の込んだものなのに違うらしかった。なぜかと姉に訊くとなぞなぞなんて今どき流行ってないよと笑われた。なぞなぞってなんなのと訊くとまーたそういうつまらないなぞなぞを出すーと逃げられた。なぞなぞが何かは判らないけどなぞはふたつどころじゃないそれ以上もっともっと。

 どうやら画集と僕の描いたパラパラ漫画は違うらしかった。同じ画なのに違うらしかった。なぜかと爺ちゃんに訊くとワシはお前の画のほうが好きやと褒められた。そんなこと訊いちゃいないんだよジジイと思ったけど悪い気はしないから笑っておいた。そしたらお小遣いをもらえた。

 どうやら僕の描いたパラパラ漫画と朝のニュースは違うらしかった。同じどうでもいい情報なのに違うらしかった。なぜかと婆ちゃんに訊くとアタシャお前さんの漫画おもしろいと思うえなーと褒められた。そんなこと訊いちゃいないんだよババアと思ったけど悪い気はしないから笑っておいた。そしたら頬を叩かれた。なんでねなんでねどうしてねと頭上にはてなマークを生産してると婆ちゃんは男がそんなだらしなくてどうすんのねとヒステリックに叫んだ。婆ちゃんの顔は夜の村より怖かった。

 どうやら朝のニュースと変態は違うらしかった。同じ変なものなのに違うらしかった。なぜかとお隣のヨシくんのお母さんに訊くと今から便所掃除するからあとでねと逃げられた。あとでっていつって訊こうとしたけどきっとあとではあとでなんだなって判ったからあとでまた来よう。

 どうやら変態と兵隊は違うらしかった。同じ異常な人なのに違うらしかった。なぜかと山にいる仙人とよばれてるおじさんに訊くとそんなことより食いものはないかと訊き返された。首を横にふるとそうかそうかと残念そうな顔をしてすこし可哀想だった。

 どうやら兵隊とスーパーマーケットの前は違うらしかった。同じ列なのに違うらしかった。なぜかとスーパーマーケットの前で並んでる知らないおばさんに訊くといいところに来たセールの醤油おひとりさま一本やからあんたいっしょに並んでとお願いされた。断れなくていっしょに並んであげてセールの濃い口醤油を一本買った。スーパーマーケットを出るとおばさんはありがとうなーと手を振って早々に彼方に消えてった。

 どうやらスーパーマーケットの前と戦争は違うらしかった。同じ大騒ぎなのに違うらしかった。なぜかと客引きのお兄さんに訊くと戦争なんか映画でしかみたことないから分からんなーと返されて逆にキミは戦争について知ってることってあるかーと訊かれた。ないですねと即答するとじゃあ判らんのは当然やろーとけらけら笑われた。

 どうやら戦争と校庭は違うらしかった。同じ人がいなくなってしまう出来事と場所なのに違うらしかった。なぜかと誰かに訊こうとして周りを見たけど夕日とだれもいない校舎しかそこにはなかった。おーいおーいおーいと叫んでも返事をくれるのはカラスだけだった。カラスに訊くぐらいなら訊かないほうがマシだからやっぱいいわーと叫んだ。カラスは了承してくれたのかカァークァーカァー。

 どうやら校庭とぼくの帰り道は違うらしかった。同じ家までの通り道なのに違うらしかった。なぜかと誰かに訊こうとして周りを見たけど夕日と空き缶しかにそこにはなかった。空き缶を蹴ってみた。カコンカラコンコンカーン。なにを言っているのかさっぱり判らないからもう一度蹴ってみた。カコンカラコンぼちゃーん。ドブに落ちてった。あーあ。

 どうやらぼくの帰り道とヨシくんの帰り道は違うらしかった。同じお隣さん同士なのに違うらしかった。ヨシくんヨシくん今帰りかいじゃあ一緒に帰ろうよ。いやだよとヨシは言った。なぜかと訊くとヨシくんはお前なんかといっしょに帰りたくなんかないって強く言っておもむろに石を掴んだ。なぜ石を持つんだいぼくが何かヨシくんにしたいかいヤメテよヤメテ石を投げないでくれよー痛いよ痛いよヨシくんやめてよー。ヨシくんは笑っていた。ヨシくんは楽しそうだった。ヨシくんが楽しいならいいかなとちょっと思ったけどやっぱり痛いのはいやだからヨシくんに体当たりをした。砂利道に倒れておおきな声で泣くヨシくんはこないだ生まれた弟のようだった。よしよし良い子だって頭を撫でてあげると洒落と勘違いしちゃったのかうるせえお前なんかなあお前なんかなあトモダチじゃないんだからなと言ってぼくの頭をボカッ。ぼくもヨシくんの頭をボカッ。ボカッボカッボカカカボカッ。そしたらヨシくんは動かなくなった。

 どうやらヨシくんの帰り道とぼくの帰り道は同じらしかった。ヨシくんは黙ってぼくの手にひかれて歩いてくるのだから同じらしかった。ヨシくんは黙ったままだぼくが何をいっても訊いても黙ったままだ。つまらないこれならひとりで帰るのと同じだ。スーパーマーケットの前にはだれもいなかったみんなもう家に帰ったみたいだ。ずうっと道をまっすぐ行けばぼくの家だ。ぼくの家の横にはヨシくんの家がある。ヨシくんヨシくんもうすぐお家だよぼくたちは帰ってきたんだ。ヨシくんは黙ったままだ。しょうがないなあどうせだから送ってあげるよヨシくんのお母さんに訊きたいことがあるんだ。ヨシくんの家のピンポンを鳴らすとヨシくんのお母さん登場。髪がくしゃくしゃだ。ぼくがひきずってきたヨシくんを指さすとヨシくんのお母さんはくしゃくしゃの髪をもっとくしゃくしゃにしてぼくの肩を何度も揺らしてきた。なにがあったのなにがあったのなにがあったの。ぼくが訊いたときは何も言ってくれなかったのにぼくに質問するのはちょっとおかしいと思う。なんだいなんだいぼくが訊きたいんだぞ。でもあれれぼくは何を訊きたかったんだっけ。ヨシくんのお母さんぼくは何を訊きたかったんだっけ。教えてください。そしたらぼくもなにがあったのか教えます。


―終―
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