エピローグ
〜10年後〜
1組の夫婦が仲睦まじく公園の芝生の上を歩いている。
その少し先を、覚束ない足取りで走っている小さな子供がいる。
「パァパ、はぁやくー、はぁやくー」
最近覚えたような言葉使いで父親を呼ぶ。
「そんなに走ったら危ないぞ、葵」
川井裕二は大人になり、結婚をして一子の父親となっていた。
娘の名は「葵」。
好きだった葵が死んでから、毎年命日には1本のたんぽぽを供えている。
いろいろ考えたが、たんぽぽが葵に合っていると思った。
心がつらくなって葵の笑顔が見たくなった時、たんぽぽが俺の心を癒してくれた。
結婚するときも墓前に報告し、子供に「葵」と名付ける時も、墓前に報告した。
妻にもこの葵のことは、包み隠さず全て話して理解してもらっている。
葵の両親とは、あまり連絡を取っていないが、よく夫婦で旅行に行っているみたいだ。
あんなに人を愛したのは葵が初めてだった。
あの頃はあまりにも二人が幼すぎて、とても愛とは呼べなかったが、
今なら胸を張ってハッキリと言える、「愛していた」と。
これからは娘の葵が、死んだ葵の分まで生きてくれることを願う。
娘と、そして天国に居る葵に向けて俺は呼びかける。
「葵!」
娘の葵は、嬉しそうに走り寄ってきて俺に甘える。
そして…
俺の頭を撫ぜるように一陣の風が、髪の毛を揺らしていった。
Fin
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