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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第376話 はじめてのおおきなおふろ

 案の定クンクンブルドーザーがあっち行ったりこっち行ったりで忙しい。もう、目が輝いている。目に映る物全てが初めての物ばかりだ。

 たーっと走って行ってはクンクン、たーっと走って行ってはクンクン、引っ張って引き倒そうとしないので、そこだけはありがたい。後、タロが主導でヒメが付いて行く形なので絡まりもしない。

 壁を見つけては体を擦り付けようとするので、本館内は引っ張って、防ぐ。大丈夫だと思うけど、染みとかになると、怒られそうだ。


『まま、だめ?』


『ここは、だめ』


『ざんねんなの』


 タロが若干意気消沈し、ヒメもそれに続くが、流石に新築で客商売用の場所なので甘い所ばかりは見せる事は出来ない。


『匂いを嗅ぐのは良いよ』


 そう『馴致』で伝えると、ぱぁっと雰囲気が明るくなる。スンスンクンクンとあらゆる場所を嗅いでは、体を擦り付けたい欲求と戦いながらじりじり前に進む。


 周囲では、オープニングスタッフが忙しそうに走り回っている。テディの件は伝わっているので、まずは接客マニュアルの現場への擦り込みとなるが、やはり概念から違う話なので、主導する人間がいないと混乱する。

 早めにテディが来ないと右往左往しちゃうなとは考える。ただ、ここで私が出ると収拾がつかないのでぐっと我慢する。

 話は伝わっているのか、スタッフからの目礼に見送られながら、館内を通り抜け、中庭に出る。

 中庭に出た所で、タロとヒメに擦り付けの許可を出す。大喜びで、植樹した木々に向かって駆けだす。程々にリードをコントロールしながら、歩いていく。

 新しい木々に出会うと嬉々として嗅ぎながら、体を擦り付ける。タロもヒメも両者の匂いが混合した状況が出来上がると嬉しいのか、擦り付け終わった場所を嗅ぐ度に達成感に浸っている。


 流石にレイを含む皆がマッサージ後の休憩をしていると言っても時間は有限だ。程々で切り上げてペット風呂に向かう。

 二匹からは抗議にも似た嗅ぎまわりたい旨の思考が伝わってくるが、お風呂と伝えると、途端に大人しくなる。あぁ、お風呂犬な感じ。動画サイトでもシャワーの音を聞くだけで喜んでいる犬とかいたなと思い出す。


 ペット風呂に辿り着くと、ほのかに湯気が窓から上がっている。扉を開くと誰もいない。そのまま靴を脱ぎ、二匹の足を拭って中に入る。簡易な脱衣所を抜けて、浴槽の方に向かう。

 お湯の温度はかなり温めにしている。連れてくるペットの種類にもよるが、基本的にイヌ科の動物が多くなる筈だ。なので三十五度以下を目安に湯の温度を調整している。手を入れて温いと感じる程度の温度だ。なので、タロもヒメもぬくいのと表現している。


『さて、二匹共、一緒に入る? 別々に入る?』


『いっしょ(なの)』


 二匹の思考が重なって伝わる。仲の良い事で。

 首輪を外し、脱衣所にリードと一緒に置く。浴槽の深さは緩やかに奥に行く程深くなり、最終的には一般的な中型犬が脚を付けて首を伸ばせば呼吸が出来る程度だ。

 浸けるだけなら服を着ていても大丈夫かと思ったが、これ、奥の方に行かれると一緒に入らないと世話が出来ない。しょうがないかと二回目のお風呂タイムの用意をする。

 もしかすると脱衣所をもう少し大きく作っておくべきだったかと若干後悔する。ただ、まぁ、増設は可能なので、その辺りは追々状況に合わせて調整しよう。


 裸になり、両腕で二匹を抱える。肩に顎を乗せてお尻からお風呂に浸かる感じだ。一緒に浴槽に浸かり、腰を落としながら、ゆっくりと浴槽に二匹を浸けていく。


『はやく(なの)』


 両方からユニゾンで思考が送られて来る。物凄く期待が高まっている。タロは一回浸かった筈なのに。あぁ、浸かったからも有るのかな?そう思いながら、ちゃぽんと浸けて、そっと二匹を下す。

 すぐにぷかーっとするのかと思っていたが、広いお風呂が珍しいのか、脚が付く場所をてくてくちゃぱちゃぱと歩き回る。


『へんなにおい、でも、ぬくい』


 ヒメから、思考が流れてくる。やっぱり変な匂いなのか。二匹共その辺りは一緒なんだなとくすっと思う。

 暫くクンクンと匂いを嗅いでいると思ったら、タロがぷかっと浮き始める。それを見て、ヒメもぷかっと浮く。ちょっとの間そうして浮かんでいたが、本能的なものなのか、ぱしゃぱしゃと犬かきで移動を始める。

 おっと思ったら、ヒメも同じように泳ぎ始める。あぁ、犬かきってやっぱり訓練じゃ無くて本能なのか。


『まま、ぬくいの、ひろいの!!』


 タロが嬉々として、泳ぎながら、思考を送ってくる。いつもタライ風呂だから、広いのが楽しいようだ。ヒメも楽しそうに形にならない嬉々とした思考を送ってくる。

 まだ、曲がったりは上手く出来ないので、そのままぱちゃぱちゃと奥の深い方に向かっていく。適当な場所で方向転換させながら、遊ばせる。


『まま、まま!!』


『ぱぱ、ぱぱ』


 徐々に泳ぎ方のコツが分かったのか、上手く方向転換しながら、私の周囲を器用にぐるぐる泳ぐ。

 楽しそうなので、若干放っておいたが、泳ぐのも体力を使う筈だ。案の定、徐々に泳ぐ速度が落ちてくる。慣れていないのも有るけど、疲労だろう。


『気を付けて、脚を付けて』


 浅い所なので、立ち上がるように『馴致』で伝える。

 二匹共、一回ぷかっと浮かび、そのまま足を付ける。はっはっと口を開き、舌を出している。嬉しいと言う感情は流れてくるが、これは体温上昇の部分も有るだろう。ちょっと様子を見すぎた。

 さっと二匹を掬い上げて、浴槽から出す。そのまま水魔術で作ったぬるま湯で全身を洗い流す。深皿を土魔術で作り常温より少し冷えたくらいの水を生む。


『さぁ、飲んで』


 差し出すと凄い勢いで、飲み始める。体が温まっているので、冷えた物が欲しいのか、猛スピードで水が無くなっていく。減ったら補充と言う感じで満足するまで飲ませる。


『まま、たのしいの!!ここ、すきなの!!』


『ぱぱ、ここ、すき』


 二匹が水を飲んで、体温上昇が落ち着くと、興奮した感じで擦り寄ってくる。余程楽しかったのか、もう、しっぽが千切れんばかりに振られている。


『また、来ようね』


 頭を撫でながらそう伝えると、二匹の喜びが一層強くなる。また来る機会が有ると言う事実が興奮を更にヒートアップさせる。もう、体中をべろべろと舐めまわしてこられるので、なんとか大人しくさせる。


 浴槽の横のかけ湯で全身を清めて拭い、脱衣所から布を持って来て二匹を拭って乾燥させる。はっはっと舌を出しているが、これは興奮や楽しさだろう。首元や耳の中を触れても体温は平熱だ。ん、大丈夫。一安心。


 初めての大きなお風呂は大成功と言う事で、再度首輪を嵌めようとするが、余程気に入ったのか壁に延々と体を擦り付けては二匹で喜びあっている。まぁ、時間も思った程経っていないので良いかと思いながら、首輪を片手に嬉しそうな二匹を眺める事にする。

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