今回は恐怖の舞台「大峰村」(仮名)へ向かう電車の中です。
せっかくのゴールデン・ウィークだというのに、完璧にゴシック・ホラーの世界へ Let's Go のみらの先生(;_:)
美少女たちに囲まれて少しエッチな展開に…まだ先のお話ですけれども<(_ _)>
第5話 シズカ・アラカワ
4月29日(みどりの日) 東京〜蛇滝村
2019年のゴールデン・ウィーク――私たちは電車に揺られていた。
そう、お店を臨時休業にして、私たちは例の別荘の所在地であるN県の山村へと向かっていた。
それは、とある山中の小村――
場所が特定されると後で問題になりかねないので、とりあえず「大峯村」とでもしておこう。
標高800メートル、山塊に抱かれた隠れ里のような村だ。
ここで、私たちを招待してくれた人物を紹介しておこう。
彼女の名前はガブリエッラ・バルディ。
都内の私立高校に通う16歳の女の子だ。
彼女もまた私の教え子――しかし、まだ高校生ということで、彼女の立場は聴講生。
高校生であっても、成績証明書を提出して学部の審査を受ければ、大学の講義を聴講することが許される。
素行も成績も動機も申し分なかったので、即採用――美人だったし。
前にも書いたように、この子のお宅は、日本とどこかのハーフ家庭。
幸いにして日本語が通じるらしいから、コミュニケーションには不自由しないとのことだ。
そうでなければ、せっかくの楽しいゴールデン・ウィークが針のムシロと化すことは絶対確実。
そんな時のためにと思ってあの子――アシュケナージちゃんも連れてきたのだが(彼女は英語と日本語がペラペラ)、どういったわけか、あいつ―――茶谷くんまでバルディ家のご厄介になることになってしまったのは、私にとっても、いわゆる「想定外」(by 捕まったホリ●モン)。
というのは、これまたずいぶんと奇特なことに、先方がまた茶谷くんの小説の大ファンとかで、彼までまとめてご招待されてしまったのだ。
まあ、確かに彼のデビュー作は素晴らしく泣けたけど……
そんなわけで、私たちは《ラピュタ》をお休みにして、みんなで招待を受けることになった。
さて、マヌケな話だが、私はバルディ家のことをずっとアメリカ出身の家系だと思い込んでいた。英語嫌いの私は、それだけで少し尻込みしていたのだが、話を聞くと、バルディ家はイタリアの出身、本家はフィレンツェにあるんだそうだ。
「へえー」
それを聞いた私は、意味もなく感心した。
フィレンツェ……なんか凄そう。
「でも、どうしてガブリエッラさんのご家族は日本なんかに? もしかして、あなたも日本で生まれたのかしら?」
「いえ、先生。私は2003年にフィレンツェで生まれました」
ガブリエッラは完璧な日本語でそう答えた。
「3歳の時に一家で日本に移り住んだんです。ちょうどその頃、イタリアのトリノで冬のオリンピックがあって」
ああ、たしかそんなことがあったかしら……私は記憶を辿ってみた。
トリノ・オリンピックは2006年の2月。
私は高校受験の真っ最中で、ほとんど見ることができなかったけれど……。
ああ、思い出しただけでも憂鬱ね、高校受験。
「トリノ・オリンピックの女子フィギュアスケート、先生はご覧になりましたか?」
「さあ、どうだったかしら……」私は口ごもった。
そういえば何かビッグなニュースがあったような、なかったような……
「そこで日本の荒川静香が金を取ったんです、ご存知かとは思うんですが……」
「ああ、そうかもしれないわね」私は曖昧に答えた。
「それを見た父がもう大喜びしてしまって」
ガブリエッラはおかしそうに言った。
「もともと日本に強い憧れを抱いていた父は、矢も盾もたまらずに言い出したんです。ガブリエッラ、おまえもシズカ・アラカワの国を見てみたいだろう? おまえのママの国――日本を」
ああ、そうか――私は納得した。
ガブリエッラのお母さんは日本人女性――名前はサユリさんといった。
「パパは言ったらしいんです。日本には美しいものが何でもある。ホクサイ、シャラク、ヒロシゲ、ウタマロ、カキエモン、ゲイシャ、フジヤマ――そしてシズカ・アラカワ」
プッ……ちょ、ちょっと、それはいくらなんでもハマりすぎじゃないだろうか?
どうもカキエモンのあたりからよくわからないわね。ホリエモンみたいなものかしら?
「うちのパパ、神野先生にもぞっこんなんですよ?」
「えっ」私は思わず赤面した。
「神野みらのの作品はすばらしい、って。神野みらのはファンタジスタだって、それはもう、手放しで褒めちぎるんですよ」
「そ、そうかしら? だとしたら嬉しいけど……」
ど、どうしよう? 実物の私を見て、失望させちゃったら気まずいわよね……
それって、ちょっとプレッシャーかも。
私は柄にもなくドギマギして、向かいの席の茶谷くんに視線を送った。
茶谷くんは……彼は一人で柳田理科雄の本に夢中になっていた。
(みなさんはご存知でしょうか、柳田理科雄……知ってる方、理系マニアですね?)
その隣りにはアシュケナージちゃん……この子もまた音楽に夢中。
どれだけマイペースなら気がすむんだ、こいつら……。
ハッキリ言ってこの2人、ルーズで自己中心的なところは、まるで兄妹のようだ。
まったく、この2人がグズグズしていたせいで、私たちは電車に乗り遅れ、こんなくんだりでウロウロする羽目に陥った。
ああ、気が重い……ちゃんと今日中に目的地に辿り着けるのかしら?
引率者としては責任重大よね……。
それはそれとして――私はガブリエッラとアシュケナージを交互に見やった。
この子たち、どれだけナイスバディなら気がすむんだろう?
おまけにピチピチのスケスケで……
ああ、ゆーうつ、私は憂鬱だわ……
ブルーな気分を紛らわそうとして、私は窓の外に目をやった。
外はすでに真っ暗、識別できるものは何もなかった。
そこに浮かんでいたのは私の顔。
どんよりと曇った私の顔が、まるで鏡映しにしたように、窓枠の中にぼんやりと映し出されていた。
『高市―――高市―――……高市でございます』
どこかくぐもったような車掌の声。鼻をつまんで発声すれば、あんな感じになるのではないだろうか。
ああ、ここだ。たしか、この駅で降りるんだ。
私は、茶谷くんとアシュケナージちゃんとを揺さぶると、立って荷物を取るように促した。
2人は不機嫌そうに振り向くと、渋々ながら立ち上がった。
私はムカっ腹が立つのを抑えながら、つとめて穏やかに二人を誘導した。
チッ、このまま放置して終点の山の中まで勝手に乗ってりゃよかったのに……
本音ではそう思いながら。
私たちは駅のホームに降り立った。時刻はすでに夜の8時を回っていた。
私はホームを見回した。だが、私たちのほかには誰も乗降客はいなかった。
ガタンガタン……
再び動き出した車輪の音が、不思議な韻律を奏で始める。
一瞬、私は何かうそ寒いような感覚にとらわれた。
そう、私たちは降り立ったのだ。
奇妙な運命の待ち受ける大峯村への入口に―――
第5話 終
荒川さんのイナバウアー、なつかしいですよね(*^_^*)
あと、私、サラ・マイアーみたいな、伸びやかできれいなスケーターが好きなんです。今はパッとしなくなっちゃったけど……。
さて、エステルと茶谷くんのせいですっかり日が暮れてしまった一行、次回はバスで行けるところまで行こうという話になってしまいます(-_-;)
実はこれ、実話なんですよね…途中まで。みなさんも旅行の時は気をつけてくださいね?
じゃないと、私やみらの先生みたいに山の中でとんでもないことに…(ーー;)
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クリヤマアイコさん ある意味、一部JCの間で囁かれた都市伝説です……
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