バティスタ氏と夜の約束をしてしまった、みらの先生。
とりあえず自室に戻って休もうとするのですが、廊下でとんでもない光景を目の当たりに……。
いつも「エステル」をご覧いただいているみなさん、本当にありがとうございますm(__)m
未来ある若い読者の方に、どんなメッセージを伝えようかしらと、いつも考えながら書いています(*^_^*)
あまりむずかしいことを書いてもつまらないですよね? がんばって!!
第20話 真犯人
「マリーアさん、困ります」
詰問するような火屋野さんの声。
バティスタ氏の部屋を出た私は、廊下の外で口論する火屋野さんとマリーアさんの声に気づき、慌てて柱の影に身をひそめた。
「ごめんなさい、火屋野さん。私……私……!」
マリーアはその場に泣き崩れた。
「マリーアさん、どうしてこんなことを……」
火屋野さんは苛立ちを隠さずに言った。
真昼間っから痴話ゲンカだなんて、マリーアさんも顔に似合わずよくやる。
それとも、このまま昼下がりの情事に突入かしら……も、萌える。
「一昨日のことですが、どうもおかしいと思い、通信事業者のほうに確認してみたのですが」
火屋野さんは言った。
「通話記録を確認したところ、家中の電話が全てあなたの携帯に転送されるよう設定が変えられていました」
ええっ……! 私は思わず叫び声をあげそうになった。
お邸中の電話がマリーアさんのところに転送されるとしたら……何度こちらからかけたって、誰も出られるはずがない! マリーアさん本人を除いては……
「ガブリエッラお嬢さまの携帯への着信もあなたのところへ転送されていたのですね? 暗証番号さえわかっていれば、電話一本で転送の設定を自由に変えることができるのだから」
ふーん、そうだったんだ。
他人のケータイの転送サービスでも、外部から設定を変更することは可能なんだ。
「私が仕事で使う携帯はバティスタ氏からいただいたものです。しかし、この機種を選んで下さったのはあなたです。この家の携帯は、どれもあなたとガブリエッラお嬢さまの好みで契約されたものばかり。マリーアさん、あなたは私の携帯の暗証番号もご存知のはずです」
そうだったのか……全てはマリーアさんのしわざだったのだ。
自宅や家族の電話―――マリーアさんはそれらの暗証番号を全て知っていたのだ。
そして火屋野さんのケータイのそれまでも……。
たぶん、ストーリーはこんな感じだ。
携帯電話への加入に際して、家族みんなで携帯ショップを訪れたマリーアは、そこでサービスや機種について、バティスタ氏やガブリエッラたちと一緒に相談しながら決めた。
わいわいと楽しく華やぎながら……。
当然、そこで申込書に書く暗証番号なども話し合われたのだろう。
家族同然の火屋野さんのケータイも、バルディ家の二人の姉妹が選んであげたものだったのだ。
だが―――マリーアはそれを悪用した。
「ガブリエッラお嬢さまには、迷信にかこつけて適当に話しておきました。マリーアさんの仕業だと知ったら、どんなに驚かれることか……」
火屋野さんは悲しげに首を振った。
「ガブリエッラには来てほしくなかったの!」
マリーアは泣きながら火屋野さんに打ち明けた。
「だって火屋野さん、ガブリエッラのことばかりやさしくして……私、この別荘にいる時くらい、火屋野さんと二人で心静かにすごしたかったの。それなのにガブリエッラが勝手にお客さんまで連れてきて……」
うわっ、もしかして私、邪魔者だったのかしら?
ああ、やなこと聞いちゃった……。
「邪推はよしてください、マリーアさん」
火屋野さんは呆れたように言った。
「私はガブリエッラお嬢さまのことばかり依怙贔屓しているわけではありません。あの女は単に甘えているだけです。あなたはもう大人でしょう? こんなことをするなんて、あなたらしくありませんよ」
「うそよ」
マリーアは抗うように言った。
「火屋野さんはガブリエッラのことが好きなのよ。パパだって同じよ。私のことなんかより、ママにそっくりなあの子のことばっかりかわいがって……」
そう、スラリとした体型や見事に発育したナイスバディは日本人離れしているとしか言いようがないが、顔だけでいえば―――ガブリエッラはお母さん似の純和風美人なのだ。
反対に、マリーアは一目見てハーフとわかるエキゾチックな顔立ち。
私はマリーアのほうが美人だと思うけど……
「火屋野さん……本当はママのこと、好きだったのよね?」
マリーアはボソッと呟いた。
「火屋野さんはママとはいとこ同士じゃない! それなのに……」
「およしなさい」火屋野さんはマリーアを制止した。
「今の言葉は取り消してください。それはあなたのお母さんを侮辱する言葉です」
火屋野さんの厳しい言葉に、マリーアはガックリとうなだれた。
そう……しょせん長女なんてそんなもの。
しっかり者のように見えて、実は大人になりきれない子供じみた性格――それが長女。
一見するとわがままなように見えても、本当は次女のほうがよっぽど精神的に自立しているんだから。
だが次の瞬間、マリーアは思わぬ行動に打って出た。
彼女はゆっくりと立ち上がると、一瞬の隙をとらえ、大胆にも火屋野さんの唇を奪ったのだ!
キャーッ
私は心の中で絶叫していた。
ついに……ついに見てしまった、男と女のキスシーン……
28年生きてて初めて見たわ、生キッス!
なんか……テレビで見るのと違って、わりと淡白というか……アッサリしたものなのね。
しめて1.5秒くらいだったかしら、マリーアさんたち。私だったらもっと……
ハッ―――私はとんでもないことに気がついた。
超絶美少女マリーアのキスシーンは確かに萌えるが、それよりも―――茶谷くんとガブリエッラの二人は、どうなってしまったのだ?
昨晩は二人でビリヤードをしていたとか何とか……もしかしてその後、二人は……
まさかやっちゃったとか?
キャーッ、そんなの、そんなの絶対認めない!
だって、そんなのはいやっ! キモい! ウザい! ヤバイ! グロい!
そんなことなんて起こりえない……いや、起こってほしくない……!
自分のことは棚に上げたまま、茶谷くんのことを責め続ける私――――もっとも、証拠不十分で釈放せざるをえないような嫌疑にすぎないのだけれど……
ああ、なんだか疲れてきた。恋ってこんなにも気疲れするものなんだ……
トボトボと自室に引き返そうとしたその時だった。
ブーッ、ブーッ、ブーッ―――
おかまいなしに震えまくる私のケータイのバイブ―――
いけない、早いところ隠れないと覗きがバレる―――私は急いでその場から立ち去った。
で、電話の相手はそう、あの悪魔学者―――飢野教授だった。
そうか、昨日の夜に電話をかけたんだったっけ……
私は通話ボタンを押して電話を受けた。
「もしもし、私ですけど―――」
第20話 終
マリーアさんの意外な性格に、みらの先生もびっくり……。
今宵、果たしてちゃんと初夜を迎えることができるんでしょうか?
心配です……。
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