第8話:悪
……悪魔……
魔女にとっても、人間にとっても嫌われる生き物……
ガーノに出会った次の日に、私はエリーヌとアンネに告げた。
「ガーノを私の召し使いにします。」
二人とも驚きはしなかった。最初からそうなることを知っているみたいだった。
「昨日、あなたが嬉しそうな顔をしてたのはガーノと会ったせいかしら?」
アンネが微笑みながら言う。え?? 私、そんなに顔に出ちゃうのかな??
「私は、賛成よ。ガーノは魔術の能力はないけれど、たくさんの知識を持っているし。」
アンネはそう言う。すると、エリーヌも続けて言う。
「まぁ好きにしな。正直、心配な所もあるけど二人で頑張ればなんとかなるはずだね」
これでいいのだろうか、二人は賛成してくれるみたいだ。
早く、ガーノに知らせたい。
その思いが止まらなくなって家を飛び出そうとしたとき、
「カ、カーリー…」
と、エリーヌに呼び止められた。
「?? 何ですか???」
「いや、別に…どこへ行くんだ?」
「あ、ガーノに会いに行きたいんですが。」
「そうか、じゃあ帰ってきたら大事な話があるから早めに帰ってきなさい。」
「??はい…」
そんな会話をした。なんだかいつものエリーヌではなかったような気がする。なんで大事な話を今言わないんだろう?そう思ったが、ガーノのことを思い出して急いで家を飛び出す。
さっきまで思っていた疑問はすぐ消えてしまった。
走る、走る、走る。走りながら、ガーノが驚く姿を思い浮かべる。きっと喜ぶだろうなぁ。そんな事を想像していたら誰かとぶつかり、転んだ。相手も転んだらしく、立ち上がるまで誰だか分かんなかった。
その姿は、茶色いローブを着ていて、片手にはホウキを持っている。その人の顔は可愛くて、昨日から見慣れている顔だ。 そう、ガーノだった。
ガーノも自分が私の召し使いになれるか心配で走ってきたらしい。結果を聞いた彼女は私の想像通り、いや想像以上に喜んでいた。
「やったぁ〜〜、やったぁ、やった、やった、やった、やった、やった、やった、やったぁ!!!!」
と。この子何回「やった」を言えば済むんだろう。昨日はぜんぜん不安そうじゃなかったのに。むしろ自信満々だったし。
「…これで私もアイツらと戦える。」
そうガーノが言った。私は、ある言葉に疑問を感じ、聞いてみた。
「アイツらって、誰?」
「え?あぁ、私達の敵だよ。」
「??敵って誰?」
「えぇ?!知らないの??」
「????うん???」
ガーノが何を言っているのかまったくと言っていいほど分からない。
「エリーヌ様、教えなかったのかな??じゃあ、私が教える!!」
ガーノはそう言ってある質問を私にした。
「私達が、もっとも憎んでいる生き物ってな〜に??」
私は迷わず答えた。
「人間。」
だけど、その答えは違ったらしい。
「う〜ん、確かに人間もそうだけどその人間も嫌っていて実際にいるかもよく分かんない生き物だよ。」
「そんな生き物なんているの?」
私の問いにきっぱりとガーノは答える。
「いるよ。」
「正解は……悪魔…」
悪魔?なぜ悪魔なの?
私は、魔女になる前のことを思い出す。家族以外は私のことを人間扱いしないでみんな自分を恐れていたことを。私を化け物と言っていた女の子のことを。 人間のほうがよっぽど憎い。
「悪魔なんて、最悪の生き物よ。」
ガーノが暗い顔で話し始める。
「もともとこの世界には、魔女なんていなかったんだよ。召し使いだっていなかったよ。みんな普通の人間で差別のない平和な国だったんだよ。 でも、悪魔がこの世界にきたせいで平和が壊れちゃったんだ。悪魔がきて、たくさんの人間達が殺されて、やがて戦いが始まったの。戦いのために男達は戦場へ行き、死んでいく…女達は悲しみそして男達の後を追うように死ぬ。 けど、そんな中でも頑張って戦っていこうとした女達がいたの。それが魔女なんだ。夫の仇を、父の仇を、兄弟の仇を、恋人の仇を…とるために禁断の魔術をつかったりして悪魔と戦い、ついには勝ったんだ。そしてまた平和が来た」
ガーノはそこまで言い、ゼェ、ゼェと息を整えた。あれだけ長い言葉を言ったんだから息が乱れるのも無理はない。
確かに、悪魔はひどい。でも、戦いに勝ったんだからいいのではないのかな??と感じた。
ガーノはまだ言い続ける。
「人間達は、魔女に感謝し、そして祝った。また平和が来た!って。でも、その平和を妬んでいた奴らがいた。それは、戦いに生き残れた悪魔。その悪魔達は最後の力を振り絞って人間にある感情をやった。それは [恐怖] その[恐怖]を持った人間達は魔女を恐れ始めた。悪魔を殺す事ができる魔女なのだからいつか自分達も殺されるのではないか、そう人間達は思いはじめた。そして、人間達はある事を考えたんだ……
殺される前に殺してしまえ!!!!
人間達は、簡単に魔女達を殺せたよ。 魔女達は、人間達を信じてたんだもん。 裏切れるなんて思ってもいなかったんだもん。魔女達は必死に、逃げて、逃げて、逃げてなんとか助かったのが私達の一族なんだって。」
ガーノからこの話を聞くまでは、自分は人間を憎んでた。ガーノからこの話を聞いた自分は、人間ではなく悪魔を憎む。そして、魔女達にこんなに辛い過去があった事を知りとても悲しんだ。なんで、魔女だけがこんな目にあわなきゃいけないんだろう、そう思った。
私はガーノに聞く。
「悪魔達は、まだ生きてるの?」
ガーノはすぐ答えてくれた。
「いるよ、人間達の世界にた〜くさんいるよ。」
「それじゃあ、またこの世界を滅ぼすんじゃないの??」
心配に思ったことを聞く。 ガーノは答える。
「それなら、まだ心配はいらない。魔女達の戦いに生き残った悪魔達が人間にあの感情をあげたときこう告げたんだ。
我らは、1千年後ある巨大な力を持つ悪魔に連れられて、またこの世界を滅ぼしてやる。
って。 今生きてる悪魔達はその巨大な力を持つ悪魔を待っているらしいから人間達には手を出していない。」
「その悪魔って誰?」
「知るわけないでしょ、でも、その悪魔の名前は知ってるよ。」
「え…教えて!!」
ガーノは呆れた顔をする。
「はぁ〜、やれやれ、その悪魔の名は…
ディスペア…」
そんな名、聞かなければよかったのに。
※ディスペア…… 絶望 |