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マスクマン
作:ばよひ



第17話〜恋の行方〜


推測の域に過ぎなかった僕の憶測が、現実のものだという確信に変わって、
自分でたどり着いた真実を大野にどう伝えるべきか考えていた。

以前、マスクマン宛に送られたメールに返信する方法もあるけれども、
それでは恐らく大野が見たところで無視するだろう。
それに僕は大野に直接言ってやりたかった。

「お前は真面目そうな顔して、裏ではとんでもないことをしている奴なんだな」と。

そしてもう一つ。
僕は横山に僕自身のことを話すべきか悩んでいた。
僕のもう一つの顔を全て伝えるべきか?
それとも彼女に対して行ったことだけを伝えるか、
もしくはこのまま何も伝えないか・・・。

僕は彼女に謝らなければならないとずっと思っている。
だけど、結局、今になっても言い出すことが出来ず、
いつの間にかカップルと間違えられるくらいの仲になっている。

彼女が僕のことを異性として意識しているかどうかはともかく、
彼女が誰かに僕のことを尋ねられたら、
きっと僕のことを「友達だ」と答えるだろう。

彼女に罪を打ち明けたら、彼女はどんな顔をするだろうか?
笑って許してくれるのだろうか、
それとも僕達の関係に終わりを告げるのだろうか。

大野の事に関して、確信を得ているものの、
この悩みに対する答えはいつまで経っても推測の域を出ることはなさそうだ。
実際に行動してみるしか答えなんて出やしない。

それに・・・僕は嘘で塗り固められたこの生き方に終わりを告げたかった。
自分の想いや考えを一人で抱え込む生き方に別れを告げたい。
自分の家族や友人に偽りの自分を演じて、自分自身にも嘘をついてきた。
もうやめにしよう。



9月1日。
長かった夏休みの終わりを告げるこの日。
僕はヨレヨレでないしっかりとアイロンかけをされたYシャツを着て家を出た。

今日は空もキレイだし、風も穏やかだ。
久しぶりに自転車を漕いで学校へ向かう。
まだセミの鳴き声は聞こえるし、夏の暑さは残っているけれども、
昨日までとは違い、目の前に広がる風景の中に制服姿の学生が増えた。


「おっす、石橋。この後カラオケ行かないか?」
始業式を終え、今日はこれでおしまいのこの日。
川野が青田と一緒にカラオケに行こうと誘ってきた。

「そういえば、カラオケなんて随分行ってないなぁ」
高校2年になってから1度も行った記憶がない。
僕と仲のいい連中は部活をやっている人が多く、帰りが一緒にならないこともあるのだろう。
とは言っても、
週に1回は行くという人も多い人気のカラオケに僕は半年近く行っていないのだ。
僕も随分とこの高校ライフを無駄に過ごしているんだなと思う。

「OK。OK。久しぶりに行こう」
「よっしゃ、それじゃあ決まりだな。場所は駅前のバンギャローでいいよな?」
川野は僕ら高校生の行きつけの店の名前を口にする。
料金が他の店に比べて割安な上、
ドリンク飲み放題と経済的に厳しい僕らにとってこの上ないありがたい店だ。

「無問題。で、メンバーは僕に川野、青田の3人なの?大石達も誘ってみたら?」
男3人でカラオケもいいが、
華のあるカラオケのほうがいいに決まっている。

「おー、確かに。誘ってみるか」
川野は僕にそう言うと、早速、大石の元に行くなりカラオケに誘っている。
聞こえる会話を耳にする限りどうやらお誘いOKのようだ。



「ねえ、川野って何を歌うの?」
「俺?俺は結構なんでも歌うよ。ミスチル、EXILE、ブルーハーツなんかも」
「へえ。なんかうまそうだもんねぇー」
「そういう大石は誰の歌を歌うんだ?」
「私はELTとかかな?」

川野と大石がカラオケの話題で盛り上がっている。
僕は早足の二人を見ながら青田と中沢、池田の4人で、
昨日のバラエティー番組の話や夏休みの話をしていた。

店に着くなり、店の狭い入り口を川野が勢いよく開ける。
今、流行の音楽に紛れて、
「いらっしゃいませー」
という店員の声が聞こえる。

僕はこれから迎える、初めて一緒にカラオケに行く女性陣の前で、
僕の歌声を披露することに緊張感を感じはじめた。

青田や川野のように一緒に何回か行っている人と違い、
初めて一緒にカラオケに行く人がいると不思議と異常に緊張してしまう。
今まで見せた事のない自分の一面を見せるのだ。
無理もないのかもしれないけれども・・・。

そんなことを考えながら、ふと前に座っている学生グループが僕の視界に入る。
そこに見覚えのある女性の姿が映る。

「石橋?」

3人の女子生徒グループの真ん中に座っていたその女性は横山友美だった。

「何してるの?」
「何しているのって・・・ここに来る理由は一つしかないよ」
まさかカラオケにトイレを借りに来るようなまねを僕はしない。

「まあ、そりゃそうだけど、奇遇だね」
相変わらずの無垢な笑顔で僕を見る彼女。
なんで彼女はいつもこう笑顔でいられるのだろうか?

「あっ、智ちゃんも一緒だったんだ」
「凄い偶然だねー。やっぱりみんな初日で明日からまた休みだし、遊びに行っているんだろうね」
僕を置いて中沢と話しはじめる横山。
カラオケに行くという話が出てから、
頭を離れていた例のことがまたも僕の頭を支配し始める。

大野は来ていないみたいだな。
まあ、こういう所は好きそうじゃないし・・・。

受付で手馴れたふうに利用時間やら待ち時間の確認をしていた川野が、
不思議そうな顔で僕らを見ている。
大石や青田、池田も川野と同じようで、
僕や中沢が横山と顔見知りであることは知らないのだろう。

「3名様、お待たせいたしました。ご案内いたします」
店員が先に待っていた横山たちを部屋へと案内する。

「それじゃあ、またねー」
横山は僕と中沢にそう言うと一緒に来ていた2人と2階へ進んでいった。

「待ち時間10分くらいだってさ。さっきの横山だよな?」
「ああ」
「随分、仲良さそうじゃないか」
冷やかすような言い方で言う川野。

「まえに言ったろ。夏期講習の塾で知り合ったって」
「そういやそうだったな」
僕と川野が話す横で「ふーん」とでも言いそうな顔をしている大石。
僕はこの顔を見たことがある。
沢尻エリカが舞台挨拶で「別に」と言ったときと同じような顔だ。

さっきまでとは違いご機嫌ナナメなのか?
まさか、僕と横山が仲が良いような会話をしていたことで嫉妬したのだろうか?
もしそうだとしたら嬉しいような誤解されているような・・・。
なんとも難しい。

横山との関係は言い訳するようなことではないし、
そもそも横山と僕が仮に付き合っていたところで大石に謝ることは何一つない。
だからといって、
僕と横山が仲が良いということを大石が変な意味で誤解しているのであれば、
誤解を解かなければいけないような気がする。

こんなとき僕はどうしたらいいんだ?
教えてくれ。恋愛の神様。












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