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マスクマン
作:ばよひ



第13話〜糸の先にいる人〜


僕は横山と一緒にいるわけにはいかないと思いながらも、
彼女の誘いを無碍にすることが出来ず、
変わりない関係を続けていた。

僕は彼女といる居心地のよさにも甘えているし、
僕が今までと違う態度をすることで今の関係が壊れていくことを恐れていた。
だけど、現状を維持することに満足して、偽りの自分を演じたって何も進みやしない。

心の奥に眠っていた罪悪感はどんどん大きくなる一方で、彼女のことだけでなく、
最近ではその前に僕が陥れた人物のことまで頭を支配するようになってきた。

僕はどうしたら彼女と心の底から向き合うことが出来るのだろう・・・。
彼女に自分の罪を打ち明けることか?
そうすればきっといつか彼女と笑って話せる日が来るはずだ。

そんな思いと同時に、
そもそも僕は彼女に謝る必要があるのだろうか?
確かに彼女に無実の罪を着せたのは僕だけれども、
彼女を陥れたいという人間がいたのは事実だし、
彼女に非がないわけでもない。
僕が彼女に謝る必要なんてない。
そんな思いすら時に芽生えることもある。


「どうやら俺は相当まいっているな」
一人自嘲気味に呟き、真夏の青い空を見上げた。
都会の空は汚いと言われているし、夜になると星が見えない空であることは事実だろう。
だけど、昼の青空は都会だろうと田舎だろうと同じような澄んだ青色をしている。

こんな時には誰かに愚痴をこぼしたり、相談してみたりするといいのかもしれない。
では、誰に相談しようか?
川野や青田に相談出来る内容でもないし、
確かに彼らとは仲がいいが、
僕から彼らに相談を持ちかけたことは一度だってない。
そもそも僕は自分の悩みを誰かに相談するタイプではないのだ。

きっと僕みたいなタイプの人間が、一人で悩みを抱え込んでうつ病にかかり、
自殺したりするタイプなんだろうな。
そんな風に思う。

もちろん僕にそんな気は全くないけれども。



「へへへ、今回の模試でA判定とったよ。やったね」
「ほう、そりゃ凄いなおめでとう。その祝いに僕に何か買ってくれないか?」
「なんで私が石橋に何か買うの?逆でしょ逆。何か奢ってくれるのが当然でしょう」
「残念ながら僕にそんな経済力はないな」
「ケチくさいなぁ・・・」

塾の帰り道。
僕は横山と二人、塾での自習を終えて帰宅中。
以前受けた模試の成績が本日報告され、彼女はW大の判定がA。
僕は英語の成績は伸びていたものの、今回は得意のはずの数学の低迷が響きW大D判定。
彼女に水をあけられた格好になった。
僕はW大の進学を志望しているわけではないが、彼女に模試で負けたというのはやたら悔しい。

「今回、A判定が出るほど良かったのは数学の成績が良かったからでしょ?」
「うん、そうだね。数学が出来て、英語も化学も生物も出来たからね」
「つまり僕の教え方が良かったということだ。僕に感謝するべきだろう」
「むっ、そう言われると確かに・・・」
冗談で言ったつもりだったのだが、真剣に悩む彼女。

「まあ、僕も英語の成績は上がったしお互い様だけどね」
「そういや、そうだったね。それでおあいこだね」

・・・会話が途切れてしまった。
黙って歩き続ける僕と彼女。
なんともいえない微妙な空気。
何か別の話題を提供しようと思って、僕はなんとなく彼女に聞いてみた。

「そういや、大野はなんで青田のことを知っていたんだろうな。未だに気になるな」
以前、大野に聞きそびれていた真実を知りたいという気持ちがなかったわけではないが、
彼女に話しかける話題の種として出た言葉だった。

「だって青田君ってうちの学校の女子に人気があるでしょう」
「まあ確かにそうだけど・・・。だからって大野みたいなタイプとは縁がなさそうだけどな」
僕は大野をいかにも地味な人間だと言わんばかりの言い方で言ってしまったが、
それが僕の本心だ。
そもそも僕は大野に対して良いイメージなんて一つも無い。
それに軟派な青田と人見知りの激しいメガネ娘。
客観的に見ても明らかに不釣合いな二人だろう。

「それともなんだ?大野は青田が好きだとかそんなのがあるのかね?」
女子に人気のある青田の名前くらい、
大野が知っているというのはごく普通のことだ。
僕もきっとその程度のレベルで知っているのだろうと思っていた。

「自分にないものを持っている人に好意を持つのは普通じゃないの?」
横山から出てきた意外な言葉。

「そりゃそうだけどさ・・・。ってかまさか本当に大野って青田のこと好きなの?」
「さあね。それは私の口からは言えないよ」
おいおい、横山。
そんな言い方では大野は青田が好きですと言っているようなものだ。

「ふーん。まあ僕には関係のない話だからいいけど」
「あっそう。それじゃあまたね。明日は朝から久しぶりの学校でしょ?」
「そうだね。バイバイ」

僕とは反対側のホームへ向かう彼女に別れを告げる。
一人になるなりi-podで音楽を聴きながら、
さきほどの会話のことを考えていた。

大野は青田が好き。
その青田は自分のことを見向きもしないし、
他の女といちゃついていて、別れたり付き合ったりを繰り返している。
そんな彼を見て憎悪が生まれ、彼を陥れようとした。
そんな感じなのだろうか?

そうだとしたら明らかに一方的な恨みだ。
横山の事といい、青田の事といい、性格が歪んでいるとしか思えない。
まあ、僕のような人間に性格が歪んでいるのは間違いないし、
それを分かっていて実行する僕は更に歪んでいるのだろうけれども・・・。












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