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クリスマスの魔法使い

作者:日下部良介
 今年のクリスマスはちょっと特別。天国のおじいちゃんに会えるような気がするから…。

 本当に信じられなかったよ。今の私があるのはおじいちゃんのおかげだといっても過言ではないくらい、おじいちゃんにはいろんなことを教えてもらったから。
 いつかそんな日が来ることは解かっていたつもり。だけど、あまりにも幸せだったから、そんなことなんかすっかり忘れてしまっていたの。悲しくて、悲しくて、いっぱい泣いちゃったけれど、そんな私を勇気付けてくれる人がたくさん居た。だから私も前に進まなきゃいけないと思った。おじいちゃんもきっとそれを望んでいると思ったから。
「よし!今日はおじいちゃんのために飛びっきりのフルコースでおもてなしをするよ」

 起きてすぐに家中の窓を開けた。ひんやりした空気が家中に流れ込んでくる。気持ちが引き締まる。冬の朝がこんなに澄んだ空気を運んで来てくれることを初めて知った。
「まずは大掃除!」
 家中のほこりを払い落して、家具や床もピカピカに磨いた。まるでよその家に来たみたい。最初はおじいちゃんも自分の家だと気が付かないかも知れないわね。でも、そんな驚いたおじいちゃんの顔を見るのも楽しみだわ。
 ツリーにはちょっとこだわりたいな。普通の飾り付けではいつものクリスマスと一緒だから。そう、飾りつけるのは私とおじいちゃんの思い出。さて…。思い出をどうやって形にしようかな…。そうだ!私は手品の小道具で使った万国旗を思い出した。旗の代わりにおじいちゃんとの思い出の写真を使おう。そして、金色と銀色の色紙を星の形に切り取ってと。金色の星はおじいちゃんの歳の数だけ、銀色の星は私の歳の数だけ。シンプルだけど、おじいちゃんを迎えるのにふさわしいツリーができたわ。

 真っ白なテーブルクロスに赤と緑のクリスマスカラーのナプキンを添えて。いつもおじいちゃんが座っていた席にフォークとナイフを並べる。
「今日はずいぶん豪華な夕食のようだね」
「えっ!おじいちゃん?」
 そこには穏やかに微笑むおじいちゃんがタキシードに蝶ネクタイを粋に着こなして座っていた。
「夏陽、久しぶりだね」
「おじいちゃ~ん」
 私はおじいちゃんを思いっ切り抱きしめた。
「おい、おい。そんなに喜んでくれて、おじいちゃんも嬉しいけれど、時間が限られているんだ。早くご馳走を食べさせておくれ」
「うん!解かった。まず、最初は前菜」
 前菜はエビとホタテの特製バジルソース仕立て。
「ほーう、このバジルソースは格別だね。さっぱりしていてエビとホタテの旨みが引き立てられているよ」
「ありがとう!続いては、サラダ。無農薬のお野菜を農家から直接分けてもらったのよ」
「うん、これも旨い!ドレッシングかかっていないのに十分美味しいよ」
「せっかくの美味しいお野菜だから、軽く塩をふっただけにしたのよ。さあ、続いてスープ。スープはコンソメスープよ」
「シンプルだね。この後の料理の邪魔をしないいい味付けだ」
「気に入って貰えて嬉しいわ。次はパンなんだけど、これだけは私の手作りではないの。だって、ウチには本無くて気にパンを焼く設備が無いから」
 そう。パンは近所のパン屋さんにお願いして焼いてもらったの。でも、レシピは私が考えたオリジナルよ。ベースはライ麦パンなんだけど、おじいちゃんが食べやすいように柔らかく仕上げて貰ったわ。
 おじいちゃんはそのパンを口にする。
「なるほど!これは柔らかい。バターの香りがいい感じだな」
「そうでしょう。お次は魚料理。ここからが本番よ」
 魚は特別に舌平目のいいものを取り寄せて貰ったわ。それをムニエルにしたの。定番と言えば定番だけど、ソースにはこだわりがあるのよ。
「ほーう、前菜のバジルソースと同じかと思ったけれど、今度のソースは濃厚だなあ。けれど、舌平目の淡白な旨みが一層引き立てられているな」
 いいぞ!この調子だ。次はソルベ。お肉料理の前に出すソルベは大事だわ。私が用意したのはオレンジの冷たいシャーベット。さっぱりしてお口の中をリセットさせてくれるわ。
「さて、お次は肉料理じゃな。どんな肉を用意したのかな?」
「そう!お肉はA5ランクの宮崎牛よ。シンプルにステーキにしたわ。味付けは一切していないわ。だって、何もしなくても美味しんだもの」
 お爺ちゃんはお肉にナイフを入れようとして、一瞬、手を止めたわ。さすがおじいちゃん!気が付いたのね。そして箸に持ち替えたの。
「これはとても柔らかい。ナイフが無くても箸で切り取れるぞ」
 当たり!ただでさえ美味しいA5ランクのお肉をさらに熟成させたものだから。そして、焼き具合はミディアムレア。
 おじいちゃんは一口食べて頷いたわ。
「絶妙の焼き具合だ。これ以上焼いてもそうでなくても、この柔らかさは無いな」
 ここまでの料理をペロッ血平らげたおじいちゃんはそろそろお腹がいっぱいになって来たころよね。
 さて、料理もいよいよ終盤に入るわよ。まずはチーズ。迷ったのだけれど、モッツァレラにしたわ。トマトを添えてカプレーゼ風に。
 フルーツはシロップに漬け込んだマンゴーにチェリーソースをかけて、デザートと兼用にしたの。
 おじいちゃんは何一つ残すことなく全部食べてくれたわ。
「さすがに腹いっぱいじゃなう」
 そう言って、大きく膨らんだお腹をポンポンと叩いたわ。
「どう?夏陽、腕をあげたでしょう」
「大したものじゃ。夏陽は小さい頃から頑張り屋だったからな」
 最後のコーヒーとプチフールのケーキをおじいちゃんの前に置いたとき、おじいちゃんが優しく微笑んだ。
「もう、大丈夫のようだね。私が旅立った時、夏陽があまりにもたくさん泣いていたから心配で仕方なかったんだ。今日の夏陽を見ていて安心したよ」
 私は悟った。もう時間なんだと。もう少し一緒に過ごしたい。だけどそんな我儘は言っていられない。今度はおじいちゃんをちゃんと笑顔で見送ってあげよう。
「うん!大丈夫だよ。たくさんの人が私を支えてくれるし、おじいちゃんにはこうしてたまに会えればいいから」
「そうか。今度、来られるのはいつになるかなぁ…」
「いつでもいいよ。その度にちゃんとおもてなししてあげるから」
「そうか。それは楽しみだな。じゃあ、おじいちゃんはそろそろ行くよ」
「うん、行ってらっしゃい!」
 おじいちゃんは安心したように微笑みながら消えてしまった。なんだか心の中にポッカリと穴があいたような気分。でも、とても心地が良い。さて、片付けようっと…。
「うわあ!」

 良ちゃんは私が入れたコーヒーをすすりながらケーキを一口すくって口にした。
「本当においしいね。夏陽ちゃんは料理の天才だね。こんなに愛情がこもった料理は初めてだよ」

 そう、さっきまでおじいちゃんが座っていた席に良ちゃんが居るの。びっくりしちゃった。
「ねえ、良ちゃんって魔法使い?」
「どうして?」
「私におじいちゃんを会わせてくれたのは良ちゃんなんでしょう?」
「おじいちゃん?さて、何のことかな?ボクはこれを届けに来ただけだよ」
 そう言って良ちゃんは可愛らしいリボンでラッピングされた包みを出した。
「夏陽ちゃん、メリークリスマス!」
「あ、メ、メリークリスマス…」
「じゃあ、ボクはこれで。どうもご馳走さん」
 良ちゃんはそう言って席を立った。

 良ちゃんのクリスマスプレゼントはテディベアのぬいぐるみだった。良ちゃんはとぼけていたけれど、おじいちゃんに会わせてくれたのはきっと良ちゃんなんだ。うん!きっとそうね。




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