私は子供の頃から科学が大好きな少年だった事を記憶している。
中学生の頃、アイン・シュタインの相対性理論と出会う事になる、
その時の感動は今も忘れない。
想像力がどんどん膨らみ人類の夢であるタイムトラベルも可能であると推測できた。
後、大学、大学院へと進み私はある夢を実現する為に
教授の仕事と研究に明け暮れる日々が続いていた。
現代の科学では時間を逆行する事、すなわち過去にもどる事は不可能とされている、
これからどれだけ科学が進歩したところで、この世では過去にもどる事は出来ない
ならばあの世では可能なのか、
しかしあの世で可能だとしても果たして意味はあるのだろうか。
昔から人が考え想像できる物は実現可能だとされている
しかし、いまだ人類にはこの世の0.1%も実現、証明する事は出来ない、
もっとも単純にて複雑な難問である円の正方形化を例に挙げてみる。
紙にコンパスで円を書くとする。
直径は2cmの真円だ、それは誰が見ても明らかにただの円であり容易に認識できる。
しかしその円と同じ面積の正方形を描く事は人類には出来ない。
この数十年、世界中の有能な数学者が証明しようと試みたが未だに証明できない。
なぜなら、円の正確な面積を求める事は出来ないからだ。
半径×半径×π、すなわち1×1×3.141592……=3.141592……
πは超越数であり終りが無い、よって面積は求められないのだ。
この事実により不可能だと言う事は証明できる。
残念ながら、タイムトラベルにも同じ事が言える、
結論から言うと過去にもどる事は出来ないのだ。
もし、映画や小説の様に過去にもどれたとしよう、
たとえば今より1000年前に戻るとする
その瞬間僅かながら世界の流れは変わる、
そしてあらゆる要素が交わり時の流が変わる
その時、自分の存在に矛盾が生じ存在できなくなる。
存在しないのなら過去にもどることも出来ない、
存在可能だとしたらそこは自分の居た世界の過去ではなく違う次元の世界に
なり二度ともどる事は出来ない。
自分の存在し得ない世界それは過去ではなく別次元への
移動にすぎない、よって過去へのタイムトラベルは不可能であると証明できる。
しかし、未来へ行く事は容易なのだ。それは未来への片道切符となるのだが
相対性理論に基づき物質の移動速度が光速に近づくほど時間の経過速度は低下すると
されている。
たとえば高性能な原子時計を2つ用意する正確に時間をあわせ片方は地上に
もう片方はジェット機に搭載し高速で飛行する。
しばらく飛行した後2つの時計の誤差を調べる、
高速で飛行した時計は地上の時計よりも
光速に近づいた事になり何万分の1秒位は遅れている事になる。
すなわち移動した時計は時間の流れ方が違うのだ、
よって未来へ進んだ事になる
単純に科学的に考えると、人はそれぞれ時間の流れ方に違いがあり
常にタイムトラベルし続けている事になる。
人生においてほんの僅かな時間、刹那や空虚、清浄と言った世界の話だろうが。
しかし科学とは無常な物で夢を追いかけ走り続ければ続けるほど
ゴールは遠くなる
私は研究し続け30年余りの歳月が過ぎた、
そしてついに磁気を帯びた物質を超光速で回転させる事により
重力の増大を生み出し空間を曲げる事に成功したのだ。
宇宙空間では空間の歪みは何処でも起こりえる日常的な事だが
人類にはそれほどの質量を扱う事が出来ない、
この事実は特許所かノーベル賞でも評価し得る所ではない
非常に危険な発見なのだ、原爆や水爆の比では無い
全世界崩壊にも繋がり兼ねない、正に私は神の領域に踏み込んでしまったのだ。
それから私は数年の歳月を重ねワームホールの実体化に成功した。
時は2050年、人類は個人レベルで小型宇宙船を所有できるまでになっていた。
私は研究過程で発見した研究結果を宇宙研究財団に持ち込み
巨額の資産を手に入れる事が出来た私にとっては金など何の意味も持たない、
それは生きていくため研究を続ける為に
右から左へと流れていくデジタルな数字の羅列にすぎない、
しかし地球上では非常に大きな力を持っている。
その為、私の様な一個人でも宇宙船を所有する事が出来るのだ。
こんな私でも、愛する妻が居て2人の子供いる。
人生の大半を研究に費やしてきた為、家族に今まで何もしてやれなかったが、
宇宙船を手に入れた事を機会に宇宙旅行に出かける事にした。
初めての宇宙、言うまでも無いが地球は青かった、
しかしそれは誰もが知りえる事実であり私の心を感動させる事は無かった。
私は理解を超える世界の研究をし続けてきたのだ、
そう私の夢は一つなのだ。
そして私は妻を失った事を期に、
我が人生の夢であるタイムトラベル未来への旅に出かける事を決意した。
研究結果では実現可能だが解析不明な部分もある、
しかしこの機会を逃すと体力的にももう後が無い。
そして大事な話があると子供2人に話す事にした。
自分の夢の話、今まで研究してきた内容、これから未来へと旅立つと言う事。
最後に未来へ行くと帰って来られないと言う事、
タイムトラベルを可能にする機械を妻の名前である雅と名づけた事を、
我が子は涙ながらも2人共、反対はしなかった。
我が子にしてみれば私が居なくなるのだから死ぬのと変わりない、
しかし現実は私が死ぬのではなく私の家族が先に死ぬのだ。
もしかしたら孫やひ孫に会えるかも知れない、
最後に私たちの結婚記念日に旅立つと言う事を告げた。
そして4月7日その日が来た、
雅を備え付けた宇宙船に妻の遺骨と共に乗り込み宇宙空間へと飛び出した。
地球上では未来に行く事は出来ないなぜならたとえ1日未来に移動したとして
もそこには、もう地球は無く宇宙空間なのだ
なぜなら宇宙は膨張し続け銀河系も移動している
太陽系も地球も公転、自転しているのだ。
私はあらゆる対象物とも接触しない空間を割り出し、そこに軌道をむけた。
約3年後、ようやく目的地へ到着した。
広い宇宙に一人だけの3年間、未来への希望だけを心の支えに雅と共に。
ついに雅を発動するときが来た。
何度もシュミレーションを重ね70%の確立で成功するまでにプログラムを組上げた、
もう思い残す事は無い、もう後には引けない。
妻の遺骨を左手に抱え実行キーを押した。
徐々に雅の重力場が上昇しワームホールを発生させる、安定している必ず成功すると
人生を思い返して、ただその時を待つ、「神様、私の夢を叶えて下さい」
そして次の瞬間何の前触れも無く窓の外の景色が変わった。
ついに成功したのだ。
果たして今は何年なのだろうかこのタイムトラベルで
唯一解析不明な部分、それはきまった時間に移動出来ない事だった。
何故ならワームホールを通過している間は重力が無限大となり時間は経過しない
時間が経過しないのだからタイマーも目的時間も設定できない、
これが未来への移動のパラドックスなのだ。
船外を見渡す明らかに惑星の密度が増しているこの状態は異常と言うほか無い
私は現在の時間を算出するため宇宙空間に漂う浮遊物の解析に移る。
解析機にかけ結果を見守る、モニター画面に数字の羅列が写し出された。
私は我が目を疑った。
何度やり直しても結果に1%の誤差も生じない。
「なんてことだ」
ここは150億年後の世界なのだ、これで全てが理解できた、
この惑星の異常過密ビッククランチの最中なのだ、
これは宇宙の始まりビックバンの逆の事態、宇宙が凝縮
し始め、無に変わろうとしている。太陽系は愚か人類の化石すらないであろう。
すなわち、事実上の世界の終焉なのだ。
これが私の求めていた夢だったのか、呆然と数日間何も考えられなかった。
突然、私の頭の中で瞬時にある理論が構築される、
もしかしたら未来へ進んだ分だけなら
過去に戻れるかもしれない。ここに来た時のプログラムを逆転すれば、
私は数年の歳月をかけプログラムを組上げた
戻れなくても悔いは無い、私は実行キーを押す。
来たときと同じ感覚、そして年代測定
1%の誤差も無い完璧だ。
しかし地球に帰る事は出来ない、私は歳を取り過ぎた
それに無重力空間に長くい過ぎたのだ
人生の終焉も近い、確かにあれは夢や幻覚ではなかった。
ここにあるデーターが証明してくれる。
しかしこの装置は人類に発見されてはならない、
私はこの装置とデーターを完全にこの世から抹消する。
なお、私の人生を記載した便箋だけは地球に向け
私の製作した保護パックにいれ地球へと送る。
この文面が読まれている事は私の子孫が開放したものと思う。
私は夢を叶えて初めて気が付いた。
もう一度人生をやり直せるなら研究を辞め
子供達の為、愛する雅の為に生きてみたい。
2065年4月7日 徳川建造
それから数年の歳月が流れた
NAZAが特殊な保護財に包まれたケースを地球軌道で発見
アシスタントの学生があわてて声を張り上げた
「徳川教授、お客様です!」
「何だね、そんなに慌てて私は円の正方形化の
科学的証明の研究でいそがしいんだよ」
「NAZAの職員らしいのですが」
「なぜNAZAが私に様があるんだね、まあいいお通ししろ」
「失礼します、私こう言うものです」
NAZA職員の名刺を差し出す。
「先生に見て頂きたい物がありまして、これはなんですが、
先月、宇宙空間の地球軌道で発見した物なのですが、
私どもの技術をもってしても解析不能で傷一つ付けることが出来ない
物で是非先生に」
「なぜ私に、私の専門は数学の科学的証明なのですが」
「ここを見てください」
そのアタッシュケースほどの見たことも無い箱には
日本語で「我が子供たちに捧げる徳川建造」と記載されている。
「私の名前ですね、でも私は独り者ですし、どうやって空けろと」
触ったり叩いたりしても一向に開く気配も無いどういった構造なのだろう
教授はアシスタントに声をかける
「何をしている、雅君!お茶をお出ししなさい」
突然箱から機械音がした。
「オンセイニンシキ・ミヤビ・ニンショウシマシタ」
ゆっくりとその箱が開き始める、皆が覗き込む
そこには造花の白いカーネーションが一輪、
私の筆跡で書かれた数枚の便箋
私の物と同じ万年筆が、その文の始まりは…..
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